コトラ（広報チーム） 
イントロダクション：サーキュラーエコノミーと自治体の役割
サーキュラーエコノミーとは？
サーキュラーエコノミーとは、資源を無駄にせず、可能な限り長く循環させる経済システムを指します。この概念は、リニアエコノミーと呼ばれる従来の使い捨て型経済の問題を解決するために生まれました。製品や資源を最大限に再活用し、廃棄物を最小限に抑えることを目指しており、地球規模での持続可能な社会構築に寄与します。
日本では、従来から「リデュース（削減）」「リユース（再使用）」「リサイクル（再資源化）」の3Rの考え方が浸透していますが、サーキュラーエコノミーはこれらの枠を超え、製品の設計や消費者行動に至るまで、資源の効率的な利用を考慮する包括的なアプローチを取ります。この新たな概念は、資源需要の拡大や環境負荷の軽減という課題に対処するため、近年注目を集めています。
地方自治体が担う重要な役割
サーキュラーエコノミーを実現する上で、地方自治体の役割は極めて重要です。自治体は地域の課題を最も把握しており、住民や地元事業者、教育機関など多様なステークホルダーとの連携を通じて取り組みを進めることができます。たとえば、自治体が中心となり地域資源を活用したモデルケースを構築することで、持続可能な経済活動を効率的に推進できます。
また、自治体は住民に直接働きかける能力も強みです。ゴミの分別方法に関する啓発や、地域のリサイクルセンターの運営により、地域住民が積極的に資源循環に参加する機会を提供できます。このような取り組みは、自治体ごとの特性を活かした「地域のサーキュラーエコノミー事例」として、日本国内だけでなく世界でも注目されています。
日本の先進的な取り組みの背景
日本の地方自治体が積極的にサーキュラーエコノミーに取り組む背景には、いくつかの要因があります。一つは、限られた国土と資源を有効に活用しなければならないという地理的な制約です。この背景から、日本では古くから資源を無駄なく使う文化が根付いています。さらに、2015年に採択されたSDGs（持続可能な開発目標）の影響も大きく、地方自治体が循環型経済の構築を通じて環境目標達成を目指す動きが加速しています。
例えば、長野県では「フードロス削減」を地域ぐるみで推進し、2024年の取材時にはごみの少なさで連続6年記録を達成していました。また、埼玉県ではリチウムイオン電池のリサイクル実証実験を行うなど、環境負荷を減らしながら経済成長を目指す取り組みが展開されています。これらは自治体が地域の特性を活かしながら構築した先進的な事例であり、国際社会における日本の取り組みの発信力を高めています。
事例紹介①：地方自治体の地域資源を活用した取り組み
横浜市：地域密着型のサーキュラーエコノミーツーリズム
横浜市では、観光とサーキュラーエコノミーを結びつけた革新的な取り組みが注目されています。地域資源を最大限に活用し、観光産業と循環型経済を調和させることを目指しています。具体的には、市内の観光施設や飲食店が提携し、食品廃棄物のリサイクルや地元産食材を使ったメニュー開発を推進しています。また、観光客には循環型経済の重要性を伝えるための体験型ツアーも実施しており、訪れる人々に持続可能な観光モデルを広めています。この取り組みは地域経済の活性化と環境意識の向上を同時に達成する事例として評価されています。
千代田区の食品ロス削減プロジェクト
東京都千代田区は、食品ロス削減の先進事例として国内外から注目を集めています。同区では、飲食店や小売業者と連携し、販売期限切れや余剰在庫となった食品を再活用するプログラムを展開しています。このプロジェクトでは、地域内で回収された食品を福祉施設や地域イベントで提供することで、循環を促進しています。また、区民に対して食品ロス削減の重要性を啓発するワークショップも定期的に開催しています。さらに、デジタル技術を活用して食品廃棄の量を可視化し、事業者や消費者の行動変容を促す仕組みも構築されています。このような多角的なアプローチにより、サーキュラーエコノミーの実現に向けて具体的な成果を挙げています。
白馬村：サーキュラーエコノミーと観光連携のモデル
長野県白馬村では、サーキュラーエコノミーを観光産業と融合させた取り組みを進めています。同村は豊かな自然環境に恵まれた観光地として知られており、この魅力を持続可能な形で活用する新しいモデルを構築しています。たとえば、宿泊施設やレストランでは地元産の食材を使用し、食品廃棄を最小限に抑えるためのプログラムが運用されています。また、村全体で再生可能エネルギーの導入を進める一方で、観光客向けにエコ活動への参加を促す仕組みを設けています。このような事例は、観光資源を守りながら地域経済を発展させる持続可能な方向性を示す一例として、国内外から注目されています。
事例紹介②：高度なリサイクル技術を活用した事業
大崎町：リサイクル率日本一を目指す取り組み
鹿児島県大崎町は、リサイクルへの取り組みで国内外に高い評価を受けている自治体の一つです。この地域では、住民と行政が一体となり、徹底したリサイクル活動を推進しています。その結果、リサイクル率は80％以上と日本一を誇っています。地域住民が何をどのようにリサイクルすべきかを理解するための啓蒙活動や、細やかな分別ルールを設けた運用が成功の鍵となっており、この取り組みは他の自治体へのモデルとして注目されています。また、大崎町の成功事例は、日本全体のサーキュラーエコノミー推進において重要なロールモデルとなっています。
蒲郡市：廃棄物を資源に変える革新的プログラム
愛知県蒲郡市では、サーキュラーシティを目指した取り組みを進めています。この自治体では、廃棄物を新たな資源に変える実証実験プロジェクトを実施中です。例えば、地域の事業者との連携を通じ、廃プラスチックから再生製品を製造する仕組みが構築されています。このプロジェクトには地域の大学や研究機関も参画しており、革新的なリサイクル技術の実用化が進められています。また、プロジェクトの資金面では、上限2000万円の支援を受けられる仕組みも整備されており、官・民・学が一丸となった取り組みが実現しています。こうした取り組みは、サーキュラーエコノミーの事例として国内外で注目されています。
東京都：公民連携によるカーボンニュートラル施策
東京都では、サーキュラーエコノミーを推進するための施策の中でも、公民の連携を重視しています。その一環として、東京サーキュラーエコノミー推進センターが設立され、自治体と企業が協力しながらカーボンニュートラルを目指した事業が進められています。この取り組みにより、事業者向けの補助金制度の導入や、資源循環型の製品開発への支援が行われています。さらに、地域の中小企業が持つリサイクル技術の研究開発を促進し、都全体で環境負荷の低減につながるモデルを構築しています。こうした支援を通じて、サーキュラーエコノミーの普及と都市環境の向上の両立を目指しているのです。
サーキュラーエコノミーを加速させる官民連携の事例
企業と自治体の協力による新たなビジネスモデル
サーキュラーエコノミーを推進する上で、官民連携は欠かせない要素です。企業と自治体が協力することで、地域の課題解決と経済活動の活性化を同時に実現できる新たなビジネスモデルが誕生しています。たとえば、東京都では公民連携を通じて「東京サーキュラーエコノミー推進センター」を設立し、事業者向け補助事業の提供を行っています。このセンターは、企業が資源の再利用やカーボンニュートラル施策に必要な技術・資金を活用できる場を提供し、多様なプロジェクトの実現を支援しています。また、愛知県では地域のプラスチック循環スキームが展開されており、自治体が主体となり地域の事業者や大学と連携して資源を循環させるモデルの構築が行われています。こうした取り組みは、自治体や企業がそれぞれの強みを活かすことで、サーキュラーエコノミーの発展に大きく寄与しています。
教育とサーキュラーエコノミー：未来の人材育成
サーキュラーエコノミーの広がりには、未来を担う人材の育成が欠かせません。自治体が主導する教育プログラムは、住民や事業者への理念浸透だけでなく、次世代のリーダーを育てるための重要な基盤となっています。たとえば、長野県ではフードロス削減の教育活動が地域全体で展開されており、「30・10運動」のように家庭や飲食店レベルでの食品ロス削減を推奨する取り組みが行われています。このような教育活動を通じて、住民が自らの行動が環境改善に繋がるという認識を深めることができます。また、福岡市では「水素リーダー都市プロジェクト」を通じて、サーキュラーエコノミーを支えるエネルギー技術の理解と活用を広める取り組みが進められています。これらは地域住民と世代を超えた持続的な社会づくりを支える基盤となっています。
産官学が連携した循環型経済プロジェクト
サーキュラーエコノミーをさらに加速させるには、産官学の連携が非常に有効です。企業の技術力、自治体のネットワーク力、そして大学などの研究機関の専門知識を結集させることで、革新的なプロジェクトを実現することが可能になります。愛知県では2024年に「サーキュラーシティ移行プロジェクト」が展開され、このプロジェクトには自治体、地域企業、そして大学が一丸となって取り組んでいます。また、埼玉県ではリチウムイオン電池のリサイクル実証実験が行われており、廃棄される電池の再資源化を実現する技術開発に官民学が連携して取り組んでいます。これらの協力関係は、単なる経済活動に留まらず、持続可能な地域社会の構築と新たな循環型経済モデルの発信という側面においても重要な意義を持っています。
日本の自治体が国際社会へ伝えるべきポイント
日本の地域特性を生かした成功事例
日本の各自治体では、地域特性を最大限に活用したサーキュラーエコノミーの取り組みが進んでいます。その中でも、長野県のフードロス削減運動「30・10運動」は、地域の文化や習慣を取り入れた成功例として注目されています。このような地域資源や伝統に基づくアプローチは、自治体ごとの独自性を活かしつつ、自然と地域住民の参加を促す仕組みとなっています。また、埼玉県ではリチウムイオン電池のリサイクル実証実験を行い、環境負荷の低減と経済成長の両立を目指しています。このような科学技術と環境政策を組み合わせた取り組みは、他国でもモデルとして学べるポイントです。
他国に共有する日本のサーキュラーエコノミーの知見
日本では、3R（リデュース、リユース、リサイクル）の概念が広く浸透しており、その実行力は国際的な高評価を受けています。例えば、東京都の「公民連携によるカーボンニュートラル施策」は、複数の事業者や市民を巻き込むことで成果を上げています。このように、自治体が企業や教育機関と連携し、地域全体で資源循環を推進するモデルは、他国でも実践可能な共有知見になります。また、東京都が設立した「東京サーキュラーエコノミー推進センター」のような具体的な支援組織を設立し、体系的に取り組む姿勢も学ぶべき事例といえるでしょう。
次世代の循環型社会へのチャレンジ
次世代の循環型社会を実現するためには、現在の取り組みをさらに進化させる必要があります。特に、福岡市が進める「水素リーダー都市プロジェクト」は、再生可能エネルギーの活用を軸に新しいエネルギー循環を模索しており、未来志向の事例です。さらに、愛知県ではプラスチック循環スキームを確立し、プロジェクトチームが地域事業者や大学と連携して具体的な実証実験を行っています。このような革新的なアプローチが、将来的には他国への技術の輸出や国際的な協力に繋がる可能性を秘めています。各自治体が目指す「地域特性を活かした循環型経済の構築」は、SDGsの目標達成とも深く関わっており、国際社会にとっても重要な課題です。
