社会課題の解決と経済的リターンの両立を目指すインパクト投資は、近年急速に注目を集める分野です。NPOで培った社会課題への理解、プロジェクト推進力、ステークホルダー調整力は、インパクト投資担当者としても大きな強みとなります。本記事では、NPOスタッフ出身者がインパクト投資担当に転職するためのステップ、活かせるスキル、選考対策、志望動機・職務経歴書の記載例まで、実践的に解説します。
1. NPOスタッフとインパクト投資担当の業務の違い
まずは両者の業務領域と求められる視点の違いを整理しておきましょう。
項目 | NPOスタッフ | インパクト投資担当 |
---|---|---|
主な目的 | 社会課題解決プロジェクト推進 | 社会的リターンと経済的リターンの最大化 |
業務内容 | プロジェクト運営、資金調達、啓発活動 | 投資先選定、インパクト評価、リスク管理 |
視座 | 社会貢献重視 | 持続可能な社会貢献と投資収益の両立 |
関与部門 | 寄付者、行政、地域コミュニティ | ファンドマネージャー、投資先企業、インパクト評価機関 |
2. NPOスタッフで活かせるスキル
NPO業務で培った以下のスキルは、インパクト投資においても大きな武器となります。
- 社会課題に対する深い理解
- プロジェクトマネジメント力
- 資金調達・ファンドレイジング経験
- 関係者調整・コミュニケーション力
- インパクト評価・成果指標設計スキル
特に、社会的リターンを数値化・可視化する視点はインパクト投資で高く評価されます。
3. 転職成功のための5ステップ
- インパクト投資業務の理解:投資プロセス、インパクト測定手法(IMM)を学習
- 自身の強みの棚卸し:社会課題理解力、プロジェクト推進力、成果測定経験を整理
- ファイナンス基礎知識の習得:財務諸表、DCF法、バリュエーション手法の基礎理解
- インパクト測定の学習:GIIN、IRIS+、SDGs指標などへの理解を深める
- 面接対策:なぜNPOからインパクト投資なのかを論理的に語れるよう準備
4. 資格・知識面の補強ポイント
必須ではありませんが、以下の資格・知識があると転職活動で優位になります。
- 証券アナリスト(CMA)やCFA資格(レベル1以上)
- SDGs、ESG、インパクト投資に関する専門研修受講
- ファンドレイジングコーディネーター資格
- 簿記2級(財務分析基礎力)
また、GIIN、AVPNなどインパクト投資関連団体のレポートを日常的に読む習慣を持つとよいでしょう。
5. 職務経歴書の書き方
下記のように、社会課題理解力、成果測定力、プロジェクト推進力を強調して記載すると効果的です。
- 社会課題解決プロジェクトの企画・運営経験
- インパクト測定・報告書作成経験
- 資金調達・ドナーリレーション構築経験
- 関係機関(行政・企業)との連携プロジェクト推進経験
6. 志望動機の例文
社会課題解決への情熱とファイナンスへの意欲を中心に構成します。
【志望動機例】
私はこれまで、NPO法人にて社会課題解決プロジェクトの企画・運営、資金調達活動、インパクト測定に従事してまいりました。こうした経験を通じて、より持続可能な形で社会課題解決に貢献する仕組み作りに携わりたいと考え、インパクト投資担当へのキャリア転換を志望いたしました。これまで培った社会課題理解力、成果測定力、プロジェクト推進力を活かし、貴社のインパクト投資活動に貢献していきたいと考えております。
7. まとめ
NPOスタッフ出身者は、社会課題理解、インパクト測定力、プロジェクト推進力といったインパクト投資に不可欠な素養を備えています。ファイナンス基礎知識を補強し、自身の経験を具体的にアピールすることで、キャリア転換の成功を目指しましょう。
【職務経歴書(サンプル)】
氏名:高橋 美咲 生年:1991年生まれ ■職務要約: 社会課題解決を目的とするNPO法人にて約6年間、プロジェクト企画・運営、資金調達、インパクト測定に従事。多様なステークホルダーと連携しながら社会インパクトを可視化・向上させた経験を有する。今後は、インパクト投資分野において社会的リターンと経済的リターンを両立する取り組みに貢献するキャリアを志向。 ■職務経歴: 〇〇NPO法人(2017年4月~現在) ・教育格差解消プロジェクト企画・運営(年間500名支援) ・寄付獲得活動(年間2000万円以上の資金調達) ・インパクト評価レポート作成・発信(年次報告書作成) ・行政・企業との連携事業推進 ■保有資格: ・ファンドレイジングコーディネーター ・SDGs認定講座修了 ・日商簿記2級 ・TOEIC 830点 ■学歴: 早稲田大学 国際教養学部卒(2014年3月)