コトラ（広報チーム） 
令和6年度中小企業診断士試験の総括
一次試験の科目別傾向と平均点の変化
令和6年度の中小企業診断士一次試験では、科目ごとに大きな傾向変化が見られました。特に、「企業経営理論」と「運営管理」の合格率が昨年度と比較して大幅に上昇し、それぞれ39.9%と26.8%となりました。この2科目は、出題が易化したことが要因とされています。一方、「経営法務」は合格率が25.6%から13.2%に急落し、「中小企業経営・政策」でも5.6%と著しい難化が見られ、受験生にとって大きな壁となった科目でした。平均点の変化を見ても、易化した科目と難化した科目の明暗が大きく分かれる結果となり、全体として合格率は29.6%から27.5%へと低下しました。これらの結果から、各科目の特性を正しく把握し、柔軟な対策を取る重要性が改めて浮き彫りとなっています。
二次試験における難易度の変化と出題トレンド
令和6年度の二次試験では、全体的に難易度が昨年度よりもわずかに高まったとの評価が多く見られました。特に、事例Ⅰ（組織・人事）と事例Ⅳ（財務・会計）は出題内容に対して受験生が苦戦する傾向が見られました。事例Ⅰでは組織内の多面的な課題把握が求められ、限られた時間の中で高度なロジカルシンキングが必要となりました。一方、事例Ⅱ（マーケティング・流通）や事例Ⅲ（生産・業務）では比較的取り組みやすい設問が多く、得点源とする受験生が多かった傾向があります。出題トレンドとしては、実務に直結した内容の増加が見られ、日頃からの実務知識の積み重ねが重視される内容となりました。
過去3年と比較した受験者数・合格率の推移
過去3年間のデータを振り返ると、受験者数は減少傾向にあることがわかります。令和5年度の一次試験受験者数は21,713人でしたが、令和6年度では21,274人と減少しました。それに伴い、合格者数も5,521人から5,007人に減っています。さらに、一次試験の合格率も29.6%から27.5%へとやや低下しました。この動向は、中小企業診断士試験の持つ難易度や試験内容の専門性が、多くの受験生にとって挑戦的であることを反映しているといえます。また、一方では合格基準が安定しているため、戦略的な学習が合否を大きく左右する試験であることが示唆されています。
事例ごとの特徴と合格者の傾向
二次試験では事例ごとの特徴が顕著に表れています。事例Ⅰでは近年、組織内の人事戦略やリーダーシップに重点を置いた出題が多く見られます。そのため、合格者の多くは日頃からの企業分析やリーダーシップに関する知識を持ち合わせている傾向があります。事例Ⅱでは、マーケティング戦略の応用力が試され、受験生の間で得点差が生まれやすい科目として知られています。また、事例Ⅲでは、現場の課題を多角的に分析する力、そして事例Ⅳでは、計算問題の正確性とスピードが必須スキルとされています。合格者には、全事例においてバランス良く高得点を獲得できる「総合力」が求められます。
予備校データが示す合格基準点の分析
令和6年度の予備校データによれば、いくつかの科目で過去問と比較して得点が大幅に異なる傾向が見られました。一次試験の合格基準点は各科目において60点以上と設定されていますが、実際の難易度によって科目合格率が左右されています。例えば、「企業経営理論」の易化により、多くの予備校では平均得点が70点台になるとの見解が見られました。一方で、「経営法務」や「中小企業経営・政策」のような難化した科目では、予備校データの平均得点が50点台前半になる計算が出されています。これに基づき、令和7年度試験では、硬軟を織り交ぜた出題傾向をあらかじめ把握し、苦手科目の底上げを図ることが重要といえるでしょう。
令和6年度試験から学ぶ次年度一次試験対策
科目別おすすめ勉強法と短期集中学習の進め方
令和6年度の中小企業診断士一次試験では、科目ごとの難易度が変動しました。そのため、次年度対策では科目ごとの特徴に応じた勉強法を採用することが重要です。
まず、難化した「経営法務」や「中小企業経営・政策」に関しては、早めに体系的な学習を始め、重点的に取り組むことをおすすめします。これらの科目は法改正や中小企業政策のトピックが重要なポイントになるため、最新の情報を反映した教材を活用しつつ、過去問を繰り返して問題の傾向を掴むことが有効です。
一方で、易化が見られた「企業経営理論」や「運営管理」については、基本的な知識を効率よく身につけることが大切です。これらの科目は幅広い出題範囲が特徴のため、過去問を分野別に分けて少しずつクリアする学習法が短期集中には適しています。
勉強の記録や進捗管理には、デジタルツールやアプリの活用がおすすめです。自分の学習時間や苦手分野を把握しながら効率を高めることで、限られた時間を有効活用できます。
1科目ずつ合格を狙う「分割受験」の戦略
中小企業診断士一次試験では、1科目ずつ合格を目指す「分割受験」が可能です。この制度を上手に活用することで、効率的に合格を積み重ねることができます。特に、仕事や家庭の時間制約がある方にとっては、現実的な戦略といえるでしょう。
分割受験を成功させるためには、まず不得意科目を優先して取り組むことがポイントです。難化傾向だった「経営法務」や「中小企業経営・政策」のような合格率が低い科目を最初に攻略することで、次年度以降の負担を軽減できます。一方で、比較的易化した「企業経営理論」など得意科目を後回しにし、バランスを取ることを意識しましょう。
この戦略では、計画性が重要です。1年間でクリアする科目とそれ以降に取り組む科目をあらかじめ決め、時間配分をしっかり管理してください。このように小さな目標を設定することで、モチベーションの維持にもつながります。
出題トピックの予想と過去問活用術
令和6年度の試験を振り返ると、科目ごとに安定した分野と新出のトピックが明確になっています。たとえば、「中小企業経営・政策」では最新の政策動向が強く問われ、「運営管理」では設備管理や生産計画など基礎的な部分が多く出題されました。これらの傾向を把握し、次年度の出題トピックを予想することが重要です。
効果的な過去問活用術として、まずは3年分または5年分の問題を解いて傾向を掴むことをおすすめします。特に、間違えた箇所については関連知識を深掘りして理解を深めるとよいでしょう。また、試験間近には直近2年分の問題に集中して取り組むことで、最新傾向に合わせた実践力を磨くことができます。
さらに、過去問から分析した弱点分野の克服には、予備校や模擬試験の解説を活用し、類似問題を多く解いて自信をつけることが大切です。このように、出題トピックを予想して効率的に教材を精査することで、試験対策が一段と効果的になります。
効率を上げる教材・予備校選びのポイント
効率を最大限に引き出すためには、自分の学習スタイルやレベルに合った教材や予備校を選ぶことが重要です。教材選びでは、口コミやランキングを参考に、解説が分かりやすいもの、最新の試験傾向に対応したものを選択することがポイントです。また、問題集に関しては、初級者向けの基礎的なものから中級・上級者用の応用問題集まで幅広いラインアップを揃えると良いでしょう。
予備校を選ぶ際には、講義形式やオンライン授業の有無、自分のライフスタイルに合わせた受講プランが選択できるかを確認してください。特に、働きながら試験に挑む受験生にとっては、スキマ時間を活用できるオンライン講座が効率的です。また、模擬試験や過去問講座など、実戦的なカリキュラムが導入されている予備校を選ぶことも重要です。
教材や予備校を賢く選び、時間を無駄にしないようにすることで、効率的な学習環境を整え、次年度の中小企業診断士試験合格に一歩近づけるでしょう。
二次試験突破に向けた学習のカギ
一次試験との違いを理解する重要性
中小企業診断士試験の二次試験は、一次試験と大きく異なる特性を持っています。一次試験がマーク式の選択問題で知識の確認に重点を置いているのに対し、二次試験では記述式の問題が出題され、文章での表現力や論理的思考力が求められます。特に、与えられた事例について課題を抽出し、解決策を提案するプロセスが重要とされます。
令和6年度の総評においても、二次試験は試験委員の意図を汲み取りながら論理的かつ明確な解答を求めるトレーニングが必要と指摘されています。このため、単に一次試験の知識を覚えるだけではなく、それを活用していかに現場に即した具体的な解答を提示できるかが合格のポイントとなります。
事例Ⅰ～Ⅳの内容と攻略法を徹底解説
二次試験は4つの事例Ⅰ～Ⅳに分かれており、それぞれ異なるテーマを扱います。以下に各事例の概要と攻略のポイントを解説します。
事例Ⅰ（組織・人事） ：企業の組織や人材マネジメントに関するテーマが出題されます。従業員のモチベーション向上策や適切な組織設計の提案が求められることが多いです。過去問を分析し、「どのような組織改善が求められているのか」を深く理解しておくことが重要です。
事例Ⅱ（マーケティング・販売戦略） ：売上向上や顧客満足度向上につながる施策を提案するケースが多く、具体的なマーケティング理論やフレームワークの活用が求められます。マーケティング戦略の基本を学び、ロジカルに提案内容を組み立てる練習を重ねましょう。
事例Ⅲ（生産・技術） ：生産現場や業務プロセスに関する課題解決を問われます。ムダの削減や効率的な工程設計について具体的な提案ができると評価されます。中小企業の特徴を意識した実践的な対策を練習することが有効です。
事例Ⅳ（財務・会計） ：財務諸表の分析を含む数字に基づいた課題解決が求められます。過去問を活用し、財務諸表の読み取り力や計算問題の迅速な解答を鍛えることが重要です。
各事例においては特定テーマの繰り返し出題が見られるため、過去問を徹底的に分析して傾向を把握することが合格の近道となります。
模擬試験や過去問で鍛える記述力と時間配分
二次試験突破には記述力と時間配分の両方を高めることが求められます。特に、本番の試験時間内で論理的かつ分かりやすい解答を作成するスピードが必要です。そのためには、模擬試験や実際の過去問を活用した練習が不可欠です。
模擬試験を通じては、事例ごとに解答時間を設定し、時間内にまとめる練習を繰り返しましょう。また、過去問を活用する際には、実際に手を動かして解答を作成し、第三者にレビューを依頼することで、自分の記述力を客観的に評価することができます。
さらに、記述問題では、採点者が理解しやすい論理的で簡潔な表現が求められます。内容が正しくても、文章の順序や表現方法が曖昧だと減点される可能性があるため、書き方の工夫も重視しましょう。
ロジカルシンキングを活かす解答作成法
二次試験では、ロジカルシンキング（論理的思考）を活用することが解答作成における鍵となります。問題文を読み取って、そこに示される情報を論理的に組み立て、課題の原因を明らかにしつつ解決策を提示するスキルが求められるのです。
ロジカルシンキングを活用した解答作成法としては、以下のステップが効果的です。
- 問題文をしっかりと読み、重要なキーワードや条件を明確にする。
- 課題を解決するために必要な要素を洗い出し、それらを論理的に関連付ける。
- 課題に対する解決策を簡潔かつ明確に記述する。この際、試験委員が理解しやすい表現を心がけることが重要です。
具体的な事例としては、令和6年度の総評などを参考に、問題文に隠された意図を読み解く練習を重ねることが効果的とされます。また、普段から論理的な文章を書くトレーニングを行い、解答作成のスピードと正確性を高めることが大切です。
合格率を上げるためのモチベーション管理
長期学習を継続するための目標設定と計画
中小企業診断士試験の学習は期間が長くなるため、継続するには明確な目標と計画が必要です。令和6年度試験でも、目標を明確にしないことで途中で学習を中断してしまう受験者が少なくありませんでした。
まず、学習スタート時には「何のために中小企業診断士を目指すのか」を具体的に言語化しましょう。そして、一次試験と二次試験の全体像を把握した上で、週ごとの勉強スケジュールを立てることが重要です。この際、全科目を一括して学習するのではなく、特に初学者の方には「苦手科目を優先的に学習しつつ得意科目で効率を上げる」といったバランスの取れた計画がおすすめです。
また、目標とスケジュールだけでなく、「小さな成果」を設定して自分を励ますことも有効です。例えば、「今月中に経済学の主要トピックを終える」「過去問を3年分解く」など短期目標を設定し、それを達成することで学習意欲を保つことができます。
試験直前期の効果的な準備方法
試験直前期は、最終的な仕上げに集中するための大切な期間です。令和6年度の試験では、直前期の準備が合否に影響を与えた受験者が多い印象を受けます。直前期には、各科目の過去問を通じて出題傾向を把握したり、得点しやすい定番問題を何度も復習したりすることが効果的です。
また、直前期に陥りがちな悩みとして「やらなければならないことが膨大で何を優先してよいかわからない」という点があります。この場合には、「自分の不得意分野」と「試験での配点が高い重要分野」に焦点を当て、時間を効率的に配分することを徹底しましょう。加えて、二次試験対策への切り替えも意識した勉強時間の確保が、来年の試験対策としても有効です。
家族や職場の協力を得るためのコミュニケーション方法
学習を進めていく上で、家族や職場からの協力は非常に重要な要素です。令和6年度試験では、周囲のサポートを上手に引き出した受験者が多くの合格体験を語っています。
まず、試験のスケジュールや学習の進捗について家族と共有し、自分がどのような環境を必要としているかを具体的に説明することが大切です。また、職場においても中小企業診断士資格がどのように業務に役立つかを示し、業務時間外の学習時間が確保できるよう理解を得る工夫が求められます。
さらに、進捗を定期的に報告することで、家族や職場の協力者から励ましを受けたり、学習時間を守るためのサポートが得られる可能性を高められます。このような連携が試験成功への基盤を作ります。
息抜きとリフレッシュで集中力を高める秘訣
長期間にわたる中小企業診断士試験の学習では、多くの受験生が集中力の維持に苦労します。令和6年度試験から学んだ教訓の一つとして、適度な息抜きが学習の効率を向上させることが挙げられます。
勉強の効果を上げるためには、計画的に休息を取ることが鍵です。例えば、1～2時間勉強した後に10分程度の休憩を挟む「ポモドーロ・テクニック」を活用するのも一つの手です。また、週単位でリフレッシュの時間を設け、趣味や適度な運動で心身をリセットすることも有効です。
さらに、試験期間に向けてストレスを減らす工夫として、瞑想や深呼吸のようなリラクゼーション方法を取り入れる受験生も増えています。これらを取り入れることで集中力が増し、試験当日にベストの状態で臨むことにつながります。
