はじめに
記事の目的と主な読者層
本記事は、アセットマネジメント業界でのキャリアを検討している就職活動中の学生や転職希望者、および業界関係者を主な読者層としています。アセットマネジメント業界の年収に関する最新情報を提供し、業界への理解を深めることを目的としています。
2024年アセットマネジメント業界の注目ポイント
2024年のアセットマネジメント業界は、日本政府による「資産運用立国実現プラン」の推進や新NISA制度の拡充により、活況を呈しています。特に新NISAは個人の投資意欲を高め、アセットマネジメント業界への資金流入を加速させています。これにより、業界全体の採用意欲が高まり、経験者だけでなくポテンシャル採用の機会も増えています。また、ESG投資やオルタナティブ投資への関心も高まり、運用対象の多様化が進んでいます。
本記事で参照する年収データ・調査手法
本記事で参照する年収データは、主に2024年および2025年最新の公開情報に基づいています。転職サイトや企業の有価証券報告書、業界レポート、社員の口コミなどを総合的に分析し、各企業の平均年収、職種別・年代別の年収、および最高・最低年収について解説します。データはあくまで参考値であり、個々の年収は経験、スキル、役職、企業の業績によって変動する可能性があることをご留意ください。
アセットマネジメント業界とは
アセットマネジメントの概要と主要企業
アセットマネジメントとは、個人や企業などの投資家から預かった資産(アセット)を、株式、債券、不動産などの金融商品に投資・運用し、その価値を効率的に増やしていく専門的な業務を指します。主な収益源は、運用資産残高に応じた「信託報酬(運用管理費用)」です。
アセットマネジメントのサービスは、主に「投資信託業務」と「投資顧問業務」の2つに大別されます。投資信託業務は主に個人投資家から集めた資金を運用するのに対し、投資顧問業務は年金基金や保険会社などの機関投資家から資産を預かり、個別のニーズに合わせて運用・管理を行います。
代表的な企業には、日系企業として野村アセットマネジメント、日興アセットマネジメント、アセットマネジメントOne、三井住友DSアセットマネジメントなどがあり、外資系企業としてはJ.P.モルガン・アセットマネジメント、ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント、UBSアセットマネジメント、フィデリティ投信などが挙げられます。
業界のビジネスモデルと主な職種
アセットマネジメント業界のビジネスモデルは、運用資産残高に応じた報酬を得る「ストック型ビジネス」が中心です。安定的な収益構造を持つ一方で、長期にわたる顧客からの信頼と運用実績が求められます。
主な職種は以下の3つの部門に分かれます。
- 運用部門(フロントオフィス)
- ファンドマネージャー: 投資家から預かった資金の運用責任者として、最終的な投資判断を行います。
- アナリスト: 企業や市場を調査・分析し、ファンドマネージャーに投資情報を提供します。
- エコノミスト/ストラテジスト: マクロ経済の動向や金融政策を分析し、投資戦略の方向性を策定します。
- トレーダー: ファンドマネージャーの指示に基づき、市場で金融商品の売買を執行します。
- 営業部門(フロントオフィス)
- 投資信託営業: 個人投資家向けの投資信託を販売会社(銀行や証券会社)に提案します。
- 機関投資家営業: 年金基金や保険会社などの機関投資家に対し、個別のニーズに合わせた資産運用サービスを提案します。
- ミドル・バック部門(ミドルオフィス・バックオフィス)
- ミドルオフィス: 運用部門のサポートとリスク管理、投資ガイドラインの遵守状況のモニタリングなどを行います。
- バックオフィス: 約定処理、資金決済、資産残高管理、基準価額の算出など、ファンド運営の事務的な基盤を支えます。
近年では、不動産アセットマネジメントやITエンジニア、データサイエンティストといった専門職の需要も高まっています。
日系・外資系アセットマネジメントの違い
日系と外資系のアセットマネジメント会社には、年収水準、報酬体系、企業文化、組織体制などに違いが見られます。
- 年収水準と報酬体系
- 日系企業: 他の業界に比べて高水準ですが、比較的安定した雇用と緩やかな昇給カーブが特徴です。ボーナスの比重も高い傾向にあります。
- 外資系企業: 日系企業を大幅に上回る年収水準が特徴で、平均年収が日系企業の1.5倍から2倍になることもあります。ただし、徹底した成果主義であり、年収に占めるボーナス(インセンティブ)の割合が非常に高く、個人のパフォーマンスや会社の業績によって年収が大きく変動します。
- 組織体制と業務内容
- 日系企業: 大手金融グループの傘下にあることが多く、グループ全体で大規模な運用残高を誇ります。ファンドマネージャーのポジションも比較的多く、日本資産の運用や国内顧客のサポートが中心です。
- 外資系企業: 少数精鋭主義が多く、運用は海外拠点で行い、日本では営業や顧客サポートに特化する「サブアドバイザリーモデル」を採用している企業も少なくありません。そのため、日本でのファンドマネージャーの求人は稀で、プロダクトスペシャリストやポートフォリオマネージャーといったポジションが多いです。
- 企業文化
- 日系企業: 安定志向で、チームワークを重視する傾向があります。
- 外資系企業: 成果主義が強く、個人の専門性やスキルが直接評価に結びつきます。グローバルなビジネスを展開するため、ビジネスレベル以上の語学力が必須となるケースが多いです。
年収ランキングTOP20【2024年版】
企業別年収ランキング(平均年収・最高/最低年収も解説)
アセットマネジメント業界の年収は全般的に高水準ですが、企業規模や日系・外資系によって大きく異なります。
2024年のアセットマネジメント企業の平均年収ランキング(一部は2025年予測を含む)は以下の通りです。
順位企業名平均年収(万円)1フランクリン・テンプルトン2,5782GSAM2,4863ドイチェ2,1844フィデリティ2,1735モルガンスタンレー2,0926インベスコ2,0377アモーヴァ・アセットマネジメント(旧:日興アセットマネジメント)1,4348三井住友DSアセットマネジメント1,2709野村アセットマネジメント1,23410日興アセットマネジメント1,17411アセットマネジメントOne1,15812東京海上アセットマネジメント1,10813大和アセットマネジメント1,05414三菱UFJ国際投信90715SBIグローバルアセットマネジメント788
(※複数の調査サイトや公開情報を基に作成。合併やデータ参照元の違いにより変動する可能性があります。平均年収はあくまで目安であり、個々の年収は職種、役職、経験、成果によって大きく異なります。)
外資系企業の特徴と傾向
外資系アセットマネジメント企業は、日系企業に比べて圧倒的に高い年収水準を誇ります。ランキング上位を占める企業は、平均年収が2,000万円を超えるケースも珍しくありません。これは、外資系企業が少数精鋭の成果主義を徹底しており、個人のパフォーマンスが報酬に直接反映されるためです。特にファンドマネージャーや経験豊富な営業職では、高額なインセンティブが期待できます。
ただし、高い報酬には厳しい成果責任が伴います。運用成績や契約獲得など、具体的な成果を継続的に出すことが求められ、結果が出せない場合は厳しい評価となることもあります。また、グローバルなビジネスを展開するため、ビジネスレベル以上の英語力が必須とされることが多く、本社との連携のために深夜や早朝の勤務が発生することもあります。
日系大手の年収水準
日系大手アセットマネジメント企業も、日本の平均年収と比較すると非常に高い水準です。平均年収は1,000万円から1,400万円程度が目安となり、安定した経営基盤の上で着実に高年収を目指せるキャリアパスが魅力です。
例えば、野村アセットマネジメントでは、30代で年収1,000万円を超える社員がほとんどとされています。アセットマネジメントOneや三井住友DSアセットマネジメントなども同様に高水準であり、充実した福利厚生やワークライフバランスも魅力として挙げられます。
日系企業は、外資系のような極端な成果主義ではないものの、個人の能力や実績が評価される傾向が強まっています。
不動産・投信など関連業種との比較
アセットマネジメント業界の中でも、不動産アセットマネジメントは特に高年収が期待できる分野として注目されています。不動産アセットマネージャーの年収相場は600万円から2,000万円と幅広く、経験豊富なマネージャークラスでは1,000万円~1,500万円、シニアクラスでは2,000万円を超えるポジションも存在します。これは、不動産という実物資産の運用に特化し、専門性の高い知識とスキルが求められるためです。
また、リクルートエージェントの調査によると、不動産専門職(アセットマネジメント)の想定年収は775万円で、金融・保険業界のアセットマネジメントの想定年収850万円に次ぐ高水準です。従業員数が少ない企業ほど想定年収が高い傾向も見られます。
投資信託を主な商品とする運用会社の場合、個人の資金を扱うため、顧客からの信頼獲得が重要となります。一方、機関投資家を対象とする投資顧問型のアセットマネジメントは、より大規模な資金を扱い、高度な運用戦略が求められるため、年収も高くなる傾向があります。
職種・役職・年代別の年収分析
ファンドマネージャー/営業/バックオフィス等職種別
アセットマネジメント業界では、職種によって年収水準に明確な差があります。
- ファンドマネージャー(運用フロント)
- 業界で最も高い年収が期待できる職種の一つです。日系大手でも1,200万円~2,300万円、外資系では3,000万円以上になることもあります。投資判断の最終責任を負い、運用実績が直接報酬に反映されるため、高い専門性とプレッシャーに耐える精神力が必要です。
- アナリスト/エコノミスト/ストラテジスト(運用フロント)
- ファンドマネージャーをサポートするリサーチ職も高年収です。日系で800万円~1,300万円、外資系ではさらに高くなる傾向があります。論理的思考力と分析能力が特に求められます。
- 営業(営業フロント)
- 投資信託営業、機関投資家営業ともに高水準の年収です。日系で800万円~1,500万円、外資系では1,500万円~2,500万円程度が目安です。顧客とのリレーション構築能力や提案力が重視されます。特に機関投資家営業は、大規模な資金を扱うため、より高い専門性と年収が期待できます。
- ミドル・バックオフィス(ミドル・バック部門)
- リスク管理、トレーダー、オペレーション、経理などの職種があります。日系で600万円~1,000万円、外資系で1,000万円~1,800万円程度が目安です。運用や営業を支える重要な役割を担い、正確性や専門知識が求められます。運用フロントや営業フロントに比べると年収は控えめですが、金融業界全体で見れば依然として高水準です。
役職別(一般社員・管理職など)
役職が上がるにつれて年収も上昇します。
- 一般社員(若手・ジュニアクラス)
- 新卒や未経験で入社した場合、年収450万円~800万円程度からスタートすることが多いです。経験を積むことで徐々に上昇していきます。
- マネージャークラス
- 経験5~10年程度でマネージャークラスに昇進すると、年収1,000万円を超えることが一般的です。日系企業でも30代で1,000万円台に到達するケースが多く見られます。外資系では1,500万円~2,000万円以上も可能です。
- シニアマネージャー/部長クラス
- 日系企業で1,500万円以上、外資系では2,000万円~3,000万円以上と、さらに高額な年収が期待できます。組織全体の戦略立案や部門の責任者として、高度な経営スキルと実績が求められます。
年代・経験年数別年収推移
アセットマネジメント業界の年収は、年代が上がるにつれて順調に上昇する傾向にあります。
- 20代
- 前半では400万円~600万円程度からスタートし、後半には600万円~900万円程度に達することが多いです。日系企業の新卒入社の場合、7年目(30歳前後)で1,000万円に到達するケースも珍しくありません。
- 30代
- 前半で900万円~1,200万円、後半で1,100万円~1,500万円程度が目安となります。管理職に昇進する人も増え、年収が大きく伸びる時期です。
- 40代
- 1,400万円~2,000万円以上が期待できます。部長クラスやシニアファンドマネージャーとして、業界内でもトップクラスの年収水準に達する人もいます。
アセットマネジメントOneのデータでは、25歳で約600万円、30歳で約900万円、35歳で約1,100万円を超えると推計されています。経験年数が長くなるほど、専門性が高まり、大規模な案件に携わる機会が増えるため、年収もそれに伴って上昇します。
学歴・性別・女性比率等の考察
- 学歴
- 金融業界のアセットマネジメントでは、学歴が重視される傾向があります。特に難関国立大学や早慶レベルの出身者が多く、学歴フィルターが存在すると考えられています。ただし、不動産業界のアセットマネジメントでは、金融業界ほど学歴主義ではないとされ、営業経験などが評価されやすいです。いずれの分野でも、高い専門知識や実務経験があれば、学歴のハンデを覆すことは可能です。
- 性別・女性比率
- 公開されているデータは少ないものの、野村アセットマネジメントの平均勤続年数では男性13.7年、女性14.2年と女性の方が長い結果が出ており、女性が長く働きやすい環境が整備されていると考えられます。また、育児休業取得率も男女ともに100%を超えるなど、ワークライフバランスを重視する企業が増えています。女性の管理職登用やキャリアアップ支援も進んでおり、性別に関わらず活躍できる機会が広がっています。
企業別・各社の年収制度・特徴
野村・アセットマネジメントOne・三井住友DS等、日系主要企業の年収体系・報酬制度
日系主要アセットマネジメント企業は、他の業界と比較して高水準の年収を提供しつつも、安定した雇用と福利厚生の充実が特徴です。
- 野村アセットマネジメント
- 平均年収は1,234万円(2024年版ランキングより)と日系トップクラスです。基本給とボーナスの比率が「56%:28%」とボーナス比重が高く、業績や個人の成果が反映されやすい報酬体系です。昇給は入社後一定期間は年功序列的な側面もありますが、7年目で職位が上がり年収1,000万円に到達するケースが多いです。住宅補助が手厚く、独身で月7.2万円、既婚で約12万円が支給されるなど、実質的な収入を押し上げています。
- アセットマネジメントOne
- 平均年収は1,158万円(2024年版ランキングより)です。月給が高く、ボーナスは比較的抑えられている傾向があります。銀行、証券、生保など多様なバックグラウンドを持つ社員が集まり、風通しの良い企業文化が特徴です。25歳で600万円、30歳で900万円、35歳で1,100万円を超えると推計されており、年齢とともに着実に年収が上昇します。
- 三井住友DSアセットマネジメント
- 平均年収は1,270万円(2024年版ランキングより)と、日系企業の中ではトップクラスの高年収です。典型的な日本企業的な官僚的体質もあると言われますが、福利厚生を含めると総合的な待遇は「そう悪くない」という意見もあります。法人顧客に強みを持ち、チャレンジングな社風で、配属は適材適所を重視する傾向があります。
- 大和アセットマネジメント
- 平均年収は1,054万円(2024年版ランキングより)です。大和証券の販売力を背景に幅広い商品ラインナップを展開しています。少数精鋭で若手から活躍できる環境があり、社員のモチベーションを重視する社風です。
外資系主要企業(フランクリン・テンプルトン・GSAMなど)の報酬特徴
外資系のアセットマネジメント企業は、日系企業を大きく上回る高額な報酬が特徴ですが、その多くは徹底した成果主義に基づいています。
- フランクリン・テンプルトン
- 平均年収2,578万円と、本ランキングでもトップに位置しています。成果への評価が高く、上司や上層部との相性が評価に大きく影響するという意見もあります。
- GSAM(ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント)
- 平均年収2,486万円と、業界トップクラスの年収を誇ります。新卒から順調に出世すれば、10年後にはマネージングディレクターに昇進し、基本給だけで5,000万円に達する可能性もあるとされています。個人のパフォーマンスが年収にダイレクトに反映されるため、常に高い成果が求められる環境です。
- ドイチェ・アセット・マネジメント
- 平均年収2,184万円です。30代の営業課長で年収1,500万円~2,000万円というデータもあり、ボーナスは上長の裁量が大きく反映されます。
- フィデリティ投信
- 平均年収2,173万円で、アメリカ創業の老舗企業です。コンプライアンス意識が高く、ワークライフバランスが良いという評判もあります。
外資系企業は、年収に占めるボーナス(インセンティブ)の割合が非常に高く、会社の業績や個人の貢献度が大きく影響します。そのため、年収の変動幅は大きいですが、成果を出せば日系企業では考えられないような高収入を得ることが可能です。
年収偏差値・業界ポジションの比較
アセットマネジメント業界は、日本の全業界と比較して平均年収が非常に高い水準にあります。リクルートエージェントのデータでは、アセットマネジメントの想定年収は775万円で、日本の平均年収(約400万円台)を大きく上回ります。
業界内での年収偏差値を見ると、外資系企業が上位を独占し、日系大手もそれに続きます。野村アセットマネジメントの就職偏差値は76(最高峰)とされており、「サラリーマンとしては最高峰クラスの勝ち組」と評価されています。
全体として、アセットマネジメント業界は高学歴で専門性の高い人材が集まる傾向があり、その分、競争も激しいですが、成功すれば非常に高い報酬を得られるポジションにあると言えるでしょう。
働く環境・ワークライフバランスと社員の声
労働時間・残業・休日などの実態
アセットマネジメント業界は、金融業界の中でも比較的ワークライフバランスが取りやすいとされています。
- 残業時間
- 一般的に残業時間は月平均10~20時間程度と比較的少ない企業が多いです。日系大手では月30時間程度という声も聞かれますが、証券業界など他の金融業界と比較すると、働きやすい環境にあると言えます。
- 四半期ごとの繁忙期には残業が増えることもありますが、恒常的な長時間労働は少ない傾向です。
- 休日休暇
- 完全週休2日制(土日祝休み)が一般的です。有給休暇も取得しやすい雰囲気が多く、消化率も高いとされています。
- 夏季・冬季に連続したリフレッシュ休暇が取得できる企業もあります。
- 海外との連携
- 外資系企業やグローバルに事業を展開する日系企業の場合、海外拠点との連携が必要なため、時差の関係で深夜や未明に仕事をするケースもあります。
福利厚生・評価・昇進制度に関する口コミ
社員の口コミからは、アセットマネジメント業界、特に日系大手企業の福利厚生が非常に充実していることが伺えます。
- 福利厚生
- 住宅補助: 特に手厚く、野村アセットマネジメントでは独身で月7.2万円、既婚で約12万円の補助があるとされ、実質的な年収の上乗せ効果として高く評価されています。
- その他: 退職金制度、確定拠出年金制度、財形貯蓄、社員持株会、人間ドックなどの健康管理支援、直営保養所など、充実した制度が整っています。
- 評価制度
- 多くの場合、定量評価と定性評価を組み合わせた総合評価が行われます。特に運用部門では運用成績に応じたインセンティブが重要視されます。
- 成果主義の側面が強い外資系では、個人のパフォーマンスが報酬に直結するため、評価基準はより厳格です。
- 日系企業では、部署間の評価基準の統一性や昇進スピードに関する個人差が課題として指摘されることもあります。
- 昇進制度
- 日系企業では、ある程度の年次までは同期と足並みを揃えて昇進する傾向が見られますが、その後は個人の実績や能力に応じて差がつきます。管理職以上では、より高い専門性やマネジメント能力が求められます。
- 外資系では、完全に実力主義であり、高い成果を出せば早期のキャリアアップと大幅な年収アップが可能です。
離職率・勤続年数・社員満足度
アセットマネジメント業界は、他の金融業界と比較して離職率が低く、勤続年数が長い傾向にあります。
- 平均勤続年数
- 野村アセットマネジメントの推定平均勤続年数は13~14年とされており、金融業界全体の平均(約12~15年)を上回る水準です。これは、働きやすさ、高水準の年収、充実した福利厚生、安定した事業基盤などが総合的に評価されているためと考えられます。
- 離職率
- 業界全体の離職率は公開されていませんが、各社の社員口コミからは「職場環境に不満が少ない」「退職理由が勉強のためなど前向きなものが多い」といった声が聞かれ、比較的低い水準にあると推測されます。
- 社員満足度
- ワークライフバランスの良さ、高年収、充実した福利厚生が社員の高い満足度に繋がっています。特に、「仕事の負荷に対する報酬の妥当性」について高い評価を得ており、長期的なキャリアを築きたいと考える社員にとって魅力的な環境と言えるでしょう。育児支援制度も充実しており、男性育休取得率が100%を超える企業もあるなど、多様な働き方を支援する取り組みが進んでいます。
転職・就活市場でのアセットマネジメント業界
転職難易度・求められるスキル・資格
アセットマネジメント業界は、専門性が高く、転職難易度は高いと言えます。特に運用部門などのフロントオフィスでは、即戦力となる経験者が優遇される傾向にあります。
- 求められるスキル
- 金融に関する専門知識: 株式、債券、不動産などの金融商品に関する深い知識が必須です。
- 分析力: 市場や企業、リスクを分析し、投資判断に役立てる論理的思考力と分析力が求められます。クオンツアナリストなどでは高度な数学的・統計的スキルが必要です。
- コミュニケーション能力: 顧客や社内外の関係者と円滑に業務を進め、信頼関係を築くための高いコミュニケーション能力が不可欠です。
- 語学力: グローバルなビジネス環境であるため、ビジネスレベルの英語力(TOEIC800点以上が目安)は大きなアドバンテージとなります。外資系では必須要件となることが多いです。
- PCスキル: ExcelやPowerPointを用いた資料作成、データ分析などが多いため、高いPCスキルが求められます。プログラミング言語(Python、Rなど)の知識も有利に働きます。
- 継続的な学習意欲: 市場は常に変化するため、最新の情報を吸収し、自己研鑽を続ける姿勢が重要です。
- 有利な資格
- 証券アナリスト(CMA): 企業評価や証券投資に関する専門知識を証明する国内資格です。若手や未経験者には特に有利に働きます。
- CFA(米国証券アナリスト): グローバルな金融知識と英語力を証明する国際資格で、日本の証券アナリストよりも難易度が高いですが、外資系やグローバルな業務で非常に評価されます。
- 不動産鑑定士: 不動産アセットマネジメントを目指す上で非常に有利な国家資格です。
- 不動産コンサルティングマスター/不動産証券化協会認定マスター: 不動産投資や証券化に関する専門知識を証明します。
- MBA(経営学修士): 特に外資系企業やシニアマネジメントを目指す上で役立つことがあります。
- TOEIC: 英語力の客観的な指標として、ビジネスレベルのスコアは評価されます。
- 公認会計士・税理士: ミドル・バックオフィス部門への転職で有利になることがあります。
日系・外資へ転職する際のポイント
- 日系企業への転職
- 安定したキャリアと充実した福利厚生を求める人に向いています。
- 業界外からの転職も可能ですが、20代の金融業界出身者が主なポテンシャル採用の対象となります。
- 論理的思考力や金融市場への関心、コミュニケーション能力をアピールすることが重要です。
- 外資系企業への転職
- 高い年収と成果主義の環境で自己成長したい人に向いています。
- 少数精鋭のため求人数は少ないですが、年収は日系企業の1.5~2倍と非常に高額です。
- ビジネスレベルの英語力と、これまでの実務経験で培った専門性を具体的にアピールすることが不可欠です。プロダクトスペシャリストなど、日本拠点での運用業務以外で求人が出る傾向があります。
未経験からの転職成功例・キャリアパス
アセットマネジメント業界は経験者採用が中心ですが、未経験からの転職も不可能ではありません。
- 未経験者が目指しやすい職種
- 運用チームのアシスタント、データ分析、コンプライアンスなどのミドル・バックオフィス部門は、比較的未経験者でも挑戦しやすいポジションです。
- これらの部門で業界の基礎知識と実務経験を積み、将来的にフロントオフィスを目指すキャリアパスも考えられます。
- 成功のポイント
- 関連分野での経験: 証券会社でのリサーチ経験、金融機関での運用部門経験、経営コンサルティングファーム、財務部門など、関連する実務経験があることが有利に働きます。
- 資格取得: 証券アナリストやTOEICなどの資格取得は、業界への強い熱意と学習意欲を示す有効なアピール材料となります。
- ポテンシャル採用: 20代の若手であれば、現時点でのスキルよりもポテンシャルを重視する「ポテンシャル採用」のチャンスがあります。
- 転職エージェントの活用: アセットマネジメント業界の求人の多くは非公開で募集されるため、業界に特化した転職エージェントの活用が成功への近道となります。専門的な支援(応募書類の添削、面接対策、非公開求人の紹介など)を受けることができます。
- キャリアパスの例
- 証券会社のリテール営業からファンド評価機関のアナリストを経て、大手アセットマネジメント会社のアナリストへ転職し、長期的なキャリア戦略で業界入りを果たす事例もあります。
- アセットマネジメント業界内で、日系中堅から日系大手、そして外資系企業へとステップアップしていくのが王道のキャリアパスの一つです。
まとめ
主要な年収傾向と今後の動向
アセットマネジメント業界は、他の業界と比較して非常に高い年収水準が特徴です。特に外資系企業は成果主義を徹底し、日系企業の2倍近い高額報酬を実現しています。日系大手も安定した高年収を提供し、充実した福利厚生が魅力です。職種別ではファンドマネージャーが最も高く、営業、ミドル・バックオフィスと続きます。
今後の動向としては、日本政府の「資産運用立国」推進や新NISA制度の拡充により、市場の拡大が予想されます。これにより、業界全体の採用ニーズは安定的に増加すると見込まれます。特にESG投資、オルタナティブ投資、ITを活用したクオンツ運用やデータサイエンス分野の専門人材の需要が高まるでしょう。
転職・就職を検討する方へのアドバイス
アセットマネジメント業界への転職・就職を検討している方は、以下の点を意識して準備を進めましょう。
- 専門知識の習得: 金融市場や商品に関する深い知識を身につけ、常に最新の情報にアンテナを張ること。
- 関連資格の取得: 証券アナリストやCFA、TOEICなどの資格は、自身の専門性や学習意欲を客観的に示す強力な武器となります。
- 実務経験の積み重ね: 業界内での経験が最も評価されますが、関連する金融機関やコンサルティングファーム、不動産業界での経験も有利に働きます。
- 語学力の強化: 外資系を目指す場合はもちろん、日系企業でもグローバルな業務に携わる機会が多いため、ビジネスレベルの英語力は必須です。
- 転職エージェントの活用: 業界に特化した転職エージェントは、非公開求人へのアクセスや専門的なキャリア相談、選考対策など、成功への手厚いサポートを提供してくれます。
アセットマネジメント業界は、高い専門性と責任を伴いますが、その分、非常にやりがいがあり、高い報酬と安定したキャリアを築ける魅力的な業界です。
参考リンク・データ出典
- JAC Recruitment
- Bridge Agent
- マイナビエージェント
- コトラ
- タイグロンパートナーズ
- 宅建Job
- ワンキャリア
- 東洋経済ブランドスタジオ
- Mordor Intelligence (日本アセットマネジメント市場規模とシェア)
- OpenMoney (アセットマネジメントOneの年収データ)
- リクルートエージェント 転職データライブラリ
- en Lighthouse (企業の評判)
- 金融庁「資産運用立国について」「金融・資産運用特区実現パッケージ」
- 日本証券アナリスト協会
- CFA協会
- 国土交通省(不動産鑑定士試験)
- 公益財団法人不動産流通推進センター(不動産コンサルティングマスター)
- 不動産証券化協会
- 野村アセットマネジメント 公式サイト
- 三菱UFJ信託銀行 公式サイト
- 一般社団法人投資信託協会











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