コトラ（広報チーム） 
キャリアアップ助成金とは？その概要と目的
キャリアアップ助成金の基本概要
キャリアアップ助成金とは、非正規雇用者がより良い労働環境を得られるよう支援する制度です。具体的には、有期雇用や短時間勤務、派遣労働者として働く方々の正社員化や処遇改善、社会保険の適用拡大を促すための助成を行います。この制度は厚生労働省が運営しており、中小企業を含む事業主に向けて用意されたものです。企業が従業員のキャリア形成をサポートするために、この助成金を活用することによって、非正規雇用者と企業双方にとってメリットを提供します。
非正規雇用者が受けられる支援とは？
キャリアアップ助成金では、非正規雇用者が受けられる多様な支援が用意されています。その中でも代表的なものが「正社員化コース」です。このコースでは、有期雇用や派遣労働から正社員や無期雇用に転換することで、企業が助成金を受け取ることができます。他にも、賃金規定の改定や賞与制度の導入、短時間労働者への労働時間延長の支援など、労働条件の改善を目的とするコースが用意されています。これらは、非正規雇用者の処遇を向上させるとともに、企業のキャリア形成支援の一環として活用されています。
制度の目的：なぜ助成金が必要なのか
キャリアアップ助成金の導入目的の一つは、非正規雇用者の処遇格差の解消です。現在、多くの非正規雇用者は正社員と比較して賃金や福利厚生の面で不利な状況にあります。こうした状況を改善し、すべての労働者が安心して働ける環境を整えるために、助成金が設定されています。また、企業側にとっても、離職率の低下や社員のモチベーション向上、職場の安定化を図る上で、助成金を活用して社員のキャリア形成に貢献することが求められています。この制度は、非正規雇用者が正社員への転換やスキルアップを果たし、個人のキャリアと企業の成長が両立することを目指しています。
キャリアアップ助成金の種類と特徴
正社員化支援コースの詳細
正社員化支援コースは、非正規雇用者である有期雇用や無期雇用、さらには派遣労働者を正社員に転換した企業に対して助成金を支給する制度です。令和7年度からは助成額が改定され、特に重点支援対象者の場合には、有期雇用から正社員への転換に対して最大80万円、無期雇用から正社員には最大40万円が支給されます。重点支援対象外のケースでも、有期雇用からは40万円、無期雇用からは20万円の助成金が支給されます。このコースは非正規雇用者のキャリア向上と就業環境の安定を実現するために不可欠な支援策といえます。
処遇改善コースの活用方法
処遇改善コースは、賃金や福利厚生の面で非正規雇用者の労働条件を改善した事業主に対する助成金制度です。注目すべきは、賃金規定等改定コースや賞与・退職金制度導入コース、さらに社会保険適用時処遇改善コースといった幅広い選択肢があることです。例えば、社会保険適用時処遇改善コースでは2025年の新条件を迎え、年収の壁への対応を目的に要件の見直しや助成額の拡充が行われます。また、賃金規定を他の従業員と共通化する賃金規定等共通化コースも、非正規雇用社員の処遇改善を進めるうえで有効な選択肢となります。
その他の対象コースと条件
キャリアアップ助成金には、正社員化支援コースや処遇改善コース以外にも、多様なコースが用意されています。例えば、障害者正社員化コースでは、障害者を正社員として雇用した企業に対する助成が行われます。また、短時間労働者労働時間延長支援コースが2025年7月1日から新設され、労働時間の延長を支援する形で助成が提供されます。これにより、短時間労働者がより多様な形態で働ける環境が整うことが期待されています。これらのコースを有効に活用することで、雇用者と労働者の双方がキャリアアップの恩恵を享受できるようになります。
キャリアアップ助成金の申請条件と対象者
助成金を受け取れる企業・個人の条件
キャリアアップ助成金は、非正規雇用者の正社員化や処遇改善を目的とした支援制度であり、一定の条件を満たす企業や個人が対象となります。この助成金を受け取るためには、まず雇用保険に加入している事業所であることが必須です。また、事業主はキャリアアップ管理者の任命や、キャリアアップ計画の作成と労働局での認定を行う必要があります。
さらに、助成金の対象となる従業員には、一部の条件が求められることもあります。たとえば、重点支援対象者として認められるためには、雇用されて一定の期間が経過していることや、過去に正規雇用としての期間が短い場合などが該当します。制度の利用には計画的な準備と詳細な記録が欠かせません。
よくある条件変更や注意点
助成金に関連する条件や対象となるコースの内容は、毎年一部変更される傾向があります。そのため、最新情報を確認することが重要です。令和7年度の助成金では、正社員化コースの助成額が増額され、有期雇用から正社員に転換した場合の助成額は、重点支援対象者で80万円（以前は60万円）に引き上げられました。一方、無期雇用から正社員に転換した場合や重点支援対象外のケースでも上限額が変わっています。
また、雇用開始から間もない新規学卒者や、申請ルールに従わないケースでは助成金が受理されないこともあるため、制度の要件を十分理解しておく必要があります。企業が条件を誤って解釈すると申請が却下されるリスクもあるため、キャリアアップ助成金の概要や変更点を随時確認することが求められます。
2025年における新条件や改正点
2025年に向けて、キャリアアップ助成金の制度はさらに改正が予定されています。その一環として、短時間労働者労働時間延長支援コースが新設され、同年7月1日から開始されます。このコースは、短時間労働者の労働時間を延長し、キャリアアップを後押しする狙いがあります。
また、社会保険適用時処遇改善コースにおいては、年収の壁問題に対応するための要件見直しや助成額の拡充が行われ、雇用条件の改善をより一層支援する内容となっています。これらの新たな取り組みは、労働環境の多様化に合わせ、非正規雇用者のキャリア形成を促進することを目的としています。企業は改正内容を早期に理解し、適切な対応をすることで、より効果的な助成金活用が可能となるでしょう。
申請の流れと必要な準備
キャリアアップ計画の作成方法
キャリアアップ助成金を申請するためには、まず「キャリアアップ計画」を作成し、労働局に認定を受ける必要があります。この計画は、企業が非正規雇用者のキャリア形成を支援し、雇用の安定や処遇改善を図るための具体的な取り組みを記載したものです。主なポイントとして、従業員の雇用区分や賃金規定の変更計画、支援対象の詳細などが含まれます。また、計画書にはアクションプランや目標を明確に記載することが重要です。計画の作成にあたっては、事業規模や従業員の状況に応じた現実的な目標を設定することが求められます。
申請に必要な書類リスト
キャリアアップ助成金を申請する際には、以下の書類を準備する必要があります。
- キャリアアップ計画書（労働局認定済みのもの）
- 申請書類一式（労働局指定の様式に基づき記入）
- 対象従業員の雇用契約書および契約更新記録
- 賃金台帳や出勤簿など、労働条件や勤務状況を証明する書類
- 社会保険加入証明書や労働保険の適用状況を示す書類
- 企業の基本情報を示す書類（登記事項証明書など）
その他、コースごとに必要な追加書類がある場合もあるため、申請前に最新のパンフレットやリーフレットを確認することをおすすめします。
申請プロセス成功のためのコツ
キャリアアップ助成金の申請を成功させるためには、いくつかの重要なポイントを押さえる必要があります。まず、申請書類の準備は余裕を持って行い、記載ミスや不備がないよう念入りにチェックすることが大切です。また、労働局との事前の相談を行うことで、制度の概要や最新の条件について正確に理解することができます。
さらに、キャリアアップ計画の認定を受けた後は、計画通りに進めることが求められます。特に、対象者の雇用形態の変更や賃金改定など、助成金の要件に直接関わる部分の取り組みは確実に履行しましょう。最後に、専門家のサポートを活用するのも良い方法です。社労士や助成金コンサルタントに相談することで、効果的な申請手法や不備の防止策を知ることができます。
キャリアアップ助成金を活用した成功事例
中小企業での実例
キャリアアップ助成金は特に中小企業にとって、大きな恩恵をもたらす制度です。たとえば、ある中小製造業では、有期雇用の従業員を正社員化する取り組みを行い、この助成金を活用しました。助成金を受け取ることで、社員教育や資格取得支援に必要な予算を確保し、結果的に従業員のスキル向上を図りました。その結果、業務効率が改善し、顧客満足度も上昇しました。このように、助成金は正社員化を進めるための重要なバックアップとして機能します。
非正規雇用者が得たメリット
キャリアアップ助成金を活用することで、非正規雇用者が得られるメリットも大きいです。例えば、助成金を利用して正社員に転換された従業員は、安定した雇用形態を得られるだけでなく、昇給やボーナスといった待遇改善が実現します。さらに、社会保険が適用されることで、生活の基盤が一層安心なものとなります。一部の事例では、従業員自身がキャリアプランを明確に設定し、長期的な働き方の展望を見つけることができたというケースも報告されています。キャリア形成を支援する制度として、この助成金の重要性はますます高まっています。
他社との差別化に成功した事例
キャリアアップ助成金を活用することで、他社との差別化に成功した事例も少なくありません。あるIT企業では、非正規雇用者を対象に、正社員化に向けたスキル研修プログラムを導入しました。この際、助成金を活用することでコスト負担を軽減できたため、企業としての社会的信頼を向上させる取り組みに繋げました。その結果、社員の離職率が低下し、社内の満足度が向上しました。また、このような取り組みを外部にアピールしたことで、求職者からの応募が増え、人材確保にも役立ちました。この事例からも分かるように、助成金を活用して正社員化や処遇改善を進めることは、企業の競争力を高める有効な手段となっています。
キャリアアップ助成金を活用する際の注意点
申請時のよくあるミス
キャリアアップ助成金を申請する際、思わぬミスにより申請が却下されるケースがあります。特に多いのは、書類不備です。申請に必要な書類が正式な基準を満たしていない場合や、提出期限を過ぎてしまうと、助成金を受け取ることができません。また、キャリアアップ計画の内容も重要です。計画内容が制度の趣旨と合致していなかったり、具体性を欠いたりすると、審査で不利になることがあります。そのほか、雇用保険未加入の事業所や助成金の対象コースの条件を満たしていない労働者で申請してしまうケースも多く見られます。
助成金不正利用のリスクとは？
助成金は事業主や従業員のキャリア形成を支援するための公的資金です。このため、不正利用には非常に厳しい制裁が設けられています。例えば、実際には正社員化していない従業員を正社員化したと虚偽申告したり、賃金規定に変更がないにもかかわらず、制度を利用して助成を受け取る行為は不正に該当します。このような行為が発覚した場合、助成金の返還を求められるだけでなく、行政から罰金や信用失墜といった影響を受ける可能性があります。また、不正利用の実態が公になると、企業イメージの悪化につながり、他企業や顧客との信頼関係にも悪影響を及ぼします。
専門家のサポート活用の必要性
キャリアアップ助成金の申請には、専門的な知識が求められる場合があります。申請に必要な要件や書類の内容が複雑であるため、自社だけで対応しようとすると、多大な時間と労力がかかることがあります。このような負担を軽減するために、助成金申請のサポートを専門とする社会保険労務士やコンサルタントに相談することをおすすめします。専門家は最新情報を把握しており、事前の準備や申請プロセス全般をサポートしてくれるため、申請がスムーズに進められるだけでなく、承認を受ける可能性も高まります。また、専門家のアドバイスにより、企業独自の課題や従業員のキャリア形成に最適な助成金制度の選択もできるようになります。
