公認会計士から財務アドバイザリー(FA)へ──監査経験を活かすキャリア転換のステップ

近年、M&A市場の活性化や事業再編ニーズの高まりに伴い、財務アドバイザリー(FA:Financial Advisory)業務の重要性が急速に増しています。監査法人やコンサルティングファームで培った財務分析力やリスク評価能力を活かし、公認会計士がFA業務へ転職するケースも増加しています。本記事では、公認会計士が財務アドバイザリー(FA)に転職するためのステップ、活かせるスキル、選考対策、志望動機・職務経歴書の記載例まで、実践的に解説します。

1. 公認会計士と財務アドバイザリーの業務の違い

まずは両者の業務領域とアプローチの違いを整理しておきましょう。

項目公認会計士(監査業務中心)財務アドバイザリー(FA)
主な目的財務諸表の適正性を第三者視点で検証M&A、再編における企業価値最大化支援
業務内容財務諸表監査、内部統制監査、会計アドバイザリー財務デューデリジェンス、企業価値評価、M&Aストラクチャリング
視座独立性・客観性重視(検証者の立場)クライアントの利益追求(支援者の立場)
関与部門被監査企業、監査チーム、監督当局経営陣、投資家、弁護士・会計士・税理士チーム

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2. 公認会計士経験で活かせるスキル

公認会計士として培った以下のスキルは、財務アドバイザリー業務においても大きな武器となります。

  • 財務諸表分析力・リスク検出力
  • 内部統制の理解とリスクアセスメント能力
  • 財務デューデリジェンスに直結する監査手続経験
  • マルチタスク・ハードワーク対応力
  • プロフェッショナルとしての倫理観とコミュニケーション力

特に、企業活動を数値面から立体的に捉える力は、FA業務において即戦力となります。

3. 転職成功のための5ステップ

  1. FA業務の理解:財務デューデリジェンス、バリュエーション、M&Aプロセスの全体像を把握
  2. 自身の強みの棚卸し:監査業務で培った財務リスク分析・報告経験を整理
  3. 財務モデリングスキルの習得:DCF法、マルチプル法による企業価値評価演習
  4. ビジネスデューデリジェンス視点の養成:定量情報だけでなく、ビジネスモデル・業界理解を深める
  5. 面接対策:なぜ監査業務からFAへ?キャリア志向と適性をロジカルに語れるよう準備

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4. 資格・知識面の補強ポイント

必須ではありませんが、以下の知識・スキルがあると転職活動で優位になります。

  • バリュエーション知識(DCF、マルチプルアプローチ)
  • M&Aファイナンス知識(資金調達スキーム、ストラクチャリング)
  • ビジネス英語力(TOEIC800点以上推奨)
  • 企業再編・再生案件の基礎知識

また、公開M&A事例を分析し、自主的に企業価値評価練習を行うことも効果的です。

5. 職務経歴書の書き方

下記のように、財務リスク検出力・クライアント支援力・プロジェクト推進力を強調して記載すると効果的です。

  • 上場企業向け監査業務(リスクアプローチ型監査)経験
  • 財務諸表分析に基づくリスクアセスメント・改善提案
  • 内部統制評価、SOX対応支援
  • クロスボーダー案件対応経験(英文財務諸表監査)

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6. 志望動機の例文

財務リスク分析力とクライアント支援意欲を中心に構成します。

【志望動機例】

私はこれまで、監査法人において上場企業・グローバル企業を対象とした財務諸表監査業務に従事し、財務リスク分析・内部統制評価・経営層向け提案を経験してまいりました。こうした経験を通じて、単なる検証者ではなく、企業成長・変革を財務面から主体的に支援したいという志向が強まり、財務アドバイザリー(FA)領域へのキャリア転換を志望いたしました。これまで培った財務リスク感度とクライアントワーク経験を活かし、貴社のM&Aアドバイザリー・企業価値向上支援に貢献していきたいと考えております。

7. まとめ

公認会計士出身者は、財務リスク分析力、内部統制理解力、クライアントマネジメント力を武器に、財務アドバイザリー領域で活躍できる素地を十分に備えています。監査業務で培った厳密な分析力と、企業成長への貢献意欲を掛け合わせることで、FA転職の成功を目指しましょう。


【職務経歴書(サンプル)】

氏名:佐々木 悠介
生年:1989年生まれ

■職務要約:
大手監査法人にて約7年間、製造業・IT業界・金融業界の上場企業監査に従事。財務諸表監査、内部統制評価(J-SOX)、リスクベース監査を経験。クロスボーダー案件(英文財務諸表監査)にも対応。今後は、企業成長支援により主体的に関与するべく、財務アドバイザリー領域へのキャリア転換を志向。

■職務経歴:
〇〇有限責任監査法人(2016年4月~現在)
・上場企業向け財務諸表監査(日本基準・IFRS)
・内部統制監査(J-SOX対応)
・財務リスクアセスメント・監査計画策定
・クロスボーダー監査対応(英文FS監査)
・経営層向け内部統制改善提案レポート作成

■保有資格:
・日本国公認会計士
・TOEIC 870点

■学歴:
早稲田大学 商学部卒(2013年3月)

この記事を書いた人

コトラ(広報チーム)

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