6GとAIが変える、私たちの生活と働き方:10年で世界はこう変わる

6GとAIがもたらす未来の輪郭

通信技術は、10年ごとに私たちの生活や働き方を根本から塗り替えてきました。4GはスマートフォンとSNSを、5GはIoTと動画社会を加速させたことは記憶に新しいかと思います。

そして現代、2020年代後半から2030年にかけて、次世代通信技術「6G(Beyond 5G)」の実用化に向けた国際的な取り組みが加速しています。同時に、AI(人工知能)は生成系モデルの進化により、社会のあらゆる領域に深く浸透しつつありますが、これらの技術は単なる進化ではなく、私たちの暮らしや働き方、価値観までも再構築する大きな変革の波なのです。

本稿では、今後、情報社会の基盤となる6Gと、今もなお進化し続けているAIが、どのように社会に変革をもたらすかについて、述べられている見解をまとめます。

6Gとは何か?──次世代通信が実現する社会

6Gは、単なる通信速度の向上に留まらず、私たちの社会のあり方を根本から変革する可能性を秘めた次世代通信インフラです。超高速・超低遅延・超多数同時接続といった通信性能の飛躍的な向上に加え、「ユビキタスなカバレッジ」と「AIネイティブネットワーク」という2つの大きな特徴が、現実世界(フィジカル空間)とデジタル世界(サイバー空間)が密接に連携する「サイバー・フィジカル融合社会」の到来を加速させます。

超高速・超低遅延・超多数同時接続
  • 超高速通信: 6Gは、5Gの最大10Gbpsを大きく上回る、最大1Tbps(テラビット毎秒)のデータ転送速度を目指しています。これにより、8Kビデオコンテンツのリアルタイムストリーミングや、高精細なVR/AR(仮想現実/拡張現実)体験、ホログラフィック通信などが遅延なく実現可能になります。
  • 超低遅延: 5Gの1ミリ秒(ms)程度の遅延に対し、6Gはサブミリ秒、または100マイクロ秒(µs)以下という極めて低い遅延を目指しています。これは、自動運転車がリアルタイムで周囲の状況を認識し、瞬時に判断を下すような、ミッションクリティカルなアプリケーションにおいて不可欠な要素となります。
  • 超多数同時接続: 6Gは、1平方キロメートルあたり1000万デバイスの接続を可能にするなど、5Gよりもはるかに多くのデバイスが同時にネットワークに接続できるようになります。IoTデバイスの爆発的な増加に対応し、スマートシティやスマートファクトリーといった大規模なIoT環境が構築できるようになるのです。
    ユビキタスなカバレッジ(空・海・宇宙も含む)

     6Gは、地上のネットワークだけでなく、衛星、航空機、船舶などを活用した統合ネットワークの構築を目指しています。山間部、海上、災害時など、これまでの通信網ではカバーしきれなかったあらゆる場所で、いつでもどこでも高品質な通信を実現したいのです。このことを「Space-Air-Ground-Sea Integrated Network (SAGSIN)」と言い、グローバルなカバレッジを確保し、地理的な制約なくサービスを提供できるようになります。

    AIネイティブネットワーク(AIによる自律運用が前提)

    6Gネットワークは、AIが設計段階から深く組み込まれた「AIネイティブ」な構造を特徴とします。5GのようにAIが既存インフラの最適化に用いられるのとは異なり、ネットワークの運用、管理、最適化がAIによって自律的に行われるという意味です。AIは、ネットワークデータの分析、パターン認識、予測モデリングを通じて、ネットワークのパフォーマンスをリアルタイムで最適化し、問題発生を未然に防ぎます。これにより、ネットワークは自己進化し、常に最適な状態で稼働することが可能になります。

    これらの特徴が複合的に作用することで、「サイバー・フィジカル融合社会」が到来します。現実世界のさまざまな情報がデジタルデータとしてサイバー空間に取り込まれ、AIによって解析・処理された上で、その結果が再び現実世界にフィードバックされ、私たちの行動や環境に影響を与える社会の形です。

    具体的には、超高速の通信により、現実世界とサイバー空間の情報のやり取りがほぼリアルタイムで行われたり、物理的なモノやシステムがサイバー空間上に「デジタルツイン」として再現され、AIによるシミュレーションや分析が可能になります。これらは、事故防止や都市計画の最適化に有効です。

    また、センサーやデバイスからの膨大なデータが6Gネットワークを通じて収集され、AIによって高度に分析されることで、これまでになかったパーソナライズされたサービスや、没入感のある体験が生まれます。

    6Gは、単なる通信技術の進化に留まらず、私たちの生活、産業、社会のあり方そのものを再定義する、重要な基盤となるでしょう。

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    AIとクラウドが“当たり前”になる社会

    かつて電気が産業や生活のあらゆる側面に不可欠なインフラとなったように、現代においてはAI(人工知能)とクラウドコンピューティングが、私たちの社会、経済、そして個人の生活に深く統合され、その前提を大きく変えようとしています。これらは、特定の技術やサービスとして認識されるのではなく、インフラとして「空気のように」存在し、あらゆる意思決定と活動の基盤となる社会が到来しつつあるのです。

    生成AIが日常業務や教育、医療に浸透

    ChatGPTに代表される生成AIは、テキスト、画像、音声、コードなどを新たに創造する能力を持ち、その応用範囲は急速に拡大しています。

    例えば、日常業務では、企画書、メール、報告書の下書き作成、マーケティング資料のコピーライティング、プレゼンテーションの骨子作成などが自動化され、人間はより創造的で戦略的な業務に集中できるようになりました。その他、AIによるカスタマーサポートや情報検索も主流になっています。教育においても、 生徒一人ひとりの理解度や学習スタイルに合わせた教材の生成、問題演習の提供、フィードバックが可能になり、より効果的な学習体験を提供したり、教員による採点や教材準備、事務作業の負担も軽減されます。医療では、医師が患者の症状、検査結果、既往歴、そして最新の医学論文から得られる膨大な情報を基に、生成AIが診断の選択肢や治療計画の候補を提示し、意思決定を支援することができます。

    クラウドネイティブ社会の中でデータがあらゆる意思決定の前提に

    クラウドネイティブ」とは、クラウドコンピューティングの特性を最大限に活用するように設計・構築されたシステムやアプリケーション、そしてそれらが当たり前のように運用される社会全体を指します。クラウドを介して、様々な組織や個人が、リアルタイムで生成される膨大なデータにアクセスしやすくなるだけでなく、これに基づいて製品開発の方向性を決定することができるのです。

    そして、この動きをAIモデルが学習し、収集された膨大なデータからこれまで見過ごされてきたパターンやインサイトを発見します。これにより、更に予測精度が向上し、より的確な戦略や行動が導き出されるというサイクルが生み出されます。

    このように、私達の生活や仕事の全てにAIが組み込まれる社会になってきているのです。

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    脳科学×AI──ヒューマン・テックの進化

    6Gは、単なる通信インフラではありません。人間の生体情報や脳波すらネットワーク化される未来も想定されています。

    ブレイン・マシン・インタフェース(BMI)

    現在も研究開発が進むBMIは、脳波を直接読み取り、機器の操作などに応用する技術です。6Gの超高速・大容量通信とAIのリアルタイム解析能力が組み合わさることで、さらなる進化が見込まれています。例えば、個人の感情の起伏や集中度を、脳波からAIが瞬時に解析し、データとして可視化できるようになります。これには、学習効率の向上や、メンタルヘルスケアへの応用が期待されています。その他にも、個人の脳の状態(ストレスレベル、疲労度など)に応じて、照明や室温といったオフィス環境を自動調整したり、休憩を促すなど、働き方を最適化するシステムも実現可能になるのです。生産性向上だけでなく、ウェルビーイングの向上にも寄与すると言えます。

    メタゲノム×AIによるヘルスケア革命

    「メタゲノム」とは、環境中の微生物群集全体のゲノム情報を指します。これをAIで解析することで、個人の体質に合わせた医療や食品の提案が実現できます。具体的には、腸内細菌叢などの微生物ゲノム情報をAIが解析することで、将来なりやすい病気のリスクを予測したり、あるいは現在の健康状態を詳細に把握したりすることができます。個々人に最適化された食事指導やサプリメントの提案など、病気になる前の「予防」に重点を置いた医療が大きく進展することでしょう。

    また、ウェアラブルデバイスなどから収集される生体情報と、メタゲノム解析から得られる情報をAIが統合的に解析することで、個人の健康状態をリアルタイムで把握し、異常があればすぐに警告したり、適切なアドバイスを提供したりするシステムも期待されます。

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    “未来予想”ではなく“計画”となった「シンギュラリティ」

    かつてはSFの世界の話のように思われていた技術的特異点(シンギュラリティ)ですが、現代においてはその捉え方が大きく変化しています。レイ・カーツワイルが提唱した「AIが人間の知能を超える転換点」という概念は、もはや単なる未来の予測ではなく、現実の技術開発における重要な「アジェンダ(行動計画)」として世界中で認識され、具体的な取り組みが進められています。

    例えば、近年のAIによる知的タスクの代替は、これを裏付けています。画像認識、音声認識、自然言語処理など、これまで人間が担ってきたタスクの多くがAIによって代替され始めており、特に、大量のデータからパターンを学習し、予測や意思決定を行う能力は、すでに人間を凌駕する領域と言えるでしょう。

    この進展は、シンギュラリティが単なる空想ではなく、「いかにしてAIと共存し、その能力を最大限に活用していくか」という、人類にとって喫緊の課題であることを示しています。

    AIが人間の知能を凌駕する「超知能」が実現すれば、科学、医療、経済、社会システムなど、あらゆる分野でこれまでにないほどの劇的な変化が起こると予想されています。シンギュラリティは、技術的なマイルストーンであると同時に、私たちの社会のあり方そのものを根本から問い直す契機ともなっているのです。

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    私たちの働き方はどう変わるのか?

    これまで説明してきたように、テクノロジーの急速な進化は、私たちの「仕事」や「職業」のあり方を根本から変化させようとしています。これからの未来、何がどのように変わっていくのでしょうか。

    場所に縛られない働き方

    未来の働き方は、物理的な場所に縛られることがますます少なくなります。6Gが提供する低遅延環境は、まるで同じ空間にいるかのようなリアルタイムなコミュニケーションを可能にするため、地理的な距離はほとんど障壁になりません。

    加えて、仮想現実(VR)や拡張現実(AR)技術の進化と6Gを組み合わせることで、メタバース(仮想空間)内でのオフィスが一般的になる未来もありえます。アバターとして仮想空間に出社し、同僚と3D空間で会議をしたり、共同でプロジェクトを進める働き方が可能になるのです。

    世界中を移動しながら働く「デジタルノマド」というライフスタイルを、より多くの人が選択できるようになるでしょう。

    専門性の再構築

    AIの進化は、多くの定型的な業務やデータ分析、情報整理などを代替するようになります。 AIは膨大なデータからパターンを学習し、効率的にタスクをこなすことができますが、複雑な問題の本質を見抜き、「どのような問いを立てるべきか」を考える力や、まだ存在しないものをゼロから創造し、全体像を「構想する力」は、依然として人間の領域です。AIが答えを出すために必要な「良い問い」を設定する能力や、 未来のビジョンを描き、それを実現するための戦略やシステムを総合的に設計する能力、AIを単なるツールとして使うだけでなく、強みを理解し、それを最大限に引き出しながら協働する能力が、新しい専門性の一部となります。

    バイオデータ活用

    バイオデータを提供していくことで、パーソナライズされたサービスや、スキルアップ支援を受けることが可能になります。睡眠、食事を含む健康状態の改善や、一人ひとりに合った学習方法の提示など、AIを活用することで、個人の生産性を高めることができます。

    2030年代の「働く」は、単なる業務の遂行にとどまらず、テクノロジーとの協働、そして自身の能力を継続的に発展させる自己変革のプロセスになると言えるのです。

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    私たちはどう備えるべきか?

    テクノロジーが社会を大きく変革していく中で、私たち人間もまた、その変化に適応し、主体的に未来を築いていくための準備が必要です。具体的には、「学び直し」、「制度設計」、そして「倫理観のアップデート」が不可欠となります。これらを推進するために、以下の3つの視点を持つことが求められます。

    テクノロジーを「使いこなす力」

    これからの時代は、テクノロジーを単に受動的に利用するだけでなく、その可能性を最大限に引き出し、自身の目的達成のために能動的に活用する力が不可欠になります。特定のツールやソフトウェアの操作方法を覚えるだけでなく、適切な指示をしてAIと協働する能力や、データに基づいて意思決定を行う「データリテラシー」といった、より本質的なスキルを指します。技術の進化は速いため、常に新しいツールや概念を学び続ける「生涯学習」の姿勢が何よりも重要になります。

    社会実装における現場との対話力

    どんなに優れたテクノロジーも、それが実際に社会で機能し、人々に受け入れられるためには、「現場」の声を深く理解し、それに基づいた丁寧な調整が不可欠です。技術開発者や政策立案者は、利用者、企業、市民など、多様なステークホルダーとの対話を通じて、それぞれのニーズや懸念を把握し、技術がもたらす影響を多角的に評価していくことが必要です。

    規制・ガバナンスの議論とルール形成

    AIやバイオテクノロジーのような革新的な技術は、私たちの生活や社会構造に大きな恩恵をもたらす一方で、プライバシーの侵害、倫理的な問題、格差の拡大といった新たな課題を生み出す可能性があります。これらのリスクを管理し、技術が社会に健全に貢献するための枠組みとして、「規制・ガバナンスの議論」と「ルール形成」が極めて重要です。技術の進展に合わせた法制度の整備、国際的な協力によるガイドラインの策定、そして企業や研究機関における自主的な倫理原則の確立など、多層的なアプローチを通じて、技術の健全な発展を促進し、その負の側面を最小限に抑えるための努力が求められます。

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    おわりに

    これまでに見てきたように、テクノロジーの進化は、私たちに多くの恩恵をもたらす一方で、適応と変革を求めます。

    しかし、それは決して脅威ではなく、より豊かで持続可能な社会を築き、私たち自身の可能性を広げるための「機会」でもあります。テクノロジーを賢く使いこなし、社会全体で新たな価値を創造していくという私たちの探求こそが、今後10年、そしてその先の未来を切り拓いていくでしょう。

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    この記事を書いた人

    コトラ(広報チーム)

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