コトラ（広報チーム） 
はじめに
アセットマネジメントの基本概要
アセットマネジメントとは、個人や機関投資家から資金を預かり、株式、債券、不動産などの様々な資産に投資し、運用・管理を代行する業務です。資産運用会社は、投資信託や投資顧問といった形で、専門家として投資家の資産価値の最大化を目指します。
業界全体の位置づけと重要性
近年、低金利政策や「老後2,000万円問題」などにより、国民の金融リテラシーが高まり、資産運用への関心が増加しています。このような背景からアセットマネジメント業界の重要性は増しており、求人も増加傾向にあります。特にマネージャー、営業、不動産運用業務の求人が多く見られます。
アセットマネジメントの役割と主な業務内容
資産運用を代行する部門の目的
アセットマネジメント部門の目的は、顧客の資産を効率的に運用・管理し、投資目標を達成しながら資産を最大化することです。投資家が自身で投資の意思決定が難しい場合でも、専門的な知見と分析力によって資金を適切に分配し、経済の発展にも貢献します。
代表的なアセット運用の種類
資産運用には、以下のような運用スタイルと投資対象があります。
- パッシブ運用
- アクティブ運用
- クォンツ運用
- 伝統資産（株式・債券）
- オルタナティブ資産（ヘッジファンド、PEファンド、インフラファンド、不動産ファンドなど）
クライアント対応・ソリューション提供の流れ
アセットマネジメント会社は、顧客のニーズに合わせた運用商品の企画・開発、経済情勢や企業の調査に基づく投資判断、そして運用報告書の作成といった業務を行います。これには、資産の取得から運用、売却までの一連のプロセスが含まれます。
各部門の仕事内容と役割
アセットマネジメントの仕事は、主に運用部門、営業部門、ミドル・バック部門の3つに分けられます。
運用部門（ファンドマネージャー・アナリストなど）
運用部門は、中長期的な運用収益の実現を目指し、投資意思決定を行います。
- ファンドマネージャー、ポートフォリオマネージャー: 運用全般を指揮し、最終的な投資判断を行います。
- アナリスト: 市場や企業の業績を分析し、投資判断に資する情報を提供します。
- エコノミスト: マクロ経済や金融市場を分析し、経済状況を予測します。
- ストラテジスト: 経済動向に基づいて投資戦略を立案します。
- トレーダー: 投資判断に基づき、市場で売買を執行します。
営業部門（リテール・機関投資家営業など）
営業部門は「クライアントサービス」とも呼ばれ、幅広い顧客にサービスを提供します。
- 投資信託営業: 証券会社や銀行を通じて個人投資家向けサービスを提案します。商品の開発・企画、運用状況レポートの提供、販売窓口向けのセミナー開催なども行います。
- 機関投資家営業: 年金基金、金融機関などの幅広い顧客に対し、運用目標に合わせた資産運用サービスを提供します。運用報告書の作成・説明、市場情報提供などを行います。
ミドル・バック部門（リスク管理・コンプライアンスなど）
ミドル・バック部門は、運用や営業をサポートする重要な役割を担います。
- ミドルオフィス業務: 運用パフォーマンスの測定・分析、リスク管理、レポーティング、各種データ管理などを行います。
- バックオフィス業務: 約定処理、キャッシュ管理、残高管理、権利保全、ファンド計理、信託銀行とのデータ照合など、多岐にわたるオペレーション業務を担当します。
アセットマネジメント業界で求められるスキル・人物像
金融知識・分析力
アセットマネジメントでは、金融・資産運用の専門知識が不可欠です。市場動向を正確に把握し、企業価値評価、リスク管理、ポートフォリオ構築など、多角的な分析力が求められます。特に運用部門では、迅速な情報対応能力が重要です。
コミュニケーション力と語学力
投資家や他の部門、関連業者との円滑な連携のために、高いコミュニケーション能力が求められます。また、海外に拠点を置く企業や外資系企業では、ビジネスレベルの英語力も不可欠であり、TOEIC800点以上が目安とされます。
PCスキルとデータ活用力
資料作成やデータ管理において、高度なPCスキルが必要です。ExcelやPowerPointを使いこなし、分析レポートや運用状況レポートを正確かつ効率的に作成する能力が求められます。データ分析ツールなどのデジタルツール活用力も業務効率化に貢献します。
キャリアパスと転職事情
入社ルート・異動・転職でのキャリア形成
アセットマネジメント業界への入社は、新卒採用と中途採用の二つのルートがあります。日系企業では新卒採用（銀行からの出向含む）が多い傾向にある一方、外資系企業では中途採用が主流です。業界未経験からの転職は難しいとされますが、関連分野での経験があれば有利になることがあります。
業界内でのキャリアパス例
キャリアパスは多様ですが、運用部門ではアナリストからファンドマネージャーへと進むのが一般的です。営業部門では、ジュニア営業としてサポート業務から始め、シニア営業として顧客を担当するようになります。経験を積めば、部長や役員への昇進も視野に入ります。
未経験から目指す場合のポイント
未経験からアセットマネジメントを目指す場合、まず金融市場に関する基礎知識を習得し、証券アナリストなどの資格取得が有効です。また、金融機関での営業やバックオフィス業務で経験を積むことも、業界への足がかりとなります。
日系と外資系の違い・業界のトピック
組織・業務スタイルの違い
日系企業は大手金融グループの傘下にあることが多く、規模が大きく多様な運用商品を扱います。一方、外資系企業は効率性を重視したコンパクトな組織が多く、運用は海外拠点で行われることが一般的です。
年収・働き方・社風の比較
アセットマネジメント業界は総じて高収入ですが、少数精鋭で成果報酬制を採る外資系企業は特に高水準です。日系企業も成果報酬制を取り入れる傾向にありますが、外資系企業ほどの年収には及ばないことが多いです。ワークライフバランスについては、金融業界全体では残業が少ない傾向にありますが、外資系では海外拠点との連携のため深夜・早朝勤務が発生することもあります。
業界動向と今後の展望
近年、ESG投資（環境・社会・ガバナンスを考慮した投資）やロボアドバイザー、ファンドラップなどの新しい投資サービスが注目されています。日本政府も「資産運用立国実現プラン」を発表し、NISAの拡充や「資産運用特区」の創設など、業界のさらなる発展を後押ししています。
アセットマネジメント業界へのステップアップに役立つ資格
証券アナリスト・CFA・MBAなど
- 証券アナリスト（CMA）: 金融・投資の専門知識を証明する日本証券アナリスト協会の資格です。
- CFA（米国証券アナリスト）: グローバルな金融知識と英語力を証明できる、国際的に認められた資格です。
- MBA（経営学修士）: 経営学の知識を習得する学位で、キャリアアップやマネジメント職を目指す上で有効です。
英語力（TOEIC など）
外資系企業や海外との取引が多い日系企業では、ビジネスレベルの英語力が必須です。TOEIC800点以上、TOEFL90点以上が目安とされます。
その他有効なスキルアップ手段
金融機関での有価証券関連部門の実務経験や、データ分析ツール（Excel、VBA、Python、Rなど）の活用スキルも非常に有効です。常に最新の金融知識を習得し続ける探求心と、変化に対応できる柔軟性が求められます。
まとめ
アセットマネジメント部門への理解を深めるために
アセットマネジメントは、投資家に代わって資産を運用・管理する専門性の高い仕事です。運用、営業、ミドル・バックの各部門が連携し、顧客の資産価値最大化を目指します。専門知識、分析力、コミュニケーション能力、そしてデジタルツール活用力が成功の鍵となります。
今後のキャリア選択のヒント
アセットマネジメント業界は、高い専門性と責任感が求められる一方で、大きなやりがいと高収入が期待できる分野です。未経験から挑戦する場合は、基礎知識の習得や関連資格の取得、金融業界での実務経験を積むことが重要です。自身のスキルとキャリア目標を明確にし、適切な準備を行うことで、この成長市場で活躍するチャンスを掴むことができるでしょう。
