社外取締役の報酬はどれくらい?知られざる相場と決定の秘密

社外取締役の報酬相場とは

日本における平均報酬額

日本の社外取締役の報酬は、業界や企業規模によって異なるものの、平均として一定の水準が存在します。2020年のウイリス・タワーズワトソンの調査によれば、売上高1兆円以上の大企業では、社外取締役の報酬相場は約1,430万円とされています。一方、デロイトトーマツグループの2022年度版調査では、プライム上場企業の社外取締役の報酬中央値は840万円という結果も報告されています。このように、日本では大企業を中心に報酬水準が高まる傾向にあります。

大企業と中小企業の報酬差

社外取締役の報酬は、大企業と中小企業の間で大きな差が見られます。大企業では報酬が高くなる傾向が強く、特に売上規模が1兆円を超える企業では1,440万円を超えることが一般的です。一方で、2018年の調査では、中小企業における社外取締役の平均報酬は663万円という結果が示されており、企業規模が主要な要因として影響を与えていると考えられます。中小企業では報酬の上限が2,000万円以上に達するケースもありますが、400万円未満のケースもあるなど、大企業に比べて幅広い分布が見られます。

業界ごとの報酬比較

社外取締役の報酬相場は業界ごとにも明確な違いがあります。例えば、製造業や金融業といった業界では高額な報酬が支払われるケースが多い一方で、サービス業や中小規模のIT企業では比較的報酬が控えめな傾向があります。特に日本では高額報酬を支払う企業として、日立製作所では社外取締役に対して3,944万円、岩谷産業では3,900万円といった事例が挙げられます。特定業界における高いガバナンス要求や業務の複雑さが、こうした報酬差の背景と言えるでしょう。

海外との報酬比較

日本の社外取締役の報酬水準は、海外と比較すると低い傾向があります。たとえば、アメリカの社外取締役の平均報酬は約3,270万円と、日本の平均と比較して2倍以上となっています。イギリスでは1,620万円、ドイツでは2,290万円、フランスでは980万円と、それぞれの国によってもばらつきがあるものの、全体として日本より高い水準にあることが分かります。これは、経営監督や企業ガバナンスに対する期待度の違い、あるいは株式報酬を含む報酬体系の採用の有無が影響しているようです。日本も近年報酬水準の見直しが進んでおり、海外に近づきつつある傾向が見られます。

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社外取締役の報酬の構成要素

固定報酬とインセンティブ報酬

社外取締役の報酬は、大きく固定報酬とインセンティブ報酬の2つに分類されます。固定報酬は、役割や責任に応じて毎月一定額が支払われるもので、企業の規模や業界の特性によって金額が異なります。一方で、インセンティブ報酬は、企業の業績向上や特定の目標達成に応じて支払われる成果報酬型の報酬制度を指します。この構成は、社外取締役が企業の成長とガバナンス強化に積極的に関与する動機づけとなっています。

株式報酬と現金報酬の違い

現金報酬は、その名の通り現金で支払われる形態であり、多くの社外取締役が受け取る一般的な報酬形式です。一方で、株式報酬は、企業の株式を一定期間保有することで報酬として与えられる形式です。この株式報酬は、社外取締役と企業の利益を一致させ、長期的な企業価値向上を図る効果が期待されています。また、海外では株式報酬が主流となっているケースも多く、日本でも徐々に導入が進んでいます。特にガバナンスが重視される上場企業では、報酬体系に株式報酬を取り入れることで、持続的な企業成長への責任感を高める動きが見られます。

無報酬で働くケースもある?

一部のケースでは、社外取締役が無報酬で活動する例も存在します。特に中小企業や非営利団体など、経済的な制約がある組織では、社外取締役が報酬を受け取らずに貢献することがあります。また、名誉職的な意味合いで社外取締役を引き受ける場合もあるため、これは一概に珍しいケースではありません。しかし、こうした場合でも社外取締役には重要な責任が伴うことから、適切な体制や条件を整えることが企業側に求められます。

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報酬が決定されるプロセスと要因

企業規模と業績の影響

社外取締役の報酬の額は、企業の規模や業績に大きく依存します。大企業では、企業の経営規模が大きい分、社外取締役に求められる責任も増し、それに伴い報酬相場も高くなります。例えば、時価総額上位100社では、社外取締役の平均年収が1,430万円にもなるという調査結果があります。一方で、中小企業では平均報酬額が663万円程度と、大企業との間で大きな差が見られます。

また企業の業績も影響を及ぼします。たとえ同じ業界内の企業であっても、業績が良好な企業では報酬が高めに設定される傾向があり、逆に業績が停滞している企業では抑えられるケースも見受けられます。このように報酬額の決定には、企業自身の財務状況やその取締役に課される責務の重さが考慮されているのです。

取締役会や株主総会での承認

社外取締役の報酬は、単に経営陣だけで決定されるわけではなく、正式な手続きを経て承認されます。その中心となるのが、取締役会や株主総会での議論と決定です。

まず、取締役会で報酬体系が策定されます。この段階では、報酬委員会が設置されている場合、その専門家たちが第三者の視点を取り入れ、公平性を担保しながら適正な金額を提示します。その後、株主総会にて具体的な金額や支給方針が提案され、最終的な承認が得られる形になります。株主総会での承認は、特に透明性を確保するうえで重要であり、企業のガバナンスを示す側面としても注目されています。

役割や責任の範囲による変動

社外取締役の報酬は、その取締役が担う役割や責任範囲がどれほど広いかによっても大きく変わります。大企業の場合、社外取締役には事業規模が広範であるほど、経営判断やガバナンスの観点で多くを求められるため、報酬額もそれに見合ったものとなります。

さらに、社外取締役の専門性も影響します。特定の分野で高度な知識や経験を持つ人材、例えば公認会計士や弁護士が社外取締役を務める場合、それらの特殊技術が企業にとって非常に重要とみなされるため、一般的な社外取締役よりも高い報酬が支払われるケースが多々あります。また、監査委員会の委員長や指名委員会のリーダーなど、特定の役職を兼任する場合も、責務が増加するため報酬の上乗せが行われることがあります。

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社外取締役の報酬における最近のトレンド

近年の報酬増加の背景

近年、社外取締役の報酬は増加傾向にあります。その背景には、企業統治の重要性が高まっていることが挙げられます。特に、社外取締役は第三者的な視点から企業のガバナンスを監督する役割を担い、その責任も重くなる一方です。2021年以降、上場企業における社外取締役の設置が義務化されたことにより、多くの企業がより優秀な人材を確保する必要に迫られ、報酬の見直しが進みました。また、大企業では売上高や時価総額に応じて報酬額が大幅に上昇するケースも見られます。売上高1兆円以上の企業における社外取締役の平均報酬額は1,440万円という調査結果もあり、特に大企業での報酬増加が目立ちます。

上場企業での報酬動向

日本では、プライム市場上場企業を中心に社外取締役の報酬水準が上昇しています。例えば、デロイトトーマツグループの調査では、プライム市場上場企業における社外取締役の報酬中央値が840万円とされています。また、高額報酬を支払う企業ランキングでは、一部の企業が2,000万円を超える報酬を支給していることが明らかになりました。こうした動向は、企業の競争力を高める上で有能な人材を確保し、適切なガバナンスを実現するために報酬の相場が見直されていることを反映しています。

持続可能性やガバナンスの観点からの変化

持続可能性やガバナンスが注目される中で、社外取締役の報酬においても新たなトレンドが生まれています。一つは、報酬体系に株式報酬を取り入れる企業が増加している点です。これにより、社外取締役が企業の長期的な成長にコミットするインセンティブを与えることが期待されています。また、ESG(環境・社会・ガバナンス)への配慮が強調される背景から、企業はガバナンスを強化しつつ、報酬政策が透明で合理的であることを重視するようになっています。さらに、報酬額の適正性や役割に基づく差別化の動きも広がりを見せています。こうした変化は企業価値の向上を目指すと同時に、少数株主を含むすべてのステークホルダーの信頼を得るための一環と言えるでしょう。

この記事を書いた人

コトラ(広報チーム)

金融、コンサルのハイクラス層、経営幹部・エグゼクティブ転職支援のコトラ。簡単無料登録で、各業界を熟知したキャリアコンサルタントが非公開求人など多数のハイクラス求人からあなたの最新のポジションを紹介します。