2024年セキュリティインシデント完全まとめ:企業が直面するリスクと対策

1. 2024年のセキュリティインシデントの全体像

2024年のセキュリティインシデント件数と主要業種への影響

2024年に公表されたセキュリティインシデントの件数は121件にのぼり、約3日に1件の割合で発生している計算になります。業界別では、製造業が全体の約4分の1を占めており、最も影響を受けた業種となっています。卸・小売業も高い割合で個人情報漏洩の件数が報告されており、企業の規模や業種を問わずセキュリティリスクへの対応が急務であることが明白です。

主なセキュリティインシデントの種類と発生傾向

2024年において最も多かったセキュリティインシデントの種類は不正アクセスでした。これに加えて、人為的ミスやランサムウェア攻撃も発生件数の多い原因として挙げられます。また、過去と比較してランサムウェア攻撃のようなターゲット型攻撃が増加しており、特定の企業や組織が狙われやすくなる傾向が顕著です。これらのインシデントは、業務停止や重要データの損失といった深刻な被害を引き起こすケースが増えています。

インシデントの背景にある要因と新たな脅威

セキュリティインシデントの主な背景として挙げられるのは、サイバー攻撃の高度化と複雑化です。特にゼロデイ攻撃や高度持続的脅威(APT)のような従来型の対策では防ぎきれない攻撃手法が増えている点が注目されています。また、ユーザビリティ向上を目的としたシステム簡素化の流れがセキュリティの隙間を生むことも一因と考えられます。さらに、ダークネット観測データでもサイバー攻撃関連通信が過去最多を記録しており、国内外を問わず新たな脅威に対応しなければならない時代に突入しています。

被害の広がり:個人情報漏洩と重要データの盗難

2024年には約2,164万件の個人情報漏洩が報告されており、その多くが卸・小売業で発生しています。一部の事例では、ランサムウェア攻撃による顧客データの漏洩や複数のサーバへのアクセス障害が問題となりました。また、インシデントに伴う重要な企業データの盗難も後を絶たず、KADOKAWAグループの事例では復旧に2か月以上を要するなど、事業継続にも大きな影響を及ぼしています。個人情報漏洩やデータ盗難は企業の信頼を大きく揺るがすだけでなく、関連法規への対応や賠償請求など二次的なコストの発生にも繋がることから、早急な対応が求められています。

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2. 主なセキュリティインシデント事例

国内で報告された大規模な不正アクセス事件

2024年には、国内で大規模な不正アクセス事件が複数報告されています。不正アクセスは、セキュリティインシデントの中でも頻度が高く、2024年1年間で公表された157件のインシデントの中でも最多件数を占めます。特に、製造業が標的となるケースが多く、全インシデントの約1/4に関与しています。不正アクセスの背景には、弱いパスワード設定や認証情報の漏洩があり、その多くはフィッシング攻撃によるものとされています。

ランサムウェア攻撃による企業停止事例

2024年にはランサムウェア攻撃がさらに進化し、多くの企業が深刻な被害を受けました。特筆すべき事例として、KADOKAWAグループのサーバーへの攻撃があります。この攻撃により、254,241人分の個人情報が漏洩し、復旧には2か月以上の時間を要しました。このような攻撃では、通常業務が一時停止に追い込まれるだけでなく、企業の信頼も大きく損なわれます。ランサムウェア攻撃の背景には、フィッシングメールを利用した認証情報の窃取が多く指摘されており、従業員の情報リテラシー向上の重要性が再認識されています。

サプライチェーンへの攻撃とその波及効果

2024年にはサプライチェーンを狙った攻撃も目立ちました。このタイプのセキュリティインシデントは、単一企業だけでなく、取引先や関連企業に波及するため、被害範囲が広範囲に及ぶのが特徴です。例えば、あるIT企業を経由して取引先のネットワークに不正アクセスが行われたケースでは、複数企業の機密情報が漏洩する重大な事態となりました。このような攻撃に対しては、取引先を含むセキュリティ体制の強化が急務とされています。

スマートデバイスやIoTに関連した新たな脅威

IoTデバイスやスマートデバイスが普及する中で、これらを標的としたセキュリティインシデントが増加しています。2024年には、脆弱性を突かれたIoTデバイスが乗っ取られ、大規模なDDoS攻撃に悪用されるケースが報告されています。こうした脅威への対策には、デバイスのセキュリティアップデートを適切に行うことや、ルータなどのネットワーク機器のセキュリティ設定を強化することが必要です。

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3. インシデントを引き起こす主要な要因

システムやソフトウェアの脆弱性の悪用

2024年におけるセキュリティインシデントの事例として、システムやソフトウェアの脆弱性を悪用した攻撃が引き続き多数報告されています。株式会社サイバーセキュリティクラウドによる「企業のセキュリティインシデントに関する調査レポート2024」によれば、脆弱性を標的とした不正アクセスは全インシデントの中で最も多く、特に未更新のシステムが攻撃の対象となりやすい状況です。

攻撃者はゼロデイ脆弱性を突くために高度な手法を用いるだけでなく、既知の脆弱性が修正されていないシステムやソフトウェアを狙います。企業がリスクを最小化するためには、パッチ管理の強化や脆弱性診断を定期的に実施することが重要です。

従業員リテラシーの不足とヒューマンエラー

セキュリティインシデントの多くには、従業員のセキュリティリテラシーの不足やヒューマンエラーが関わっています。例えば、企業内での人的ミスや無意識のセキュリティポリシー違反が、情報漏洩や攻撃の足がかりとなるケースが存在します。

2024年には、フィッシングメールに従業員が対応してしまい、結果的に重要な認証情報が流出するという事例も増加しました。特にランサムウェア攻撃の原因の多くにはヒューマンエラーが絡んでおり、従業員が攻撃対象として利用されることが多くなっています。これを防ぐために、企業は従業員向けのセキュリティ教育プログラムを強化する必要があります。

高度化するフィッシング攻撃の手法

2024年の報告では、フィッシング攻撃の手法がさらに高度化していることが注目されています。従来のような粗雑な手口ではなく、ターゲットの企業名や役職名など詳細な情報を盛り込むことで、偽メールや偽サイトの信ぴょう性を高める「スピアフィッシング」手法が拡大しています。このような攻撃が成功すると、認証情報の流出やマルウェアの感染につながる恐れがあります。

特に近年では、AI技術を駆使して本物と見分けがつきにくいメッセージ生成が可能になっており、これに対応するためにはフィルタリング技術の進化と従業員教育のバランスが求められます。

ゼロデイ攻撃やAPT(高度持続的脅威)の動向

ゼロデイ攻撃やAPT(高度持続的脅威)は、企業にとって特に深刻な脅威として引き続き増加しています。ゼロデイ攻撃はベンダーが発見していない脆弱性を悪用するため、多くの企業が防御策をとれないまま被害を受けています。一方、APT攻撃は複数の手法を組み合わせ、長期間にわたって標的を狙うため、より一層の注意が必要です。

例えば、2024年には国内外の製造業やクラウドサービスプロバイダーを狙ったAPT攻撃の事例が報告されています。攻撃者が一度ネットワーク内に侵入すると、継続的にデータを収集したり操作したりするため、発見が遅れると被害が拡大する恐れがあります。こういったリスクに対抗するには、多層的な防御体制の構築と、リアルタイムでのログ監視による早期検知が重要です。

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4. 企業が取るべきセキュリティ対策

包括的なリスク管理とセキュリティポリシーの策定

2024年のセキュリティインシデントにおいて、被害が拡大した背景には組織のセキュリティ戦略が不十分であった点が挙げられます。セキュリティ対策を強化するためには、包括的なリスク管理の枠組みと明確なセキュリティポリシーを策定する必要があります。このポリシーでは、企業全体で発生しうるリスクを可視化し、それに基づいて優先順位をつけた対応策を明確にすることが重要です。また、社員一人ひとりがセキュリティポリシーを理解し遵守できるよう、定期的に見直しや再教育を行うことが求められます。

最新のセキュリティツールの導入と運用

サイバー攻撃の手口は年々高度化しており、それに対応するためには最新のセキュリティツールを活用することが欠かせません。特に、AIを活用した脅威の検知ツールやゼロデイ攻撃の防止に特化したソリューションの導入が効果的です。さらに、ツールを導入するだけでは不十分で、運用体制を確立し継続的に監視・更新を行う体制が必要です。株式会社サイバーセキュリティクラウドが2024年に公表した調査レポートによると、不正アクセスやランサムウェア攻撃がセキュリティインシデント全体の大部分を占めており、このようなツールの重要性はますます高まると考えられます。

セキュリティ教育の強化と内部リソースの活用

多くのセキュリティインシデントは従業員のヒューマンエラーに起因しているため、社内でのセキュリティ教育の強化が非常に重要です。特にフィッシング対策のトレーニングや、不審なメールに対する認識を深めるための演習を取り入れると効果的です。また、社内のリソースを活用して、社内エキスパートを育成することや、セキュリティリーダーを配置することで長期的な対策基盤を作ることも推奨されます。結果として、個々の社員がサイバーセキュリティに対する意識を高めることで、リスク低減を図ることが可能です。

インシデント発生時の迅速な対応体制の構築

セキュリティインシデントが発生した際の迅速な対応体制も非常に重要です。事前にインシデントレスポンスプランを策定しておくことで、被害の拡大を最小限に抑えることができます。このプランには、攻撃の種類に応じた適切な手順や、関係者への情報共有のプロトコルを含めるべきです。また、ランサムウェア攻撃や不正アクセスなど、特定の攻撃に特化した対策チームを編成し、スムーズな復旧を目指す体制を構築することも効果的と言えるでしょう。2024年のセキュリティインシデントの事例からも分かるように、迅速な対応がその後の損害や復旧期間に大きな違いを生むことが確認されています。

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5. 2024年以降に備えるべき次世代の脅威予測

AIと機械学習を悪用するサイバー攻撃

2024年以降、AIや機械学習を悪用したサイバー攻撃が急増すると予測されています。特に脅威となるのは、AIを駆使したフィッシング攻撃やソーシャルエンジニアリングです。攻撃者はAIを利用して、より説得力のある偽装メールやチャットボットを作成し、人間の感覚を欺くような新しい手口を開発しています。また、機械学習を用いた自動化された攻撃プロセスにより、時間やリソースを大幅に節約しながら膨大な標的を攻撃することが可能です。企業はこういった次世代のセキュリティインシデントに対応するため、AIを活用したセキュリティツールの導入や人の介在による対応力の強化が求められます。

サイバー戦争と国家間による攻撃リスク

近年、国家間の緊張が高まる中で、サイバー戦争や国家支援型サイバー攻撃のリスクが顕在化しています。特に重要インフラや政府機関を狙った攻撃が増加しており、2024年後半には多くのサイバーセキュリティ企業がこれを脅威として報告しています。これらの攻撃は高度な技術を駆使されており、一企業では対処が困難な場合もあります。企業は攻撃を未然に防ぐために、政府機関や専門組織との連携強化が重要です。また、サイバー戦争時代におけるセキュリティ対策として、ゼロトラストアーキテクチャの導入が広がる可能性も高まっています。

クラウドセキュリティの脆弱性とその対策

クラウドコンピューティングの普及とともに、クラウドセキュリティの脆弱性を狙ったインシデントが増加しています。クラウドインフラの設定ミスや、ゼロデイ攻撃によるクラウド環境への侵入が特に懸念されています。2024年には、製造業や卸・小売業においてクラウドをターゲットとした攻撃が確認される事例が増えることが予測されています。これを防ぐために、企業は厳格なクラウドセキュリティポリシーの策定や、設定監査の実施が必要です。また、セキュリティパッチの迅速な適用や多層防御の構築もクラウドセキュリティ強化の鍵となります。

ブロックチェーン関連技術への攻撃と対応策

ブロックチェーンはその透明性とセキュリティの高さから注目されていますが、2024年以降、これを標的とする攻撃が拡大することが予想されています。主に暗号資産(仮想通貨)が絡むハッキング事件や、スマートコントラクトの脆弱性を狙った攻撃が注目されています。ブロックチェーンの分散型特性を無効化する技術や、それを利用した不正な取引が試みられる可能性もあるため、企業はブロックチェーンの恩恵を享受する一方で、その安全性を常に監視する必要があります。セキュリティインシデントを防ぐためには、リスクベースのセキュリティ評価やブロックチェーン技術の継続的な監査体制が不可欠です。

この記事を書いた人

コトラ(広報チーム)

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