コトラ（広報チーム） 
厚生労働省が新たな履歴書フォーマットを作成した背景
JIS規格解説から履歴書様式例が削除された経緯
令和2年7月、日本規格協会はJIS規格の解説から履歴書の様式例を削除しました。その背景には、社会の多様化や価値観の変化があり、性別や家族構成といった個人情報を履歴書に記載することに対する懸念が高まったことが挙げられます。この削除によって、事業主や求職者が使用する履歴書の様式に統一性が失われる可能性が浮上しました。そのため、公正な採用選考の基準を再度設ける必要性が高まり、厚生労働省による新しい履歴書フォーマットの提案につながりました。
公正な採用選考を目指した新様式例の必要性
従来の履歴書には、通勤時間や扶養家族の数、配偶者の有無など、採用選考には直接関係のない項目が含まれていました。これらの情報は個人情報の観点から削除するべきだとの声が高まり、新しい様式例の作成が必要とされました。また、性別欄の任意記載化を導入することで、性別による先入観や不当な採用基準の排除を目指すことも狙いのひとつです。厚生労働省は、事業主が差別のない採用プロセスを進め、公正な選考を行う助けとなる履歴書様式を提供するべく、新たなフォーマットを作成しました。
厚生労働省が新フォーマットを提案する狙い
厚生労働省が新たな履歴書フォーマットを提案する主な狙いは、公正な採用選考を確保するとともに、求職活動における求職者の心理的負担を軽減することにあります。新フォーマットでは、性別の記載を任意とし、扶養家族関連の記載内容を省略することで、求職者が応募書類に記入する際のストレスを減らすことができます。また、標準化された様式を推奨することで、事業主が採用選考における重要項目に集中し、適切な判断を行える環境を整備することが期待されています。このように、新しいフォーマットは事業主と求職者双方の利便性を向上させることを目指しています。
新しい履歴書フォーマットの特徴
採用における個人情報保護への配慮
新しい履歴書フォーマットでは、個人情報保護への配慮が従来以上に強化されています。厚生労働省の様式例では、性別欄が任意記載となり、記入しない選択肢が設けられました。また、通勤時間や扶養家族数、配偶者の扶養義務に関する項目が削除されたことで、採用選考時における判断がより公正になることを目指しています。これにより、求職者に不必要な個人情報の提供を求めない仕組みが整備され、企業においても適切なプライバシー配慮を実現することが期待されています。
A4版仕様の採用と記載内容の標準化
新しい履歴書フォーマットでは、用紙サイズがA4版に統一されています。この仕様変更により、従来のB5版履歴書と比較して記載スペースが拡大し、求職者が自身の情報をより詳細に記載できる環境が整いました。また、記載内容についても厚生労働省が示す標準化が図られており、基本情報や職歴、学歴などの項目がわかりやすく整理されています。これにより、採用企業は求職者の情報を一目で把握しやすく、書類選考の効率化が期待できます。
応募書類と一体化した記載項目の見直し
厚生労働省の新しい履歴書では、職務経歴書との一体運用を視野に入れた記載内容の見直しが進められています。これにより、企業が求める情報が集約され、求職者は複数の書類を準備する煩わしさが軽減されることが特徴です。特に、これまで別途求められることが多かった自己PRや志望動機の欄が充実しており、提出後の選考段階で重要な要素となる内容を一枚のフォーマット内で表現できる設計となっています。この変更は、応募書類提出時のスムーズさや効率性を高める大きなポイントとなっています。
企業や求職者にもたらす影響
事業主にとっての利用メリット
新しい履歴書フォーマットは、企業での採用活動においていくつかの重要なメリットを提供します。まず、このフォーマットは厚生労働省が推奨しているため、法令遵守や公正な採用選考の実現を目指す企業にとって信頼できる指針となります。性別や扶養家族関連の欄を削除した点を含め、応募者に対する不公平感のない選考基準を確立しやすくなりました。これにより、多様性を重視した職場づくりの促進にも寄与します。
さらに、新フォーマットのA4サイズの採用と記述内容の標準化により、採用担当者の事務作業の効率化が期待できます。統一された書式は、応募書類の確認や比較をしやすくし、ミスや見落としのリスクを軽減します。また、フォーマットの利用により、企業イメージの向上にもつながる可能性があります。社会的配慮を示す姿勢が求職者に好感を与えることが期待されるためです。
求職者が感じる利便性と注意点
求職者にとって新しい履歴書フォーマットは利便性をもたらします。まず、記載項目が見直されたことにより、自分の能力や経験を中心にアピールできるようになっています。性別の記載が任意となったことで、性別に関する偏見を避けられる点は、特に重要視されています。また、フォーマットがダウンロード可能で、PDFやWord形式で提供されるため、簡単に準備ができる点も大きな利便性といえます。
一方で、注意点も存在します。記載内容が標準化されていることにより、応募者個人らしさをどのように表現するかが課題となります。特に、志望動機や自己PR欄で自分の強みを効果的に伝えられるかが選考の鍵となるでしょう。また、使用するフォーマットが企業の求める様式と異なる場合は、企業側に事前の確認を取る必要があります。
新フォーマットが採用活動全体に与える効果
新しい履歴書フォーマットは、採用活動全体において多面的な効果をもたらします。特に、個人情報保護の観点が大きく進歩し、公正な採用選考を促進するきっかけとなっています。これにより、採用過程の透明性が向上し、雇用市場全体における公平性が拡大していくことが期待されます。
また、フォーマット標準化により、事業主と求職者が情報を整理しやすくなり、双方のコミュニケーションがスムーズに進む効果があります。これにより、採用のミスマッチを減少させ、結果として人材定着率の向上にもつながります。同時に、履歴書フォーマットの見直しは、応募時に提出される職務経歴書との整合性を考慮する機会を提供し、求職者の能力や経験をより適切に評価する基盤を築き上げる役割を果たします。
新フォーマットを活用するためのポイント
適切な記載内容のチェックリスト
厚生労働省が提案する新しい履歴書フォーマットを効果的に活用するためには、記載内容の正確性を確認することが重要です。個人情報や学歴・職歴、資格や特技などを記入する際には、最新の日付や正確な情報を記載するよう心掛けましょう。特に、記載内容に誤りがあると採用選考で不利になる可能性があるため、チェックリストを活用して以下のポイントを確認してください。
- 氏名や連絡先などの基本情報が正確か
- 証明写真が適切なサイズで最新のものであるか
- 学歴や職歴が時系列順で整合性を持って記入されているか
- 資格や免許が正確に記載されているか
- 志望動機や自己PRが具体的で読み手に伝わりやすいか
これらの項目を確認することで、採用担当者に好印象を与える履歴書を仕上げることができます。
求人票や職歴との整合性を保つ方法
応募書類作成時には、求人票の記載内容や自身の職歴との整合性を保つことが重要になります。厚生労働省が提供する新しい履歴書フォーマットには、公正な採用選考を目指すための配慮が含まれているため、応募先の求める情報と照らし合わせて記入することを意識しましょう。
例えば、求人票に記載されている具体的なスキル要件に、自身の職務経験や資格がどう関連しているかを履歴書や職務経歴書で明確に説明します。また、応募する職種に関連する経験や実績を強調することで、採用担当者の目に留まりやすくなります。一貫性を保つためには、過去の職歴や取得した資格の記録を整理し、漏れがないようにすることも重要です。
サポートを提供するツールやサービスの利用
履歴書の作成に不安を感じる場合、厚生労働省やハローワークが提供するサポートツールを活用することがおすすめです。「応募書類の作り方 パンフレット」や「職務経歴書の作り方 パンフレット」など、応募書類作成に役立つ資料が公式ウェブサイトからダウンロード可能です。また、ハローワークでは無料のセミナーや相談窓口があり、専門家のアドバイスを受けることができます。
さらに、履歴書のテンプレートを提供するオンラインツールや応募書類作成支援アプリを利用することで、スムーズに記入を進めることができます。これらのサービスを活用することで、負担を軽減しながら、企業の採用基準に合った書類を作成できるようになります。