コトラ（広報チーム） 
1. Will・Can・Mustとは？キャリアデザインの基本フレームワーク
1-1. Will（やりたいこと）：意志の重要性
「Will」とは、自分が本当にやりたいことや情熱を注げることを指します。キャリアを考える際、まずこの意志を明確にすることが重要です。なぜなら、「やりたいこと」がはっきりしていないと、目指す方向性が不明確なままになり、モチベーションを維持するのが困難になるからです。
たとえば、「人を喜ばせる仕事がしたい」「問題解決に携わりたい」というように、自分の中で心が引き寄せられる瞬間や、過去に満足感を得られた経験を振り返ることで、Willを発見する手助けになります。この意志を明確にするプロセスは、自分らしいキャリアを築く基盤となります。
1-2. Can（できること）：自分の強みを深掘りする
“Can”は、自分が現在持っているスキルや得意なことを指します。キャリアプランを考える際には、自分自身の強みを正しく把握することがとても重要です。これにより、自分がどのような役割を果たせるのかを具体的にイメージできます。
たとえば、「コミュニケーション能力が高い」「分析力がある」「新しい技術を学ぶのが得意」など、自分のスキルセットをリストアップし、それを裏付ける過去の成功事例を振り返ることが役立ちます。また、周囲の人からのフィードバックを受け取ることで、主観では気付けない強みを発見することもできます。Canを深掘りすることで、今後のキャリアにおける価値を自信を持って提示できるようになります。
1-3. Must（求められること）：社会や組織の期待とは
“Must”は、社会や職場で求められているスキルや役割を指します。これは、自分の「Will」や「Can」とは異なり、外部からの要因に目を向けるプロセスです。市場が求めるニーズや、自分が所属する組織で期待されることを正確に把握することで、自分のキャリアプランとの接点を見つけることができます。
たとえば、新しい技術が台頭している業界では、その技術に関するスキルが必要とされることがあります。また、所属する組織が直面している課題に対し、自身のスキルを組み合わせて貢献する方法を考えることが重要です。しっかりと「Must」を理解することで、キャリアの現実性を高め、社会や組織に対する貢献を明確化できるようになります。
1-4. このフレームワークの活用メリット
「Will」「Can」「Must」のフレームワークを活用することで、自分らしいキャリアデザインが可能になります。このフレームワークを用いることで、自己理解が深まり、現実的かつやりがいのあるキャリアプランを描くことができる点が大きなメリットです。単に「やりたいこと」だけでなく、「できること」「求められること」の視点を組み合わせることによって、理想と現実のギャップを埋めるアプローチが可能になります。
また、このフレームワークは、転職やキャリアの転機を迎えたときだけでなく、日常的なキャリアの見直しにも役立てることができます。それぞれの要素がバランスよく整っていることで、長期的で持続可能なキャリア設計を構築することができるのです。このように、「Will」「Can」「Must」は、目標達成の羅針盤となる指針と言えるでしょう。
2. 自己分析の実践ステップ：Will・Can・Mustを整理する方法
2-1. 自分の価値観を洗い出す
キャリアを選択していく上で重要な第一歩は、自分自身の価値観を明確にすることです。自分が何に対して情熱を感じ、何を重視しているのかを知ることで、Will（やりたいこと）を具体化できます。例えば、「誰かのために役立ちたい」「新しいスキルを学ぶことが好き」など、自分の中にある熱意や興味の核を探ることが大切です。
価値観を洗い出す際には、過去を振り返ることが役立ちます。過去に印象的だった出来事や、達成感を得られた瞬間を思い出しましょう。その中で、自分が何に魅力を感じていたのかを分析することがポイントです。また、リスト化することで、より明確に自分のWillを見つけることができます。
2-2. 過去の成功体験とスキルの棚卸し
次に、自分のこれまでの経験を振り返り、過去の成功体験とスキルを整理しましょう。これはCan（できること）を明らかにするプロセスです。具体的には、仕事や学業、趣味など、どのような場面で成果を上げたかを思い出してください。その際、「なぜそれが成功したのか」「どのスキルを活用したのか」を分析することが重要です。
例えば、「プロジェクトのリーダーとして目標を達成した」「複雑な問題を解決した」など、自分が得意とする分野やスキルを明確にすることで、自身の強みを客観的に把握できます。このプロセスを通じて、キャリア形成において活かせるスキルを的確に認識できるでしょう。
2-3. 社会や業界のトレンドを読み解く
自分のWillとCanを洗い出した後は、Must（求められること）を把握するために、社会や業界の動向を把握することが必要です。市場や職場では何が求められており、どのようなスキルや役割が期待されているのかを知ることで、自己分析をより実践的なものにできます。
具体的には、業界ニュースやレポートを定期的にチェックする、セミナーや勉強会に参加するなどの方法があります。また、他の人のキャリアパスを参考にすることもトレンドを理解する一助となります。こうすることで、自分の才能がどのような場面で活かされるのか、次にどこを目指すべきなのかを判断する手助けとなります。
2-4. Will・Can・Mustを視覚化する（例：シート作成）
自分のWill・Can・Mustを明確にしたら、それらを視覚化することで、より具体的な行動につなげることができます。例えば、シンプルな表やシートを作成して、自分のやりたいこと、できること、社会が求めることを一目でわかるようにまとめてみましょう。
この作業を通じて、3つの要素がどのように交わっているのかを視覚的に捉えることができます。また、視覚化することでバランスが偏っている部分や不足している部分に気づきやすくなります。このプロセスは、次の具体的なアクションプランを立てる際の基盤になります。キャリア形成をスムーズに進める上で、非常に有効な方法と言えるでしょう。
3. Will・Can・Mustのバランスを取る秘訣
3-1. 過剰になりがちな部分と欠けがちな部分を見極める
「Will」「Can」「Must」を活用したキャリア設計では、それぞれの要素が偏ると効果が半減してしまいます。例えば、「Will（やりたいこと）」ばかりに注目しすぎると情熱はあるものの、現実的なスキルや社会のニーズに合致しない可能性があります。一方で、「Must（やるべきこと）」ばかりに囚われると、自分自身の意志や情熱を見失い、仕事が義務的になりかねません。また、「Can（できること）」だけを重視すると、安心できる範囲内での挑戦にとどまってしまい、キャリアの成長が停滞してしまいます。
まずは、自分の「Will」「Can」「Must」のバランスをチェックし、どの部分が過剰になり、どの部分が不足しているのかを明確にすることが重要です。例えば、「Will」が過剰な場合、現実的視点を強化するために「Can」や「Must」を見直し、バランスを整える必要があります。一方、「Can」に余裕がある場合は、「Will」の範囲を広げ、次のステップに挑戦する準備を整えると良いでしょう。
3-2. 「やりたい」だけでは実現しない：現実的視点の取り入れ方
キャリアの方向性を考える際、最も魅力的に感じるのは「Will」、つまり「やりたいこと」かもしれません。しかし、「Will」だけでキャリアが実現することは難しいのが現実です。たとえ情熱があっても、その情熱を活かせるスキルや、それが市場や職場で求められるものでなければ、目標達成は困難です。
そのため、現実的視点を取り入れることが肝心です。具体的には、自分の「Can」と「Must」を冷静に見直し、それらと「Will」がどのように交わるのかを分析してみましょう。例えば、「Will」が「新しい技術を学びたい」であれば、「Can」の観点から自分が現在持っているスキルとのギャップを確認し、必要なスキルを習得するプロセスを設計します。同時に、「Must」の視点を通して、その技術が市場や業界でどれだけの需要があるかを確認することができれば、意志を現実のものへとつなげることができます。
3-3. 組織での「求められること」と自分の意志をどう折り合わせるか
組織で働く以上、自分の「Will」と組織や市場の「Must」を調和させることが、キャリア形成において避けられないテーマとなります。組織の「Must（求められること）」に全てを合わせてしまうと、自己意志を犠牲にして働くことになり、早晩モチベーションやパフォーマンスの低下を招く可能性があります。一方、自分の「Will」だけを優先しすぎると、組織のニーズや期待から離れ、職場での評価や役割が弱まる可能性があります。
このバランスを取るためには、まず自分の「Will」を明確にし、次にそれが組織や市場の「Must」とどう重なるかを確認します。たとえば、企業が新規プロジェクトに携わる人材を求めているとした場合、自分がそのプロジェクトにどれだけ興味を持つか（Will）と、そこに必要なスキルを備えているか（Can）を冷静に判断します。そして、組織に対して自分の強みや興味をアピールすることで、双方向に納得感のある形でフレームワークを活用することができます。
4. キャリア形成における実践例と成功事例
4-1. 若手社員がWill・Can・Mustを活用して選んだキャリアパス
若手社員が「Will・Can・Must」を活用することで、迷いや不安を抱えたキャリアの選択肢から、自分らしい道を見つけた事例は多数存在します。例えば、営業職として働いていたAさんは、「Will（やりたいこと）」として「人に新しい知見を提供することに喜びを感じる」ことを挙げました。一方で、「Can（できること）」としては「対人コミュニケーションスキル」や「データ分析能力」がありました。「Must（求められること）」では、顧客との深い信頼関係構築が求められている現職へのニーズを確認しました。結果として、Aさんは現在の強みを活かしつつ、教育分野への異動を目指す方向にキャリアパスを設定しました。このフレームワークが、意志とスキル、社会的ニーズの3要素を具体的に整理し、満足感の高い選択を可能にした好例です。
4-2. 転職活動で活かす「自己PR」とフレームワークの関係性
転職活動において、「Will・Can・Must」を基にした自己PRは、応募者の考えの整理はもちろん、面接官に明確な人物像を伝えるうえでも効果的です。例えば、Tさんは転職活動の履歴書や面接対策で、「Will（やりたいこと）」として「新しい商品を企画・提案したい」という意志を示しました。さらに、「Can（できること）」として、前職でのマーケティングに基づく分析力やチーム管理スキルを挙げました。そして、「Must（求められること）」部分では、転職先で重視される企業価値に基づき、顧客視点での提案力をアピールしました。このようにフレームワークを活用することで、意志や自己能力と企業ニーズを統合した説得力のある自己PRが実現しました。
4-3. マネージャーが部下のキャリア相談で示した具体例
部下のキャリア形成を支援するマネージャーも、「Will・Can・Must」を活用することで効果的なアドバイスが可能です。事例として、あるマネージャーBさんはデザイナーチームの部下からキャリアパスの相談を受けました。部下の「Will（やりたいこと）」としては、「クリエイティブな仕事を極めたい」という意志がありました。「Can（できること）」では、既存のデザインスキルに加え、関連するソフトウェア技術も高いことが確認されました。そして、組織が「Must（求められること）」としていたのは、デザイン業務と顧客との橋渡しを行える人材の育成でした。この相談を通じて、マネージャーBさんはデザインリーダーとしての役割を推奨し、部下が理想とするキャリアと組織の要望を両立させる道を示しました。
4-4. 失敗事例から学ぶ：フレームワークのみでは不足する要素
「Will・Can・Must」が強力なツールである一方で、そのみに依存した場合に陥りやすい失敗もあります。Dさんは、「Will（やりたいこと）」を最優先に考え、理想の職種に飛び込んだものの、「Can（できること）」や「Must（求められること）」の視点を軽視してしまい、スキル不足や職場環境の不一致で長続きしませんでした。この失敗からDさんは、自己分析だけではなく、業界や市場のニーズ、さらに職場や環境をしっかり調査する重要性を再認識しました。このように、「Will・Can・Must」はキャリア設計の強力な指針ですが、現実的な視点を補完する他の要素も併せて考慮する意識が必要です。
5. Will・Can・Mustを次のステップにつなげるためのアプローチ
5-1. 短期目標と長期目標の設定方法
「Will」「Can」「Must」を使ったキャリア設計では、短期目標と長期目標の設定が重要なステップです。短期目標は1〜2年で達成できる具体的な目標を設定し、長期目標は5年後や10年後など将来的に目指したいキャリアの姿を描きます。たとえば、「Will（やりたいこと）」で描いた仕事に就きたい場合、そのために必要な「Can（できること）」を磨く短期的な取り組みが具体策となります。このように、自分の意志を実現するための計画を現実のステップに分解していくことが大切です。
さらに、短期と長期の目標をリンクさせることで、日々の行動に一貫性を持たせられます。たとえば「5年以内にマネージャーとしてチームを率いる」という長期目標があるなら、短期的にはリーダーシップトレーニングを受けたり、プロジェクトを主導するスキルを身につけるなどのタスクが考えられます。このように、「Will」「Can」「Must」を軸に目標を設定すれば、ブレのないキャリア形成が期待できます。
5-2. 行動計画の作成と実践する際のチェックポイント
「Will」「Can」「Must」をベースにキャリアを考えた後は、実行可能な行動計画を作成しましょう。その際に特に大切なポイントは、計画を具体的かつ計測可能な形に落とし込むことです。たとえば、「新しいスキルの習得」という大まかな目標ではなく、「3か月以内に特定の資格を取得する」「毎週1冊キャリア関連の本を読む」など、具体的なアクションを設定します。
また、行動計画が実践可能かどうかを確認するために自分のリソース（時間、エネルギー、スキル）を客観的に見つめることも重要です。その際、目標達成への進捗を定期的にチェックする仕組みを作りましょう。自分の計画や行動が「Will（やりたいこと）」「Can（できること）」「Must（求められること）」のそれぞれに合致しているか定期的に振り返ると、モチベーションを維持しやすくなります。
5-3. 定期的な見直しと改善：自分のWill・Can・Mustの進化を測る
キャリアプランは一度立てたら終わりではなく、定期的な見直しと改善が必要です。人は経験や学びを通じて成長し、自分を取り巻く環境も変化していきます。そのため、半年ごとや1年ごとに「Will（やりたいこと）」「Can（できること）」「Must（求められること）」を振り返り、自分の現状に合った形にアップデートすることをお勧めします。
特に重要なのは、「Will（やりたいこと）」が変化しているかどうかを確認することです。最初に描いた意志が現在も自分にとってやりがいのある目標であるかを再評価しましょう。また、「Can（できること）」に関しては、新たに身に付けたスキルや経験をリストアップすることで自信につながります。さらに、「Must（求められること）」を調べ直し、社会や業界のニーズと自分の能力がマッチしているかを再確認すると、より効果的なキャリアの進化を測ることができます。
5-4. キャリアコーチやメンターの活用で得られる支援
キャリアをより良い方向に導くためには、キャリアコーチやメンターの力を借りることも有効です。第三者の視点から「Will」「Can」「Must」を整理すると、自分では気づけなかった課題や可能性を見つけることができます。キャリアコーチは、具体的な目標設定や行動計画の細部をアドバイスしてくれるだけでなく、自己分析のサポートや定期的なモチベーションの確認も行ってくれます。
メンターは、業界や職場の内部事情に精通している点で特に役立ちます。自分が「Must（求められること）」を満たしているかどうかや、「Can（できること）」をどう磨けば市場価値を高められるかについて具体的なフィードバックをくれるでしょう。こうした外部の支援を活用することで、「Will（やりたいこと）」に向かって効率良く前進するための道筋がより明確になります。
