役員に有給休暇は取れるのか?知られざる法律の真実に迫る!

役員と労働基準法の関係

労働基準法が及ぶ対象とは

労働基準法は、労働者の労働条件の最低基準を定めた法律です。この法律が保護の対象とするのは、雇用契約に基づいて使用者の指揮命令のもとで働く「労働者」とされる人々です。具体的には、賃金を受け取りつつ業務を遂行する社員や従業員が該当します。一方で、「労働者」に該当しない者にはこの法律の規定が適用されないため、有給休暇や労働時間の規定なども適用外となる点に注意が必要です。

役員が労働者と見なされない理由

役員は会社法に基づき設置される者で、「取締役」「監査役」「会計参与」といった職位を指します。これらの役員は、会社経営に直接関与する立場であり、一般的な従業員とは性質が異なります。役員は雇用契約ではなく、民法上の「委任契約」に基づいて業務を行うため、労働基準法が定める「労働者」には当てはまりません。そのため、有給休暇など労働者に与えられる権利が適用されないのが原則です。取締役などの役員は、自らの裁量で業務を進める権限を有しているため、従業員とは異なる働き方が求められるのです。

労働契約と委任契約の違い

労働契約と委任契約の違いは、指揮命令下での労働か、独立した判断での業務遂行かという点にあります。労働契約は、企業が労働者を採用し、報酬を支払う代わりに業務を行わせる契約形態であり、労働者は使用者の指示に従って業務を進めます。一方、委任契約は、民法第643条に基づき、特定の法律行為や事務処理を委託するものです。役員が締結するのはこの委任契約であり、使用者の指揮命令系統に属するものではありません。そのため、役員は自らが所属する会社のルールに則りつつも、基本的には独立した立場から業務を遂行します。取締役としての役割を果たす上での法的な位置付けが、労働者とは違うことが明確なのです。

転職のご相談(無料)はこちら>

役員に有給休暇が適用されない理由

労働者の権利としての有給休暇

有給休暇は労働基準法に基づく労働者の権利として位置付けられています。具体的には、労働基準法第39条において、一定の条件を満たした労働者には有給休暇が付与される旨が明記されています。この権利は、労働者の健康維持や労働環境の改善を目的としたもので、雇用契約の下で働く者に対して広く適用されます。しかし、この「労働者」という定義において、役員は労働基準法の適用外とされるため、有給休暇の権利も適用されません。

役員が有給休暇を取得できない原則的な背景

役員は、一般的な労働者とは異なる立場にあります。取締役などの役員は企業の経営や意思決定に携わる立場であり、労働基準法が保護する「労働者」とは見なされません。その理由は、役員の契約が雇用契約ではなく委任契約であることにあります。この委任契約は民法に基づいて締結され、指揮命令系統の下で働く労働者とは異なる自由度があるのが特徴です。そのため、役員に対しては労働基準法上の義務や権利が適用されず、有給休暇もその例外ではありません。

就業規則の適用とその制約

企業の就業規則には、労働者に関する休暇規定や福利厚生制度が明記されていますが、これらは基本的に労働者を対象としたものであり、役員には適用されないケースが多いです。役員を対象にする場合には、就業規則や役員報酬規定において明示的に規定する必要があります。ただし、一般的には役員には有給休暇の制度を設けない企業が多く、その背景には役員の報酬に休暇分が含まれているとの考え方もあります。また、役員は労働契約ではなく委任契約に基づくため、就業規則の適用範囲から外れがちです。

転職のご相談(無料)はこちら>

例外的に有給休暇が認められるケースとは

使用人兼務役員の場合

役員であっても、「使用人兼務役員」に該当する場合には、有給休暇が認められるケースがあります。使用人兼務役員とは、取締役などの役員としての職務を遂行する一方で、従業員としての業務にも従事している人物を指します。この場合、役員としての立場ではなく、従業員としての側面が評価されるため、労働基準法が適用されます。その結果、有給休暇などの労働者の権利が発生します。

ただし、役員としての業務と従業員としての業務内容が明確に区別されている必要があります。この区別が曖昧な場合、労働基準監督署などから問題視される可能性があります。そのため、企業側は業務内容や役割をはっきりと記載した雇用契約書や役員報酬規程を作成し、管理を徹底することが求められます。

契約内容による特別な取り決め

役員に有給休暇が認められるもう一つのケースとして、契約内容による特別な取り決めが考えられます。通常、役員は労働者ではないため、有給休暇の権利は法律上保障されません。しかし、会社と役員の間で締結される委任契約やその他の雇用に準じる契約書において、有給休暇に関する条件を明記することで取得が可能になる場合があります。

これは取締役などの役員の負担軽減を目的として、企業が自主的に提供する制度として設けることが多いです。その際、具体的な付与日数や取得ルールを会社の規程に明確に記載しておくことが重要です。こうした取り決めは、企業独自の福利厚生や人材確保の一環として行われる場合があるため、各企業で異なる運用となることがあります。

名ばかり役員の取り扱い

もう一つ注意すべき例外として、「名ばかり役員」のケースがあります。名ばかり役員とは、役員という肩書きを持つものの、実質的には一般従業員と同じ業務を行っている人物を指します。このような場合、労働基準法上の「労働者」としての性質が強いと判断されれば、有給休暇が発生する可能性があります。

このケースでは、その業務内容や職務の実態が極めて重要です。例えば、取締役の肩書きはあっても、業務指示を受けて作業を行う立場である場合、労働者性が認められる場合があります。その結果、有給休暇をはじめとする労働法上の権利が適用される可能性があります。企業としては、名ばかり役員が発生しないよう、取締役と従業員の業務役割を明確化し、曖昧さを排除することが必要です。

転職のご相談(無料)はこちら>

企業としての対応策と留意点

役員と従業員の区別を徹底することの重要性

取締役をはじめとする役員と一般従業員の間には、本質的な法的区別があります。役員は委任契約に基づいて業務を遂行する立場であり、労働者としての指揮命令下にはありません。一方、従業員は雇用契約を締結し、事業主から指揮命令を受けて業務を行います。これらの法的な位置づけの違いにより、有給休暇の付与や労働基準法の適用の有無が異なるため、企業としては役員と従業員の区別を明確にすることが重要です。

特に、使用人兼務役員や名ばかり役員といった曖昧なポジションが存在する場合には、その点を正確に整理する必要があります。曖昧な状態のままでは、労務管理上のリスクが生じる可能性があるため、役員の職務内容や契約形態を明文化することが求められます。

有給休暇に関する社内ポリシーの明確化

役員には原則として有給休暇は付与されませんが、場合によっては特例的に付与することも考えられます。そのため、企業としては有給休暇に関する社内ポリシーを明確にし、役員に対しても従業員に対しても一貫性のあるルールを運用することが重要です。

例えば、使用人兼務役員であれば使用人として勤務する時間に応じた有給休暇を付与するケースがあります。そのような場面では、役員の職務と労働者としての職務をどう区別するのか、またそれに基づいてどのように有給を管理・提供するのかを事前に定めておくことが必要です。このようなポリシーは、労働基準法の実務への適用や予防措置といった観点からも、重要な役割を果たします。

法改正動向への注視と定期的な見直し

労働基準法や会社法などの関連法規は、時代の変化に伴い改正が行われる可能性があります。そのため、企業はこれらの法改正動向を継続的に注視し、社内規定や運用ルールを必要に応じて更新することが求められます。

例えば、働き方改革で注目される労働時間や休暇制度の強化は、役員が労働者的な性質を兼ねる場合にも影響を及ぼす可能性があります。定期的な体制の見直しや管理システムの整備を進めることで、法令違反を回避するだけでなく、労務管理の効率化や透明性向上も図れるでしょう。

特に、役員と労働者の境界が曖昧な企業では、その都度役員の契約内容や就業規則との適合性を確認し、リスクを未然に防ぐための取り組みを強化することが重要です。

この記事を書いた人

コトラ(広報チーム)

金融、コンサルのハイクラス層、経営幹部・エグゼクティブ転職支援のコトラ。簡単無料登録で、各業界を熟知したキャリアコンサルタントが非公開求人など多数のハイクラス求人からあなたの最新のポジションを紹介します。