スタートアップ市場の活況を背景に、ベンチャーキャピタル(VC)投資担当のニーズは年々高まっています。経営企画で培った事業分析力、戦略立案力、財務知識は、スタートアップを見極め、投資判断を行うVC業務において極めて有効です。本記事では、経営企画出身者がベンチャーキャピタル投資担当に転職するためのステップ、活かせるスキル、選考対策、志望動機・職務経歴書の記載例まで、実践的に解説します。
1. 経営企画とベンチャーキャピタル投資担当の業務の違い
まずは両者の業務領域と求められる視点の違いを整理しておきましょう。
項目 | 経営企画 | ベンチャーキャピタル投資担当 |
---|---|---|
主な目的 | 自社の経営戦略・事業計画推進 | 有望なスタートアップへの投資・育成支援 |
業務内容 | 中期経営計画策定、事業分析、予算管理 | 案件発掘、デューデリジェンス、投資実行、ハンズオン支援 |
視座 | 自社内の事業最適化・成長戦略 | 外部企業の成長支援と投資リターンの最大化 |
関与部門 | 経営陣、各事業部門、財務・経理部門 | スタートアップ経営陣、外部投資家、LP(出資者) |
2. 経営企画経験で活かせるスキル
経営企画で培った以下のスキルは、ベンチャーキャピタル投資業務においても大きな武器となります。
- 事業戦略・ビジネスモデル分析力
- 財務分析・予実管理スキル
- 資料作成・プレゼンテーション能力
- 経営層とのコミュニケーションスキル
- リスク評価・意思決定サポート力
特に、事業計画の現実性や成長シナリオを見抜く力は、投資判断において不可欠です。
3. 転職成功のための5ステップ
- VC業務の理解:ソーシング、デューデリジェンス、投資契約、バリューアップ支援の流れを把握
- 自身の強みの棚卸し:事業分析、戦略策定、経営層提案経験を整理
- スタートアップ知識の習得:最新トレンド、資金調達環境、ビジネスモデル動向をキャッチアップ
- 財務モデリングスキルの強化:DCF法、ベンチャーバリュエーション手法の理解
- 面接対策:なぜ経営企画からVC投資担当に挑戦するのかをロジカルに語れるよう準備
4. 資格・知識面の補強ポイント
必須ではありませんが、以下の知識・スキルがあると転職活動で優位になります。
- ベンチャーファイナンス・M&A関連知識
- 証券アナリスト資格、USCPA科目合格など
- ビジネス英語力(スタートアップ・VC業界では重要)
- スタートアップ業界イベント・勉強会への参加経験
また、自主的にスタートアップ企業分析や投資検討ロジックをまとめる練習も効果的です。
5. 職務経歴書の書き方
下記のように、事業戦略策定・財務管理・経営層向け提案実績を強調して記載すると効果的です。
- 中期経営計画策定プロジェクトリード
- 新規事業企画・立ち上げ支援経験
- 経営層向け戦略資料作成・プレゼン実施経験
- 財務諸表分析・KPIモニタリング実績
6. 志望動機の例文
事業成長支援への熱意と、経営視点を持つ強みを中心に構成します。
【志望動機例】
私はこれまで、事業会社の経営企画部門にて、中期経営計画策定、新規事業開発支援、財務分析業務に携わってまいりました。こうした経験を通じて、より多様な成長企業の支援に携わり、事業成長を資金面・戦略面から後押ししたいという志向が強まり、ベンチャーキャピタル投資担当職を志望いたしました。これまで培った事業分析力・戦略構築力・経営層コミュニケーション力を活かし、貴社の投資活動およびバリューアップ支援に貢献していきたいと考えております。
7. まとめ
経営企画出身者は、事業理解力、財務分析力、経営層対応力というVC業務に不可欠な素養を備えています。スタートアップ業界の知識を補強し、自らの強みを投資活動にどう生かせるかを明確にアピールすることで、キャリア転換の成功を目指しましょう。
【職務経歴書(サンプル)】
氏名:石田 翔太 生年:1991年生まれ ■職務要約: 大手事業会社の経営企画部門にて約6年間、中期経営計画策定、新規事業開発支援、財務分析、経営層向け戦略提案に従事。経営視点での事業成長支援を通じて、スタートアップ支援・投資業務への志向を強め、ベンチャーキャピタル投資担当へのキャリア転換を志向。 ■職務経歴: 〇〇株式会社(2017年4月~現在) ・中期経営計画策定プロジェクト推進 ・新規事業企画・市場調査・収支シミュレーション作成 ・経営層向け戦略提案資料作成・プレゼンテーション ・月次財務分析・KPI管理レポート作成 ■保有資格: ・証券アナリスト資格 一次試験合格 ・TOEIC 830点 ■学歴: 一橋大学 商学部卒(2015年3月)