取締役の責任免除を徹底解説!知らないと損するポイントとは?

取締役の責任とは?基礎知識を解説

取締役は会社の運営において重要な役割を担っています。そのため、法律上様々な責任を負う立場にあります。このセクションでは、取締役が負う責任の具体的な種類や、会社法に基づく規定、さらにその範囲や影響について基礎知識をわかりやすく解説します。

取締役が負う責任の種類

取締役が負う責任は、大きく分けて「会社に対する責任」と「第三者に対する責任」に分類されます。会社に対する責任には、善管注意義務や忠実義務にもとづいて適切に業務を執行する義務が含まれます。この義務を怠ると、会社に対して損害賠償責任を負うことがあります。一方で、取締役の不適切な行為が株主や取引先などの第三者に損害を与えた場合、第三者に対しても賠償責任を負う可能性があります。

取締役の任務懈怠責任とは

取締役が負う任務懈怠責任とは、会社法第423条1項に規定されている責任を指します。これは、取締役がその義務を果たさず、会社に損害を与えた場合に発生する責任です。たとえば、取締役が経営判断を誤り、本来防げた損害が会社に生じた場合、この任務懈怠責任に基づき、取締役は会社に対して損害賠償義務を負う可能性があります。

会社法における取締役の責任規定

会社法では、取締役の責任についてさまざまな規定が設けられています。その中でも特に重要なものが、取締役の「善管注意義務」と「忠実義務」に関する規定です。善管注意義務とは、取締役が職務を遂行する際に専門家としての注意を払うべき義務を指します。また、会社や株主の利益を最優先に考える忠実義務も課されています。これらの規定は、取締役が適切な業務運営を行うための基本的な枠組みとなっています。

取締役責任の範囲と影響

取締役が負う責任の範囲は非常に広く、会社経営におけるほぼすべての業務が対象となり得ます。そのため、一度問題が発生した場合には、取締役個人に多大な負担がかかることも少なくありません。また、責任が重大化すれば、取締役が自身の財産を持って賠償しなければならないリスクも存在します。このような状況を防ぐため、取締役の責任免除制度が重要な位置を占めています。責任免除制度については後述しますが、取締役としての責任範囲の理解はこの制度を適切に活用するための基礎知識となります。

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取締役責任の免除制度の仕組み

責任免除の法律的根拠

取締役の責任免除は、会社法によって定められた枠組みに基づいて行われます。取締役は、会社に対して善管注意義務や忠実義務を負っており、これを怠った結果、会社に損害を与えた場合には損害賠償責任を問われる可能性があります(会社法第423条1項)。しかしながら、取締役が過失や義務違反により負う責任を一定の範囲内で軽減・免除する制度が設けられています。これにより、取締役が過度に責任を負うことを防ぎ、会社運営が健全に行えるような仕組みが提供されています。

総株主の同意による責任免除とは

取締役に対する損害賠償責任を完全に免除するためには、総株主の同意が必要です。ここで重要なのは、総株主の同意は株主総会での決議を必要とせず、書面または個々の同意を得る形でも有効である点です。会社法第424条では、すべての株主の同意がなければ取締役の損害賠償責任を全面的に免除できないとされています。この制度は、取締役が業務遂行において損害賠償責任を負うことを避けるための最も包括的な方法となります。しかし、違法行為や重大な過失がある場合には、この制度を利用して責任が免除されることはありません。

株主総会決議による一部免除の方法

取締役の責任を全額免除できない場合でも、会社法に基づき株主総会で特別決議を経ることにより、一部免除の手続きを進めることが可能です。株主総会での責任免除は、取締役が善意でかつ重大な過失のない場合に限られます。また、監査役設置会社の場合には監査役の同意も必要です。一部免除の範囲は、会社法で定める限度額に制限されています。例えば、代表取締役の場合、年俸の最大6倍を上限とし、その他の取締役では2倍までが免除可能な範囲となります。このような厳格な条件のもとで責任が軽減されることにより、会社のガバナンスと取締役の職務遂行のバランスが図られています。

責任限定契約との関係について

取締役の責任免除に関連する重要な仕組みが、定款による責任限定契約です。非業務執行取締役や監査役が対象とされ、取締役が善意でかつ無重過失である場合に限り、この契約に基づいて責任を軽減できます。この契約の導入により、取締役が慎重な判断を行いつつも、過度な責任を恐れることなく職務を遂行できる環境が作られます。ただし、この仕組みが適用されるためには、会社の定款に明記されている必要があります。そして、対象外となる会社形態や取締役の行為にも注意が求められます。この制度はあくまで取締役の業務遂行を支援するものであり、故意や重大な過失の責任まで免除されるものではない点を理解しておく必要があります。

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責任免除手続きを進める上での注意点

定款の設定とその重要性

取締役の責任免除を進める上で、定款の設定は非常に重要です。定款に責任免除の規定が明記されていれば、取締役の善意かつ無重過失の場合に限り、一定の条件で責任を一部免除することが可能となります。定款には、「株主総会における特別決議で責任を免除できる」といった規定や、取締役会の決定による責任の一部免除に関する記載を追加することが考えられます。

また、責任限定契約を導入する際にも定款の設定が前提条件となります。このため、会社を運営していく中で想定されるリスクや事例を検討し、必要な規定を事前に定款に組み込んでおくことが取締役の負担を軽減するための効果的な手段となります。

役員のみが利用できる条件

取締役の責任免除制度は、原則として役員のみが利用できるものとされています。具体的には、取締役や監査役、会計参与などが対象となりますが、一般の従業員やその他の関係者には適用されません。また、責任限定契約が締結できる非業務執行取締役などの場合も、善意かつ無重過失であることが前提条件となります。

一方で監査等委員会設置会社や指名委員会等設置会社の場合、この制度の適用範囲に一定の制約が存在します。そのため、役員構成や会社の組織形態を踏まえた上で、具体的な条件の確認が求められます。

手続き段階別に確認すべき事項

取締役の責任免除を進める際、手続きごとに注意すべき確認事項があります。まず、総株主の同意を得て責任を免除する場合は、全ての株主から個別の同意を確実に得る必要があります。この際、適切な形で同意の意思表示がなされているかを記録しておくことが重要です。

また、株主総会での特別決議を要する免除手続きについては、必要な情報――例えば責任の原因や賠償責任額、免除理由など――を事前に開示する義務があります。さらに、監査役設置会社の場合、監査役の同意が条件になるため、事前に監査役との十分な調整が求められます。

定款による取締役会の決議を経た免除の場合は、定款に明記があることが前提であり、善意かつ無重過失であったことを証明できる資料も整えておくことが重要です。これらを怠ると、後に法的な問題に発展する可能性があるため注意が必要です。

違法行為や過失による制限

取締役の責任免除制度には、違法行為や重大な過失に基づく責任については免除できないという制限が存在します。具体的には、取締役が義務を怠った結果、会社に重大な損害を及ぼした場合や、悪意に基づく不正行為を行った場合は、会社法の規定により責任免除の対象外となります。

このような制限が設けられている理由は、取締役が担う善管注意義務および忠実義務を重視し、会社の利益を守るためです。免除が適用される条件として、取締役が無重過失であることが大前提となるため、責任免除を検討する際には、行為の内容や過去の対応状況を入念に確認しておく必要があります。

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取締役責任免除における実務的ポイント

保険(D&O保険)の活用

取締役責任免除を実務で活用する際に有効な手段の一つがD&O保険(取締役・役員賠償責任保険)です。この保険は、取締役が善管注意義務や忠実義務を遂行する中で生じた法律上の責任に対して、補償を提供する制度です。会社法の規定に基づく免除手続きだけではカバーしきれない範囲を補填するため、企業のリスク管理戦略において重要な役割を果たしています。

D&O保険の最大の利点は、取締役個人が負う損害賠償責任や訴訟費用などを保険会社が負担する点です。これにより、取締役の負担軽減を図るだけでなく、適切な経営判断を促進する環境の整備も可能となります。責任免除手続きを補完する意味でも、企業の信頼性向上を目的に導入を検討する企業が増えています。

責任軽減を考慮した経営判断

取締役の責任免除制度は法的な補助的措置ですが、免除によってすべての責任が軽減されるわけではないため、経営判断そのものにおいて責任軽減を意識することが重要です。たとえば、リスクの高い事業を行う際には複数の専門家の助言を受け、善管注意義務や忠実義務を果たしたうえで合理的な意思決定がなされていれば、万が一の損害発生時でも重い責任を問われることを回避できます。

また、定款に責任限定契約を設定し、取締役会での決議を慎重に行うとともに、株主総会決議や監査役の同意を得るなど、法律に従った対応を怠らないことが求められます。このような適切な経営判断と法規遵守は、取締役責任免除を前提とする経営のリスク軽減に寄与します。

実際の裁判例に見る適用事例

取締役責任免除に関する裁判例を検討すると、免除制度の実効性やその限界が具体的に浮き彫りになります。例えば、企業の損害を伴う判断が下された際、取締役自身の善意や無重過失が認められる場合には、責任の一部または全部が免除された場合があります。

一方で、重大な過失が認められたケースや違法性が明確な場合には、免除が適用されない例も存在します。こうした事例は、取締役がどのような行為を慎むべきか、またどのような基準で責任が分配されるべきかを明らかにしており、取締役および企業に対して極めて重要な指針を提供しています。

他企業における成功事例と課題

責任免除制度を活用した企業の成功事例を参照することは、実務において非常に役立ちます。例えば、ある企業では取締役責任の一部免除措置を講じた結果、経営陣がリスクを恐れずに積極的な事業戦略を展開できる環境を実現した事例があります。この場合、D&O保険の適用も併せて行い、法律的なリスク管理と企業の成長とのバランスを取った点が成功要因と言えます。

一方、課題としては、責任免除制度の利用条件や範囲を誤解しているケースや、適用手続きが不十分で後に株主やステークホルダーとのトラブルが発生した事例もあります。そのため、責任免除手続きに関する情報を正しく理解し、法的な基盤に沿った運用を行うことが不可欠です。また、成功事例を参考にするだけでなく、それに潜む潜在的な課題にも目を向けることが重要です。

この記事を書いた人

コトラ(広報チーム)

金融、コンサルのハイクラス層、経営幹部・エグゼクティブ転職支援のコトラ。簡単無料登録で、各業界を熟知したキャリアコンサルタントが非公開求人など多数のハイクラス求人からあなたの最新のポジションを紹介します。