コトラ（広報チーム） 
取締役の自己破産とは何か
自己破産の基本的な仕組み
自己破産とは、借金などの返済が困難となった際、裁判所に申立てを行うことで債務免除を受けられる制度です。主に個人を対象としており、債務者の財産を処分して債権者に配当した後、多くの場合、残りの債務が免除されます。自己破産をした人は、一定期間、信用情報に登録されるため、新たな借り入れやクレジットカードの利用が制限されることになります。
取締役が自己破産する場合の背景
取締役が自己破産に至る背景には、個人の財務状況の悪化や、過度な保証を引き受けたことが考えられます。特に、取締役が会社経営において個人の資産を担保に融資を受けた場合や、個人保証を付けた借入れが会社の経営悪化によって返済困難になる場合に、自己破産を選択するケースがあります。また、取締役自身が副業や投資に失敗し、多額の借金を抱えたことが原因となる場合もあります。
取締役の自己破産と一般的な破産者の違い
取締役の自己破産と一般の破産者との大きな違いとして、法律上の地位や責任が挙げられます。取締役が自己破産すると、会社法の規定により取締役としての資格を一時的に失い、地位を退任する必要があります。これは、自身の財務状況が責任ある経営判断に影響を与える可能性を考慮した措置です。一方で、自分の財務問題が会社そのものに直接影響を与えることは基本的にはありません。
また、一般の破産者が持つ社会的な制約と同様に、取締役も信用情報の登録期間中は、新たな資金調達や取引先との交渉が困難になることがあります。ただし、取締役の場合、環境次第では破産後に再び経営に復帰することも可能です。株主総会での選任や信用回復の努力が再任の鍵となります。
取締役の自己破産が会社に与える影響
会社の信用や評判への影響
取締役が自己破産すると、その事実が公になる場合があります。特に代表取締役がその対象となる場合、会社の信用や評判が直接的に影響を受けることがあります。取締役としての破産は個人の問題とされる一方で、外部からは会社全体の経営基盤が不安定であるという印象を与える可能性があります。このため、取締役の破産に関する情報に対し、顧客や取引先からの信頼を損なわないための迅速な説明や対応が求められることになります。
業務運営におけるリスクと課題
取締役が自己破産することで、会社の日常的な業務運営にも課題が生じる可能性があります。一度取締役としての地位を退任しなければならないため、取締役として行っていた業務が他の役員や従業員によって引き継がれる必要があります。これにより一時的な業務の停滞が考えられ、特に迅速な意思決定が求められる場面では、経営の遅れがリスクとなり得ます。また、会社内外での混乱を最小限に抑えるために、速やかな後任人事や経営方針の見直しが求められることもあります。
取引先や金融機関との関係性の変化
取締役の破産は、取引先や金融機関との信頼関係にも影響を及ぼす可能性があります。自己破産した取締役が退任することにより、企業としての組織変更や対応能力について取引先や金融機関から問い合わせが増える、または警戒されるケースが考えられます。特に、既存の融資や新規の資金調達に関して、与信審査が厳しくなる可能性があります。そのため、取引先や金融機関には、会社の経営が安定していることや、今後も取引を継続できるだけの体制が整っていることを明確に伝える必要があります。
取締役が自己破産した場合の法的対応
自己破産による取締役退任のプロセス
取締役が自己破産した場合、法的には特別な手続きが必要なくとも、原則として取締役を退任することとなります。これは自己破産を申請し、破産手続開始の決定が下りた時点で、会社法や委任契約の規定に基づいて自動的に取締役の地位を失うからです。このプロセスは会社の株主総会などでの特別な承認を待つ必要はありません。
また、会社法では破産者には一定の欠格事由が生じると定めているため、自己破産によってそのまま取締役を続けることはできなくなります。一方、自己破産したこと自体は取締役としての過去の業務や責任に直接影響を及ぼすものではないことが法律的に確認されています。
法律的な責任と取締役としての制限
取締役が破産した場合、破産者である間は会社法に規定されている「取締役の欠格事由」に該当するため、新たに取締役として選任されることはもちろん、在職することもできません。この欠格事由は破産手続中に限定されるものであり、自己破産が完了し、復権が認められれば制限は解除されます。
ただし、自己破産によっても取締役としての業務執行上の責任は免責されるわけではありません。たとえば、自己破産以前に違法行為や経営上の重大な不適切行為があれば、これについては民事的あるいは刑事的責任を問われる可能性があります。取締役が会社の破産や倒産に関与した場合、その影響が社外の利害関係者に及ぶことも考慮しなければなりません。
破産後の復権と再任の可能性
自己破産をした取締役であっても、法律上復権が認められた場合には再び取締役の地位に戻る可能性があります。復権とは、破産手続が完了し、一定の法的条件を満たした場合に破産者としての法的制限が解除されることを指します。復権が認められた後は、株主総会での選任により再度取締役として活動する道が開かれるのです。
一方で、破産歴があることは当人の信用情報に大きく影響を及ぼす場合があります。銀行や金融機関からの融資が受けにくくなる可能性や、取引先からの信用の低下が再任のハードルとなるケースも少なくありません。そのため、復権後には過去の経営責任をどう修復し、再び信頼を獲得するかが重要な課題となるでしょう。
破産後のステップを踏まえながらも、取締役としての再任を目指すには、再び取締役に必要な資質と信頼を築く努力が求められます。
取締役が自己破産した後の会社と個人の可能性
企業としての再建や新たな経営方針
取締役が自己破産した場合、その影響を受けた会社は、信頼回復や経営基盤の安定化を図るための再建策を講じる必要があります。取締役が破産したとしても、会社組織自体が法的に影響を受けるわけではありませんが、信用問題に関する不安が生じる可能性があります。そのため、新しい経営方針を打ち出し、透明性を高めることが重要です。
例えば、株主総会において資本構成や経営陣を見直すことが効果的です。また、委任された取締役の業務管理体制を強化し、健全な経営をアピールすることで、取引先や金融機関の信頼を取り戻すことができます。このような再建プロセスにおいては、内部統制を整備し、経営方針に明確な改善点を示すことが求められます。
自己破産した取締役のキャリア構築
自己破産をした取締役であっても、今後のキャリアを築いていく機会は残されています。法律により一度は取締役の地位を退任しなければならないものの、破産手続開始後、欠格事由が解消されれば再び取締役に就任することが可能です。ただし、自己破産の事実が経済的な信用評価に影響を及ぼすため、再構築には一定の時間と努力が必要です。
破産後のキャリアを築く方法の一つとして、専門性やスキルを活かして別の業界や役職で活躍する選択肢もあります。また、新たな起業家として挑戦する場合には、市場調査や適切な資金計画を行い、過去の経験を教訓とすることで成功への道が開ける可能性があります。重要なことは、正直さと透明な事業方針を示し、信用を積み上げることです。
関連法規を活用した立て直しのヒント
取締役や会社が自己破産後に立て直しを図る際には、関連法規を適切に活用することが重要です。会社法や破産法に基づき、会社の再建や経営改善に向けた支援制度を活用できます。たとえば、商工会議所や専門家を通じて経営コンサルティングや融資支援などのサポートを受けることが可能です。
さらに、破産者としての制限がある期間中でも、個人再生や任意整理といった他の債務整理手段を検討することで、経済的な負担を軽減する方法もあります。特に、新たな資金調達が難しい場合には、クラウドファンディングのような次世代型の資金調達方法を検討するのも有効です。
また、再選する場合には、株主総会での透明性を重視した意思決定が重要です。これにより、再任を目指す取締役に対して株主や従業員が信頼を寄せやすくなるでしょう。
