コトラ（広報チーム） 
管理職におけるタイムカードの必要性とは？
管理監督者と労働基準法の基礎知識
まず、管理職におけるタイムカードの必要性を理解するためには、労働基準法における「管理監督者」の扱いについて知っておく必要があります。労働基準法では、管理監督者として認められるためには、「重要な職務内容を担い」「経営者と同等の権限を持ち」「勤務時間の制限を受けず」「それに見合った待遇を受けている」など、いくつかの厳格な基準が設けられています。
これらの基準を満たす場合、通常の労働時間規制が適用されなくなることがあります。しかし、多くの「管理職」が実際にはこれらの基準を満たさない、いわゆる「名ばかり管理職」として運用されているケースも少なくありません。この場合には通常の労働者と同様に、労働時間やその記録に関するルールが適用され、タイムカードの打刻が必要とされます。
タイムカードをつける管理職が増加した背景
近年、タイムカードを打刻する管理職が増加している背景には、働き方改革関連法案の影響があります。この法律では、全ての労働者の労働時間を把握することが企業に義務付けられるようになりました。この義務には、管理職も含まれています。
また、過重労働による健康被害や企業が労働基準法違反に問われるケースが増加したことも、この流れを後押ししています。特に、管理職が長時間労働を強いられる中で健康管理が不足している問題が浮き彫りになり、タイムカードを用いた労働時間の適正な記録が求められるようになりました。
法律上「管理職」の定義と勤怠管理の関係
法律上の「管理職」の定義は、通常の労働者とは異なる取り扱いを受け、残業代が支払われないケースが多いことが特徴です。ただし、これが適用されるためには、前述したような管理監督者の条件を明確に満たしている必要があります。
また、労働時間の把握という点では、管理監督者であっても、企業に対する勤怠管理義務が免除されるわけではありません。「労働時間の適切な記録」は、健康管理や過労防止といった観点からも重要視されており、管理職であってもタイムカードなどの打刻が求められるケースが増えています。これは労働基準法が、全ての労働者の健康と安全を守るという観点に基づいているためです。
タイムカードの目的は労働時間の適正把握
タイムカードの最大の目的は、労働時間の適正な把握です。特に管理職であっても、長時間労働が続けば健康を損なう可能性があり、そのリスクを防ぐためにもタイムカードは重要な役割を果たしています。適切な勤怠管理は、法的な責任を果たすだけでなく、従業員一人ひとりの健康を守る効果も期待されています。
さらに、タイムカードの記録は従業員と企業の間で透明性のある労働環境を作る土台ともなります。特に労働時間の透明性は、労使間の信頼関係を深め、公正な働き方を推進する重要な要素です。そのため、管理職であってもタイムカードをつけることは、企業と従業員の双方にとって価値のある取り組みといえるでしょう。
管理職でもタイムカードが求められる理由
適切な労働時間の記録で健康管理を支援
管理職であってもタイムカードによる労働時間の記録が求められる理由として、健康管理の重要性が挙げられます。特に、働き方改革の進展により、企業には従業員の労働時間を正確に把握し、過重労働を防ぐ義務が課せられています。管理職は裁量を持つ立場であるため、労働時間の管理が不要だと思われがちですが、健康面での配慮は全ての労働者に共通する課題です。
例えば、長時間労働が習慣化すると、心身の負担が蓄積し、最悪の場合、深刻な健康被害を引き起こす可能性があります。そのため、タイムカードを使用して労働時間を明確に記録することが、管理職の健康を守るうえでも欠かせない措置となっています。
最近の法律改正で変わる勤怠管理の義務
2019年より施行された働き方改革関連法により、管理職でも労働時間を含めた勤怠管理が義務化されました。この改正法では、全ての労働者に対する労働時間の把握を企業に求めており、名ばかり管理職として勤務している人々と区別をつけるためにもタイムカードの運用が重要視されています。
また、この法律の改正によって、管理職であっても過重労働を未然に防ぐために、労働時間の記録を適切に行うことが必要となりました。これにより、従来不明確であった管理職の労働環境に関する状況が少しずつ改善されつつあります。
テレワークの普及とタイムカードの重要性
近年のテレワークの普及も、管理職がタイムカードを使用する理由の一つです。オフィス勤務では目に見えやすかった労働時間の把握が、テレワーク環境では困難になる場合があります。そのため、客観的で信頼性の高い労働時間の記録システムが必要とされています。
特に、管理職がテレワークを行う際にも、労働時間の長時間化が健康問題を引き起こさないよう、適切な勤怠管理を行うことが求められます。デジタルツールを活用したタイムカードは、労働時間の記録を効率化し、管理職の働き方を支える重要な役割を果たしています。
タイムカード不要という誤解の解消方法
社内教育における法律知識の浸透
管理職にタイムカードが不要であるという誤解を解消するためには、労働基準法などの法律知識を正しく浸透させることが重要です。管理職は労働時間に裁量がある一方で、健康管理や過労防止の観点から労働時間の把握が必要とされています。特に働き方改革による法改正後、すべての労働者の勤務時間を把握することが企業に義務づけられており、これは管理職にも適用されます。このような法規制や責任について社内で体系的に教育し、全社員が理解を深めることが、誤解をなくす第一歩となります。
デジタル勤怠管理システムを活用する重要性
タイムカード不要という誤解を解消するもう一つの手段が、デジタル勤怠管理システムの活用です。従来の紙やアナログな方法からデジタル化することで、労働時間の記録が透明かつ正確に行えるようになります。特に、管理職の中にはテレワークやフレックスタイム制を利用する人も多いため、タイムカードや労働時間の打刻が柔軟に対応できるデジタルシステムの導入が不可欠です。また、デジタル化は労働基準法への対応を容易にし、法的リスクの軽減にもつながります。
勤怠管理における管理職の役割と責任を整理
管理職がタイムカード不要という誤解を解消するには、勤怠管理における自身の役割と責任をしっかり理解することが求められます。管理職は、自らの労働時間を記録するだけでなく、部下全体の勤怠状況を把握し、適正な労働環境を整える義務があります。また、「名ばかり管理職」と呼ばれるケースのように、管理職としての待遇や権限が適切でない場合には、勤怠管理の役割が曖昧になる可能性があります。こうした点を会社全体で共有し、役割と責任を明確にすることで、管理職自身もタイムカードの必要性を実感できる環境を整備することが大切です。
まとめ：管理職とタイムカードの新しい形
人事部門が果たすべき役割と展望
人事部門は、管理職も対象とした適切な勤怠管理を推進する役割を果たす必要があります。特に管理職が「タイムカードが不要」と誤解するケースが依然として多いため、法律に基づいた勤怠管理の重要性を周知することが求められます。働き方改革関連法により、全ての労働者の労働時間把握が義務化され、管理職も例外ではなくなりました。人事部門は、これを踏まえた社内規定の整備や管理職向け研修を通じて、コンプライアンス遵守の体制を整えるべきです。また、デジタル勤怠管理システムを導入するなど、全社的な業務効率化を同時に図ることが将来的な展望と言えます。
管理職自身が理解すべき勤怠管理のルール
管理職自身も、勤怠管理のルールを正しく理解する責任があります。多くの管理職が「自分たちは労働時間の裁量があり、タイムカードの打刻は必要ない」と考えてしまいがちですが、これは適切な理解とは言えません。労働基準法に基づき、会社は全ての従業員の労働時間を把握する義務があり、管理職もその対象となります。特に、健康管理や労働環境の適正維持を目的としたタイムカードの活用は、管理職自身にとっても自身の負担を軽減し、働きやすい環境を生むために重要な手段なのです。
労使双方で作る適正な労働環境
適正な労働環境を作るためには、労使双方の協力が不可欠です。管理職と従業員が対等に働きやすい職場を目指すことが、結果的に企業全体の生産性向上にもつながります。管理職がタイムカードを適切に利用することで、自身の労働時間を正確に記録し、過重労働のリスクを回避することが可能です。同時に、会社側は客観的な勤怠データを基に労働環境改善の方針を立案し、社員一人ひとりに配慮する体制を整えることが求められます。このような取り組みを通じて、健全で適法な労働環境を構築することができるのです。
