コトラ（広報チーム） 
中小企業診断士試験の概要
中小企業診断士とは？
中小企業診断士は、企業経営に関する幅広い知識を活用して、中小企業の経営課題を解決に導く専門家です。国家資格であり、経営コンサルタントとしての活動が認められている唯一の資格です。ビジネス現場での課題解決力を求められるため、経営戦略・財務・法務など、多岐にわたる分野から試験が構成されています。そのため、特に幅広い知識が求められる資格といえます。
試験の構成とスケジュール
中小企業診断士試験は、一次試験と二次試験の2段階から成り立っています。一次試験は筆記の択一式試験であり、経済学・経済政策、財務・会計、企業経営理論など全7科目が出題されます。この試験は8月上旬の2日間に分けて実施され、標準的な受験であれば1日目に4科目、2日目に3科目を受験します。二次試験は事例問題を中心に構成された筆記試験と面接試験があります。二次試験の筆記試験は10月下旬または11月上旬に実施され、その後12月に面接試験が行われます。
一次試験と二次試験の違い
一次試験は基礎的な知識を測定する試験で、主に全7科目の範囲から択一問題が出題されます。合格ラインは各科目の満点の60%以上を得点すること、かつ全科目の総得点が60%以上であることです。一方、二次試験は実践的な能力を見るため、より高度な事例問題が出題されます。特に記述形式が中心となり、限られた時間内で課題の分析や具体的な提案策を求められるため、実務力に近いスキルが試されます。一次試験で得た知識を活用し、実践場面での応用力が評価されます。
合格基準と科目合格制度
中小企業診断士試験の合格基準は明確に定められています。一次試験では総点数が60%以上、かつ満点の40%未満の科目がないことが求められます。この試験には科目合格制度があり、ある科目で60%以上の得点をした場合、その科目は翌年と翌々年に限り免除されます。この制度を活用すれば、科目ごとに戦略的に学習を進めることが可能です。二次試験については、筆記試験における総得点が一定の基準を満たすこと、加えて面接試験でも適切な評価を受けることが必要です。
試験の難易度と合格率
中小企業診断士試験は、難関国家資格の一つとされています。その理由は、7科目にわたる膨大な試験範囲と、一次試験・二次試験の違うスキルを問う出題形式にあります。一次試験では、幅広い知識が求められる一方、二次試験では応用力や課題解決力を試されるため、総合的な能力が重要です。合格率は年度や試験内容によって異なりますが、一次試験の合格率は20～30%程度、二次試験の合格率は約10～20%といわれています。計画的な学習と対策が、試験突破の鍵となります。
7科目の特徴と学習ポイント
経済学・経済政策
経済学・経済政策は、マクロ経済学とミクロ経済学の基本概念を学ぶ科目です。中小企業診断士試験においては、国民経済計算や主要経済指標の読み方、財政政策、金融政策、国際経済など幅広い範囲が出題されます。特に「需給曲線」や「市場の均衡価格」といった概念の理解が重要です。また、近年は金融の仕組みに関する問題や国際社会における経済政策が重点的に取り上げられる傾向があります。学習のポイントとして、「グラフを活用して直感的に理解すること」と「過去問演習で出題パターンに慣れること」が挙げられます。
財務・会計
財務・会計は、簿記や会計、そして財務分析の知識を問われる科目です。経営状態を定量的に把握するための基礎力が求められるため、「貸借対照表」や「損益計算書」の構造の理解、さらに「キャッシュフロー計算書」の分析が重要となります。また、経営指標を活用する場面では、効率性や収益性を評価する観点が問われることが多いです。この科目は数字や計算の取り扱いが多い一方で、暗記部分も存在します。学習の際には、簿記3級レベルの基礎知識を習得し、問題演習を通して解法を身につけることが効果的です。
企業経営理論
企業経営理論では、経営戦略、人事労務管理、マーケティングの3分野を幅広く学びます。経営戦略ではポーターの競争戦略などの理論、人事労務管理では従業員のモチベーションや採用管理、マーケティングでは4P（製品、価格、場所、プロモーション）の概念が重要です。本科目では理論の暗記だけでなく、「どの場面でその理論を活用できるのか」という応用力が求められます。理解を深めるためには、実際の企業事例や業界ニュースと結びつけて考える学習法がおすすめです。
運営管理
運営管理は、製造業やサービス業における日常業務の効率化や品質管理に関する知識を扱います。「生産管理」と「店舗・販売管理」の大きく2分野に分かれており、生産管理では生産計画や在庫管理、生産方式（ジャストインタイムなど）が問われます。一方、店舗・販売管理では、店舗レイアウトや顧客満足度向上に向けた施策が出題されます。図表を活用した問題が多いため、視覚的に理解することが得点アップのカギとなります。
経営法務・経営情報システム・中小企業経営・政策
これらの科目は「法務」「情報技術」「中小企業政策」の知識が求められる分野です。
- 経営法務では、会社法や知的財産権などの基本法令の理解が求められます。特に契約書の内容やリスク管理に関する問題が多く、実務に直結する内容といえます。
- 経営情報システムでは、ITに関連する基礎知識やシステム運用、クラウドサービスやDX（デジタルトランスフォーメーション）の活用が求められます。過去数年ではデジタル技術に関するトピックが多く出題されています。
- 中小企業経営・政策は、中小企業白書や統計データを読み解き、その内容をもとにした政策提言や、中小企業の現状理解が求められます。この分野では暗記中心の学習が不可欠ですが、政策の背景や意図を理解することも重要です。
効率的な学習法とスケジュール管理
勉強時間の確保と目標設定
中小企業診断士試験の勉強を成功させるためには、まず勉強時間をしっかり確保することが重要です。働きながら受験する方も多いため、日々のスケジュールを見直し、無理なく続けられる計画を立てることをおすすめします。また、試験日から逆算して「1カ月で○○科目を終わらせる」「残り2週間で過去問を仕上げる」といった具体的な目標を設定すると進捗が管理しやすくなります。効率よく学習するためには、定期的な進捗確認も忘れずに行いましょう。
科目ごとの優先順位を決める
中小企業診断士試験には7科目がありますが、それぞれの難易度や得意不得意を考慮して学習の優先順位を決めることが大切です。例えば、「経済学・経済政策」や「財務・会計」は基礎力が求められるため、早い段階で重点的に取り組むのが効果的です。一方で、「中小企業経営・政策」のような暗記要素の強い科目は直前期に集中して学ぶ方法もあります。このように科目ごとの特徴や配点を考慮し、自分に合った優先順位を設定しましょう。
テキスト・問題集・講座の選び方
使用する教材選びも合格への鍵となります。中小企業診断士試験に特化したテキストや問題集を選ぶ際は、過去問のカバー率や解説のわかりやすさを基準にしましょう。初心者の方は入門書で基本を固めてから、より詳しい教材に進むことをおすすめします。また、独学が難しいと感じた場合は通信講座や通学講座を活用するのも良い選択です。講座では最新の試験傾向を反映した指導が受けられるため、学習効率をさらに高めたい方に適しています。
アウトプット学習の重要性
中小企業診断士試験では、インプットだけでなくアウトプット学習も非常に重要です。試験本番では問題を解くスピードと正確さが求められるため、早い段階から過去問や試験形式を意識した問題演習に取り組みましょう。特に二次試験では論理的な解答を作成する力が必要となるため、実際に答案を書いてみて、解説と比較する練習が効果的です。理解した内容を自分の言葉で整理することで、知識がしっかり定着します。
過去問活用法と模擬試験の活用
中小企業診断士試験対策において、過去問と模擬試験の活用は欠かせません。過去問を解くことで出題傾向や重要ポイントを把握でき、効率的な学習が可能になります。また、模擬試験では本試験と同じ形式で自分の実力を試すことができ、弱点を克服するための対策が立てやすくなります。特に本試験直前期には時間を計って過去問や模試に集中し、本番の環境に慣れることを意識しましょう。
一次試験と二次試験を連携させた攻略法
一次試験での土台作り
中小企業診断士試験において、一次試験は全7科目から構成され、多岐にわたる知識を問われます。そのため、まずは一次試験をしっかりと攻略し、土台を作ることが重要です。具体的には、7科目すべての基礎知識を網羅的に学習し、出題形式に慣れておきましょう。
7科目のうち「経済学・経済政策」や「財務・会計」は初学者にとって特に難易度が高く感じられるため、早い段階で重点的に学習するスケジュールを意識してください。また、過去問を活用して得点しやすい分野を特定し、効率的な学習を進めることもポイントとなります。一方で、試験範囲が広いため、すべてを完璧に理解しようとはせず、基準点（満点の60％以上）を確保するための戦略的な取り組みを心がけることが大切です。
二次試験に向けた準備の始め方
一次試験が終了した直後から、二次試験の準備を開始するのが理想的です。二次試験は「事例Ⅰ～Ⅳ」という4つの事例問題で構成され、どれも実践的な思考力や論理的な文章作成力が求められます。一次試験に比べて記述量が圧倒的に多いため、早い段階から対策を講じる必要があります。
まずは過去の事例問題に目を通し、問題の形式や求められている回答の傾向を把握してください。その後、事例問題に関連する理論やフレームワークをインプットしつつ、少しずつ解答を練習していくことが効果的です。また、一次試験で学んだ7科目の知識を二次試験のなかでどのように応用させるかを意識しながら取り組むことで、知識の定着も図れます。
アウトプット重視の練習法
二次試験では、アウトプットの練習が合格への鍵となります。二次試験は単なる知識問題ではなく、出題された事例に対して論理的かつ説得力のある解答を構築する能力を試されるためです。そのため、インプット学習だけでは不十分で、実際に解答を書く練習を通して修正点を洗い出す機会を増やすことが大切です。
具体的な練習法として、過去問や模擬問題を使って制限時間内に回答を作成し、量と質の両方を向上させることが挙げられます。また、自分の回答を参考書や答練の模範解答と比較し、どのポイントで差が出たのかを分析することが習慣化できれば、大きな成長が見込めるでしょう。
一次試験と二次試験の関係性を理解する
一次試験と二次試験はそれぞれ独立した内容に見えますが、実際には密接に関連しています。7科目で得た知識は、二次試験で出題される事例問題の分析や解答作成の背景として役立ちます。特に、「財務・会計」や「企業経営理論」などはそのまま二次試験の事例IVや事例IIIで基礎知識として求められる場面が多いため、一次試験の勉強の段階からこれらの科目に重点を置くことが有効です。
同時に、一次試験の全科目をバランスよく学習することが大切です。理由としては、どの科目も二次試験を解くための基盤となり、知識の幅が広がることで、事例問題に対して多角的にアプローチできるようになるからです。そのため、一次試験の段階から二次試験を念頭に置いた学習計画を策定しましょう。
事例問題のポイントとコツ
二次試験では事例問題ごとに異なるテーマが出題されますが、いずれも一つの企業や組織の課題解決を目的としたものです。課題を正確に把握し、限られた時間内で的確な解答を作成するためには、いくつかのコツがあります。
まず、問題文を丁寧に読み込み、出題者がどのような視点で解答を求めているのかを推測する力を養いましょう。特に、設問に書かれているキーワードや問われている論点を見逃さないように注意してください。また、回答の構成を意識して「結論→理由→具体例」といった論理的なフレームワークで答えることを心がけると、説得力が増します。
さらに、自分が作成した回答を客観的に評価したり、他の受験生や指導者からフィードバックを受けることで、自身の弱点を明確にし、改善を図ることが大切です。これにより、継続的に解答力を高めることが可能です。
