コトラ（広報チーム） 
1. 設備設計とは？その基本を理解しよう
設備設計の定義と役割
設備設計とは、建物内の電気設備、空調設備、給排水設備など、建築物を快適で機能的な空間にするためのシステムを設計することを指します。これらの設備は、住環境や労働環境に直接影響を与えるため、非常に重要な役割を果たしています。具体的には、照明の配置や電力供給のシステム設計、空調機器の配置、給排水システムの設計など、多岐にわたる業務内容を担います。
設備設計は、建築物を物理的に支える構造設計や美観・空間デザインを担う意匠設計とは異なり、建物が安全で快適に機能するための技術的なシステム設計を中心に行います。建物の用途や規模に応じて、設計段階からきめ細かなシステム設計が求められます。
建築設計との違いを比較
設備設計と建築設計は、同じ建設プロセスの中で協力し合いながらも異なる役割を果たしています。建築設計には、大きく意匠設計・構造設計・設備設計の3つの分野があり、それぞれが専門的な分担を行っています。
意匠設計は建物のデザインや外観、空間の配置など美的要素を重視した設計を行います。一方、構造設計は建物の安全性や耐久性を担い、地震や風圧に耐え得る構造を計画します。そして、設備設計はその建物内での電気・給排水・空調などの技術的なインフラを構築し、建物全体の機能性を担保します。
具体例として、オフィスビルを設計する際、意匠設計者がフロアレイアウトを構想し、構造設計者がそのレイアウトを土台に安全性を設計し、それを基に設備設計者が快適な照明や空調システムの設計を行っていきます。これらは相互に影響し合うため、緊密な連携が必要です。
設備設計の重要性と必要性
設備設計は、建物の性能や利用者の快適性を大きく左右するため、非常に重要なプロセスです。たとえば、電気設備が不十分だと効率的なエネルギー供給が妨げられたり、給排水設備が適切でない場合には衛生的な問題が発生する可能性があります。また、現代では省エネルギー性や環境への配慮が求められており、設備設計にもそのようなトレンドを反映した工夫が必要です。
さらに、大手設備設計事務所では最新の設計手法や技術を駆使することで、建物のライフサイクル全体における効率やコスト削減を実現しています。これにより、利用者だけでなく運営者や所有者にとっても大きなメリットが生まれるのです。特に、オフィスビルや商業施設など需要の高い建物では、設備設計が建物の価値を高める重要な要素となっています。
建築計画が成功するか否かは、設備設計の質による部分も大きいため、設備設計の存在意義は非常に高いものといえます。
2. 設備設計の具体的な業務内容
建物の電気設備設計
電気設備設計は、建物に必要な電力供給を効率的に行うためのシステムを企画・設計する業務です。具体的には、照明やコンセント、通信設備などの配置計画、配線経路の設計、さらには電気負荷計算や機器選定も重要な役割を担います。これらの設計において、建物の種類や利用目的に応じた柔軟な対応が求められるため、設計者には高度な専門知識が必要とされます。また、大手設備設計事務所では最新の技術や規格を取り入れ、建物全体の安全性と効率性を確保する設計を行っています。
空調・給排水設備の設計
空調設備と給排水設備の設計は、建物内の快適性と機能性を左右する重要な業務です。空調設備設計では、室内の温度・湿度を適切に管理するための空調システムや換気計画を立案します。一方、給排水設備設計では、飲料水や使用水、さらには汚水・排水を効率的かつ安全に管理するための配管設計を行います。特にオフィスビルや商業施設などの大規模建築では、これらの設備設計が建物全体の運用コストやエネルギー効率に大きな影響を与えるため、近年では省エネルギーにも配慮した設計が求められています。
省エネルギーに配慮した設計手法
省エネルギーを実現する設計手法は、設備設計の分野で近年特に注目を集めています。例えば、電気設備ではLED照明の採用やエネルギー管理システムの導入が一般的です。また、空調設備では最新の高効率設備を採用したり、建物全体の断熱性能を向上させることでエネルギー消費を抑える工夫を行います。これらの施策は、環境負荷を軽減するだけでなく、建物運用コストの削減にも寄与します。大手設備設計事務所では、これらの省エネルギー設計をいち早く取り入れ、クライアントに対して競争力のある提案を行っています。
BIM活用による効率的な設計
BIM（Building Information Modeling）は、設備設計の分野で効率化を図るために広く活用されています。BIMを用いることで、建築データを3次元で可視化し、設計段階での課題や問題点を迅速に把握できるようになります。特に設備同士の干渉や設置スペースの確保といった課題を事前に解消することで、設計ミスを減らすことが可能です。また、大手の設備設計事務所ではこの技術を積極的に導入し、クライアントにとってコスト削減や工期短縮を実現する高品質な設計サービスを提供しています。
3. 設備設計の仕事が求められる現場と業界
オフィスビルや商業施設での役割
オフィスビルや商業施設における設備設計の役割は非常に重要です。建物利用者が快適に仕事や買い物を行える環境を整えるため、空調、照明、電力供給などの設計を手掛けます。特に、近年ではエネルギー効率の向上や持続可能性を意識した設計が重要視されており、省エネルギー技術を活用する能力が求められます。また、大型施設では、電気設備や給排水設備の複雑な配線や配管ルートを計画し、無駄を省く設計を行うことも重要です。
マンションや住宅開発における設備設計
設備設計はマンションや住宅開発においても欠かせない要素です。居住空間で快適な生活を実現するためには、エネルギー効率や居住者のライフスタイルを考慮した空調設備、給排水設備、電気配線の設計が必要です。特に大手不動産会社が手掛ける大規模集合住宅では、設備設計の効率化と高性能な設備の導入がプロジェクトの成功の鍵となります。さらに、近年の再生可能エネルギーへの需要拡大により、太陽光発電システムや蓄電池の導入を含む設計も進められています。
データセンターなど特殊施設での設計
データセンターのような特殊施設では、設備設計の専門性が求められます。これらの施設は、大量のサーバー機器を効率的かつ安全に運用するため、高い冷却能力と無停電電源設備（UPS）の設計が必須です。また、高度なセキュリティや耐震設計を考慮した設計も必要です。データセンターは大手IT企業や通信会社の基盤施設であり、設計ミスがサービス停止や大規模トラブルにもつながるため、細部までの計算とシミュレーションが求められます。
公共インフラへの設備設計の活用
公共インフラでも設備設計は広範囲にわたり活用されています。道路トンネルや橋、地下鉄などでは、換気設備や排水設備、さらには照明や非常電源の設計が必要です。これらの施設は公共性が高いため、安全性や耐久性、さらには環境配慮が設計で重視されます。また、自治体や国のプロジェクトに関わる場合、ゼネコンや公共機関と連携することが多く、大規模なチームでの作業が一般的です。設備設計士としてのスキルが事業全体のクオリティに直接影響を与えるため、プロフェッショナルな視点が不可欠です。
4. 設備設計で活用される資格とスキル
一級建築士や建築設備士の資格
設備設計に携わる際、特に活用される資格として「一級建築士」や「建築設備士」が挙げられます。一級建築士は建築業界全般で重視される資格で、設備設計だけでなく建設プロジェクト全体を俯瞰的に理解し、調整するために有利です。一方、建築設備士は設備設計に特化した資格で、給排水や空調などの設備に関する深い知識と技術を証明できます。これらの資格を取得することで、大手企業や設備設計事務所でのキャリア形成が非常に有利になることが多いです。
必要なソフトウェアスキルと知識
設備設計には、さまざまな専用ソフトウェアを使いこなすスキルも求められます。具体的には、設計図面を作成するためのAutoCADやRevit、エネルギー消費を解析するためのソフトウェアが挙げられます。近年では、BIM（Building Information Modeling）ツールの活用が進んでおり、BIMを使った建物情報の3次元可視化や設備データとの統合管理が業界全体で拡大しています。そのため、これらのソフトウェアスキルを習得することが、効率的な設計やプロジェクト管理に役立ちます。また、建築や設備に関する基礎知識も必須であり、大学や専門学校での学びを通じて備えていくことが大切です。
関連する国家資格とその取得方法
設備設計に関連する国家資格は他にも多く存在します。たとえば、「建築士」や「管工事施工管理技士」、「電気工事施工管理技士」などが挙げられます。これらの資格は、設備設計の専門性を高める上で有効です。資格取得には、一定の実務経験や試験合格が必要です。たとえば、建築士になるには大学や専門学校の卒業資格に加えて実務経験が求められるほか、国家試験に合格する必要があります。また、一級建築士や施工管理技士資格は難易度が高いため、合格に向けた計画的な学習が重要です。これらの資格は、大手設備設計事務所やゼネコンでの採用や昇進においても評価されるポイントとなるため、キャリア形成の一環として取得を目指す価値があります。
5. 設備設計のキャリアと将来性
大手企業でのキャリアパス
設備設計の業界では、大手企業でのキャリア形成が人気です。たとえば、日建設計や三菱地所設計、日本設計などの大手設備設計事務所では、意匠設計や構造設計と連携しながら高度なプロジェクトを手掛ける機会が豊富にあります。また、NTTファシリティーズのような企業では、建築物の設備設計に加え、電力設備やエネルギーコンサルティング業務など広範な分野に関与できる点が魅力です。大手企業では、設備設計部内で経験を積みながら専門知識を深め、さらにマネジメント業務などへのキャリアアップも視野に入れることができます。
設備設計の報酬や待遇の現状
設備設計の報酬は、他の設計分野と比べても安定しており、平均年収は740万円前後とされています。とくに大手設備設計事務所では業界全体の平均を上回る待遇が期待できる場合が多いです。また、ゼネコンの設計部に所属する設備設計者も、高い報酬を得るケースが見られます。さらに、資格を取得している場合や、省エネルギーや再生可能エネルギーに詳しい場合、専門性が評価されることで報酬が大幅に増える可能性があります。
成長する再生可能エネルギー分野の可能性
近年、設備設計業界では再生可能エネルギー分野が注目されています。建物の省エネルギー化が求められる中、太陽光発電や蓄電池システム、さらにはゼロエネルギービル（ZEB）など、環境配慮型の設備設計の需要が急増しています。この分野では、専門スキルを持つことが大きな武器となり、大手設備設計事務所をはじめとする企業が積極的に新しい技術に取り組んでいます。今後、再生可能エネルギー関連の設備設計スキルは、将来性のある分野としてますます重視されていくでしょう。