コトラ（広報チーム） 
2025年の弁護士転職市場の現状とトレンド
弁護士業界における市場規模と動向
弁護士の転職市場の動向を考えると、2025年は引き続き活況を呈することが予想されます。弁護士数は2000年には17,126人でしたが、2021年には43,206人と急増しており、弁護士業界全体の競争はますます激化しています。この増加は法科大学院の創設や司法試験予備試験の実施といった制度改革が背景にあります。加えて、企業法務や新しい業務領域でのニーズが高まり、市場の多様性が進んでいます。このため、弁護士個々人が専門性を磨き、変化に適応することが市場での生き残りに不可欠となっています。
法律事務所の採用動向：中小規模 vs 大手事務所の違い
法律事務所の採用動向には、中小規模の事務所と大手事務所で明確な違いが見られます。大手事務所においては、企業法務や国際案件、M&Aといった専門分野に特化した経験者の採用が進む一方で、中小規模の事務所では企業のニッチな法務ニーズに対応できる柔軟性を持つ人材が重視されています。また、大手事務所は安定性や研修機会の豊富さがあるものの、中小規模事務所では幅広い業務経験が積める点が魅力です。このような二極化により、弁護士が自身のキャリアビジョンに合わせて転職先を選択することが重要になっています。
企業内弁護士（インハウスローヤー）の需要拡大と理由
企業法務の重要性が高まる中で、企業内弁護士（インハウスローヤー）への需要が急増しています。2001年に66人だった企業内弁護士は、2022年には2,965人に上り、登録弁護士全体の約6.7%を占めるまでになりました。この背景には、企業がコンプライアンスや国際取引、データセキュリティなど複雑化する法務課題に迅速に対応する必要があることがあります。また、コロナ禍以降に柔軟な勤務制度が普及し、弁護士が企業内で働きやすい環境が整備されてきたことも理由の一つです。
年齢別転職傾向：若手とベテランで異なる需要
弁護士の転職市場では、若手とベテランで需要に違いが見られます。若手弁護士は、未経験分野への挑戦や成長機会を求めて中小規模の法律事務所や企業へ転職する傾向があります。一方で、経験を積んだベテラン弁護士は、高度な専門知識を活かして大手事務所や企業内弁護士として働くケースが増加しています。また、キャリア形成の一環として自身のペースで働ける環境を求める人も増えており、柔軟な労働環境が整った企業への志向が強まっています。
AIとリーガルテックが転職市場に与える影響
AIとリーガルテックの進化が弁護士の転職市場に大きな影響を与えています。これらの技術は、契約書レビューやリーガルリサーチなどの効率を大幅に向上させ、事務所や企業における業務効率化を可能にしています。そのため、こうしたスキルを使いこなせる弁護士が重宝される時代となってきました。一方で、AI技術が普及することで一部の単純作業が機械化されるため、弁護士には高度な問題解決力やクライアントとのコミュニケーション能力が求められるようになるでしょう。このように、テクノロジーの発展が弁護士のキャリア選択に多大な影響を及ぼしています。
転職先の選択肢：多様化するキャリアパス
インハウスローヤー：企業内で求められる役割とスキル
近年、特に2023年以降、弁護士が一般企業へ転職し、インハウスローヤーとして活躍するケースが増加しています。この背景には、企業法務の重要性の高まりや、企業側の法的リスクマネジメントのニーズが影響しています。転職市場の動向としても、この分野に特化したポジションが引き続き増加する見込みです。
インハウスローヤーに求められる役割は、契約書や規定のレビュー業務だけでなく、コンプライアンスの強化、M&Aへの対応、さらには国際法務のサポートなど多岐にわたります。また、企業内では法務部のメンバーや他部門のステークホルダーと連携するスキルも重要です。そのため、専門知識に加えて、幅広いコミュニケーション力やビジネスパートナーとしての視点が求められるのが特徴です。
ベンチャー事務所の成長と新たなキャリア機会
新しい技術や市場の変化に対応するため、ベンチャー事務所が注目を集めています。特にWEB3やリーガルテック関連の事務所は、若手弁護士にとって新たなキャリアを築く場となっています。このような事務所では、従来の法律業務に加えて、新しいサービスを創造する機会にも恵まれます。
また、規模が小さいベンチャー事務所では、多様な案件を担当できるため、経験の幅を広げたいと考える弁護士にとって理想的な環境です。迅速な意思決定や柔軟な働き方も魅力となっており、キャリアパスの新しいトレンドとして注目されています。
渉外事務所と国際法務の需要拡大
グローバル化が進む中、渉外事務所や国際法務の需要は益々増加しています。特に大型M&Aやクロスボーダー取引に関与する機会が多く、生まれる課題に対して適切に対応できる専門性が必要とされています。語学力や異文化理解力が求められる場面が多いため、海外留学経験を生かしたい弁護士には好まれる分野です。
また、渉外事務所では最新の法規や多国間取引の実務を学ぶことができ、その経験は今後のキャリアにも大きな価値をもたらす機会を提供します。市場の動向を見ると、この分野での求人は今後も安定して増加する見込みです。
中小規模事務所での専門分野特化のメリット
中小規模の法律事務所は、大手事務所にはない柔軟性や親密な雰囲気を持っています。こうした事務所では、特定の専門分野に特化した弁護士へのニーズが年々高まっています。例えば、労働法、家族法、破産法など、個人や中小企業からの要望が多い分野では、専門知識が強みとなり、キャリアを安定化させることができます。
さらに、中小規模事務所では、大手事務所に比べて独自のやり方で裁量を持って業務に携われるため、早期に裁判や交渉の一線で活躍する機会を得られる点が魅力です。専門性に磨きをかけたいと考える弁護士には理想的な環境といえます。
リモートワーク可能なポジションの増加
コロナ禍以降、一般企業だけでなく一部の法律事務所でもリモートワークが可能な環境が広がっています。特に、企業内弁護士として働く場合、企業がフレックスタイムや在宅勤務を取り入れているケースが多く、柔軟な働き方を望む弁護士にとって魅力的な選択肢となっています。
ただし、法律事務所ではクライアントとの直接的な対応や、チームで進める案件が重要視されるため、法律事務所でのリモートワークの普及は限定的な状況です。それでも、リモート対応が可能なポジションは着実に増えており、自分のライフスタイルに合わせた働き方を模索する弁護士にとって、新たなキャリアの一つとして注目されています。
弁護士が転職を成功させるために必要な準備
転職目的の明確化とキャリアプラン作成
弁護士が転職を成功させるためには、まず転職の目的を明確化することが重要です。「激務から解放されたい」「企業法務に挑戦したい」「専門分野のスキルを深めたい」など、転職を希望する理由を洗い出し、自身のキャリアプランを具体化しましょう。2025年の弁護士の転職市場動向として、企業内弁護士（インハウスローヤー）の需要増加や新規法務領域の拡大が予測されています。これを踏まえ、将来にわたる自身の市場価値を高めるキャリアゴールを設定することが、転職活動の第一歩となります。
スキルの棚卸しと自己分析の重要性
自己分析はスムーズな転職活動の基盤となります。自分の強みやスキルセットを洗い出し、過去の実績や経験を棚卸しすることで、どのような職場やポジションにフィットするかが明確になります。特に、これまで関わった業務の中で企業から求められる能力や専門性に関連する要素を整理しておくことは、有利な転職活動に繋がります。また「弁護士の転職市場の動向」を踏まえ、需要が拡大している法律分野や特化した技術の把握も欠かせないポイントです。
履歴書と職務経歴書の効果的な作成方法
履歴書や職務経歴書は、雇用主に自分をアピールする最初のツールです。採用担当者に注意を引き、面接に進むためには、これらの書類を効果的に作成するスキルが必要です。ポイントは、転職目的に沿った情報を整理し、自身の経験や成果を具体的な数字や事例と共に記載することです。また、一般企業への転職を目指す場合、法律用語に偏らない汎用的な表現や、チームでの成果をアピールする記述が効果的です。
適切なエージェントの活用法
転職活動に専門エージェントのサポートを活用することで、自力では見つけにくい情報や求人にアクセスできます。特に法律業界に特化した転職エージェントは、市場動向や最新の求人情報を深く理解しているため、適切なアドバイスがもらえます。2025年の弁護士転職市場では、WEB3やリーガルテックに関連する企業法務の需要が増加すると予測されています。エージェントを通じてこれらのトレンドにも目を向けながら転職活動を進めると良いでしょう。
業界リサーチとターゲット企業分析の進め方
転職活動を成功させるためには、業界全体のリサーチおよびターゲット企業の詳細な分析が欠かせません。まず、自分が興味を持っている業界がどのような特性を持ち、どの企業がどの分野で優れているかを調べることが必要です。そして、求人情報だけでなく、企業の過去の実績や社風、成長計画なども確認し、具体的な応募先を絞り込むと良いでしょう。2025年以降、法律事務所と一般企業の双方で新技術関連の案件が増えると言われているため、業界のトレンドに敏感であることが重要です。
2025年以降の弁護士キャリア構築の未来展望
弁護士数の増加が市場にもたらす影響
弁護士数はここ20年で大幅に増加しており、2021年時点で43,206人に達しました。この増加は全体の転職市場や競争環境に大きな影響を与えています。特に、新たに市場に参入する若手弁護士が増える一方で、業務経験が豊富なベテラン弁護士の専門性に対する需要が依然として高まっています。2025年以降も弁護士が転職市場に積極的に参加することで、法律事務所や企業側の採用基準が厳格化し、より高度なスキルと専門性を求められるようになるでしょう。
リーガルサービスの高度化と新しい業務領域
弁護士業界では、リーガルサービスのニーズが多様化・高度化しています。テクノロジーの発展や社会課題の複雑化により、WEB3、環境法、データプライバシーといった新しい分野の法務が求められています。これに対応するためには、法律だけでなく技術や業界知識に通じた専門的なスキルを持った弁護士が必要です。特に、こうした新領域での実績がある弁護士の転職市場での価値は、今後さらに高まると予測されます。
国際取引・規制対応への対応力強化の必要性
グローバル化が進む現代では、国際取引や海外規制への対応が企業にとって重要な課題となっています。そのため、渉外事務所や企業の法務部門においても、国際法務の知識や外国語スキルを持つ弁護士の需要が急激に増加しています。特に国外の法律や規制に精通しながら、国内企業にとって最適な法的戦略を構築できる人材は、2025年以降もますます重宝されることでしょう。
テクノロジーが弁護士の仕事に果たす役割
AIやリーガルテックの進展により、弁護士の業務効率化が進んでいます。これにより、契約書レビューや法的リサーチなどの単純作業が自動化され、弁護士はより高度な分析や戦略設計に集中できるようになってきました。しかし、一部の業務が自動化されることで、人材に求められるスキルセットは変化しており、テクノロジーを活用した業務を円滑に行える適応力が重視されています。そのため、AIやリーガルテックに対応したスキルを持つ弁護士は、転職市場で特に注目される存在となっています。
柔軟なキャリア構築で新たな選択肢を模索する
近年、働き方改革やリモートワークの普及により、弁護士も柔軟なキャリア構築が求められる時代になっています。特に、企業内弁護士（インハウスローヤー）への転職や、複数の業務分野を掛け持ちしながら「パラレルキャリア」を形成する動きが増えています。また、ベンチャー企業やスタートアップに参画することで積極的な挑戦を志向する人も増えています。2025年以降も、こうした多様なキャリアパスの模索が、弁護士個人のキャリア形成と市場の活性化の両方に寄与するでしょう。