NEC Atermシリーズの脆弱性とは?
脆弱性の概要と背景
NECのAtermシリーズルータには、特定の条件下で悪意のある攻撃者によって不正アクセスやシステムの乗っ取りが可能になる脆弱性が報告されています。この問題は、主にLAN側のネットワークから意図しない操作が行われることに起因しており、WAN側の攻撃への影響は確認されていません。
セキュリティの基本である管理者パスワードや無線暗号化キーの設定が脆弱な場合、このような脆弱性が悪用されやすくなる恐れがあります。また、古いファームウェアの使用やサポート対象外の製品において、これらの問題が放置されることが一層危険を招く要因となっています。
最近報告された主な脆弱性
2024年7月31日に公開された情報によると、NEC Atermシリーズには以下の主な脆弱性が確認されています:
- Telnet経由での任意コマンド実行
- UPnP経由での任意コード実行
- 任意の装置情報の読み取り
これらの脆弱性の中でも特に深刻なのが、高権限を取得した攻撃者による任意スクリプトやOSコマンドの実行です。関連する具体的な番号として、CVE-2024-28005からCVE-2024-28016までの複数のCVE番号が付けられており、いずれもネットワークセキュリティ上危険度が高いとされています。
脆弱性が利用される可能性とリスク
これらの脆弱性が利用されると、ネットワーク上の他のデバイスへの侵入や、個人情報の漏えいといった深刻な影響が生じる可能性があります。具体的には、攻撃者が以下のようなアクションを実行する可能性が指摘されています:
- ネットワーク内の機密情報の取得
- ルータ設定の改ざんや無効化
- 他のデバイスへの中継攻撃
また、古いファームウェアを使用している場合、これらのリスクはさらに高まります。一部製品ではサポートが終了しており、適切なセキュリティ対策が施されていないことが問題視されています。個人利用のみならず、小規模オフィスなどのネットワークにおいても重大なセキュリティリスクを引き起こす可能性があるため、早急な対応が必要です。
影響を受ける製品とその詳細
該当するAtermシリーズのモデルリスト
2024年7月31日に公表された情報によると、複数のNEC Atermシリーズ製品に脆弱性が確認されています。特に、以下のモデルが影響を受けることが報告されています。
- WG1800HP4
- WG1200HS3
- WG1900HP2
- WG1200HP3
- WG1800HP3
これらのモデルでは、LAN側からの不正アクセスによってTelnet経由での任意コマンド実行やUPnP経由での任意コード実行といった現象が発生する可能性があります。具体的には、管理者の許可なく制御が奪われるリスクがあり、ネットワークセキュリティに重大な影響を及ぼす可能性があります。
古いファームウェアがもたらすリスク
脆弱性の一因として、古いファームウェアの利用が挙げられます。NECのAtermシリーズでは、ファームウェアのアップデートにより既知の脆弱性が解消される場合が多いですが、古いバージョンを使用していると必要な補正が適用されない可能性があります。
例えば、CVE-2024-28005やCVE-2024-28009などの脆弱性は、高権限を取得した攻撃者が任意のスクリプトを実行するリスクを生じさせます。このような脆弱性は、迅速なファームウェアアップデートが推奨される代表例です。特にサポート期間が終了した製品では、このリスクがさらに顕著になるため、利用者にとって早急な対応が求められます。
サポートが終了した製品への対応策
一部のAtermシリーズ製品については、すでに公式のサポートが終了しています。これらの製品については、新たなファームウェアの提供が行われないため、以下のような対応策が必要となります。
- 買い替えの検討: 長期的な視点でサポートが継続されるモデルへの移行を検討してください。特に、セキュリティ機能が強化された最新モデルへの切り替えが推奨されます。
- セキュリティ設定の強化: 可能であれば、管理者パスワードやWi-Fi暗号化キーを強化することでリスクを最低限に抑えることが重要です。
- 不要機能の無効化: UPnPやリモート管理機能など、脆弱性が指摘される機能を無効にすることで、被害を軽減できます。
NEC Atermシリーズ製品の利用者は、不用意な脆弱性の放置が大きなリスクにつながる可能性がある点を認識し、具体的な保護策を講じる必要があります。特に、脆弱性の影響を受けるサポート終了製品については、高い優先度で対策を進めることが求められます。
脆弱性からの保護方法
ファームウェアのアップデート手順
NEC Atermシリーズの脆弱性を防ぐ最も基本的な方法の一つがファームウェアの更新です。脆弱性が報告された場合、NECはその対策を講じた新しいファームウェアを提供することが多いです。アップデートの手順は以下の通りです。
まず、ルータの管理画面にアクセスします。多くの場合、Webブラウザで「192.168.0.1」や「192.168.1.1」を入力して管理画面を開けます。ログインには、デフォルトの管理者パスワードまたは設定済みのパスワードが必要です。メニューから「ファームウェア更新」または「ソフトウェア更新」の項目に進み、最新版がある場合は指示に従ってアップデートを実行してください。
なお、アップデート中に電源を切ったり、接続を解除したりしないよう注意しましょう。更新後には脆弱性の修正が反映され、安全性が向上します。
管理者パスワードの設定を強化する
NEC Atermシリーズを安全に保つには、管理者パスワードの強化が欠かせません。デフォルトのパスワードをそのまま使用している場合、悪意のある攻撃者に推測されやすく、不正アクセスを受けるリスクが高まります。
管理画面にログインしたら、「管理者パスワードの変更」や「セキュリティ設定」の項目を探します。新しいパスワードは、英大文字、小文字、数字、記号を組み合わせ、少なくとも12文字以上にすることを推奨します。また、パスワードの使い回しを避け、定期的な変更を心がけましょう。
Wi-Fiパスワードの安全性を見直す
Wi-Fi接続の安全性を保つためには、暗号化キー(Wi-Fiパスワード)の再設定も重要です。古いパスワードや予測が容易な情報(例:電話番号や「12345678」など)は避けましょう。
NEC Atermシリーズでは、管理画面内でWi-Fi設定を見直すことができます。暗号化方式は、最新かつ安全性の高い「WPA3」や「WPA2」を選択し、パスワードは長く複雑なものを設定します。設定後、新しいパスワードを無線LANに接続するすべてのデバイスに入力する必要があるため、慎重に記録しておきましょう。
不要な接続の検出と削除
ネットワークの安全性を強化するためには、現在接続されているデバイスの監視が不可欠です。不審なデバイスが接続されている場合、不正アクセスの可能性があります。
NEC Atermシリーズの管理画面では、接続中の機器リストを確認する機能があります。不明なデバイスが存在する場合は、すぐに接続を解除するか、Wi-Fiパスワードを変更して再設定しましょう。また、不要なUPnP設定が有効になっている場合、それを無効化することでセキュリティをさらに向上させることが可能です。
さらなる安全性のための追加対策
VPN機能やファイアウォールの有効化
NEC Atermシリーズの脆弱性に対応するための重要な対策として、VPN機能やファイアウォールの有効化が挙げられます。VPN機能を利用することで、ネットワーク通信を暗号化し、外部からの不正アクセスを効果的に防ぐことができます。また、ファイアウォールを有効にすることで、脆弱性を悪用した攻撃を防ぐ防御線を構築できます。これらの機能は多くのAtermシリーズ製品で利用可能であり、特に企業環境や機密情報を扱うネットワークでは必須の手法となります。
ネットワーク利用状況の監視
ネットワーク利用状況を定期的に監視することで、不審なアクセスや不自然なトラフィック量を早期に察知することができます。不正アクセスが発生する兆候として、通常よりも高いデータ使用量や未知のデバイスからの接続が見られる場合があります。NEC Atermルータには、接続デバイスの管理やトラフィックの監視機能を搭載しているモデルもあるため、それらを活用することで安全性を向上させましょう。
定期的なセキュリティ検査の推奨
NEC Atermシリーズの脆弱性を未然に防ぐため、定期的なセキュリティ検査を実施することを推奨します。セキュリティ検査では、ファームウェアのバージョン確認、管理者パスワードの見直し、不要な機能の無効化などを行うことが重要です。また、外部ツールを使用した脆弱性スキャンを実施することで、潜在的なリスクを把握し、迅速な対応が可能となります。こうした検査を年に数回行うだけでも、セキュリティレベルの向上につながります。
買い替えの検討:長期的視点での選択肢
一部のNEC Atermシリーズ製品は既にサポートが終了しているため、将来的な安全性を考慮して新しいモデルへの買い替えを検討することも選択肢の一つです。特に脆弱性が深刻なWG1800HP3やWG1200HP3のようなモデルでは、最新機種への移行が推奨されます。新しい製品ではセキュリティ機能が強化されているため、脅威のリスクを大幅に軽減できます。長期的なコストや安全性を考慮し、信頼できる製品を選びましょう。