コトラ（広報チーム） 
管理職になりたくない人が増えている背景
近年の「管理職離れ」現象とは？
近年、管理職を目指す人が減少し、「管理職になりたくない」という現象が広がっています。特に若手を中心に、昇進の機会が与えられても積極的に挑戦せず現状維持を望む人が増加しています。調査によると、約8割の社員が管理職への昇格を望まないと回答しており、この傾向は年々強まっています。背景には、「管理職＝罰ゲーム」というイメージや、管理職の過重な責任とストレスが影響していると見られています。
社会や企業環境の変化がもたらす影響
社会や企業を取り巻く環境も、管理職離れに大きな影響を及ぼしています。働き方改革が進む中で、社員はワークライフバランスを重視するようになり、職場での自由や時間の余裕を求める傾向が強まっています。一方で、企業は成果主義の拡大により、管理職に対する期待とプレッシャーを高めています。その結果、部下の指導や業務管理に追われる管理職が増え、こうした姿を見た社員が「管理職やりたくない」と考えるケースが多くなっています。
民間企業の調査が示すデータ
民間の複数の調査結果を見ると、管理職を望まない人の割合がここ数年で大幅に増加していることが分かります。例えば、パーソル総合研究所の2023年の調査によれば、「現在の会社で管理職になりたい」と答えた社員はわずか17.2%で、3年前の24.0%から大幅に減少しました。また、管理職を希望しない理由としては「責任の重さ」「ストレスの多さ」が上位に挙げられており、多くの人が管理職の負担を敬遠していることが見て取れます。
若手だけではなく中堅層でも広がる傾向
以前は「年齢を重ねれば管理職になるのは当然」という風潮が一般的でした。しかし、最近ではキャリアが進んだ中堅社員の間でも、管理職を望まない動きが広がっています。特に家庭の事情やプライベートを重視する価値観の普及が、この傾向を後押ししていると言われています。女性社員や育児・介護と両立する必要がある社員に限らず、多くの男性社員も「自由な働き方」を優先し、あえて管理職の選択を避けるケースが増えています。
「管理職になりたくない」主な理由
責任の重さに比べて給料が見合わない
管理職を「やりたくない」と考える理由の一つとして、責任の重さに対して給料が見合っていないと感じる人が多い点が挙げられます。管理職になると、自分自身の成果だけでなく、部署全体のパフォーマンスや目標達成にも責任を負う必要があります。また、部下の育成やチーム全体の調整といった業務が加わり、精神的・時間的負担が増加します。しかしながら、それに見合うだけの給与アップが現実には感じられないと、不満につながります。例えば、厚生労働省の調査では、係長クラスの平均年収が約369万円とされ、労力に見合わない印象を抱く人が多いことが伺えます。
長時間労働やストレスが増加する不安
管理職になると業務が増え、多方面に気を遣う必要が出てくるため、長時間労働を余儀なくされるケースが少なくありません。部下への業務指示やフォロー、マネジメントに加え、定期的な会議や進捗報告が発生するため、自身の業務を遂行できる時間の確保が難しくなります。これにより、長時間労働が常態化し、ストレスが増大する恐れがあります。「管理職＝罰ゲーム」というイメージが広まっている一因も、このような現状にあると言えるでしょう。
自由な働き方が制限される現実
現場の社員としては、比較的自由な働き方を選びやすい環境がある一方で、管理職になると、自由が制限されると感じるケースが多くみられます。たとえば、リモートワークを希望してもチーム全体のマネジメントや会議の出席のために出社を求められる場面が増加し、柔軟性が失われます。また、仕事の優先度が上がり、休暇の取得や趣味、自己研鑽に使える時間が制限されると感じる人も少なくありません。管理職を避ける要因として、ワークライフバランスの取れた働き方の確保を重視する風潮が背景にあると言えます。
家族やプライベートとの両立の難しさ
家庭と仕事の両立が求められる現代において、管理職の役割はそのバランスを崩しかねない要因となっています。特に、育児や介護といった大きな責任を抱える人にとっては、管理職になることでこれらのプライベートな責務に支障をきたすリスクが懸念されています。時間や労力が仕事にほぼ吸い取られてしまい、家族との時間が持ちにくくなる現実は、多くの人にとって管理職の魅力を損なう要素のひとつです。このような事情から、特に女性やワークライフバランスを重視する世代において「管理職はやりたくない」という意見が多くなっています。
それでも管理職になるメリットはあるのか
キャリア形成における影響力の拡大
管理職になることで、組織内での影響力が格段に広がります。自身の意見や判断が直接的に部署やプロジェクトの方向性に影響を与えるポジションは、一般社員には得られない経験です。また、自分の責任や行動が企業全体の成長に貢献していると実感する場面も増えるため、キャリア形成の視点では大きなメリットとなります。特に管理職経験があることで、次に目指すキャリアのゴールも明確に描きやすくなるのが特徴と言えるでしょう。
他者を育成するやりがいと成長
管理職には、部下や後輩を指導・育成する役割があります。他者の成長を間近でサポートできることは、管理職特有の大きなやりがいです。これにより「人を育てる力」「信頼関係を築く力」が自然と磨かれるため、自分自身の成長にもつながります。育成は時に悩みを伴いますが、部下が成果を出したり昇進する姿を見られるのは、他の職位では得られない特別な達成感でもあります。
管理職経験が転職や将来に活かされる可能性
採用市場では、管理職経験者は高い評価を受ける傾向があります。特に転職活動において、リーダーシップやプロジェクトマネジメント能力は重要なアピールポイントとなります。また、将来的に独立を考えている場合でも、管理職時代に培った組織運営や意思決定のスキルは貴重な財産として活かすことができるのです。このように管理職を経験することで、広い視野を持ったキャリアパスが開けます。
企業内での評価向上と交渉力の増加
管理職になることで、企業からの評価が向上することがあります。特に責任ある仕事に取り組む姿勢や目標達成への成果が認められることで、評価が実績として積み重なり、次のポジションや昇給・昇格にもつながるでしょう。また、企業内で培った信頼関係を活かし、キャリアのステップアップや待遇条件に関して交渉する際にも、有利に進められる要素が増えます。こうした点でも管理職にはメリットがあるといえます。
「管理職＝罰ゲーム」のイメージを変えるには
企業が取り組むべき改革とは？
「管理職＝罰ゲーム」というネガティブなイメージを払拭するためには、企業側の積極的な取り組みが求められます。まず、管理職の役割について社員に十分に説明し、その重要性を理解してもらうことが重要です。多くの社員が「管理職になりたくない」と考える背景には、必要なスキルを磨く機会が不足していることがあります。そのため、企業は管理職候補者に対する研修やメンタリング制度を充実させ、ステップアップを安心して目指せる環境を整える必要があります。また、社員の声を反映した働き方改革を実施し、管理職に関する制度を見直すことも重要です。
管理職の負担を軽減する方法
管理職の負担を減らすためには、その業務を効率化する取り組みが必要です。例えば、テクノロジーを活用して業務管理を効率良く行える環境を整備することが挙げられます。具体的には、タスク管理ツールやデジタル化した報告システムを導入することで、管理職自身の業務量を削減できます。また、チームメンバーに役割を適切に振り分ける体制を整えることで、管理職一人に負担が集中しない組織作りが可能となります。さらに、企業全体として「働き方の多様性」を推進し、メンバー全員が主体的に業務に取り組むカルチャーを醸成することも、負担軽減につながります。
公平で透明性のある評価と報酬のシステム
多くの社員が管理職になることに躊躇する理由として、責任の重さに見合った報酬が得られていないという声があります。そのため、企業は報酬制度を見直し、管理職の役割に応じた適切な賃金設定を行うべきです。また、成果に基づいた公平な評価基準を策定し、それを透明性のある形で運用することが不可欠です。社員に対して評価の根拠やプロセスを明確に説明することで、不公平感や不満を減らすことができます。さらに、金銭的な報酬だけでなく、管理職としての業務がキャリア形成におけるメリットにつながることを周知し、意欲を高める仕組みづくりも必要です。
管理職自体の役割や働き方の再定義
現代の企業環境においては、管理職の役割や働き方を再定義することが求められています。従来のトップダウン型のマネジメントではなく、個々のメンバーが自主的に動ける体制を整える「支援型リーダーシップ」の導入がその一つです。また、管理職が長時間労働を前提として働くのではなく、柔軟な働き方を取り入れることで、従業員全体にポジティブな影響を与えることができます。さらに、管理職に特化した役割を細分化し、スペシャリスト的な要素を多く取り入れることで、成長意欲を引き出しやすい環境を整えることも検討すべきです。このように管理職のイメージをアップデートすることが、社員全体の意識改革につながります。
管理職を選ばない選択肢とそのリスク
管理職を拒否する際の正しい対応方法
管理職への昇進を拒否する場合、感情的に断るのではなく、冷静で建設的なアプローチが重要です。まずは企業内で昇進を拒否するガイドラインやルールがあるか確認しましょう。そのうえで、自分の意思や理由を具体的に伝えることが不可欠です。「責任の重さに不安がある」「現在のライフステージでは対応が難しい」といった理由を明確にしつつ、企業への貢献意欲があることを示すと、ポジティブな印象を維持できます。また、将来的なキャリアプランについて考えを共有するのも有効です。
管理職にならないことで生じるキャリアの停滞
管理職を選ばないことで、キャリアの成長が停滞するリスクがあります。多くの企業では管理職がキャリアアップのひとつのステップとされており、昇進を断ることで評価や昇給の機会が減少する可能性があります。また、管理職にならなければ経験できないマネジメントスキルやリーダーシップを習得する機会を失うことにもつながります。こうしたスキルは将来他の企業や業界で武器となるため、中長期的な視点での判断も重要です。
将来を見据えた選択の重要性
管理職を選ばないという決断は、自分自身の価値観やライフプランを重視するうえで重要ですが、将来どのようなキャリアを築きたいのかを長期的に考える必要があります。もし現場での専門スキルを伸ばす道を選ぶ場合、企業内でのポジションや待遇が限られてしまうリスクがあります。一方で、自分の理想の働き方を追求し続けることで、本当に満足できるキャリアを実現することも可能です。目先の安定だけでなく、10年後、20年後を見据えた選択が求められます。
自身のスキルアップや副業の活用
管理職を避けつつキャリアを伸ばすには、自身のスキルアップや副業を活用することが鍵となります。たとえば、職能を磨く研修や資格取得に取り組むことで、市場価値を高めることができます。また、副業を通じて新しい領域に挑戦することで、仕事の幅を広げながら新たな収入源を得ることも可能です。特に近年ではリモートワークやフリーランスといった働き方が増えており、選択肢も多様化しています。管理職を選ばない場合でも、自分の働き方を主体的にデザインすることで、充実したキャリアを築くことができるでしょう。
