コトラ（広報チーム） 
サステナビリティ保証とは？その基本を解説
サステナビリティ保証の定義と概要
サステナビリティ保証とは、企業が公表するサステナビリティ情報の正確性や信頼性を第三者が評価し、保証を付与するプロセスを指します。これは主に、環境、社会、ガバナンス（ESG）に関する情報が対象になります。サステナビリティ保証は、企業が透明性を高め、ステークホルダーに対して信頼できる情報を提供することを目的としています。
サステナビリティ情報と保証の関係性
サステナビリティ情報は、企業が持続可能な社会の実現に向けてどのような取り組みを行っているかを示すもので、投資家や消費者をはじめとする多くのステークホルダーにとって重要な情報源です。しかし、この情報が正確でなければ、ステークホルダーの信頼を失いかねません。そこで、サステナビリティ保証が役立ちます。信頼性を向上させることで、企業は情報を効果的に活用し、責任ある経営姿勢を示すことが可能になります。
サステナビリティ保証が注目される背景
サステナビリティ保証への注目が高まった背景には、グローバルな規制強化や社会的要請の高まりが挙げられます。特に、投資家や規制当局による企業のESG情報開示に対する要求が急激に増加しており、これに応じた信頼性確保が求められています。例えば、2023年に最終化されたIFRS-S1やIFRS-S2など、国際基準の整備により統一された基準で信頼性を確保することが、一層重要になっています。また、2028年にはEU域外適用が予定されているCSRDの影響も、日本企業にとって無視できない動きとなっています。
保証業務の対象としての主要なトピック
サステナビリティ保証の対象となる情報は多岐にわたりますが、主に環境に関するデータ（温室効果ガス排出量やエネルギー使用量など）、社会的な取り組み（労働条件、ダイバーシティなど）、そしてガバナンス施策（内部統制や倫理規定の順守状況など）が挙げられます。これらのトピックに対し、国際基準であるISSA 5000や、国内基準であるSSBJによる実務ガイダンスが用いられています。これにより、企業はグローバルなスケールで求められる要件に対応し、信頼性を担保することが可能になります。
サステナビリティ保証のメリットと重要性
情報の信頼性が向上する理由
サステナビリティ保証が提供されることで、企業が公表するサステナ情報の信頼性が大きく向上します。この信頼性の向上は、第三者による独立した評価によって確保されます。例えば、サステナビリティ報告におけるデータや指標の正確性が保証されることで、情報の信ぴょう性が確立され、ステークホルダーに安心感を提供します。また、ISSA 5000などの国際基準に基づいた保証が行われることで、信頼性はより高められます。
投資家やステークホルダーへの影響
サステナビリティ情報の保証は、投資家やステークホルダーにとって非常に重要です。例えば、データの透明性が確保されることで、投資判断の信頼性を高めることができます。また、消費者やパートナーに対しても企業の信頼感を強化する役割を果たします。サステナビリティに関する明確な指針と保証を持つ企業は、長期的な視野でステークホルダーと良好な関係を築くことが期待されます。
企業評価と競争力の向上
サステナビリティ保証を受けることで、企業は市場における評価を高めることができます。透明性と責任を果たした企業として認識されることで、持続可能な経営理念に基づく競争力が強化されます。特に投資家がESG（環境、社会、ガバナンス）要素を重視する中で、保証されたサステナ情報を提供する企業は投資先として魅力的に映るでしょう。結果として、優れた開示を行う企業ほど、他社との差別化を図ることが可能です。
リスク管理への役立ち方
サステナビリティ保証は、企業自体のリスク管理にも貢献します。サステナビリティ情報の透明性が向上することで、潜在的なリスクの早期発見や対応が可能になります。たとえば、気候変動リスクや環境リスク、社会的なコンプライアンス違反などの問題がある場合、保証プロセスを通じて指摘されることで、リスクを軽減できます。さらに、保証を通じた内部統制の強化は、長期的な企業経営の安定にも寄与します。
サステナビリティ保証の基準と枠組み
国際基準を担うISSA 5000とは？
ISSA 5000は、国際サステナビリティ保証基準（International Sustainability Assurance Standard 5000）の略称で、IAASB（国際監査保証基準審議会）が策定するサステナビリティ保証の国際基準です。この基準は、サステナ情報の信頼性向上を目的としており、2024年12月に最終承認される予定です。保証業務を行う際の一貫性と信頼性を確保するために、ISSA 5000は重要な枠組みとして注目されています。
保証業務における倫理と独立性の要件
保証業務においては、倫理と独立性が極めて重要です。サステナ情報の第三者保証を提供する者は、利害関係からの独立性を保ち、客観性を確保する必要があります。また、IAASBをはじめとした国際基準では、誠実性や公正性といった倫理的な態度が明確に求められています。特に、サステナビリティの文脈では利害関係者が複雑であるため、厳しい倫理基準を遵守することで、保証の信頼性をさらに高めることが可能です。
主要な国際的な動向と地域差
サステナビリティ保証基準における国際的な動向として、2023年にはISSBが「サステナビリティ関連財務情報の開示に関する全般的要求事項」（IFRS-S1）や「気候関連開示」（IFRS-S2）を最終化しました。一方で、欧州では2028年1月から企業サステナビリティ報告指令（CSRD）が施行され、日本を含むEU域外企業にも対応が求められる予定です。こうした取り組みには地域ごとの独自要件や規制の差があり、日本でも2027年からサステナ情報開示の義務化が始まり、2028年には第三者保証が義務化される見通しとなっています。
基準が実務にどのように落とし込まれるか
ISSA 5000をはじめとするサステナビリティ保証基準が、現場実務にどのように適用されるかは、今後の実務指針の策定や関係者の教育・普及にかかっています。特に、第三者保証の枠組みを社会に定着させるためには、企業内の体制整備や、保証業務を実施するプロフェッショナルの育成が重要です。また、基準を実務に落とし込む段階では、業界の標準化や具体的なガイドラインの策定が求められており、それによってサステナ情報の信頼性向上と投資家やステークホルダーからの信頼確保が実現されるのです。
サステナビリティ保証導入の手順
サステナビリティ情報収集の基本手順
サステナビリティ保証を導入するための第一歩は、適切なサステナビリティ情報の収集です。この段階では、企業独自の持続可能性に関する取り組みや成果を整理し、数値データや定性的な情報を体系的に管理します。特に、環境、社会、ガバナンス（ESG）のトピックが中心になる場合が多いため、それに関連する内部データや外部報告書を確認しましょう。
また、情報収集の際には、ステークホルダーが関心を持つ重要な課題（マテリアリティ）を特定し、その内容が開示基準やフレームワーク（例：GRIやISSB基準）に合致しているかを検証することが重要です。これにより、保証対象の選定プロセスがスムーズに進むだけでなく、収集されたサステナビリティ情報の信頼性が高まります。
第三者保証提供者の選び方
サステナビリティ保証を成功させる鍵の一つが、信頼できる第三者保証提供者を選ぶことです。提供者を選ぶ際には、保証業務に関する専門知識や実績、業界での評判を重視する必要があります。大手の監査法人や専門コンサルティング会社は、グローバル基準であるISSA 5000やその他の国際基準に基づいてサービスを提供しています。
具体的な選定基準として、以下のポイントを考慮すると良いでしょう。まず、提供者が保証業務に対する倫理性と独立性を保っているかどうかを確認します。また、提供される保証が合理的保証と限定的保証のどちらに該当するのかを理解することで、自社のニーズに最適なプロバイダーを選ぶことが可能になります。
保証プロセスの流れを理解する
サステナビリティ保証プロセスは、情報の収集から最終的なレポート発行まで複数のステップを含みます。最初に、保証対象となる情報の範囲を明確に定める「スコープ設定」が行われます。この際、既存のサステナビリティ基準（例：GRIスタンダードやIFRS-S1）や業界特有の要件を考慮して進めます。
次に、保証提供者が対象情報の検証作業を行います。これは、情報の正確性や信頼性を確認するための重要なプロセスです。最後に、保証報告書が作成され、ステークホルダーへの公表を通じて完了します。この流れをしっかりと理解し、企業内で適切な準備体制を整えることが、スムーズな導入につながります。
内部統制の整備とその重要性
サステナビリティ保証を効果的に運用するためには、内部統制の整備が欠かせません。内部統制とは、企業内でデータの収集や管理、報告などが適切に実施されるための仕組みを指します。この仕組みが成熟していない場合、提供されるサステナビリティ情報の正確性や信頼性が損なわれる可能性があります。
特に、サステナビリティに関連するデータは多岐にわたるため、部門横断的なコミュニケーションやガバナンスが重要です。たとえば、環境データは環境部門、社会関連データは人事部門、財務的影響は経理部門が担当するケースが一般的です。これらの情報を統一的に管理し、保証提供者からの監査に対応できるようにすることで、信頼性のあるサステナビリティ保証が実現します。