コトラ（広報チーム） 
はじめに
今、アセットマネジメント本を読む意義
現代社会では、少子高齢化の進展や社会保障制度の課題、そして政府が推進する「貯蓄から投資へ」の流れを受け、個人の資産運用に対する関心が高まっています。アセットマネジメントは、個人や機関投資家の資産を専門家が効率的に運用・管理する業務であり、その重要性は増すばかりです。この変化の時代において、アセットマネジメントに関する知識は、個人の資産形成だけでなく、キャリアを考える上でも不可欠なものとなっています。
想定読者と記事の構成
本記事は、資産運用の基本を知りたい初心者、業界の全体像を把握したい学生や若手社会人、さらに特定の分野で専門知識を深めたい実務経験者や転職希望者まで、幅広い層を対象としています。アセットマネジメントの定義や基本理論から始まり、実務者向けの専門知識、さらにはESG投資や国際規格といった最新トレンド、そしてキャリア形成に至るまで、多角的な視点から注目の書籍を紹介し、それぞれの目的に合った一冊を見つける手助けをします。
アセットマネジメントの基本が学べる入門書
資産運用・アセットマネジメントの定義
アセットマネジメントとは、資産（asset）と管理・運用（management）を組み合わせた言葉で、顧客や投資家の多様な資産を専門家が効率的に運用・管理する業務全般を指します。投資信託や投資顧問を通じて、国内外の株式、債券、不動産、デリバティブなど様々な金融商品に投資し、収益を還元することが主な役割です。これは、単に資産を増やすだけでなく、組織や個人の長期的な目標達成を支援し、経済的安定と成長を促進する重要な活動と言えます。
図解＋やさしい解説で理解しやすい書籍
アセットマネジメントの専門性の高さから、その全体像を理解するのは容易ではありません。しかし、図解を多用し、やさしい言葉で解説された入門書を選ぶことで、初心者でもスムーズに学習を進めることができます。
- 『図解入門ビジネス 最新 アセットマネジメントの基本と仕組みがよ～くわかる本』
- 資産運用・管理業の全体像を、図解を交えてやさしく解説しています。受託者責任に基づく行動規範や投資の基礎理論、多様な投資手法、アセットマネジメント・ビジネスの課題と展望など、幅広いテーマを網羅しており、金融機関での研修テキストとしても最適です。ESG投資やポートフォリオの考え方に関する新しい話題も加わり、知識の整理に役立ちます。
初心者・学生・若手社会人向け
アセットマネジメントの世界に足を踏み入れる初心者や学生、若手社会人には、基本的な概念からキャリアパスまでを網羅した書籍がおすすめです。
- 『アセットマネジメント業界の研究』
- 「社会と経済を金融から支えるプロの世界とキャリアがこれ1冊でわかる」を謳う一冊です。政府の「資産所得倍増プラン」やNISA、iDeCoの利用者増加に伴い注目されるアセットマネジメント業界の役割、業務内容、具体的な仕事、業界の未来展望までを解説しています。業界への理解を深めるための決定版と言えるでしょう。
実務者向けの専門書・業界書
業界特有の知識・用語の整理
アセットマネジメント業界では、専門性の高い知識や用語が数多く存在します。実務に携わる方や、これから業界を目指す方は、これらを体系的に整理できる書籍が不可欠です。
- 『資産運用のパフォーマンス測定【第2版】』
- 資産運用のパフォーマンス測定に関する最新の知識と技術を網羅的に解説しています。具体的な測定方法や評価基準、リスク管理の手法などが詳細に説明されており、投資家やファイナンシャルプランナーにとって非常に有用です。実際のケーススタディや具体例を通じて、理論だけでなく実践的なスキルも身につけることができます。
実務に役立つ体系的な書籍
実務経験者や転職希望者には、より深い知識と実践的なアプローチが学べる体系的な書籍が適しています。
- 『証券・資産運用 (【Q&Aでわかる業種別法務】)』
- 証券業界や資産運用に関する法務の基本から実務までをQ&A形式で解説した専門書です。証券取引法や金融商品取引法、投資信託法など、関連する法律の基礎知識から最新の法改正までを網羅しており、実務に役立つ情報が満載です。
実務経験者・転職希望者におすすめ
業界でのキャリアアップを目指す方には、専門性と実践力を高めるための書籍が役立ちます。
- 『アセットマネジメントの規制・会計・開示、内部統制』
- アセットマネジメントに関する規制、会計、開示、内部統制などを詳細に解説した専門書です。収益認識や時価算定基準、投資信託の併合や不動産投資法人の合併における会計処理、ベンチャーキャピタル＆ファンド、国際基準GIPSの改訂など、多岐にわたるトピックをカバーしており、実務で直面する複雑な問題に対する理解を深めることができます。
分野特化型・実践的アセットマネジメント本
会計・法務・不動産・インフラ別の書籍
アセットマネジメントは、金融資産だけでなく、不動産やインフラなど多岐にわたる分野でその重要性が高まっています。それぞれの分野に特化した書籍は、より実践的な知識を得るのに役立ちます。
- 会計・法務分野:『アセットマネジメントの規制・会計・開示、内部統制』
- この書籍は、投資信託の会計実務、不動産投資法人の会計処理とディスクロージャー制度、ベンチャーキャピタル＆ファンドの会計処理と開示、委託業務内部統制評価、GIPS基準と検証など、会計・法務に関する専門的な内容を深く掘り下げています。
- 不動産分野:『不動産投資で組み立てる 富裕層のための資産防衛戦略』
- 不動産は実物資産としてインフレや景気変動に強く、安定したリターンが期待できるため、富裕層の資産保全に最適な手段とされています。本書は、適切な物件選び、予算の組み立て方、不動産会社との付き合い方、節税や法人化に関する知識など、不動産投資を通じた資産防衛戦略を具体的に提案しています。
- インフラ分野:『実践 道路アセットマネジメント入門 – 継続的改善を実現するためのマネジメントの基本 -』
- 道路橋を対象に、アセットマネジメントの国際規格ISO 55000シリーズに準拠したマネジメントの方法論を提示しています。インフラアセットマネジメントの全体像、道路の社会的役割、道路橋のマネジメント目標に応じた技術的対応、実践のための支援ツールなど、インフラ管理に携わる実務者にとって非常に有用な内容です。
業界特化の書籍特徴と選び方
業界特化型の書籍を選ぶ際は、自身の専門分野やキャリアの方向性と合致しているかを確認することが重要です。理論だけでなく、実務事例やケーススタディが豊富に盛り込まれているかどうかも、書籍選びのポイントとなります。
実務事例・ケーススタディ
実務事例やケーススタディが豊富に掲載されている書籍は、現場での応用力を養う上で非常に役立ちます。例えば、インフラ分野の『実践 道路アセットマネジメント入門』では、劣化モデル構築のための支援ツールの適用事例などが紹介されており、具体的な問題解決のアプローチを学ぶことができます。
最新トレンドを学べる本の紹介
ESG投資・フィデューシャリー・デューティ
近年、資産運用業界で注目されているトレンドとして、ESG投資とフィデューシャリー・デューティがあります。
- ESG投資: 『最新アセットマネジメントの基本と仕組みがよ～くわかる本 第2版』
- ESG投資は、環境（Environment）、社会（Social）、ガバナンス（Governance）の要素を考慮した投資であり、企業の持続的な成長を促すだけでなく、投資家のリスクとリターンにも影響を与えます。本書は、アセットマネジメントの基礎知識に加え、ESG投資のような新しい話題を盛り込み、最新の動向を理解するのに役立ちます。
- フィデューシャリー・デューティ: 『アセットマネジメントに求められる行動規範』
- フィデューシャリー・デューティ（受託者責任）とは、顧客の利益を最優先に行動する義務のことです。本書では、アセットマネジメントにおける受託者責任や顧客本位の業務運営、日本版スチュワードシップ・コードなど、運用会社に求められる倫理観や行動規範について詳細に解説しています。
国際規格（ISO 55001など）
アセットマネジメントの国際的な標準化も進んでおり、ISO 55001などの国際規格に関する知識は重要です。
- ISO 55000シリーズ: 『JAAM ガイドブックシリーズ実務者のための道路施設アセットマネジメントガイドライン』
- このガイドブックは、アセットマネジメントの国際規格であるISO 55000シリーズの国内審議団体であるJAAMが編著しており、道路施設を対象としたISO 55001認証取得組織が増加している背景を受け、システム構築における留意点や効果的な構築方法について解説しています。
国内外の最新動向、規制・法制度本
アセットマネジメントを取り巻く環境は常に変化しており、国内外の最新動向や規制・法制度に関する知識は不可欠です。
- 『アセットマネジメントの規制・会計・開示、内部統制』
- 金融商品取引法、投資信託及び投資法人に関する法律、犯罪収益移転防止法、証券訴訟など、アセットマネジメントに影響を与える様々な法制度についてQ&A形式で解説されており、実務者が直面する法務上の課題を解決するための指針となります。
アセットマネジメント業界のキャリア・就活本
資産運用会社の業務・職種解説
アセットマネジメント業界でのキャリアを考える上で、資産運用会社の具体的な業務内容や職種について理解することは非常に重要です。
- 『アセットマネジメント業界の研究』
- 資産運用会社がどのような役割を担い、投資信託の仕組みはどうなっているのか、具体的な仕事内容や業界の未来展望まで詳しく解説しています。運用会社4社の協力のもと作成されており、リアルな業界像を把握できます。
求められるスキル・キャリアパス
アセットマネジメント業界で活躍するためには、特定のスキルや能力が求められます。
- 求められるスキル:
- 分析力と判断力：市場動向、経済指標、企業のファンダメンタルズなどを迅速かつ正確に分析し、投資判断を下す能力。
- コミュニケーション能力とリーダーシップ：顧客、チームメンバー、関係者との円滑な情報交換と協力体制を築く能力。
- 市場の知識と洞察力：金融市場の知識に加え、少子高齢化や社会保障制度の動向といったマクロな視点から投資戦略を立案する能力。
- PCスキルとデジタルツールの活用力：ExcelやPowerPointはもちろん、データ分析ツールや賃貸管理システムなどのデジタルツールを使いこなす能力。
- キャリアパス:
- 一般的にはアナリストからスタートし、経験を積んでファンドマネージャーへと昇進する道があります。また、株式、債券、不動産、デリバティブなど特定の専門分野でのキャリアを構築することも可能です。キャリアアップに有利な資格としては、CFA（米国証券アナリスト資格）、日本証券アナリスト資格（CMA）、MBAなどが挙げられます。
体験談や業界インタビュー本
業界のリアルな声や体験談は、就職活動やキャリア形成において貴重な情報源となります。
- 『アセットマネジメント業界の研究』
- 岸田文雄前首相や油布志行金融庁企画市場局長の特別インタビューが収録されており、業界のトップランナーたちの視点から、アセットマネジメントの未来や社会的な役割について深く学ぶことができます。
書籍選びのポイントと活用方法
図解・体系的・読物型それぞれの特徴
- 図解本：視覚的に分かりやすく、初心者でもとっつきやすいのが特徴です。概念の全体像を素早く掴むのに適しています。
- 体系的専門書：網羅的に知識を深めたい実務者や研究者向けです。各トピックの関連性や背景を深く理解できます。
- 読物型（インタビュー・体験談）：業界の生の声を学びたい方や、キャリアパスを具体的にイメージしたい方に適しています。
目的別おすすめ選書
- 資産運用の基本を知りたいなら、『図解入門ビジネス 最新 アセットマネジメントの基本と仕組みがよ～くわかる本』。
- 業界の裏側やキャリアパスを知りたいなら、『アセットマネジメント業界の研究』。
- 会計や法務の実務事例が知りたいなら、『アセットマネジメントの規制・会計・開示、内部統制』。
- ESG投資や国際規格といった最新トレンドを学びたいなら、『最新アセットマネジメントの基本と仕組みがよ～くわかる本 第2版』。
効率よく知識を吸収する読書法
- まずは興味のある章から読む：専門書は全てを最初から読み込む必要はありません。目次を確認し、今知りたい情報に焦点を当てて読み始めましょう。
- 図解や事例を重視する：抽象的な概念は、図や具体的な事例で理解を深めるのが効果的です。
- アウトプットを意識する：読んだ内容を自分なりにまとめたり、誰かに説明したりすることで、知識の定着を図ることができます。
まとめ
これからのアセットマネジメント学習に向けて
アセットマネジメントは、個人の資産形成から国家経済の基盤を支えるまで、多岐にわたる重要な分野です。その学習は一朝一夕にはいきませんが、今回紹介した書籍を参考に、自身のレベルや目的に合わせて知識を深めていくことで、将来の選択肢を広げることができるでしょう。
本記事の活用方法
本記事では、アセットマネジメントに関する多様な書籍を、目的別に分類して紹介しました。ぜひこのまとめをガイドとして活用し、あなたの学習目標に最適な一冊を見つけて、アセットマネジメントの世界を深く探求してください。
