情報セキュリティ10大脅威2025とは?
情報セキュリティ10大脅威の概要と意義
情報セキュリティ10大脅威は、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が毎年選出・公表するもので、情報セキュリティに関する重大なリスクを整理し、解説したものです。これにより、個人や組織が直面するセキュリティリスクを正確に把握し、適切な対策を講じるための指針を提供しています。
10大脅威は、日々進化するサイバー空間におけるリスクを反映しており、ランサムウェアや標的型攻撃などの具体例を挙げ、社会的な被害と対策の必要性を強調しています。このリストは、セキュリティ意識を高めるための重要な手段となっています。
2025年版の脅威選考基準の変更点
2025年版では、これまでの選考基準に加え、AIの進展やクラウドサービスの普及といった最新の技術トレンドが反映されています。例えば、従来は個々の攻撃手法に注目が集まりましたが、2025年版ではサプライチェーン全体のセキュリティといった複合的な脅威が注視されています。
選考には情報セキュリティ分野の専門家約120名が関与し、特に影響の大きかった事例や新たなセキュリティ課題に基づいて審議・投票が行われています。このように選定プロセスが進化することで、より現実に即した脅威リストの作成が実現しています。
個人編と組織編における脅威ランキングの違い
情報セキュリティ10大脅威は「個人編」と「組織編」の2つに分かれています。個人編では、クレジットカード情報の不正利用やフィッシング詐欺が依然として上位にランクインしており、日常的に利用するサービスが狙われやすい傾向が見られます。
一方、組織編では、ランサムウェア攻撃や標的型攻撃が上位を占めています。これらは組織の業務停止や情報流出を引き起こし、経済的・社会的な影響が甚大であるため、大きな脅威として位置付けられています。このランキングの違いは、個人と組織が直面するリスクの方向性を理解する上で重要です。
過去の脅威ランキングとの比較と傾向
過去の脅威ランキングと比較すると、外部からの攻撃が増加し、より高度化している傾向が見られます。2019年版ではフィッシング詐欺やランサムウェアが注目されましたが、2025年版ではAIを悪用した攻撃やクラウドサービスの脆弱性を狙う手法といった新しいリスクが浮上しています。
また、テレワーク関連の脅威が一時期大きく注目されましたが、現在ではリモートワーク環境の普及に伴い、そのランキングが低下しています。これらの変化は技術の進化や社会情勢の影響を反映しており、情報セキュリティの動向を的確に捉えるための材料となります。
最新の10大脅威を詳しく解説
ランサムウェア攻撃の進化とその影響
ランサムウェア攻撃は、データを暗号化して身代金を要求する不正プログラムによる攻撃であり、2025年における主要な情報セキュリティ脅威のひとつです。近年、攻撃者は公表型ランサムウェアという新しい手法を採用し、データを暗号化するだけでなく、被害者の情報をインターネット上に公開すると脅迫するケースが増えています。これは組織に対する名誉毀損や信頼性低下を狙った戦術であり、金銭的損害を超えた深刻な影響をもたらします。このような脅威に対抗するためには、定期的なバックアップの実施やランサムウェア対策ソフトの導入、従業員へのセキュリティ教育が不可欠です。
サプライチェーン攻撃のリスクと実例
2025年に向けて増加が予測されるもう一つのセキュリティ脅威が、サプライチェーン攻撃です。これは、企業が依存する第三者ベンダーや供給業者のシステムを標的とする攻撃手法です。具体的には、正規ソフトウェアの更新を悪用してマルウェアを広めるケースや、取引先のネットワークを足掛かりにして企業の重要情報にアクセスする攻撃があります。これにより、自社だけでなく関連する複数の組織や業界全体に重大な影響を及ぼす可能性があります。サプライチェーン攻撃を抑えるためには、取引先のセキュリティプロトコルを確認し、契約時の要件としてセキュリティ基準を設定することが重要とされています。
ソーシャルエンジニアリング攻撃の増加
ソーシャルエンジニアリング攻撃は、心理的な操作を用いて人から情報を引き出す手法で、2025年も情報セキュリティ上の脅威として注目されています。特に、なりすましメールやフィッシング詐欺が依然として一般的です。たとえば、取引先や経営層になりすまして送信されたメールを信じ、従業員が不正送金を実行してしまうケースがあります。BEC(ビジネスメール詐欺)もこれに含まれ、企業内での対策が急務となっています。これに対応するためには、メールの送信元を慎重に確認する習慣をつけること、従業員への教育強化を行うことが重要です。また、フィッシング攻撃を検知するための技術的な対策も求められます。
クラウドサービスの脆弱性を狙う攻撃
近年、クラウドサービスの利用が急速に広まる中、クラウド環境を狙った攻撃も増加しています。これには、不正アクセスや設定ミスを悪用してデータを窃取するケースが含まれます。クラウドサービスは便利である反面、セキュリティ監視の範囲が広がるため、脅威となる部分も数多く存在します。たとえば、アクセス権限管理の不備や、共有設定のミスが攻撃者に悪用されるケースが報告されています。この脅威に対応するには、多要素認証を利用することや、クラウドプロバイダーが提供するセキュリティオプションを十分に活用することが効果的です。
AI悪用による高度なサイバー脅威の兆候
AI技術の進化によって、攻撃者もこれを悪用した進化したサイバー脅威を仕掛けるようになっています。例えば、自動化されたフィッシングメールの生成や、ディープフェイクを用いた信頼性の高い詐欺行為が増えています。また、AIを用いてネットワークの脆弱性を自動的に検出し、迅速に攻撃を実行する手法も現れています。このような高度な脅威に対抗するには、セキュリティ技術にもAIを活用し、脅威をプロアクティブに検知・防御する仕組みを構築することが求められます。また、最新技術の学習や研究を進め、攻撃手法に先んじる努力も重要です。
10大脅威への対策の基本
セキュリティ教育と意識向上の重要性
情報セキュリティの世界では、人が持つ「意識」が重要なファクターとなります。多くのサイバー攻撃は、ランサムウェアやビジネスメール詐欺(BEC)といった、人的行動を狙った手法を活用しています。そのため、個人の警戒意識を高め、組織全体でセキュリティ意識を統一する教育プログラムの実施が非常に重要です。
たとえば、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)は定期的に情報セキュリティ脅威についての啓発資料を公開し、最新情報を共有しています。このような資料を活用することで、実際の攻撃事例を学び、脅威に対する理解を深めることが可能です。また、定例的なセキュリティ研修を組み込むことで、従業員一人ひとりが脅威に対処する知識とスキルを身につけることができます。
最新技術を活用した防御対策
サイバー脅威の高度化に対応するためには、最新技術を取り入れた防御対策が欠かせません。特にAI(人工知能)を活用したセキュリティソリューションは、脅威の早期検知・防御において注目されています。AIは膨大なデータを分析し、異常な挙動を迅速に察知することが可能です。たとえば、不正侵入検知システム(IDS)や次世代型ファイアウォール(NGFW)がその一例です。
また、標的型攻撃やランサムウェアなどの脅威に備えるために、エンドポイントセキュリティや多層防御システムの導入も有効です。これにより、企業全体でセキュリティ体制を強化し、攻撃の進入を多段階で阻止することが可能になります。
インシデントの早期検知と対応プロセス
インシデント発生時の初動対応は、被害規模を最小限に抑えるうえで極めて重要です。そのため、セキュリティインシデントを迅速に検知するためのモニタリングシステムの構築が求められます。侵入検知システム(IDS)やセキュリティ情報およびイベント管理(SIEM)ツールは、リアルタイムでネットワークやシステムの異常を通知するために役立つ技術です。
加えて、対応プロセスを事前に明確化し、インシデント対応チーム(CSIRT)の整備や定期的なテストを行うことも重要です。これにより、脅威が現実化したときにも迅速かつ正確な対応が可能になります。
脆弱性診断と継続的なセキュリティ評価
情報資産を守る上で、組織が抱えるシステムやネットワークの脆弱性を定期的に診断することは必須です。脆弱性スキャンツールを活用することで、潜む弱点を特定し、それぞれの箇所を適切に強化することが可能です。また、セキュリティパッチの適用やシステムアップデートを継続的に行うことも、脅威に対抗する上で基本となります。
さらに、外部のセキュリティ専門家によるペネトレーションテストの実施や第三者機関による評価を受けることで、従来見落としていたリスクを洗い出し、継続的にセキュリティ対策を最新化していくことができます。
今後のセキュリティ動向と展望
2025年以降に予測される新たな脅威
IT技術の発展に伴い、情報セキュリティを取り巻く環境はますます複雑化しています。2025年以降には、特にAI技術のさらに高度な悪用や、量子コンピュータの進化に伴う暗号技術への危機が予測されています。また、スマートホームや自律車両といったIoT(モノのインターネット)の普及により、物理的なシステムにおけるセキュリティ脅威が新たに顕在化すると考えられています。これらは従来の防御モデルでは対応しきれないため、新しい対策が求められるでしょう。
サイバー攻撃における国家間リスクの高まり
サイバー攻撃は個人や企業だけではなく、国家間における安全保障問題としても注目されています。近年では特定の国家や国家支援を受けた攻撃者による標的型攻撃が増加しており、その規模や影響は年々拡大傾向にあります。例えば、重要インフラへの攻撃によって社会全体の機能に支障をきたすケースが考えられます。こうした国家レベルの脅威は、高度な脆弱性診断やグローバルな防御体制の構築など、広範な対策が必須になるでしょう。
ゼロトラストモデルの進展とその意義
ゼロトラストモデルは、デバイスやユーザーに対して一切の信頼を置かず、常に確認と監視を続けるセキュリティアプローチです。このモデルは、クラウド利用の増加やリモートワークの普及が進む中で、リスクを最小限に抑えるための有効な手段として注目されています。2025年においても、ゼロトラストモデルはますます重要性を増し、新たなセキュリティインフラの基盤として広く採用されることが期待されます。
セキュリティ人材不足への取り組み事例
情報セキュリティを担う人材の確保は、脅威に対する最前線の対策として非常に重要です。しかし、セキュリティ分野の専門家の不足は多くの組織で共通課題となっています。そのため、資格取得支援や専門知識の教育プログラム提供などの取り組みが加速しています。また、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が推進する研修プログラムや、産学官連携の施策が注目を集めています。これらの動きは、未来の脅威に対応できる体制作りに大きく貢献すると期待されています。