コトラ（広報チーム） 
1章 有馬充美のキャリア形成の歩み
均等法世代としての挑戦と課題
有馬充美さんは、1986年に第一勧業銀行（現みずほ銀行）に入行しました。この時代は男女雇用機会均等法が施行されて間もない頃であり、職場における男女平等の実現がまだ模索されていた時代でした。女性がキャリアを築くためには、形式的な制度の壁だけでなく、社会的な偏見や固定観念とも向き合う必要がありました。有馬さんも当初は「女性だからこそ必要以上の努力が求められる」という状況に直面しながら、一歩一歩キャリアを築いていきました。
みずほ銀行での初期の経験
入行後、有馬さんは法人営業などの現場配属を経験し、金融業務に必要な専門知識と実践的なスキルを積み重ねてきました。当時の金融業界は男性社員が中心で、女性の役員や管理職はほとんど存在しませんでした。しかし、有馬さんはその中で結果を出し続けることで、地道に信頼を積み重ねていきました。この経験が後にみずほ銀行初の女性役員としての礎を築く重要な転機となりました。
女性管理職としての成長と壁の克服
有馬さんは、34歳で出産を経験し、育児休業後に職場に復帰しました。この時期、家庭と仕事を両立させるという新たな挑戦に直面しましたが、周囲のサポートを得ながら、成果を出し続けることでキャリアを進めていきました。やがて管理職へと昇進し、男性中心の環境の中でどのようにリーダーシップを発揮すればよいか試行錯誤を重ねました。それと同時に、女性管理職として働きやすい環境を作るためにも声を上げ、組織の変革を促していきました。
執行役員としての新たな挑戦
2014年、有馬さんはみずほ銀行の執行役員に就任し、メガバンク初の女性役員となりました。この昇進は自身の努力の結果であると同時に、男女平等が徐々に進む企業文化の象徴とも言える出来事でした。役員としての責任を背負いながら、有馬さんは多様性の重要性を訴え、女性社員がより活躍できる組織作りを進めました。その後も視野を広げるための学びを続け、新しい政策の導入や環境改善に尽力しました。
2章 男性中心社会の中でのリーダーシップ
「女性だから選ばれたのではない」との評価
有馬充美さんが2014年にみずほ銀行初の女性役員となった際、多くの人々が「女性だから選ばれたのではないか」と注目しました。しかし、有馬さんはこれを否定し、自身の実績や能力が評価された結果であり、「性別に関係なく、誰もが平等に評価されるべき」と語っています。その姿勢は、やがて自身が管理職として多様な人材を育成する際の原則にも反映されました。みずほ銀行としてもこれに共鳴し、近年では性別を問わず真の実力を発揮できる職場環境づくりを推進しています。
チーム運営におけるリーダーの役割
有馬さんは管理職に就いてから、業績向上だけでなく、チームメンバーが成長し、能力を最大限発揮できる環境作りを重視しました。特に、部下の意見に耳を傾ける姿勢を持つことを大切にし、多様なバックグラウンドを持つメンバーと信頼関係を築いてきました。このリーダーシップスタイルは、「みずほ 女性役員」としての有馬さんの評価を確立する要因の一つとなりました。彼女の適切な指導のもと、多くの部下が次のキャリアステップへ進むことができたのです。
多様性を活かした組織作りの工夫
多様性を活かした組織作りにおいて、有馬さんは性別だけに注目するのではなく、バックグラウンドや経験の違いを含め、全てのメンバーがチームに貢献できる場を作る努力をしてきました。みずほ銀行における女性活躍推進の取り組みとも連動し、彼女は役員として、多様性がもたらす力を組織全体に広める役割を果たしました。この成果は結果的に職場の活性化に繋がり、社員一人ひとりの意識改革を促したと言われています。
「既定路線」を離れる決断とその背景
2017年、有馬さんがみずほ銀行を早期退職することを決めた背景には、キャリアや業務に対する「既定路線」からの脱却という強い意志がありました。それまでメガバンクという男性中心の環境の中で挑戦を繰り返してきた有馬さんは、自分自身をさらに成長させるために新たな道を選ぶ決断をしました。この決断は、キャリアにおいてリスクテイクの重要性を自身の行動で示したものであり、組織内外で大きな話題となりました。
3章 女性のキャリア構築に対する支援と課題
みずほ銀行での女性活躍推進の背景
みずほ銀行では、女性活躍推進を重要なテーマとして掲げています。特に、2030年代の早期に女性管理職の比率を30%にすることを目標に、人材育成を進めています。この施策の背景には、メガバンクとして多様性を活用し、競争力を高める必要性と社会的責任があります。長年にわたり、男性が中心となって進められてきた業務の中で、女性が管理職として貢献する姿は、組織全体に革新と新たな可能性をもたらすと期待されています。
育児休業や家族との両立の経験
有馬充美氏は、34歳で出産し育児休業を経験しました。復帰後は、仕事と家庭の両立を模索しながらキャリアを積み重ね、女性管理職としての成長を遂げました。このような個人的な体験も、女性の両立支援策の必要性を感じた理由の一つでしょう。みずほ銀行では、育児や介護から復帰する社員がスムーズにキャリアを継続できるよう、柔軟な働き方や多様な支援制度を整備しています。有馬氏の経験は、多様なライフステージを経ても専門性や管理能力を高めることが可能であることを証明しています。
女性リーダー育成に対する思い
女性リーダー育成において、有馬充美氏は特別な情熱を持っていました。彼女は、自身がメガバンク初の女性役員となる中で直面した課題や壁を乗り越えた経験を基に、後進の育成を支援してきました。「役職に就くことがゴールではなく、次世代の道を切り開くための責任を担うことが本質的な使命だ」と彼女は語っています。その思いは、みずほ銀行の研修プログラムにも反映されており、次世代の女性管理職が成長するための土台が築かれています。
職場におけるジェンダーバランスの重要性
職場におけるジェンダーバランスは、組織の持続可能な成長を実現するために不可欠です。有馬充美氏は、男性中心であった銀行業界での長年のキャリアを通じ、多様な視点がもたらす組織の活性化を目の当たりにしました。彼女は「ジェンダーバランスを保つことで、単に男女平等を実現するだけでなく、革新性や生産性を向上させる基盤が整う」と指摘しています。みずほ銀行では、男女がそれぞれの強みを発揮できる環境を構築し、全社員がイノベーションを生み出せる組織作りを進めています。
4章 キャリアにおけるリスクテイクと新たな挑戦
早期退職を決断した理由とその後
有馬充美氏は2017年、みずほ銀行の常務執行役員という一線級のポジションを退き、早期退職を決断しました。その背景には、当時の業務に対する「惰性」や「視野の狭窄」があったと語っています。トップ層に駆け上がる中で、既定路線に沿ったキャリアに対する閉塞感が次第に増していったのです。「女性役員」という肩書の重圧から解放され、新たな学びと成長を求める決意を固めた結果、アメリカ・ハーバード大学のMBAプログラムに進むという決断に至りました。そこでは単に学び直すだけでなく、自分自身を見つめ直す貴重な時間を手に入れたのです。
海外留学での学びと視野の広がり
ハーバード大学での留学生活は、有馬氏にとって人生の転機となるものでした。世界中から集まる多様なバックグラウンドを持つ人々と交流する中で、自身の価値観やリーダーシップの在り方が大きく揺さぶられたといいます。また、異なる文化や視点に触れることで、これまで築いてきた「銀行業界」という枠を超えた考え方を養うことができました。この経験により、みずほ銀行時代に直面していた「女性だからこそ重要視されがちな局面」に縛られるのではなく、より広い視野で多角的な価値観を持つリーダーシップを磨き上げることができたと振り返っています。
銀行キャリアへの閉塞感と乗り越えた道
みずほ銀行で女性初の執行役員となった際、有馬氏は業界内外から注目を集めました。しかしその一方で、金融業界における男性中心の慣習や固定観念に苛まれることも少なくありませんでした。そうした「壁」を感じながらも、彼女は「女性だから選ばれた」という評価を払拭するため、実績を積み上げる努力を惜しみませんでした。一方で、業界特有の枠組みに対する行き詰まり感が徐々に彼女の中で膨らんでいったといいます。最終的に、自身のキャリアを見直し、新たな挑戦へ一歩踏み出すことで、その閉塞感を打ち破りました。
人生の新たなページを開くための心得
有馬充美氏が語る「キャリア選択において大切なこと」は、「リスクを恐れず、一歩踏み出す勇気を持つこと」です。みずほ銀行での長年にわたるキャリアは一見、盤石なものに見えましたが、彼女はその「安定」を手放すことで新たな可能性を掴み取りました。また、その決断には、家族や周囲の支えが重要な役割を果たしたと語っています。キャリアの中でリスクを取ることは勇気のいる選択ですが、それを通じて得られる学びや成長は計り知れないものである、と彼女は力強くメッセージを送っています。
5章 有馬充美が描く未来とメッセージ
これからの女性リーダーへの期待
有馬充美さんは、銀行業界初の女性役員としての経験を通じて、女性リーダーの活躍が社会全体に与える影響について深く感じています。彼女は「女性自身がリーダーシップを発揮することで、多様性を引き出し、より創造的で開かれた組織を作ることができる」と述べています。有馬さんがみずほ銀行で培った知見と挑戦の歴史は、これからの女性リーダーにとって貴重な道標となるでしょう。
挑戦を続けることで得られるもの
「挑戦することにリスクはつきものだが、それ以上に得られるものがある」と有馬さんは語ります。みずほ銀行の執行役員として数々の壁を乗り越えた経験や、ハーバード大学で再学習を始めた決断がそれを物語っています。有馬さんが異なる環境に身を置き続けたことで視野を広げたように、挑戦による成長は選択肢を広げ、自信と新たな可能性を生み出すといえるでしょう。
すべての世代に送るキャリア選択のヒント
有馬さんは、自らのキャリア選択を振り返りながら「選択には必ずしも正解が存在しない」と述べています。一瞬一瞬の意思決定が将来的に大きな価値を生む可能性を秘めている、と語る彼女の言葉は多くの世代に響きます。みずほ銀行の女性管理職や若手社員へのサポート経験を基に、有馬さんは「変化や挑戦を恐れずに自分の価値を信じて進むべきだ」と力強く語っています。
未来の職場で重要になる価値観
有馬さんは、未来の職場において「ジェンダーバランス」と「多様性」が鍵になると強調します。みずほ銀行での女性活躍推進の取り組みや、多様な背景を持つメンバーを受け入れる組織作りの経験を通じて学んだのは、個々の強みを活かす環境の重要性です。ダイバーシティを重んじる企業文化の中では、新しい視点や価値観が積極的に取り入れられ、組織の強さへとつながることでしょう。