コトラ（広報チーム） 
DX投資促進税制の概要
DX投資促進税制とは何か？その意義と導入背景
DX投資促進税制は、企業がデジタルトランスフォーメーション（DX）を推進するための投資を支援する税制優遇措置です。2021年6月に産業競争力強化法の改正に基づき創設され、急速に進むデジタル社会において、日本企業が競争力を高め、未来志向のビジネス変革を実現することを目的としています。
この税制が導入された背景には、クラウド技術やデータ活用、デジタル連携の普及が進む中で、日本国内におけるDXの遅れが深刻視されている点があります。そのため、企業がデータやテクノロジーを活用し、新しい価値創出の仕組みを構築するためのインセンティブとして、本制度が策定されました。
対象となる企業と主な要件
DX投資促進税制の適用対象となるのは、事業適応計画を認定された事業者です。この計画の認定は、DX推進のための具体的な投資内容が、一定の要件を満たしていることを証明する必要があります。特に、以下の2つの要件がクリアされることが求められます。
- D要件（デジタル要件） : データ連携の実施、クラウド技術の活用、DX認定の取得などが含まれます。
- X要件（企業変革要件） : 投資によって生産性や売上向上が見込まれることが条件となります。
また、認定された事業者は、計画実施後に投資効果を報告するため、毎事業年度終了後3ヶ月以内の実施状況報告書の提出が義務付けられています。
優遇措置の内容：税額控除と特別償却
DX投資促進税制における優遇措置として、法人税に関連した「税額控除」と「特別償却」が設定されています。
税額控除 に関しては、対象となる投資額に対して原則3%、自社グループ外の法人とデータ連携を行う場合には最大5%が控除されます。ただし、控除可能な上限はカーボンニュートラル投資促進税制と合算で該当年度の法人税額の20%までと定められています。
特別償却 では、投資額の30%を償却費として計上可能となり、初年度の減税効果をより大きく享受することができます。これらの措置により、企業の財務負担を軽減しつつ、DX推進のための投資を促進します。
適用期間と制度の期限
DX投資促進税制の適用期間は2021年8月2日から始まり、2025年3月31日までとされています。ただし、対象となる事業者は2024年度末までに事業適応計画の認定を受けることが条件となります。
認定を受けた事業者は、計画終了までの実施状況を適切に報告することで、制度の恩恵を受け続けることが可能です。適用期限を過ぎる前に計画認定を受けるため、事業の早期計画と準備が重要です。
DX投資促進税制の活用メリット
税制活用による財務面での恩恵
DX投資促進税制の活用により、企業は税制上の大きなメリットを享受できます。この制度は、対象となるデジタル関連投資に対して最大5%の税額控除や30%の特別償却を認めており、法人税の負担を軽減する仕組みが特徴です。例えば、自社で導入したクラウド技術の投資が認定されれば、初期コストを大幅に削減することが可能です。また、税額控除は自社グループ外とのデータ連携を進める場合に上乗せされるため、外部との連携を促進しながら資金面での余裕を生み出すことができます。このような財務面での恩恵は、企業のキャッシュフローを改善しながら、DX推進を加速させる原動力となります。
DX推進を前提とした企業競争力強化
DX投資促進税制を活用することで、単に税負担を軽減するだけでなく、企業の競争力を高めることも可能です。この制度では、データ連携の促進やクラウドソリューションの導入といった具体的なDX推進が求められます。これによって、企業変革の基盤が整えられるだけでなく、業務効率化や顧客対応の迅速化といった競争優位性を確保する流れが生まれます。さらに、DXを前提とした事業拡大や新規市場への参入も視野に入れることができ、結果として企業の持続的成長を支えることに繋がります。
中小企業支援としてのDX投資促進税制
中小企業にとって、DX投資促進税制は非常に重要な支援制度となります。多くの中小企業が抱える課題の一つに、DX推進に必要な投資コストの負担があります。この制度では、初期投資における税制支援が受けられるため、資金規模が限られる中小企業でも積極的にDXに取り組むことが可能です。また、当制度の適用にはデジタル要件（D要件）や企業変革要件（X要件）が設けられていますが、これらを満たす計画を作る過程で自社の成長戦略を明確にすることもできる点が、中小企業にとって大きなメリットです。これにより、DXを通じた業務改革や収益性の向上を実現し、地域経済全体の活性化にも寄与することが期待されます。
適用を受けるためのプロセス
事業適応計画の策定と認定プロセス
DX投資促進税制を活用するには、まず「事業適応計画」を策定し、主務大臣の認定を受けることが必要です。この計画では、DXを通じた事業の変革や設備投資計画の具体的な内容を示さなければなりません。計画には、D要件（データ連携やクラウド技術の活用）とX要件（生産性向上や売上向上が見込まれること）の双方を満たすことが求められます。
計画作成後は、管轄する省庁に申請を提出し、要件の審査を受けます。審査後、認可されることで初めて制度を活用する準備が整います。なお、認定を受けた事業者は、計画終了時まで継続的に実施状況の報告を行う義務があります。
必要書類の準備と提出方法
申請にはいくつかの書類が必要です。主な書類として、「事業適応計画書」をはじめ、企業の財務情報やDX方針を示す資料を含むことが一般的です。これら書類では、クラウド活用やデータ連携を実際にどのように取り入れるか、さらに投資計画がどのように企業変革（X要件）につながるかを具体的に示す必要があります。
提出書類は、事業所が属する業界や企業規模に応じて必要条件が異なる場合もあるため、事前に主務大臣の指示やガイドラインを確認しておくことが重要です。電子申請を推奨する場合もあるため、最新の情報を確認し準備を進めてください。
申請後の流れとスケジュール
申請が受理されると、書類審査および要件確認が行われます。これには数週間から数ヶ月かかる場合もあり、タイムラインに余裕を持つ必要があります。認定が下りた場合には認定通知が送付され、その後、投資計画の実施に入ることが可能です。また、制度の適用期限である2025年3月31日までに投資が完了していることが必要です。
さらに、計画の実施年度ごとに「実施状況報告書」を作成し、事業年度終了後3ヶ月以内に提出する義務があります。この報告書によって、投資の進捗状況や実施内容が制度の適用範囲内であるかが確認されます。
事前準備の注意点：認定要件のチェック
認定プロセスで最も注意すべき点は、D要件とX要件の確実な達成です。D要件には、データ連携の実施やクラウド技術の活用、さらにDX認定の取得が含まれます。一方、X要件では企業の成長戦略として、生産性や売上向上の具体的な指標を見据えた計画が求められます。
加えて、認定を申請する前には、投資対象となる設備やサービスが制度の適用条件に該当しているかを精査することが重要です。特にクラウド技術を用いた設備投資が求められるため、これを満たしていない場合には認定が下りない可能性があります。事前準備として、自社内での点検だけでなく、専門家や行政窓口への相談を活用することをお勧めします。
DX投資促進税制の最新動向と事例
最近の制度改正点と今後の展望
DX投資促進税制は、2021年の産業競争力強化法に基づき創設され、デジタルトランスフォーメーション（DX）の推進を目的としています。この税制は2023年3月31日から一部延長され、適用締切が2025年3月31日までに設定されています。さらに、2024年度末までに事業適応計画の認定を取得することが義務付けられ、その後は計画終了まで実施状況報告が求められる規定が追加されました。
制度改正によって、データ連携やクラウド技術の活用を含む「D要件」や、生産性向上を目指す「X要件」がより具体的に整備され、厳格な基準が設けられました。また、自社グループ外の法人と連携する場合に税額控除が最大5%に上昇するなど、外部プラットフォームとの協力促進が明確化されています。今後は、デジタルガバナンスコードの改訂を活用し、競争力を強化する企業への支援がさらに注力されると見込まれています。
成功した企業事例：実際の活用シナリオ
DX投資促進税制を成功裏に活用した企業の一例として、中堅製造業A社の取り組みが挙げられます。この企業は事業適応計画を策定し、クラウド技術を導入した設備投資を行いました。同時に、自社外部のサプライチェーンパートナーとデータをリアルタイムで連携可能なプラットフォームを構築しました。
その結果、A社は生産性が20%向上し、売上も新規顧客獲得によって前年比10%増加しました。また、これらの投資により、同社は税額控除5%を適用し企業財務の健全性を高めることができました。このような事例は、税制活用がいかに実務面で役立つかを示す好例といえます。
制度利用における課題と解決策
DX投資促進税制の利用にはいくつかの課題があります。その中でも大きな課題として挙げられるのは、認定要件を満たすための事業適応計画の作成プロセスの複雑さです。特に、D要件として求められるデータ連携やクラウド技術の導入には、専門的な知識が必要となります。
これらの課題を解決するため、まず計画策定前に認定要件を詳細に理解し、必要な支援を受けることが重要です。事業適応計画策定の経験が豊富なコンサルタントや専門機関に相談することで、DX向けの環境整備をスムーズに進めることが可能です。また、クラウド技術やデータ連携を行うためのパートナー選定には、複数のベンダーから比較検討することを推奨します。
税制を活用した未来志向の経営戦略
DX投資促進税制を活用すること自体が、単なる税負担軽減以上の価値を持つ未来志向の経営戦略と位置づけられます。この税制は、企業がデータ活用を基盤にして生産性向上や事業変革を目指す取り組みを後押しします。そのため、計画的にDXを推進し、新たな収益モデルの構築や市場競争力を高める活用を目指すべきです。
特に、クラウド技術を活かした事業運営は迅速なデータ分析や顧客ニーズへの対応力を強化します。さらに、外部企業と連携してエコシステムを形成することで、新たなビジネスチャンスを創出することも可能です。その結果、財務面での税制恩恵とともに、企業の中長期的な成長基盤を構築することが実現するでしょう。
