コトラ（広報チーム） 
サステナビリティ時代の到来と新たな課題
サステナビリティ情報の重要性とは
サステナビリティ時代の到来に伴い、企業におけるサステナビリティ情報の開示がますます重要視されています。この情報は、企業の持続可能な成長や経営戦略だけでなく、社会的な責任を果たしていることを示すものです。このような背景の中で、資本市場では、企業が公表する非財務情報の質や透明性に対する期待が高まっています。特に、投資家などのステークホルダーは、サステナビリティ情報を基に重要な意思決定を行うため、この情報の信頼性確保が急務となっています。
非財務情報とその信頼性確保の必要性
従来から重視されてきた財務情報に加え、非財務情報の信頼性確保が企業にとって大きな課題となっています。中期経営戦略やガバナンス情報、ESG（環境・社会・ガバナンス）指標などの非財務情報は、企業の持続可能性を評価する上で欠かせない要素です。特に2027年以降、サステナビリティ情報の開示が義務化され、さらに28年からは監査法人による保証が求められることから、この分野の信頼性担保が監査法人にとっても重要な役割となります。
気候変動やESG課題が企業に与える影響
気候変動やESG関連の課題は、企業にとって環境的・社会的なリスクだけでなく、経営上の課題としても顕在化しています。たとえば、温室効果ガスの排出削減目標が達成できない場合、企業ブランドの毀損や投資家からの評価低下を招く恐れがあります。また、これらの課題に適切に対応する企業は競争優位を獲得する一方で、不十分な対応を続ける企業は市場から淘汰されるリスクが高まります。そのため、監査法人はESG課題が企業に及ぼす影響を正確に把握し、それを分析する能力を求められています。
ステークホルダーの期待と透明性の向上
サステナ時代における企業活動では、ステークホルダーの期待に応える透明性のある情報開示が極めて重要です。特に、投資家や政府機関、消費者からは、企業が社会的責任を果たしていることを示す具体的なデータの提供が強く求められています。このような状況の中で、監査法人は企業のサステナビリティ情報についての第三者保証を行うことで、情報の信頼性を高め、ステークホルダーとの信頼関係を構築する役割を担います。
監査法人の新たな役割と責任
会計監査の枠を超えたアシュアランス業務
サステナビリティ時代において、監査法人の役割は従来の会計監査を超えて、幅広いアシュアランス業務へと拡大しています。財務情報の信頼性を保証するだけでなく、非財務情報、特にサステナビリティ情報への信頼性を付加することがますます重要とされています。例えば、中期経営戦略やガバナンス体制、ESG対応の詳細な情報の信頼性を高めることで、企業価値の透明性を向上させ、資本市場への信頼性を付与する役割が期待されています。
サステナビリティ保証業務の台頭
近年、サステナビリティ保証業務が急速に台頭しています。2027年には、上場企業のサステナビリティ情報開示の義務化が予定され、28年からはこれに対する監査人の保証が求められます。この流れにより、スコープ1およびスコープ2といった温室効果ガス排出量に関する情報への保証業務が優先され、今後はスコープ3を含むサプライチェーン全体の開示要件も拡大が予想されます。監査法人は、このような高度な保証ニーズに応えるために、新たな基準や手法を採用・開発する必要があります。
多様な専門知識と柔軟なアプローチの必要性
サステナビリティ保証業務の拡大に伴い、監査法人には多様な専門知識が求められています。具体的には、環境科学や社会学、エネルギー政策に関する専門家の協力が不可欠です。さらに、個別企業や地域ごとに異なる課題にも柔軟に対応するアプローチが重要となります。このため、多職種連携型のチーム編成や、AIなどのテクノロジーを活用したデジタル監査の推進が欠かせません。こうした取組みは、企業の持続可能性に関する課題を深く理解しながら、その信頼性を高めるための礎となります。
国や地域による規制や基準の影響
国際的にもサステナビリティ情報の開示や保証に関する規制が進展しています。国際サステナビリティ保証基準（ISSA）を基に策定された国内基準の採用は、日本における監査法人にも大きな影響を与えています。例えば、ISO認定業者が保証業務に従事する登録制度の導入により、監査の質の均一化が進む一方で、国内外の基準適合に向けた準備がさらに求められています。こうした進展は、サステナビリティ対応の一環として、監査法人がより高い水準の信頼性を提供することを可能にします。
取り組み事例：先進的な監査法人の動向
PwCやEYのサステナビリティ保証への取り組み
PwCやEYは、サステナビリティに関連する情報の保証業務において、リーダー的な役割を果たしています。特にPwCでは、サステナビリティデータの透明性や信頼性を高めるために、先進的な技術と専門知識を活用した監査フレームワークの開発に取り組んでいます。一方、EYは「非財務情報革命」という視点を重視し、企業価値創造を軸に置いた保証業務を推進しています。これらの取り組みにより、両法人は資本市場における信頼性向上や持続可能な未来のサポートに大きく貢献しています。
KPMGの専門チームによるリスクアプローチ
KPMGは、専門チームを編成し、企業のサステナビリティに関するリスクを総合的に評価するアプローチを採用しています。このアプローチにおいては、気候変動の影響やESG（環境・社会・ガバナンス）課題に対する企業の取り組みを重点的に評価するなど、長期的な視野でのリスク解析を行っています。さらに、非財務情報の信頼性を高める保証手法を積極的に導入することで、時代のニーズに適応した監査サービスを提供しています。
国内外をまたぐ大手監査法人の戦略
日本国内外の大手監査法人は、グローバル基準を意識した監査基準や、サステナビリティ保証サービスの強化に力を入れています。例えば、各法人は国際的な基準であるISSA（国際サステナビリティ保証基準）への対応策を策定し、その適応能力を高めています。また、デジタル技術を活用した効率的な保証業務を実現しながら、サステナ情報開示の義務化に対応し、グローバル市場で競争力のある役割を果たそうとしています。これは資本市場への信頼性付与に加えて、企業のサステナビリティ確保を後押しする動きでもあります。
中小監査法人・企業における挑戦と機会
中小監査法人や企業にとっても、サステナビリティ情報への対応は重要な課題となっています。大手に比べリソースが限られる中、非財務情報の信頼性を高める保証サービスのニーズに応えるためには、柔軟かつ効率的なアプローチが必要です。同時に、この分野は中小規模の法人にとって新たな成長機会と捉えられています。特に地域に密着した企業やスタートアップ企業に対し、カスタマイズされたサステナビリティ保証サービスを提供することで、競争優位を築く余地が広がっています。
未来志向の監査法人改革に向けて
デジタル化と監査DXによる効率化
近年、デジタル化と監査DXの進展は、監査法人における業務の効率化を大きく促進しています。従来の監査業務は膨大な書類や手作業を伴うものでしたが、AIやビッグデータといった先進技術を活用することで、効率的かつ正確性の高い監査が可能となっています。特にサステナビリティ情報の保証業務においては、収集される非財務データの量や複雑性が増大しているため、デジタル技術の活用が欠かせません。これにより、監査法人はより速やかで透明な情報提供を実現し、ステークホルダーの信頼を獲得することが期待されています。
サステナビリティ対応の専門家の育成体制
サステナビリティ情報の開示義務化に伴い、監査法人には新しいスキルセットが必要とされています。特に、環境や社会、ガバナンス（ESG）に関する専門知識を持った人材の育成が急務です。このため、多くの監査法人では、従業員教育プログラムの充実や、外部の専門家との連携を強化している状況です。また、サステナビリティ基準に基づいた保証業務を提供するには、国際的な基準に精通した多分野の専門家との協働も重要となります。こうした体制の整備は、監査法人が提供するサービスの信頼性を高めると同時に、日本の企業が持続可能な成長を実現する支援にもつながります。
監査法人と社会の連携強化による信頼性向上
監査法人が社会との連携を強化することは、資本市場全体の信頼性向上に直結します。サステナビリティ情報の重要性が高まる中、企業と投資家、あるいは顧客や地域社会といった多様なステークホルダーとのつながりを深めることが求められています。また、監査の透明性や説明責任を果たすことで、企業と社会との間に信頼の橋渡し役を果たすことが期待されています。監査法人がこうした役割を担うことで、企業の責任ある経営を後押しするとともに、持続可能な社会の実現に貢献することができるのです。
企業価値創造を実現する監査の未来像
未来の監査法人は、単にデータの正確性を確認するだけでなく、企業価値創造を支援する重要な役割を果たすことが求められます。財務情報と非財務情報を統合的に評価することで、企業が中長期的な戦略目標を達成する支えとなります。また、サステナビリティ情報を基にしたリスク管理やチャンスの特定を通じて、企業価値の向上に貢献することが可能です。監査法人がこうしたアプローチを進めることで、資本市場への信頼性をさらに強固にし、企業と社会の持続的な成長を推進する未来志向のパートナーとなるでしょう。