コトラ（広報チーム） 
セキュリティロボットとは？その基本と役割
セキュリティロボットの定義と特徴
セキュリティロボットとは、自律走行やAI技術を駆使して、人々の安全を守る業務を自動的に行うロボットのことです。その特徴として、事前に設定された巡回ルートを走行しながら、不審者、不審物、異常な状況などをリアルタイムで監視・検知する能力が挙げられます。これにより、施設内外の不安要素を素早く特定し、安全性の向上に寄与します。
例えば、2022年にセコム株式会社から発売された「cocobo（ココボ）」は、AI技術で街中や施設内の歩行者や障害物を認識しながら巡回を行い、放置物の検知や転倒者の確認といった多機能を備えたセキュリティロボットの代表例です。また、自律走行機能やクラウド連携を活かし、夜間や人手不足の時間帯でも安定した警備業務を継続可能です。
現在の導入事例：商業施設や空港
セキュリティロボットは、現在多くの商業施設や空港などで導入されています。例えば、高い人流を誇るショッピングモールでは、来館者の安全を確保する目的で巡回を行う一方、放置物や残留物の検知など、危機管理の強化にも寄与しています。また、空港では、利用者が多く集まる広範囲のエリアでの安全管理に貢献しており、荷物の置き忘れや異常行動を迅速に検知、報告する仕組みが整っています。
特にcocoboは、セコムが独自に開発したリアルタイム映像解析機能を活用し、空港の広大な敷地内でも効率よく安全性を監視する役割を果たしています。このように、セキュリティロボットは従来の人員警備を補完する存在として、重要な役割を担っています。
セキュリティロボットと従来型警備の違い
セキュリティロボットと従来型警備の主な違いは、自動化と効率性にあります。従来の警備員は常時現場に待機し、人的判断と行動に依存していましたが、セキュリティロボットはAIやセンサー技術を活用し、独自に異常を検知して警戒や通知を行います。
例えば、cocoboは人間には気づきにくい不審物や周囲のわずかな変化にも対応可能です。また、警備員の疲労や見落としといったヒューマンエラーを補う点でも大きな強みを発揮しています。さらに、必要に応じて人間の隊員とクラウドを介して情報を共有する仕組みにより、緊急時の対応力が向上しています。
この自律性だけでなく、24時間稼働可能な点や、複数エリアを一度にカバーできる持続性は、従来型警備では実現が難しかった部分をカバーする重要な特徴です。
技術の進化：AIや5Gの活用
セキュリティロボットの発展には、AI（人工知能）や5G通信技術の進化が欠かせません。AI技術を用いることで、従来のプログラムに基づく動作ではなく、周囲の状況に応じた柔軟な判断が可能となりました。例えば、「cocobo」には搭載カメラによるリアルタイム映像解析が導入されており、異常行動を瞬時に判別する能力を持っています。
さらに、5G通信技術は、高速・高信頼性のデータ通信を実現し、ロボットが収集した情報をクラウドや運用センターに即時送信する仕組みを実現しました。この点は、広範囲のエリアをカバーする施設や、密集する人流の中でも迅速に対応するための技術的基盤となっています。
AIと5Gを複合的に活用することで、セキュリティロボットは従来以上に高い精度と効率性を持つ監視システムとしての役割を果たしています。これにより、ますます高度な安全管理が実現可能になっています。
公共空間での利用を想定した設計と特徴
公共空間との調和を重視するデザイン
セキュリティロボットが公共空間で活躍するためには、その存在が風景に溶け込むデザインであることが重要です。例えば、セコムが開発したセキュリティロボット「cocobo」は、広い空間でも違和感なく調和する洗練された外観を持っています。幅52cm、奥行60cm、高さ121.5cmというコンパクトなサイズ設計により、狭い通路や混雑する場所でもスムーズに活動できます。また、落ち着いたカラーリングや柔らかな曲線を取り入れることで、ロボットが機械的で冷たい印象を与えない工夫がされています。
安全性と親しみやすさの両立
安全性と親しみやすさを両立することも、公共空間におけるセキュリティロボットの設計で重要なポイントです。「cocobo」は、歩行者や障害物を識別する3D LiDAR技術を搭載しており、スムーズかつ安全な自律走行を実現しています。最高速度6km/hという適度な速さと約50mmの段差への対応力により、公共空間での安全性を高めています。また、センサーによる障害物の自動回避機能を備え、接触事故を防ぎます。一方、軽やかなサウンドや親しみやすいライトを活用したコミュニケーション機能により、子どもから大人まで幅広い人々が安心感を覚えるデザインが採用されています。
具体的な利用場面：学校、駅、ショッピングモール
セキュリティロボットは、学校、駅、ショッピングモールなどの公共空間でその機能が活かされます。学校では、夜間の巡回警備や敷地に侵入しようとする不審者の早期発見に活用できます。駅では、混雑時の巡回と放置物の検知を行い、事件や事故を未然に防ぎます。そしてショッピングモールでは、日中の巡回警備や夜間の防犯対策として活用され、顧客と従業員の安全を守ります。また、AIを活用したリアルタイム分析機能により、緊急時には速やかに警備員や関係機関に通知することが可能です。「cocobo」のようなセキュリティロボットは、これらの場面で不可欠な存在となりつつあります。
エネルギー効率とエコロジーを考慮した設計
公共空間で長時間使用されるセキュリティロボットには、エネルギー効率の高さも求められます。「cocobo」は最大1.5時間の充電で約6時間稼働するバッテリー性能を持ち、効率的な運用が可能です。また、稼働中も基本的な機能を維持できるため、警備の中断を最小限に抑える設計となっています。さらに、消費電力を最適化しつつ、充電ステーションに自動帰還する機能も搭載されているため、効率的なエネルギー管理が実現されています。こうした仕様は、環境への負荷を抑えつつセキュリティロボットを持続的に活用するための鍵となっています。
課題と解決策：セキュリティロボット導入への挑戦
課題1：コストと運用
セキュリティロボット「cocobo」のような先進技術を取り入れた機器は、その導入にあたって初期費用や運用コストの高さが課題とされています。特に中小規模の施設では、大規模な商業施設や空港のような導入事例と比較すると、設備投資に対するリターンが見えにくいという声が多く聞かれます。また、ロボットが故障した際のメンテナンス費用や、定期的なアップデートのための予算も運用面での負担になります。
この課題に対する解決策としては、リースモデルや共同利用サービスの導入が期待されています。特に官民で連携し、公共空間での広域導入を進めることでコスト分担が可能となります。また、運用コストの最適化のため、予知保全技術の活用や遠隔監視による効率的な運用方法も注目されています。
課題2：技術的な限界とその克服
現在のセキュリティロボットは、AIや5G通信技術、3D LiDARなど最新の技術を搭載していますが、依然として技術的な限界も存在します。例を挙げると、完全な自律判断能力を持たせるにはまだ課題が残っており、特に予測不可能な状況への対応力には改良が必要です。また、長時間稼働を可能とするバッテリー性能の向上や、より高度な通信環境への対応も求められています。
これらの課題を克服するために、開発企業はクラウド情報の活用を進めており、セキュリティロボットを他の監視システムやセンサーと連動させることで高度な警備を実現しようとしています。また、研究開発を続けることで、より効率的なエネルギー使用と拡張性の高い技術の導入が期待されています。
課題3：社会的受容と倫理的懸念
セキュリティロボットが公共空間や施設内に導入される際、社会的受容性や倫理的な懸念も無視できません。ロボットが常時監視していることで、プライバシー侵害の可能性を指摘する声があります。また、一部の人々からは、ロボットの役割が人間の仕事を奪うのではないかという不安もあります。このような懸念は、導入地域や利用者層によって異なるため、慎重な対策が必要です。
これに対して、透明性の高い運用体制や、ロボットの役割を明確に示す広報活動が重要です。同時に、倫理的配慮を考慮した設計やデータ管理体制を整えることで、社会の信頼を構築することが可能になります。
課題解決の鍵となる官民連携
セキュリティロボットの導入の際には、官民連携が課題解決の大きな鍵となります。自治体や公共機関が率先して導入を検討し、一定期間運用することで、社会的な受容性を検討するモデルケースを構築するのも一つの方法です。また、民間企業との連携により、運用コストの最小化や新技術の実験場として活用することも可能です。
特にセキュリティロボットの導入拡大には、インフラ整備の支援が不可欠です。例えば、5G通信網の普及や、街全体のスマートシティ化を進める中で、セキュリティロボットを重要な要素として取り入れることができます。これにより、地域全体で効率的な治安維持が実現されるでしょう。
未来を見据えたセキュリティロボットの可能性
IoTとの連携による高度な監視システム
セキュリティロボットが未来の監視体制を強化するためには、IoT（モノのインターネット）の活用が不可欠です。IoTにより各ロボットや監視機器が連携し、広範囲でリアルタイムに情報を共有することで、より精密でスピーディな対応が可能となります。例えば、セコム株式会社が開発したセキュリティロボット「cocobo」は、搭載カメラやセンサーを通じて収集したデータをクラウド上で管理し、現場での異常を即座に検知・通報する仕組みを持っています。さらに、AIとの組み合わせでデータ解析が進化すれば、犯罪や災害の予兆をより的確に察知できる時代が期待されています。
AI活用で進化する不審者対応技術
AI技術の進化により、セキュリティロボットが不審者対応において重要な役割を果たすようになっています。「cocobo」は、AIを活用して残留者や放置物を検知し、迅速に通報する機能を搭載しています。さらに、リアルタイム映像解析により、不自然な動きや特定の行動パターンを認識し、初動対応として音声やライトで警告を発することが可能です。こうしたAI技術の活用により、従来型の警備体制では困難だった予防的なセキュリティが実現しつつあります。
世界に広がるセキュリティロボットの展望
セキュリティロボットは、すでに日本国内だけでなく世界中でも注目を集めています。人手不足や感染症対策の需要により、商業施設や空港を中心に導入が進む中、技術革新によってさらなる進化が見込まれています。例えば、セコム株式会社の「cocobo」のように、5G通信技術を活用したリアルタイム配信や遠隔操作が進化すれば、世界中のセキュリティ現場で導入される可能性があります。また、公道走行の許可を受けた日本初のケースとして注目される例もあり、他国への展開においても重要な観点を提供しています。
スマートシティ構築への貢献
セキュリティロボットは、スマートシティの重要な構成要素として期待されています。cocoboをはじめとした先進的なロボットは、AIやIoTを基盤にしながら、街全体の安全性向上に貢献します。例えば、駅やショッピングモールでの巡回警備や、不審物の検知だけでなく、公共の安心感を高める役割を担っています。また、エネルギー効率の高い設計や自律走行機能の向上により、持続可能で環境にも優しい街づくりを支える存在となるでしょう。セキュリティロボットは、スマートシティにおけるセキュリティインフラの中核として、新しい都市環境を形作っていくと考えられます。