コトラ（広報チーム） 
第1章：中小企業診断士試験の概要
中小企業診断士とはどんな資格か？
中小企業診断士は、経営コンサルタントとしての専門知識や実務能力を証明するための国家資格です。この資格は、中小企業の経営課題を分析し、適切な解決策を提案することを目的としています。特に、幅広い経営領域での知識を必要とする点で特徴的です。そのため、中小企業診断士は「中小企業のホームドクター」とも呼ばれることがあります。また、難易度が非常に高い資格として知られており、多くの受験者が働きながら取得を目指しています。
試験の構成：1次試験・2次試験・口述試験
中小企業診断士試験は、1次試験、2次試験、そして口述試験の3つのステップで構成されています。1次試験は7科目から成る筆記試験で、経済学や経営法務、財務・会計など、経営に関連する幅広い知識が問われます。この試験は絶対評価で行われ、総得点の60%以上かつすべての科目で40点以上の得点が合格基準です。
2次試験はケーススタディ形式で出題され、実践的な分析力や提案力が求められます。この試験では相対評価が採用され、受験者間での相対的な順位が最終結果に影響します。さらに、筆記試験合格後には口述試験があり、ここで主に受験者のプレゼンテーション能力やコミュニケーション能力が評価されます。
受験資格や申し込み手続きについて
中小企業診断士の受験資格に関しては、特段の条件は設けられておらず、学歴や実務経験、年齢などは一切問われません。そのため、誰でも挑戦することが可能です。申し込みはインターネットを通じて行い、事前に必要な受験料を支払う必要があります。試験申し込み期間は例年1次試験で4月中旬から5月中旬、2次試験の場合は8月から9月頃となっています。
試験スケジュールと実施時期
中小企業診断士試験は毎年決まったスケジュールで実施されます。1次試験は、令和7年度は8月2日（土）と3日（日）に予定されています。2次試験の筆記試験は10月26日（日）に行われ、その後、合格者は口述試験へ進みます。口述試験は12月中旬に実施されるため、年内にすべての試験が終了するスケジュールです。
なお、1次試験の合格には有効期限があり、合格日から2年間の間に2次試験に合格しなければなりません。これが最大のポイントのひとつであり、計画的な学習スケジュールを立てることが重要です。
第2章：中小企業診断士試験の合格率と難易度
合格率の推移とその背景
中小企業診断士試験の合格率は年々変動が見られますが、総合合格率は4%前後と非常に低い水準で推移しています。1次試験では絶対評価が採用されているため、受験者全体の得点結果に基づき合格者が決まる仕組みです。一方、2次試験は相対評価が採用され、試験内容が高度であることに加え、合格者数が一定数に制限されることが合格率の低さにつながっています。
受験者数は近年増加傾向にあり、特に中小企業診断士という資格の社会的な認知度の上昇や独立・キャリアアップを目指す層の受験が増えていることが背景にあります。2025年度（令和7年度）の1次試験合格率は23.7%と前年度より低下しており、試験全体の難しさを実感させる結果となっています。
1次試験・2次試験の合格率の違い
1次試験と2次試験では合格率に大きな違いがあります。直近のデータでは1次試験の合格率はおおむね25%以上と比較的高めですが、それに対して2次試験の合格率は19%前後と非常に厳しい状況です。1次試験の合格基準は「総得点の60%以上かつすべての科目で40点以上」という絶対評価であるのに対し、2次試験は他の受験者との相対評価が加わるため、競争が激しくなります。
また、1次試験合格後には有効期限が設けられており（翌々年度末まで有効）、限られた期間内で2次試験に挑む必要があります。このプレッシャーも2次試験の突破を難しくしている要因といえるでしょう。
合格率に現れる難易度の実態
中小企業診断士試験の合格率の低さは、その難易度の高さを反映しています。1次試験では中小企業経営政策や運営管理といった実務寄りの広範な分野が問われ、深い理解と記憶が求められます。そのうえで2次試験に進むと、与えられたケーススタディを分析し、具体的な対策を提案する高度なコンサルティング能力が必要です。
さらに2次試験は筆記試験に加え口述試験も課されるため、理論的な妥当性だけでなく、表現力や思考力も問われます。このように、試験を通じて中小企業診断士としての実践的なスキルが総合的に評価される点が、合格率の低さに直結していると言えるでしょう。
他の資格との難易度比較
中小企業診断士の難易度は、他の国家資格と比較しても高いと言われています。例えば、宅地建物取引士や行政書士といった比較的広く知られている資格では合格率が10%〜20%前後で推移しており、これに対して中小企業診断士の総合合格率は4%前後です。特に2次試験の相対評価の存在が難易度を引き上げる大きな要因となっています。
また、必要な学習時間も約1,000時間とされており、法学系や経営系にバックグラウンドがない場合、より多くの時間を費やす必要があります。実際、偏差値換算では62程度とされ、国公立の上位大学入試に匹敵する学力が求められると言えます。このように、中小企業診断士は他の資格と比較しても習得する価値が高く、難関資格と位置付けられています。
第3章：合格のための学習戦略
合格に必要な学習時間とは？
中小企業診断士試験に合格するために必要な学習時間は、一般的に約1,000時間とされています。この時間は試験の範囲が広いこと、1次試験と2次試験の形式や出題傾向が大きく異なることに起因しています。なお、この1,000時間は働きながら勉強する受験者が多い中でも無理のない計画を立てる上での目安となります。余裕を持って計画を立てることが、合格率アップにつながるポイントです。また、効率的に学習を進めるためには1次試験は7科目すべての基礎を効率よく固めることが鍵となります。
おすすめの勉強方法と教材
中小企業診断士の試験突破には、効率的な学習方法と良質な教材を選ぶことが重要です。まず、1次試験向けには市販の基本テキストや過去問集の活用が推奨されます。1次試験は範囲が広いものの、選択肢形式であるため、基礎知識を幅広く身につけることが必要です。対して2次試験は記述式となり、与えられたビジネス課題に対する論理的な解答能力が問われるため、実践的な対策が不可欠です。TACやLECといった資格予備校のサポート教材やオンライン講座は、各試験形式に特化した内容で理解を深めやすく、自身の学習スタイルに合うものを選ぶと良いでしょう。
過去問の重要性を徹底解説
過去問は中小企業診断士試験の合格率を高めるために最も重要な学習ツールのひとつです。過去問を繰り返し解くことで、出題の傾向や頻出分野を把握することができます。また、試験の形式に慣れるとともに、知識の定着を図る絶好の機会となります。特に1次試験では同じテーマの問題が繰り返し登場する傾向が強いため、過去問を解くだけで得点力の向上が期待できます。さらに、2次試験においても過去問は重要で、試験で求められる論理的思考や記述のコツを学ぶための基盤となります。過去問演習を通じて、実際の試験でどのように問題にアプローチするかを冷静に判断できるようになります。
短期合格を目指す戦術と計画
短期合格を目指すためには、効率性を追求した学習戦略が重要です。まず、学習初期に全体の試験範囲や合格基準を把握し、苦手分野を早めに特定して重点的に学習する計画を立てることが鍵となります。例えば、1次試験では短期間で得点につながる科目を優先的に攻略し、他の科目については最低限の合格ラインを目指す戦術が効果的です。また、スケジュール管理も重要で、1日に確保できる学習時間を具体的に計画に組み込み、小さな目標を積み重ねることでモチベーションを維持できます。さらに、模擬試験やアウトプット学習を積極的に取り入れることで、本番に近い環境での実力が磨かれます。
第4章：中小企業診断士取得後のキャリアと魅力
資格取得がキャリアに与える影響
中小企業診断士は、経営コンサルタントとしてのスキルを証明する国家資格であり、取得することでキャリアに大きな影響を与えます。特に、経営戦略や財務分析、マーケティングに関する確かな知識を持つと評価され、企業内での昇進や役職の拡大につながりやすいです。また、この資格の特長として、多くの業界で活用できる汎用性が挙げられます。企業の経営課題を解決する能力が求められるため、コンサルタント業界だけでなく、経営企画部門や新規事業化を担う役割にもフィットします。資格取得者の多くは、会社員としてのキャリアアップを図る人や、独立を目指して新たな道を模索する人が中心です。
中小企業診断士の収入例と働き方
中小企業診断士として働く場合の収入は、雇用形態や活動内容によって異なります。企業内診断士として勤務する場合、企業の評価制度に準じて給与が決定されるケースが多く、平均年収は約600万円以上とされています。一方、独立診断士として活動する場合、案件の規模や受注数によって収入が大きく変わりますが、年間1,000万円以上の収入を得るコンサルタントも少なくありません。また、副業や週末起業として診断士業務を行うケースもあり、柔軟な働き方が選べるのも魅力です。ただし、スキルや経験が収入に大きく影響し、資格を取得しただけで高収入が保証されるわけではない点には留意が必要です。
経営コンサルタントとしての活躍の場
中小企業診断士は、経営コンサルタントとして幅広い業種・分野で活躍しています。主な業務内容は、中小企業の課題解決、事業計画の策定、新規市場参入やマーケティング戦略の立案などです。また、地方自治体や商工会議所が主催する事業支援プロジェクトに参加することも多く、地域経済の活性化にも貢献しています。近年では、デジタル化やDX推進に関連したコンサルティング需要が高まっており、中小企業診断士もこれらの分野での支援が求められています。さらに、大企業だけでなくスタートアップやベンチャー企業からの相談も増えており、診断士のアプローチ次第で活躍の場を広げられるのが特徴です。
独立と企業内診断士の違い
中小企業診断士として働く道には、大きく分けて「独立」と「企業内診断士」という2つの選択肢があります。「独立」する場合、自らクライアントを開拓し、コンサルタント業務を完全に自己責任で遂行します。フリーランスのような形態が一般的で、時間の自由度が高い一方、収入が案件の数や内容に依存するため、安定性が課題となる場合があります。一方、「企業内診断士」は、会社員として企業内部で診断士のスキルを活かして働く形です。例えば、経営企画部門や営業企画部門などでの業務に従事しながら、組織の経営改善をサポートします。企業内での資格活用は安定した収入やキャリアパスを得やすいものの、対応できる業務領域が限定される場合もあります。どちらもそれぞれ特徴があり、自分のライフスタイルやキャリアプランに合った道を選ぶことが重要です。
