コトラ（広報チーム） 
補助金申請代行に関する最近の法改正の背景
行政書士法改正の主要ポイント
令和7年（2025年）6月6日に可決された行政書士法の改正では、補助金申請書類作成における業務規制がさらに厳格化されることが明確になりました。この改正により、報酬を得て補助金申請書類を作成することができるのは行政書士または行政書士法人に限定されることとなりました。特に、行政書士法第19条の改正では、「他人の依頼を受け、いかなる名目であっても報酬を得て行う業務」が禁止されると規定されており、無資格者による違法な書類作成行為を取り締まるための具体的な内容が盛り込まれています。
この改正は2026年1月1日から施行される予定であり、補助金関連業務を提供する専門家や事業者に大きな影響を及ぼすことが予想されています。特に、「顧問契約の一環として無償で行う補助金申請書類作成」も違法とされるため、これまで書類作成支援サービスを提供してきた中小企業診断士には業務内容の再考が求められるでしょう。
改正の対象となる補助金申請代行の現状と課題
補助金申請代行業務は、特に中小企業が新たな事業を展開する際に多く利用される支援サービスです。しかし、現在の状況では無資格者による違法な代行業務が横行しており、これが業界の信頼性を損なう大きな課題となっています。また、補助金申請は複雑な手続きが伴い、採択率が10％～50％程度とされるなか、多くの中小企業が書類作成のサポートを必要としているのが現実です。
一方で、申請代行の報酬体系が不明瞭であることや、採択されなかったケースにおける責任の所在が曖昧であることも問題とされています。今回の法改正では、こうした現状を改善するために、書類作成代行業務を行政書士の専門技術に基づく独占業務とすることで、違法行為を抑止し、業界全体の信頼性を向上させる狙いがあります。
法改正がもたらす業界への影響
今回の行政書士法改正により、業界全体に広範な影響が及ぶと考えられています。まず、補助金申請代行業務を提供している中小企業診断士は、これまでの業務内容を変更せざるを得なくなる可能性があります。中小企業診断士は経営戦略や事業計画作成の助言には強みがありますが、申請書類の具体的な作成代行業務に関しては法的に制約が厳しくなり、こうした業務は今後行政書士へと移行することが必然となるでしょう。
また、行政書士にとっては、今回の改正により補助金関連業務の需要が高まり、業界の活性化につながると期待されています。一方で、法改正に関連する監視や取締りが強化されることから、影響を受けるとされる中小企業診断士や他の専門家との連携が重要になると考えられています。特に、競争が激化するなかでの役割分担や協業の形態にも注目が集まるでしょう。
中小企業診断士と補助金代行業務の関係性
中小企業診断士は事業計画の策定や経営課題に対する助言といった「支援者」としての役割が期待されています。しかし、今回の法改正により、補助金申請書類の作成に直接関与することは行政書士でなければ違法となるため、補助金支援業務の現場で果たすべき役割が明確に分離される方向にあります。
ただし、中小企業診断士には補助金を活用した事業計画のアドバイスや申請準備の流れをサポートするスキルがあります。たとえば、申請者である事業者自身が作成すべき書類において、全体のフレームや戦略を提案することは中小企業診断士として合法的に行える範囲です。また、行政書士と連携を図ることで、補助金申請業務を広範囲で支援する新たな形が模索されるでしょう。
補助金関連業務は経営改善や成長促進に効果的な手段でもあるため、中小企業診断士としては、法改正を十分に理解した上で顧客に対し透明性の高い説明を行い、法的トラブルを回避することが極めて重要です。
行政書士資格が求められる場面とは？
補助金業務の中での法的業務区分
補助金業務においては、法的に認められた業務区分が厳格に定められています。特に補助金申請書類の作成代行については、行政書士法に基づき行政書士または行政書士法人のみが報酬を得て行うことが許されています。これは、令和7年（2025年）に改正された行政書士法においても再確認され、一層厳しく規定されています。
この改正により、「他人の依頼を受け、いかなる名目によるかを問わず報酬を得て申請書類を作成すること」が全面的に禁止され、補助金業務に携わる他の専門家にも大きな影響を及ぼす見込みです。特に中小企業診断士が報酬を得て補助金申請書類を作成する行為は、違法となるため注意が必要です。
一方で、中小企業診断士が提供できる業務としては、経営戦略や事業計画の助言・指導が挙げられます。このような助言業務は、法的に報酬を受け取ることが認められているため、診断士は補助金申請に直接関与するのではなく、企業の戦略的な目標設定や事業計画の根幹部分を支援する役割を担うことが求められます。
行政書士との役割分担と協業の可能性
補助金の申請業務においては、行政書士と中小企業診断士の役割分担がますます重要になってきています。行政書士は「街の法律家」として法的書類作成の専門家であり、補助金申請書類の代行業務を公式に担う資格を持っています。一方、中小企業診断士は経営や事業の課題解決に関する専門知識を活かし、事業計画の策定支援といったアプローチでサポートを行います。
今後、この二つの立場の専門家が適法な形で協業を進めることが、補助金活用を目指す中小企業にとって重要となります。具体的には、中小企業診断士が事業計画書の骨子を助言し、それを基に行政書士が法的要件を満たした申請書類を作成する流れが考えられます。このように役割分担を明確化し、互いの強みを活かした支援体制を構築することで、企業の成功率を高めることが可能となります。
事業計画書作成サポートと直接代行の境界線
中小企業診断士にとって、補助金業務における合法的活動として認められているのが、「事業計画書作成のサポート」を主とした業務です。ただし、この「サポート」と「直接代行」との間には明確な線引きが存在します。診断士は、事業者からヒアリングを行い、内容に基づいて助言を行うことができるものの、申請書類を実際に作成する行為そのものは違法となります。
たとえば、診断士が事業者と共に事業計画全体の方向性を議論し、実現可能性を高める助言を行うことは許されています。しかし、具体的な申請内容を代わりに記入したり、完全な形で書類を仕上げることは行政書士法第19条に違反する可能性があります。このため、中小企業診断士は顧客に対し、事業計画書の作成に向けたアドバイスを行いつつ、申請作業そのものは事業者自身で行わせることが重要です。
今後の法的環境を踏まえても、診断士は顧客との透明性を保ちつつ、適切な業務範囲に従ったサービス提供を意識しなければなりません。また、行政書士との連携を視野に入れた活動を行うことが、補助金業務支援において診断士としての価値を高める重要なポイントとなるでしょう。
中小企業診断士として知っておくべき注意点
補助金支援の適切な依頼方法への理解
補助金申請支援に関しては、その依頼方法が適切であるかどうかを十分に理解することが重要です。中小企業診断士として合法的に行える業務はあくまで経営戦略や事業計画の助言・指導に限定されており、補助金申請書類の作成代行を行うことは行政書士法違反となる場合があります。そのため、顧客から補助金申請関連の相談を受けた際には、専門職である行政書士に依頼するべきケースと、自身が助言できる範囲を明確に区別する必要があります。
行政との法的トラブルを回避する方法
補助金申請支援を行うにあたり、行政との法的トラブルを回避するためには、業務の範囲と責任を正確に把握し、遵守することが求められます。特に行政書士法第19条の改正により、報酬を得る形での補助金申請書類作成は、一層厳しく規制されています。この規制を軽視すると、違法行為とみなされる可能性が高くなるため、業務にあたっては中小企業診断士としての職域を超えないよう配慮することが不可欠です。
顧客への説明責任と透明性の確保
補助金支援においては、顧客への説明責任と透明性の確保が求められます。特に、補助金業務の法的な制限や診断士として提供できるサービスの範囲を明確に伝えることが重要です。顧客に対し、自身が行わない業務については行政書士に相談するよう促すことで、誤解や問題の発生を未然に防ぐことができます。また、補助金申請には採択の可否が伴うため、過度な期待を抱かせない説明も大切です。
今後予想される監視や指導の強化ポイント
令和7年（2025年）の行政書士法改正に伴い、補助金申請代行に関連する監視や指導が強化されることが予想されます。特に、中小企業診断士など他の専門職による違法な申請代行が取り締まりの対象になると考えられるため、法令遵守の意識を一層高める必要があります。また、補助金申請サポートの合法的な範囲内で、付加価値の高い経営支援を提供することが求められる時代になるでしょう。
補助金申請支援に求められる新たなアプローチ
中小企業診断士が活用できる代替的な業務範囲
行政書士法の改正により、補助金申請書類の作成代行が行政書士のみに限定されることになりました。この規制強化を踏まえ、中小企業診断士は合法的に提供できるサービスを明確にする必要があります。具体的には、経営戦略や事業計画の立案サポートに特化し、事業者自身が実行に移しやすい形でアドバイスを行うことが挙げられます。また、補助金申請に必要な準備段階である財務分析やマーケティング戦略の策定支援は依然として重要な業務範囲として活用できます。
補助金申請支援の他に提案すべき付加価値の創出
単なる補助金申請のサポート業務から脱却し、事業者への長期的な付加価値を提供する視点が求められます。その一例が、中小企業の成長を促進するための資金調達方法の検討を支援することです。例えば、補助金だけでなく、融資や投資など複数の資金源を組み合わせた提案を行うことで、経営リスクを軽減しつつ、持続可能な事業運営をサポートできます。また、補助金採択後の成果指標管理やPDCAサイクルに基づくフォローアップを提供することも効果的です。
将来を見据えたクラウドツールや業界システムの活用
行政手続きや業務のデジタル化が進む中、クラウドツールや専門的な業界システムを効果的に活用することが競争力を高める鍵となります。例えば、補助金管理システムを活用することで、申請スケジュールや必要書類のチェックリストを提供し、事業者が自主的に対応しやすい環境を整えることが可能です。また、経営支援に特化したデータ分析ツールを活用すれば、事業計画書の作成や経営戦略の立案に付加価値をつけることができます。
資格を超えた専門家ネットワークによる支援体制の構築
中小企業診断士が単独で補助金申請業務を完結させることは難しい時代になりつつあります。そのため、行政書士や税理士、社会保険労務士など他の専門家とのネットワークを構築し、連携して支援体制を充実させることが重要です。例えば、中小企業診断士が事業計画の作成支援を担当し、行政書士が補助金申請業務の法的手続きを担うような役割分担を行うことで、事業者が必要とする全体的なサポートを提供できます。このような協業体制は、顧客満足度の向上とともに業界全体の健全化にも寄与します。
