不動産ファイナンス(Real Estate Finance)は、物件の価値評価や投資分析、資金調達スキームの設計などを通じて、不動産取引や開発プロジェクトを支える重要な分野です。不動産営業で培った物件目利き力、マーケット感覚、交渉力は、不動産ファイナンス担当としても非常に有効に機能します。本記事では、不動産営業出身者が不動産ファイナンス担当に転職するためのステップ、活かせるスキル、選考対策、志望動機・職務経歴書の記載例まで、実践的に解説します。
1. 不動産営業と不動産ファイナンスの業務の違い
まずは両者の業務領域と求められる視点の違いを整理しておきましょう。
項目 | 不動産営業 | 不動産ファイナンス担当 |
---|---|---|
主な目的 | 不動産売買・仲介による収益獲得 | 不動産取引・開発プロジェクトの資金調達支援・投資分析 |
業務内容 | 物件紹介、価格交渉、契約締結支援 | 不動産評価、収支シミュレーション、ローンアレンジ、投資分析 |
視座 | 短期的な売上・受注獲得 | 中長期的な投資リターン・リスク管理 |
関与部門 | エンドユーザー、仲介会社、売主・買主 | 金融機関、投資家、デベロッパー、アセットマネージャー |
2. 不動産営業経験で活かせるスキル
不動産営業で培った以下のスキルは、不動産ファイナンス担当においても大きな武器となります。
- 物件目利き力(ロケーション、スペック、収益性評価)
- 不動産市場動向への感度
- 価格交渉・関係構築スキル
- 契約実務(売買契約、重要事項説明)の理解
- 顧客折衝力・ステークホルダーマネジメント力
特に、現場感覚を持ちながら、数値に基づく投資判断ができる人材は高く評価されます。
3. 転職成功のための5ステップ
- 不動産ファイナンス業務の理解:物件評価、収益シミュレーション、融資スキーム設計の基本を学習
- 自身の強みの棚卸し:物件目利き、交渉実績、市場分析力などを整理
- 財務知識の習得:DCF法、IRR、キャッシュフロー分析、LTVなど基本指標を理解
- ファイナンスドキュメント理解:タームシート、ローン契約書などの基本構成を把握
- 面接対策:なぜ営業からファイナンス職へ?を論理的に語れるよう準備
4. 資格・知識面の補強ポイント
必須ではありませんが、以下の資格・知識があると転職活動で優位になります。
- 宅地建物取引士(宅建)
- 不動産証券化マスター(ARES認定)
- 不動産鑑定士(試験一部合格含む)
- 簿記2級程度の会計知識
また、REIT、私募ファンド、ノンリコースローン等の基礎知識も習得しておくと説得力が高まります。
5. 職務経歴書の書き方
下記のように、物件評価力・収益性提案力・交渉実績を強調して記載すると効果的です。
- 収益不動産(オフィスビル、レジデンス等)の売買仲介実績
- 顧客ニーズに基づく投資提案・収支シミュレーション作成経験
- ローンアレンジ支援(銀行との条件調整サポート)
- マーケットレポート作成・市場動向分析経験
6. 志望動機の例文
マーケット感覚とファイナンスへの興味を中心に構成します。
【志望動機例】
私はこれまで、不動産営業として、収益物件の売買仲介業務に従事し、物件評価、価格交渉、契約実務に携わってまいりました。こうした経験を通じて、単なる売買仲介にとどまらず、不動産価値の最大化や資金調達スキーム設計にまで踏み込み、よりダイナミックに事業支援を行いたいという志向が強まり、不動産ファイナンス領域へのキャリア転換を志望いたしました。これまで培ったマーケット感覚と営業力を基盤に、貴社のファイナンス業務に貢献していきたいと考えております。
7. まとめ
不動産営業出身者は、物件評価力、市場感覚、交渉力という不動産ファイナンス業務に不可欠な素養を備えています。財務知識と数値分析力を補強し、自身の経験を具体的にアピールすることで、キャリア転換の成功を目指しましょう。
【職務経歴書(サンプル)】
氏名:小林 涼介 生年:1990年生まれ ■職務要約: 不動産会社にて約7年間、収益不動産(オフィスビル、レジデンス等)の売買仲介営業に従事。物件評価、投資提案、価格交渉、契約締結支援まで一貫して担当。今後は、不動産ファイナンス領域において、物件価値最大化・資金調達支援を通じた事業推進に貢献すべくキャリア転換を志向。 ■職務経歴: 〇〇不動産株式会社(2016年4月~現在) ・収益不動産売買仲介業務(物件ソーシング、価格交渉、クロージング) ・顧客向け収支シミュレーション資料作成 ・ローンアレンジサポート(銀行条件交渉) ・不動産マーケットレポート作成 ■保有資格: ・宅地建物取引士 ・ARES認定 不動産証券化マスター ・簿記2級取得予定 ■学歴: 明治大学 商学部卒(2015年3月)