コトラ（広報チーム） 
中小企業診断士とは？その基礎知識
中小企業診断士の役割と仕事内容
中小企業診断士は、中小企業が抱える様々な経営課題を解決するための助言や支援を行う専門家です。具体的には、経営計画の策定や業務改善の提案、販売促進支援、人材育成、さらには事業承継や事業再生のコンサルティングまで多岐にわたる業務を担当します。このような幅広い役割を担うため、企業や経営者の良きパートナーとして重宝されており、中小企業にとって頼れる存在といえます。
国家資格としての中小企業診断士の特徴
中小企業診断士は国家資格として位置付けられており、その信頼性の高さが特徴です。資格取得の過程では、中小企業の経営や財務、人事、マーケティングなど、幅広い分野の専門知識が求められます。2024年4月時点で全国の登録者数は約27,000名となっており、近年では合格率がやや上昇している傾向もあります。特に、資格を取得すると「経営コンサルタント」として自らの活動に箔がつくため、注目度が高まっています。
他の士業との違い
中小企業診断士と他の士業の違いとして挙げられるのは、「独占業務がない」という点です。例えば税理士や弁護士は特定の業務を独占的に行うことが法律で認められていますが、中小企業診断士にはそのような分野はありません。そのため、経営コンサルタントの資格として活用しながら、多様な業務に対応することが可能です。一方で、資格取得後に具体的な実務経験や専門性を高める努力が必要とされるため、他資格よりも活用範囲が広がりやすいのが特徴ともいえます。
診断士の誕生背景と経緯
中小企業診断士が誕生した背景には、戦後日本の中小企業振興政策が深く関わっています。1952年に制定された中小企業基本法に基づき、経済産業省（当時の通商産業省）を中心とした動きの中で、この資格が誕生しました。目的は、中小企業の経営力の強化を支援し、日本の産業全体を底上げすることでした。そのため、中小企業診断士は当初から国の政策を支える役割を担う重要な経営支援ツールとして位置付けられてきました。以降も、中小企業が直面する課題が多様化する中で、その存在意義が高まっています。
中小企業診断士の登録者数とその実態
全国の登録者数と推移データ
中小企業診断士の登録者数は、2024年4月時点で約27,000名に達しています。この数字は過去10年間で徐々に増加しており、特に2021年以降は新規合格者数の増加が顕著です。合格率の推移を見ると、第1次試験ではおおよそ20%台中盤、第2次試験では20%未満で推移しており、一定の合格ラインを維持しています。近年は経営環境の変化や中小企業の課題が多様化する中で、中小企業診断士への需要が注目され、資格の取得者が増加する傾向にあります。
地域ごとの診断士の分布と特徴
中小企業診断士の登録者数には、地域ごとに大きな偏りが見られます。特に都市部である東京都、大阪府、愛知県などの経済的に活発な地域には登録者が集中しており、これらの地域だけで全国登録者数の半数近くを占めています。一方で、地方都市や過疎地域では登録者数が少なく、例えば和歌山県では2019年時点で登録者数がわずか8名とされています。このような地域差は、経済規模の違いや中小企業診断士に対する需要の違いによるものと考えられます。
他資格との登録者数比較
中小企業診断士の登録者数は約27,000名であり、他の士業資格と比較すると少ない部類に入ります。例えば、弁護士の登録者数は約45,000名、公認会計士は約38,000名となっています。これらの資格が一定の独占業務を持つ一方で、中小企業診断士には独占業務がないことも登録者数の要因として挙げられます。しかし、経営コンサルタントという中小企業診断士の専門性への需要が高まる中で、資格の存在感は徐々に拡大していると言えるでしょう。
企業内診断士と独立診断士の割合
中小企業診断士は、大きく分けて「企業内診断士」と「独立診断士」の2つの働き方に分類されます。企業内で診断士として働く企業内診断士は、そのスキルを経営企画や事業改善などに活用することが多く、登録者全体のおよそ7割を占めるとされています。一方で、独立診断士は、約3割と少数派ながら、個人または小規模のコンサルタントとして活動しています。独立診断士は地域の中小企業支援で重要な役割を果たすと同時に、自ら事業を展開するケースも多いのが特徴です。このような状況から、中小企業診断士としての柔軟なキャリアの選択肢が広がっていると言えるでしょう。
中小企業診断士の資格が注目される理由
中小企業の抱える課題と診断士の重要性
中小企業は日本全体の企業数の約99%を占めており、国内経済を支える中核的な存在です。しかし、少子高齢化やデジタル化の進展、後継者不足といったさまざまな課題に直面しています。このような背景の中で、中小企業診断士は、それぞれの企業が抱える問題を「見える化」し、具体的な解決策を提案する役割を担っています。
中小企業診断士の資格は、経営・財務・マーケティングなど幅広い領域の知識を有することを証明する国家資格であり、企業経営において的確なアドバイスを行える存在として重要性が増しています。中小企業にとって、専門家の支援を受けることは、持続可能な経営を実現するうえで欠かせないものとなっています。
企業内活用から独立後のキャリアまで
中小企業診断士の資格を取得すると、その活用の幅は非常に広がります。企業に属しながら内部で経営戦略や事業改善を推進する「企業内診断士」として活躍する道があります。たとえば、大手企業の管理職や中小企業の経営者が診断士の知識を活用し、自社の強化を図るケースが増えています。
また、独立して経営コンサルタントとして活動する「独立診断士」というキャリアパスも人気があります。独立診断士として成功すれば、多種多様な業界とクライアントを持つことができ、その経験が信頼をさらに積み重ねます。このように、職域を問わず、自らのスキルや知識を最大限に活かすことができる点が、中小企業診断士の大きな魅力です。
AI・デジタル時代における診断士の役割
AIやデジタル技術の進化は、中小企業の経営環境に大きな変化をもたらしています。データを活用した経営判断や業務効率化は、これからの時代においてますます必要不可欠です。しかし、多くの中小企業にとって、これらの技術を導入・活用するためのノウハウが不足しているのが現状です。
中小企業診断士は、AIやDX（デジタルトランスフォーメーション）の知識を持ち、それを中小企業が活用できる形に落とし込む役割を果たします。現場の状況や地域の特性に合わせて最適なデジタル化支援を行える点が、診断士の価値をさらに高めています。このように、中小企業診断士は現代の経営環境で必要不可欠な存在として注目されています。
経済産業省が推進する診断士の活用事例
中小企業診断士は、経済産業省が公式に認定・推進している国家資格です。同省では診断士を企業の経営課題解決のプロフェッショナルとして位置づけ、さまざまな施策でその利用を奨励しています。具体的には、中小企業政策や地域活性化の事業において診断士が活躍する機会を増やす取り組みが進められています。
例えば、地域の商工会議所が実施する経営相談会や補助金申請支援において、中小企業診断士がアドバイザーとして参加することが一般的になっています。また、経営革新計画の作成支援や事業承継計画策定など、国や自治体のサポートメニューにおいても診断士が積極的に活用されています。このような制度的な後押しもあり、中小企業診断士はますますその重要性が高まっています。
中小企業診断士を目指す際のポイントと魅力
資格取得までの道のりと試験内容
中小企業診断士の資格取得には、国家試験に合格することが必要です。この試験は一次試験、二次試験の2段階に分かれており、それぞれが異なる役割を持っています。一次試験はマークシート形式で、経済学・経済政策や財務・会計、経営法務などの幅広い科目を学びます。この試験に合格すると、次は二次試験に進みます。二次試験では、記述式試験により経営分析や課題解決能力などが問われ、最終的に口述試験を経て合格が決まります。
資格取得までは決して簡単ではなく、最低でも1000時間以上の学習が必要とされています。また、合格までに3～5年程度の期間を要するのが一般的です。しかし、この過程で得られる知識とスキルは、経営者支援やコンサルティング業務に直結するため、大変実用的です。
難易度・合格率から見る取得の価値
中小企業診断士の試験は難易度が高く、合格率もそれを反映しています。例えば、令和7年度（2025年度）の一次試験では、受験者数が18,360人、そのうち4,344人が合格し、合格率は23.7%でした。一方で、最終関門となる二次試験の合格率はさらに低く、令和3年度（2021年度）では18.3%となっています。このように高いハードルを乗り越えることで得られる資格だからこそ、中小企業診断士としての市場価値が高いと言えます。
また、合格者数はここ数年で増加傾向にあり、需要の高まりがうかがえます。特に中小企業の抱える経営課題が多岐にわたる現代では、診断士としての専門性が一層重要視されています。
学べるスキルと知識の幅広さ
中小企業診断士の資格取得の学習過程では、総合的なビジネススキルと経営知識を身につけられる点が最大の魅力です。試験科目には財務・会計、マーケティング、人事・労務管理、さらには情報システムなど、経営全般に必要な分野が網羅されています。その結果、診断士は中小企業診断に限らず幅広い分野で活躍できるスキルを身につけることが可能です。
また、資格取得後も継続的に学び続けることが重要とされ、資格更新制度によって最新情報やトレンドを習得する仕組みも整っています。これにより、常に最前線で活用できる知識を維持することが可能となります。
取得後の具体的なキャリアパス
中小企業診断士の資格を取得すると、多様なキャリアパスが開けます。企業内で経営企画部門や人事部門などで活躍する「企業内診断士」としての道があります。特に企業の戦略策定や改革支援を担う役割で、そのスキルが重宝されています。
また、独立して経営コンサルタントとして活動する「独立診断士」も一般的です。中小企業診断士には独占業務はないものの、多くの中小企業が抱える課題を解決する独自の専門性が評価されており、需要は年々増加しています。さらに、経済産業省や各自治体が診断士を活用した事業を推進しており、活動の場が広がる傾向にあります。
こうした幅広い選択肢により、中小企業診断士の資格は人材としての市場価値を高め、柔軟かつ持続的なキャリア構築を可能にしています。
