コトラ（広報チーム） 
第1章 副業を始める前に知っておくべき基礎知識
副業禁止規定とその背景
会社の就業規則には、副業を禁止する「副業禁止規定」が含まれる場合があります。この規定は法律で義務付けられているものではないため、会社ごとに異なる運用がなされます。しかし、会社がこの規定を設ける背景として、本業への専念を求める意図や、本業に支障が出るような活動を防ぐことが挙げられます。特に取締役のように会社経営や意思決定に携わる役職の場合、副業が本業に悪影響を及ぼしたり、利益相反を招いたりするリスクがあります。そのため、副業を始める前には必ず所属する会社の規定を確認し、必要に応じて相談することが重要です。
就業規則の確認ポイント
副業を始める前には、就業規則をしっかりと確認する必要があります。重要な確認ポイントとして、副業禁止規定がどのように定められているか、事前に届け出や承認が必要かといった点があります。また、取締役の場合、他の従業員に比べて規定がより厳格に適用されるケースがあるため、その内容を具体的に把握しておくことが大切です。特に、同業種での副業や競業避止義務に抵触しないかについても注意が必要です。就業規則に関する疑問があれば、人事部や法務部に相談することをおすすめします。
法的に求められる制約
副業について法的な観点から見ると、就業規則の有無にかかわらず、いくつかの制約が存在します。例えば、副業によって本業の業務に支障を来す場合や、競業避止義務に違反するような活動は法律で禁止されます。特に取締役としての責任を負う役員が副業を行う場合、自身の行動が会社の信用を損なう可能性があるかどうかを慎重に判断しなければなりません。さらに、利益相反取引となる副業を行う場合は、法律上、取締役会や株主総会の承認を必要とするケースもあるため、事前に十分な確認を行うことが重要です。
会社役員としての競業避止義務とは
競業避止義務とは、取締役や会社役員が自身の地位を利用して、会社の利益を損ねる競争的な行為を行わないようにする義務です。この義務は法律によって定められており、同業他社での副業や自身の利益を追求する取引に注意が求められます。副業を行う際には、本業とは異なる業種・職種を選ぶことが賢明であり、自身の活動が会社の業務範囲や利益と直接競合しないことを確認する必要があります。競業避止義務を軽視した結果、会社への損害賠償請求や取締役としての信用失墜に繋がる可能性もあるため、慎重な姿勢が求められます。
第2章 副業で注意すべき会社法上のポイント
利益相反取引のリスクと対策
取締役が副業を始める際に真っ先に意識すべきなのが「利益相反取引」のリスクです。利益相反取引とは、会社の利益と取締役自身の利益が対立する取引を指します。たとえば、自分が経営する副業の事業と、所属する会社の事業が競合したり、取引関係が発生したりする場合がこれに該当します。このような場合、会社に損害を与えるリスクが高まるため、取締役としての責任が問われる可能性があります。
リスクを回避するためには、以下の対策が効果的です。まず、自分の副業が現在の会社業務と直接の利益相反にならないかを事前に精査しましょう。また、利益相反の可能性が認められる場合は、必ず株主総会や取締役会で承認を得ることが重要です。この過程を無視すると、法律違反とみなされる可能性があるため注意してください。
株主総会や取締役会での承認が必要なケース
会社法の観点から、取締役が特定の種類の取引を行う際には株主総会または取締役会の承認が必要と定められています。特に、自身が関与する副業と、所属会社が取引関係を結ぶ場合には、このルールが適用されることがあります。たとえば、自らの副業が提供する商品やサービスを所属会社が購入する場合、これはいわゆる「自己取引」に該当し、リスク管理の観点からも承認が必要です。
承認が必要なケースを軽視すると、取締役として忠実義務や善管注意義務に違反していると指摘される可能性があります。そのような事態を回避するためにも、副業を開始する前に該当する取引について法務部門や専門家に相談し、適切な手続きを踏むことが大切です。
副業と役員責任の関係性
取締役が副業を行う場合、役員責任との関係性にも十分な注意が必要です。会社法上、取締役は「忠実義務」と「善管注意義務」を負っています。このため、副業によって本業の利益が損なわれたり、会社の信用が傷つくような行動を取った場合には、取締役としての責任を問われる可能性があります。
また、副業の内容が所属企業の従業員や取引先から批判を受けた場合、その対応も役員責任の一環として求められることがあります。そのため、副業を進める際は、必ず本業との間で利益相反が発生しないよう配慮し、透明性のある行動を心がけることが重要です。会社の信用を守りつつ、副業のメリットを享受するには、始める段階から慎重なリスク管理と計画的な対応を行うことが鍵となります。
第3章 社会保険と税金における注意点
給与所得と副業所得の扱い
会社役員が副業を行う場合、給与所得と副業所得の扱いについて理解しておくことが重要です。本業で得る役員報酬は給与所得として扱われますが、副業で得た収入はその性質によって事業所得や雑所得に分類されることがあります。たとえば、副業として不動産賃貸やフリーランスの業務を行う場合は事業所得、短期的な物の売買などの場合は雑所得となります。
特に注意が必要なのは、副業所得が年間20万円を超える場合です。この場合、確定申告が必要となるため、収支管理を徹底する必要があります。また、副業所得が高額であれば、住民税や所得税の負担が増加する可能性があります。取締役として本業に支障がでないよう、適切に計算し節税対策を講じることが大切です。
社会保険の加入義務とその影響
取締役である場合、副業が社会保険にどのような影響を及ぼすのかも理解を深める必要があります。本業で社会保険に加入している場合、副業においても保険料が発生することはありませんが、一定の条件下では注意が必要です。例えば、副業先でも給与が支払われ、その金額が一定額以上になる場合、複数の保険料が計算される場合があります。
また、合同会社などを設立して代表社員として副業を行う場合、自身の役員報酬の額によっては、新たに社会保険への加入が必要となります。こうした場合、複数の加入先が絡むことで、手続きが複雑になることも考えられるため、専門家に相談するなど事前に準備をしておくことが大切です。
確定申告で避けたいトラブル
副業での収入が一定額を超える場合、確定申告を行う必要がありますが、このプロセスでのトラブルを避けるためには、適切な知識と準備が不可欠です。特に、会社役員である場合、副業収入の申告漏れは個人だけでなく会社の信頼にも影響を及ぼす可能性があります。副業を始める段階から収入や経費の記録を正確に管理することを心がけましょう。
また、副業収入が住民税あるいは所得税の増加につながる場合、本業の会社に通知されるケースもあります。この点については、事前に税務署や専門家の指導を仰いだり、本業での副業規定を確認することが重要です。取締役として誠実な対応を心がけることで、信頼を損なうリスクを防ぐことができます。
第4章 トラブルを回避する副業の進め方
本業と副業のバランスの取り方
取締役が副業を行う際には、本業と副業のバランスを適切に管理することが重要です。本業である企業経営や重要な意思決定の責任を優先する必要がありますが、同時に副業にかける時間や労力を過剰にしないよう注意しましょう。本業への影響を最小限に留めながら、効率的に活動時間を分配する方法として、タスク管理ツールの活用や明確なスケジュール管理が推奨されます。また、副業を行うことで経営判断に支障が出る場合、社内外からの信頼を損ないかねないため、常に自己管理を心掛けることがポイントです。
副業に関する透明性と情報公開
取締役が副業を始める場合、企業の利害関係や透明性の確保が極めて重要です。特に副業が本業に関連する分野である場合は、利益相反取引の可能性を排除するため、事前に株主総会や取締役会において承認を得ることが求められる場合があります。また、必要に応じてステークホルダーに対する適切な情報公開を行うことで、誤解やトラブルを防ぐことが可能です。このプロセスを怠ると、信用の低下や法的トラブルに発展するリスクがあるため、慎重な対応が必要です。
競業避止条項に抵触しない副業選び
就業規則や契約書に記載されている競業避止条項には特に注意を払うべきです。この条項は、役員としての職責に基づき本業と競合する業種や事業を行うことを制限するものであり、違反した場合、企業からの法的措置が取られる可能性があります。副業を始める際には本業との競合を避けることが原則です。例えば、本業がIT関連企業であれば、同業他社や競合分野での活動は避け、異業種での副業を検討することが無難です。また、不動産や投資といった本業と直接競合しない分野での副業が選択肢となります。
トラブルが発生した際の対処法
副業に関連してトラブルが生じた場合、適切かつ迅速な対応が求められます。例えば、予期せず本業に支障をきたしてしまった場合や、競業避止義務に触れる疑いが出た場合、本業の取締役会や法律の専門家に相談し解決の道を探るべきです。また、リスクを最小限に抑えるために、日頃から副業に関する活動履歴や資料を記録しておくことが有効です。これにより、不測の事態が起きた際にも透明性を示すことができ、信頼回復につながります。その上で、再発防止策を策定し、他の役員や関係者と情報を共有することが不可欠です。
