WEPって何?初心者でもわかるWi-Fi暗号化プロトコル解説

WEPの基本概要

WEPの意味と歴史

WEPとは「Wired Equivalent Privacy」の略で、無線通信において有線通信と同等のセキュリティを提供することを目的とした暗号化方式です。WEPは1997年に規格化され、1999年に正式にIEEE 802.11の一部として承認されました。当時、Wi-Fiの普及が進む中、無線通信が持つセキュリティ上のリスクを補うために作られたプロトコルです。このプロトコルでは、40ビットまたは128ビットの暗号化キーを使用して通信データを保護する仕組みが採用されました。しかし、その後、脆弱性が見つかり、現在ではWEPの利用は推奨されていません。

WEPの開発背景

WEPは、無線通信が用いられる際のセキュリティを向上させるために開発されました。無線通信は、その特性上、電波が広範囲に届くため、傍受や不正アクセスのリスクが高いという課題がありました。そのため、有線通信と同様に安全な通信路を構築する必要性がありました。WEPは、この課題に対応するために、一意の暗号化キーを使用してデータを保護する仕組みを取り入れることで、無線通信のプライバシーを強化することを目指しました。

有線通信との違い

有線通信は、物理的なケーブルによってデータが送受信されるため、外部からの不正アクセスのリスクが比較的低いです。一方、無線通信は電波を使用してデータを伝送するため、建物の壁や仕切りを越えて通信が行われることが多く、その範囲内にいればデータを傍受することが可能です。このため、無線通信では有線通信と同等のセキュリティを実現するための仕組みが必要となり、WEPがその役割を担う初期のプロトコルとして登場しました。

Wi-Fi暗号化におけるWEPの役割

WEPは、Wi-Fi暗号化技術の黎明期において重要な役割を果たしました。無線LANで送受信されるデータを暗号化し、外部からの不正な傍受を防ぐことを目的としています。また、WEPキーという暗号化キーを使うことで、アクセスポイントと接続端末の間の通信を保護する仕組みを提供しました。このように、Wi-Fi通信を普及させる上で、WEPはセキュリティ面での信頼感を構築するための基盤を提供してきました。

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WEPの仕組みと特徴

暗号化方式の概要

WEP(Wired Equivalent Privacy)は、無線LANのデータ通信を保護するために設計された暗号化方式です。具体的には、RC4と呼ばれるストリーム暗号アルゴリズムを使用してデータを暗号化します。この仕組みにより、無線通信が盗聴されても内容が分からないようにすることを目的としています。当初の導入目的は、有線通信と同等のセキュリティを提供することでした。

WEPの暗号化アルゴリズムでは、送信されるデータは専用の暗号化キーを使用して暗号化され、相手側が同じキーを使用してデータを復号化します。これにより、通信相手以外がデータの中身を読み取ることを防ぐ仕組みになっています。

WEPキーとは?

WEPキーとは、データを暗号化および復号化するために使用される秘密鍵です。通信を行うすべてのデバイスは、このWEPキーを共有することで、暗号化されたデータを正しく解読できる仕組みとなっています。具体的には、キーの長さとして40ビットまたは128ビットが用意されており、これらのキーはユーザーがWi-Fi設定時に入力する必要があります。

40ビットキーは5文字の英数字で構成され、128ビットキーは13文字で構成されるのが一般的です。一見すると強力なセキュリティを提供するように思われますが、現在ではWEPキーには脆弱性が多いことが指摘されています。そのため、現代のセキュリティ基準では使用が推奨されていません。

データ暗号化と復号化の流れ

WEPのデータ暗号化と復号化のプロセスは、比較的シンプルな仕組みに基づいています。まず、送信側ではデータを送信する前に、RC4アルゴリズムを使用してWEPキーをもとにデータを暗号化します。この際、IV(Initialization Vector)と呼ばれる初期化ベクトルがランダムに生成され、WEPキーと共に暗号化に使用されます。

暗号化されたデータは、通信相手である受信側に送られます。受信側では、WEPキーとIVを使用してデータを復号化します。このプロセスにより、送信者と受信者の間でデータが安全にやり取りできる仕組みになっています。ただし、この暗号化プロセスには脆弱性があり、特定の方法を使用すれば第三者が容易にキーを解読できることが知られています。

40bitと128bitの違い

WEPでは40ビットと128ビットの2種類のキー長が存在します。この違いは、主に暗号化の強度に影響を与える部分です。40ビットキーは5文字の英数字で構成され、128ビットキーは13文字の英数字で構成されます。理論上、128ビットキーの方が暗号化を解読するのに必要な時間と手間が増えるため、より安全だとされています。

しかしながら、どちらの場合でもセキュリティ上の課題が顕著で、今日では攻撃者によってすぐに破られる可能性が高いことが判明しています。特に、WEPで使用されるRC4アルゴリズムとIVの再利用に関する脆弱性が、キーの長さにかかわらず全体的なセキュリティを損なっています。そのため、現代のWi-Fiセキュリティ対策としては、WEPそのものの利用が推奨されていない状態です。

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WEPの脆弱性と課題

共有鍵の課題

WEPは通信を暗号化する際に、すべてのデバイスが同じ共有鍵を使用するという仕組みを採用しています。しかし、この設計には大きな問題があります。ひとたび共有鍵が第三者によって取得されると、その鍵を使って全ての通信内容を解読できてしまうのです。また、共有鍵の変更が容易でないため、一度でも鍵が漏洩するとセキュリティが完全に破られる危険性があります。この課題が、WEPの脆弱性の一因となっています。

容易に破られる理由

WEPが容易に破られる理由として、暗号化アルゴリズムRC4の使用方法に問題があることが挙げられます。RC4は強力な暗号化アルゴリズムですが、WEPの設計上、同じ初期化ベクトル(IV)が頻繁に繰り返し利用されます。この初期化ベクトルの使い回しにより、暗号パターンが解析されやすくなり、極めて短時間で鍵が解読されてしまいます。また、WEPキー自体の長さ(40bitや128bit)も攻撃者にとって秘密を解読する際の負担を増幅させるほど十分ではありません。

セキュリティホールの概要

WEPには暗号化だけでなく、データ改ざんを防ぐ仕組みにも大きな欠陥が存在しています。本来、通信の整合性を保つためには、改ざん検知の仕組みが不可欠ですが、WEPでは「CRC-32」というチェックサム手法のみに頼っています。これは暗号化とは独立した技術であるため、悪意のある第三者が簡単にデータを改ざんし、それが検出されない状況を作り出すことが可能です。その結果、改ざんや盗聴といった攻撃のリスクを防ぐことが難しくなります。

実際に使われた攻撃手法

WEPの脆弱性を利用した攻撃手法として、「パケットスニッフィング」と「リプレイ攻撃」が代表的です。パケットスニッフィングでは、攻撃者がWEP通信を傍受して大量のデータを収集し、暗号パターンを解析することで鍵を特定します。一方、リプレイ攻撃では、過去に送受信された特定の暗号化パケットを再送することで、通信の整合性を崩したり、不正アクセスの機会を作り出したりします。また、「Aircrack-ng」などの専用ツールを利用すれば、これらの攻撃は初心者でも容易に実行可能であり、実際に多くの被害が報告されています。

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WEPを改善する替わりのプロトコル

WPAとWPA2の登場

WEPの脆弱性を補うため、2003年に新たなセキュリティプロトコルとしてWPA(Wi-Fi Protected Access)が導入されました。WPAは、WEPの共有鍵方式の課題を克服し、TKIP(Temporal Key Integrity Protocol)という仕組みを採用したことで、鍵の動的生成とパケットごとの暗号化を実現しました。しかし、WPAも完全ではなく、セキュリティリスクは依然として存在していました。その後、2004年に登場したWPA2は、より強固なセキュリティを提供し、AES(Advanced Encryption Standard)を採用したことで暗号化の安全性をさらに向上させています。このAESの強化により、WPA2は現在、広く使用される標準的なセキュリティプロトコルとなっています。

TKIPとAESの違い

TKIPとAESは、それぞれ異なる暗号化技術を採用しています。TKIPは、当時のハードウェアをそのまま活用しながらWEPの欠点を改善するために設計されました。一方で、AESは暗号化アルゴリズムそのものが大幅に改良されており、現在のセキュリティ要件を満たすために開発された方式です。AESは、より強固な暗号化手法を提供し、クラッキングが困難な点が大きな特徴です。結果として、WPA2においてもTKIPよりAESが推奨され、最新のWi-Fi対応機器ではほとんどAESが採用されています。

WPA3とは?現代のセキュリティ標準

WPA3は2018年に発表された最新世代のWi-Fiセキュリティプロトコルで、現代のセキュリティ要求を満たすために設計されています。WPA3では、パスワードの強化、公開ネットワークでのプライバシー保護、さらに前方秘匿性(Forward Secrecy)と呼ばれる機能により、過去のデータを復号されにくくする仕組みを提供しています。また、AESに基づくより高度な暗号化方式であるCNSA(Commercial National Security Algorithm Suite)を一部採用することで、セキュリティを一層強化しています。これにより、WPA3は家庭用だけでなく、業務用のネットワークにも最適とされています。

これからのWi-Fiのセキュリティ展望

これからのWi-Fiのセキュリティは、WPA3を標準としながらさらに進化することが求められています。IoT機器の増加や公衆Wi-Fiの普及により、セキュリティの重要性はますます高まっています。具体的には、より効率的で軽量な暗号化技術の開発や、AIを活用したリアルタイムの脅威検知システムが検討されています。また、パスワードを不要とする新しい認証方式、例えば生体認証技術や物理セキュリティトークンの導入も注目されています。Wi-Fiセキュリティの未来は、ユーザーがシンプルに利用できるだけでなく、背後で高度なセキュリティが働く仕組みを目指して進化していくでしょう。

この記事を書いた人

コトラ(広報チーム)

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