カントリーリスクとは?なぜリスクを取るのか?徹底解説

カントリーリスクとは、特定の国や地域における政治、経済、社会情勢の変動が、海外での経済活動に悪影響を及ぼし、企業や投資家が損失を被る可能性を指します。しかし、カントリーリスク管理の本質は、単にリスクを回避することではありません。それは、新興国が持つ圧倒的な「高成長の機会(リターン)」と、それに伴う「リスク」を天秤にかけ、自社が許容できる範囲内でいかにリターンを最大化するかという、極めて高度な経営判断なのです。リスクを一切取らなければ、成長の機会も失われてしまいます。

カントリーリスクの分類と現代的課題

カントリーリスクは、その原因によって大きく政治的・経済的・社会的の3つに分類されます。

1. 政治的リスク

政権交代や政策変更、内乱などが原因となるリスクです。近年、この政治的リスクは「経済安全保障」という文脈で語られることが増えています。米中対立に代表されるように、特定の国への技術流出防止や、半導体・重要鉱物などの戦略物資の供給網管理が、国家の最優先課題となっています。これにより、企業は従来のコスト効率だけでなく、地政学的な同盟関係に基づいてサプライチェーンを再構築する「フレンドショアリング」といった、新たな戦略的判断を迫られているのです。

2. 経済的リスク

インフレーションや通貨の急落、対外債務の増加など、経済的要因によるリスクです。例えば、政府の不適切な金融政策への介入により、通貨が急落し、多くの外資系企業が損失を被るケースが挙げられます。歴史的には、1997年のアジア通貨危機が、タイのバーツ急落をきっかけに他国へ連鎖的に広がり、グローバル金融市場に大きな影響を与えました。

3. 社会的リスク

テロや紛争、自然災害などに加え、近年ではESG(環境・社会・ガバナンス)関連のリスクが重要視されています。サプライチェーンにおける人権侵害(強制労働など)が発覚すれば、世界的な不買運動や投資の引き揚げに繋がり、企業のブランドイメージを大きく傷つけます。また、進出先の国で環境規制が突然強化されれば、工場の操業停止に追い込まれる可能性もあります。企業は、これらのリスクに対応するための「人権デューデリジェンス」が不可欠となっています。

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カントリーリスクがビジネスに与える影響

カントリーリスクは、グローバルに事業を展開する企業や投資家の戦略に、多様な影響を及ぼします。

貿易・投資への直接的影響

進出先の国で政治情勢が不安定化すると、輸出入の規制が厳しくなったり、通貨変動による収益の減少、法制度の変更によるビジネスモデルの見直しが求められたりします。こうしたリスクが適切に管理されていない場合、企業の経済的損失は膨大なものとなります。

企業戦略への影響

政権交代による外資規制の変更や、経済制裁の実施は、現地拠点での事業展開の中断やコスト増加を引き起こします。また、M&Aや新規市場参入においても、対象国のカントリーリスクが高い場合、計画を再考するか、より慎重な事業計画を策定する必要があります。

金融市場への波及

一国で発生した通貨危機や信用不安が、他国の金融市場に影響を及ぼす「伝染効果(コンテイジョン)」を引き起こす場合があります。これにより、新興国市場からの資金流出が加速し、世界的な金融市場の不安定要因となることがあります。

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カントリーリスクへの対策と戦略

カントリーリスクに対応するためには、単なるリスク回避ではなく、能動的な戦略が求められます。

1. リスク・インテリジェンスの強化

S&PやMoody’sといった格付け機関のレポートは重要な情報源ですが、それだけを鵜呑みにするのは危険です。なぜなら、格付けは急な政変や社会情勢の変化をリアルタイムで反映できないからです。先進的な企業は、地政学の専門家や現地の情報網を駆使して、政治・経済の動向に関する情報を能動的に収集・分析する「リスク・インテリジェンス」活動に注力しています。これにより、規制変更の兆候などを早期に察知し、競合他社に先んじて戦略的な手を打つことが可能になります。

2. プロフェッショナルの活用

カントリーリスク対応のプロフェッショナルとして、日本の「総合商社」は特筆に値します。彼らは長年にわたり、世界中の高リスク国で事業を展開し、独自の現地情報ネットワークと政府機関との深い関係性を構築してきました。彼らのリスク評価手法や交渉術は、多くの日本企業にとって重要な手本となります。

3. 分散投資とリスクヘッジ

特定の国や地域への依存度が高まりすぎると、その国固有のリスクによる損失が大きくなる可能性があります。そのため、投資対象を複数の国や地域、産業に分散させることでリスクを分散し、影響を最小限に抑えることが有効です。また、為替先物取引やオプション取引などを活用し、将来の為替レートを固定することで、通貨変動による損失を回避するリスクヘッジも有効な手段です。

4. 国際保険や信用保証の利用

カントリーリスクに備えるためには、国際保険や信用保証を活用することも効果的です。例えば、政情不安や自然災害が原因で輸出入取引が停止した場合、輸出信用保険を利用することで損失を補償することができます。

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まとめ:リスクと機会を両立する経営判断

国際経済の複雑化に伴い、カントリーリスクは多角的に進化しています。地政学的な緊張や経済安全保障、そしてESGリスクといった新たな課題は、企業にこれまでの常識を超える戦略的な判断を迫っています。

しかし、リスクの高い地域には、それに見合うだけの大きな成長機会が存在します。重要なのは、ただリスクを恐れるのではなく、それを正確に評価し、能動的な情報収集と専門家の知見を活かしたリスク・インテリジェンスによって、リスクを管理することです。カントリーリスク管理は、高成長の機会とリスクを両立させるための、現代ビジネスにおける必須スキルと言えるでしょう。

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カントリーリスクに関する求人ポジション

コトラでは、カントリーリスクに関する求人ポジションを取り揃えております。

グローバルバンクでのグローバル信用リスク管理業務(カントリーリスク管理、海外及び海外子会社信用リスク管理)の求人

【ポジション概要】
カントリーリスク管理、グローバル信用リスク管理における業務を既存メンバーと協力して取り組んでいただくことを想定。
1.当社がビジネス上取っているカントリーリスクの対象国について、各国のカントリーリスクのモニタリング・分析・評価を行う。
2.上記カントリーリスクのモニタリング・分析・評価を通じて、ビジネスサイド及び欧米ア各地域リスク管理部と連携して、当社のカントリーリスクの機動的対応を推進する。
3.海外(含む子会社)の信用リスク状況のモニタリング及びヘッドクオーターとしてのリエゾン業務。
欧米ア各地域の有効な取り組みを共有する等し、グローバル全体での信用リスク管理の高度化を図る。
4.海外(含む子会社)の信用リスク状況変化時に、ヘッドクオーターとして海外拠点と連携して対応を立案、またはサポート。

公的年金での運用リスク管理業務の求人

【ポジション概要】
・運用リスク管理業務(投資戦略別リスク、パフォーマンスの分析、およびリスク制御に関する提言)
・クオンツアナリスト業務(運用データベース構築、データ分析、リスクモデルの評価)
・パフォーマンスアナリスト業務(運用パフォーマンス計測・要因分析、評価用データの整備)
・リスクモニタリング業務(市場、信用、流動性、カントリーリスク等のモニタリング)
・リスク管理企画業務(リスクマネジメントのフレームワークの高度化等に関する業務)
・投資案件分析業務(オルタナティブ投資など、既存・新規投資案件のリスク分析)
・ストレステスト業務(手法開発、潜在リスクの評価、ポートフォリオの脆弱性分析)

大手生命保険会社での資産運用(国内・海外クレジット審査担当/経験者)の求人

【ポジション概要】
・資産運用部門における国内外クレジット審査担当を募集しています。

具体的には、
・投融資先に対する社内格付けの付与、投融資案件の審査等
・資産運用(主に国内外クレジット)に係る規程等の遵守状況の確認
・リスク状況の把握・計測・分析・モニタリング、経営層への報告等(商品リスク、カントリーリスク等も含まれます)

大手銀行での海外クレジットリスク・カントリーリスク管理にかかる企画業務の求人の求人

【ポジション概要】
海外ビジネスの企画・推進部署における、クレジットリスク管理・企画業務。
具体的には、海外ビジネスに係るリスクアペタイト・フレームワークの企画・管理、海外拠点でのクレジットリスク企画に係るサポート、リスク管理部門との連携、クレジットコストの計数管理・各種会議対応、カントリーリスク管理(国別リミットの設定管理、国別エクスポージャーの集計管理)等

大手銀行での国際審査担当者の求人

【ポジション概要】
◆海外与信案件の審査業務
・海外与信案件の審査(海外企業向け与信、プロジェクトファイナンス、不動産ノンリコースローン等、海外案件全般)
・信用格付の付与
・カントリーリスク調査
・海外の業界動向等の調査
・審査研修の実施等

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この記事を書いた人

コトラ(広報チーム)

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