「業務委託契約」で失敗しないためのコンプライアンス対策と実践例10選

1. 業務委託契約における基礎知識

1-1. 業務委託契約とは何か?

業務委託契約とは、特定の業務を発注者が外部の受託者に委託する契約形態のことを指します。この契約形式では、受託者が成果物の納品や業務遂行のプロセスに責任を負い、発注者はその結果に対して報酬を支払います。業務委託契約は、自社の業務負担を削減し、専門的なスキルを外部から活用するために多くの企業で利用されています。ただし、「コンプライアンス」を意識し、契約内容や実務が適切であることを十分に確認する必要があります。

1-2. 雇用契約と業務委託契約の違い

雇用契約と業務委託契約は多くの面で異なります。雇用契約では、雇用主が従業員に対して指揮命令権を持ち、勤務時間や業務内容を管理します。一方、業務委託契約では受託者に指揮命令権はなく、発注者は業務の進め方には関与せず、主に成果物や業務遂行の結果に対してのみ責任を追及します。特に偽装請負とならないよう、業務委託契約では「発注者が業務遂行方法に具体的な指示を出さない」ことが重要です。これを守らないと、労働者派遣と見なされるリスクが生じ、法的なトラブルに発展する可能性があります。

1-3. 業務委託でよく使われる契約形式の種類(請負・委任・準委任)

業務委託契約には、主に以下の3つの契約形式があります。それぞれの違いを把握したうえで適切な形式を選択することが大切です。

1つ目は「請負契約」で、これは具体的な成果物を納品することを目的とした契約形式です。例えば、システムの開発や建築工事など、完成形が明確に定義される業務に適しています。\
2つ目は「委任契約」で、特定の行為を代理として実施する契約です。たとえば、税理士が税務申告を代行する場合などが該当します。\
3つ目は「準委任契約」で、特定の作業や役務を遂行する契約形式です。成果物を伴わない場合で、特にITエンジニアの開発支援などに用いられます。

どの形式を選んでも、「コンプライアンス」を遵守し、業務範囲や責任を明確にすることが安全な契約の第一歩です。

1-4. 業務委託契約で注意すべき法律と規制

業務委託契約を締結する際には、関連する法律や規制に注意を払い、適法性を確保することが重要です。代表的な関連法としては、「民法」が挙げられます。民法には、請負契約や委任契約に関する条項が記載されており、契約の基本的な枠組みが定められています。また、「労働者派遣法」にも注意が必要です。発注者が受託者の業務遂行方法に過剰に関与する場合、偽装請負とみなされ、同法に抵触する可能性があります。

さらに、「個人情報保護法」や「独占禁止法」も業務委託契約との関連が深いため、これらの法令への違反を未然に防ぐための適切な内部統制も欠かせません。特に、複雑な契約内容や外部委託先の管理には、リスク評価やモニタリング体制の構築が必要となります。コンプライアンスを意識した契約運用を徹底することで、健全な業務委託関係を築くことができるでしょう。

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2. 偽装請負のリスクとその回避策

2-1. 偽装請負とは?企業が直面するリスク

偽装請負とは、業務委託契約の形式を取っているにも関わらず、実際には労働者派遣の状態で行われる契約形態を指します。このような状況は、発注者が受託者に業務遂行方法を指示したり、勤務時間や業務評価を直接管理している場合に該当することがあります。企業が偽装請負を行うと、労働基準法違反による罰則の適用や、労働者派遣法の厳しい規制が課され、コンプライアンス上の大きなリスクを抱えることになります。さらに、企業の社会的信用が失墜し、取引先や顧客からの信頼を損なう可能性も考えられます。

2-2. 偽装請負を防ぐための具体的判断基準

偽装請負を防ぐためには、業務委託契約と派遣労働の性質を明確に区別することが重要です。具体的には、発注者が受託者やその従業員に指揮命令を出していないか、業務遂行について細かい指示を出していないかを確認することが必要です。また、勤務時間の管理や個別の評価を発注者が行っている場合も偽装請負とみなされる可能性が高いため、注意が必要です。業務範囲を明確に区切り、受託者の自律性を尊重した契約内容を作成することが、コンプライアンス遵守の鍵となります。

2-3. 適切な管理体制を導入する方法

偽装請負を防ぐためには、適切な管理体制の構築が必要です。その一環として、発注者と受託者の役割分担を明確にするための契約書を整備することが基本です。また、契約段階からコンプライアンスを意識し、社内の関係者へ教育研修を実施することが効果的です。さらに、受託者側の業務遂行状況に対してモニタリングを行う際も、指揮命令につながるようなやり取りを避け、定期的な報告書の確認や成果物に基づいた評価を行う仕組みを整える必要があります。

2-4. 偽装請負発覚時の対応策とペナルティ

万が一偽装請負が発覚した場合、迅速かつ適切な対応が求められます。具体的には、問題の特定と原因究明を行うとともに、コンプライアンス違反を改善するための措置を早急に講じることが重要です。例えば、業務委託契約の内容を見直し、偽装請負の状態を解消するための再契約を提案することが考えられます。また、発注者は労働基準監督署からの指導や罰則を受ける可能性があるため、法律専門家などの助言を受けつつ、適切な対応を行う必要があります。こうしたペナルティは、高額な罰金や労働者派遣法違反に伴う行政処分につながるため、事前の予防策を徹底しておくことが重要です。

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3. 業務委託契約の具体的トラブル事例と対策

3-1. 契約書の不備によるトラブル事例

業務委託契約において、契約書の不備はトラブルの大きな原因となります。たとえば、契約内容に不明瞭な箇所がある場合、業務範囲や報酬が曖昧となり、双方が合意した業務内容をめぐって争いが生じることがあります。また、秘密保持や契約解除の条件が明記されていないと、重要な情報の漏洩や予期せぬ損失につながるリスクがあります。このようなトラブルを避けるため、契約書作成時には法律の専門家を交えることが推奨されます。

3-2. コンプライアンス違反が引き起こす問題

業務委託契約では、コンプライアンス違反がトラブルにつながる場合があります。特に、業務委託の形式を取っていながら実際には労働者派遣の状態に近い「偽装請負」が発覚した場合、企業には法的ペナルティが課されるリスクが存在します。このような違反が表面化すれば企業の信用を失うだけでなく、高額な罰金や是正勧告を受ける可能性があります。契約書において適法性を確保し、受託者との間で明確な業務の分界線を引くことが重要です。

3-3. 業務範囲や作業指示の不明確さによる誤解

業務委託契約では、業務範囲や作業指示が不明確であると、受託者と発注者の間で誤解が生じることがあります。たとえば、受託者が契約範囲外の作業を求められたり、発注者が意図する成果物が具体的に伝わらなかったりすることで問題が起こります。このような誤解を防ぐには、契約時に業務内容を具体的かつ詳細に定めることが重要です。さらに、進捗状況を定期的に確認し、業務内容のすり合わせを行う仕組みを設けることで、トラブルのリスクを最小限に抑えることができます。

3-4. 信頼関係の崩壊が原因のトラブル

業務委託契約では、最終的には信頼関係が非常に重要です。しかし、例えば成果物の品質が期待を下回る場合や、受託者が契約に基づく義務を適切に果たさなかった場合など、信頼関係の崩壊からトラブルが発生する可能性があります。このような場合、発注者側は業務委託先の選定段階で事前評価を行い、受託者のスキルや信用度を確認することが重要です。また、問題が発生した際には、迅速に話し合いを行い、双方の行き違いを解消する努力が求められます。

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4. コンプライアンス遵守のための実践例

4-1. 適法な業務委託契約の締結フロー

適法な業務委託契約の締結には、企業のコンプライアンス推進を目的とした慎重なプロセスが求められます。まず、契約書には契約期間、成果物の権利、秘密保持義務、契約解除条件など、双方が守るべき項目を含めるようにしましょう。特に重要なポイントは業務範囲と責任の明確化です。業務の遂行方法について指揮命令権を発注者が持たないようにし、受託者の自主性を明確に記載することで、偽装請負とならないよう注意が必要です。また、契約締結前には民法に基づく適法性を確認し、必要に応じて法的専門家の助言を得ることも有効です。

4-2. 社内外での契約に関する教育研修の導入

業務委託契約におけるコンプライアンス違反を防ぐためには、社内外を対象とした教育研修の導入が欠かせません。特に、契約担当者や現場の発注者が「偽装請負」となる行為を理解し、注意を払うことが重要です。研修では法令順守の基本知識から、具体的な違反事例やそのリスクについて講義を行い、ルールの浸透を図ります。また、受託先においても、契約内容に基づいた業務実施の重要性を共有し、健全なパートナーシップを築けるようコミュニケーションを強化しましょう。

4-3. 業務範囲と責任を明確化するツールの活用

業務範囲や責任を明確化するためには、適切なツールの活用が有効です。業務委託契約に関連する情報を管理するツールを導入することで、契約内容、業務範囲、進捗状況を正確に把握できるようになります。また、発注者と受託者が同じプラットフォームを利用することで認識のずれを防ぎ、トラブルを事前に回避することが可能です。さらに、ツールを通じて業務成果の報告や承認フローも円滑化されるため、双方の信頼関係を深める役割も果たします。

4-4. 監査やモニタリングの仕組み構築

業務委託におけるコンプライアンスを維持するためには、継続的な監査やモニタリング体制の構築が必要です。内部統制の観点から、契約内容が適切に履行されているかを定期的に確認する仕組みを設けましょう。具体的には、契約遵守状況のチェックリストや外部委託先への定期的な評価を行うことで、不正やリスクの早期発見につながります。また、モニタリングの結果を基に改善点を共有し、双方が継続的に業務プロセスを見直すことで、コンプライアンスを強化する体制を構築することができます。

この記事を書いた人

コトラ(広報チーム)

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