議決権って何?取締役会で押さえておきたい決議のルールと手続き

議決権の基本とは?

議決権とは何か

議決権とは、特定の意思決定に参加し、自らの意見を反映させるための権利を指します。一般的には、企業の意思決定機関である取締役会や株主総会などの場で行使される権利です。特に取締役会では、会社の重要な方針や施策を決定する場面で議決権が行使され、取締役個々の判断が会社全体の決定に寄与する重要な役割を担います。

議決権が行使される場面

議決権は、会社の重要な事項や方針を決定する場面で行使されます。取締役会においては、例えば代表取締役の選定、重要な財産の処分や多額の借入決定などの議題を審議する際に議決権が用いられます。また、取締役会以外の場面でも、株主総会における取締役の選任や解任など、株主の意思表示として議決権が行使されます。議決権は、これらの場で最終的な意思決定を下すための手段として重要です。

議決権が果たす役割と影響力

議決権は、会社の意思決定に大きな影響を与える重要な権利です。特に取締役会では、取締役全員が意思決定プロセスに関わることで、会社の経営や業務執行に関する透明性と合議性を確保します。さらに、議決権を通じて取締役は会社の方向性に責任を持つことになり、個々の取締役の判断が会社全体に与える影響は非常に大きいと言えます。また、適切に行使される議決権は、法令の遵守と内部統制の確保に寄与する点でも重要です。

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取締役会における議決権のルール

取締役会の概要と議決権の位置づけ

取締役会は、会社の業務執行や取締役の職務執行の監督、代表取締役の選任・解職など、会社法で定められた重要な意思決定を行う場です。取締役全員で構成されるこの機関は、会社の方向性を定めるとともに企業活動を適切に運営する上で欠かすことのできない役割を担っています。

取締役会での意思決定を支えるのが取締役の議決権です。この議決権は、取締役会の構成員である取締役に与えられ、各取締役が会社の意思決定に直接関与できる権利です。取締役は議決権を行使することで、重要な経営判断に参加し、会社の発展や透明性の確保に貢献します。

定足数と決議要件の関係

取締役会が有効に開催されるためには、定足数と決議要件を満たす必要があります。会社法では、取締役会を構成する取締役の過半数が出席することが定足数として求められています。これにより、一定数以上の取締役が意思決定に関与できる体制が確保されます。

また、取締役会での決議が成立するためには、出席した取締役の過半数の賛成が必要です(会社法369条1項)。たとえば、4名の取締役が出席している場合、少なくとも3名が賛成することで決議が成立します。このように、定足数と決議要件は、取締役会の意思決定に十分な議論と合意を確保するための重要なルールといえます。

特別利害関係人と議決権制限のポイント

取締役の中には、特定の議題に直接的な利害関係を持つ者が存在する場合があります。このような特別利害関係人である取締役は、当該議題に関する議決権を行使することが制限されます(会社法369条2項)。利害関係者が関与してしまうと、意思決定の公平性や透明性が損なわれる恐れがあるため、この規定が設けられています。

特別利害関係人の存在により、定足数の計算からその取締役が除外されることも特徴的です。たとえば、ある取締役が利益相反に該当する取引案件に関する議決に参加できない場合、その取締役を除いた取締役の数を基準に定足数が計算されます。このように、特別利害関係人に関するルールは、公正な意思決定プロセスを確保するための重要な仕組みとなっています。

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取締役会での決議事項と手続き

主な決議事項とその分類

取締役会では会社法362条や関連法令に基づき、会社の重要な意思決定を行います。具体的には、「会社の業務執行の決定」「取締役の職務執行の監督」「代表取締役の選任及び解職」などが挙げられ、これらは会社の運営を円滑に進めるうえで極めて重要です。また、重要な財産の処分・譲受など大きな影響を及ぼす行為や、多額の借入、内部統制システムの構築といった事項も、取締役会での決議が必要とされる場面です。

主な決議事項は大きく分類すると、「経営上の重要事項の決定」「内部統制や運営の整備に関する内容」「定款や法令上求められる特定の手続き」の3種類に分けられます。これらの決議事項を適切に分類し、それぞれに応じたプロセスを踏むことが、取締役会での円滑な意思決定に不可欠です。

取締役会における議事進行の流れ

取締役会の議事進行は一定の流れに基づいて進められるのが一般的です。議事進行の基本的なプロセスは、以下の手順で行われます。

まず、取締役または招集権を有する者が取締役会を招集します。会議が開始された後は、定足数、つまり会議が有効に成立するための出席の要件が満たされていることを確認します。その次に、議長が案件を提示し、取締役らがこれに基づいて議論を行います。そして、必要に応じて議決権を行使し、多数決の原則に基づいて決議されます。

議事進行をスムーズに進めるためには、事前に決議事項の内容を明確化し、関係する書類や資料を準備しておくことが重要です。また、特に重要な議案については、関係者への周知や事前説明を十分に行うことが求められます。

必要な書面と議事録の作成ポイント

取締役会の決議において、議事録の作成は法令上の要件として非常に重要です。議事録には、会議の日時、場所、出席した取締役・監査役の氏名、議決事項や議決の結果などを記載する必要があります。これは後日、法的証拠としても使用されることがあるため、不備のない内容とすることが求められます。

議事録の作成においては、会議終了後ただちに記録を作成し、出席した取締役及び監査役の署名または記名押印を取得することが基本です。また、議事録には議案に関する具体的な内容や、特別利害関係人の有無、取締役それぞれの意見が分かるように記載するのが望ましいとされています。

さらに、書面決議や持回り決議が行われた場合でも、法務省令に従い、適切な記録を保持することが求められます。これらの手続きや記録を正確に行うことが、取締役会の透明性や適法性の確保につながるのです。

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議決権行使に関連する特別な制度や事例

書面決議やみなし決議の概要

取締役会における議決権の行使には、通常の会議形式での決議だけではなく、書面決議やみなし決議といった特別な手続きが存在します。これらの制度は、取締役が一堂に会する時間や場所の制約を解消し、効率的な意思決定を図るために活用されます。

書面決議とは、取締役全員が書面または電子的手段を通じて同意することで、会議を開かずに決議を成立させる方法です。この制度は会社法第370条で認められており、全取締役の合意が前提となります。一方で、みなし決議では、会議を開かなくても取締役全員が特定の議案に賛成することを条件に、正式な決議とみなす制度です。ただしこれらの手続きは、通常の取締役会の決議と異なり、迅速さと引き換えに全員一致が必要な点が特徴です。

これらの制度を利用するためには、定款での規定が必要であり、具体的なプロセスや記録方法が定められていることが重要です。適切に運用することで、会社の業務執行がスムーズに進むため、特に緊急性を伴う案件で有効といえます。

監査役の役割と議決権の実務的な考え方

取締役会の議決権について議論する際には、監査役の役割も見逃せません。監査役は、その名の通り会社の業務執行や取締役の職務遂行を監査する役割を担います。ただし、一般的な取締役とは異なり、監査役自体は議決権を持っていません。

監査役は議決そのものに直接参加することはできませんが、議決が適正に行われているかを確認し、必要であれば意見を述べることで、取締役会の監視機能を支える重要な存在です。また、特定の議案が監査役にとって利害関係がある場合であっても、議決に影響を及ぼさない立場を維持することで、取締役会の公平性と中立性が確保されます。

監査役の役割を的確に理解することで、取締役会における議決権の行使がさらに円滑になり、法令に基づいた適正な意思決定が期待されます。

株主総会との違いと補完的な関係

取締役会における議決権と株主総会における議決権には、役割や対象範囲といった点で明確な違いがあります。取締役会は会社の業務執行に関する重要な意思決定を担い、取締役が業務遂行の具体的な内容を管理・監督する場です。一方で、株主総会は会社の最高意思決定機関として、会社全体の方針を決定する場となります。

例えば、取締役の選任や解任は株主総会で議決されますが、取締役会ではその取締役が実際にどのように会社の業務を運営するかという部分で意思決定を行います。また、株主総会で定められた方針に基づき、取締役会はその執行を担います。このように、両者は補完的な関係にあり、会社全体の運営には欠かせない存在として機能しています。

また、株主総会では株主が直接議決権を行使するのに対し、取締役会では取締役がそれぞれの議決権を行使します。この点も大きな違いとなり、会社の規模や業務の複雑さに応じてこれらの組織が適切に機能することが求められます。

この記事を書いた人

コトラ(広報チーム)

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