コトラ（広報チーム） 
はじめに
高卒からMBAを目指す背景
終身雇用の崩壊や「人的資本経営」へのシフトが進む現代社会において、個人の市場価値は「学歴」よりも「学習歴」が重視されるようになってきました。このような変化の中で、キャリアアップや年収向上を目指す高卒者がMBA取得に注目しています。大学を卒業していなくても、適切なルートと準備があればMBA取得は十分に可能です。
本記事の読者想定とゴール
本記事は、高卒でキャリアの停滞を感じている方、学歴へのコンプレックスを抱えている方、そして自身の市場価値を高めたいと考えている社会人の方を対象としています。高卒からMBAを取得するための具体的なルート、必要な条件、費用、そして取得後のキャリアパスまでを網羅的に解説し、読者の皆様が未来を切り開くための一歩を踏み出すことをゴールとします。
高卒者がMBAを目指すための主要ルートと条件
MBA（Master of Business Administration）は経営学修士の学位であり、大学院を修了することで得られます。一般的に、MBAプログラムの受験資格は「4年制大学卒業（学士号取得）」が求められますが、高卒者でもMBAを目指すための複数のルートが存在します。
国内MBA・海外MBA・オンラインMBAの選択肢
MBAプログラムには、国内MBA、海外MBA、そしてオンラインMBAの3つの主要な選択肢があります。
- 国内MBA: 日本国内のビジネススクールで学ぶプログラムです。日本語で授業が行われることが多く、働きながら通学しやすい夜間・週末開講やオンライン形式のプログラムも充実しています。
- 海外MBA: 海外のビジネススクールで学ぶプログラムです。英語力が必要となるため、英語学習も並行して行う必要があります。国際的な視点や人脈を築けるメリットがあります。
- オンラインMBA: 国内外のビジネススクールが提供する、オンラインで受講できるプログラムです。時間や場所の制約が少なく、働きながら学びやすいのが特徴です。
受験資格・必要な審査プロセス（学歴・実務経験）
多くのMBAプログラムでは、「4年制大学卒業（学士号取得）」に加え、「3年以上の実務経験」が受験資格として求められることが一般的です。しかし、高卒者の場合でも、以下の条件を満たすことで受験資格が得られる可能性があります。
- 22歳以上であること
- 大学卒業者と同等以上の学力があると認められること
この「大学卒業者と同等以上の学力」を判断するために、「出願資格の個別審査」が行われます。
入学資格審査制度について
入学資格審査は、各大学院が独自に実施するもので、受験者が大学卒業者と同等以上の学力を有しているかを評価します。審査の過程では、A4用紙1〜2枚程度の職務履歴書や志望動機書を提出することが多く、自身の社会人経験、実績、保有資格などが総合的に評価されます。この審査を通過することで、高卒者でもMBAプログラムの受験資格が得られます。
受験資格を得るための実践的アプローチ
高卒者がMBAの受験資格を得るためには、自身の経験を最大限にアピールし、不足している部分を補うための戦略的なアプローチが重要です。
出願資格の個別審査とその準備（職務経歴書、研究計画書等）
出願資格の個別審査では、これまでの職務経歴や実績が重要な評価対象となります。単に業務内容を羅列するのではなく、以下の点を意識して書類を作成しましょう。
- 職務経歴書: どのような役職で、どのような課題に直面し、それをどのように解決してきたのかを具体的に記述します。チームマネジメントの経験や売上貢献などの具体的な数字で示せる実績は高く評価されます。
- 研究計画書: 大学院で何を学びたいのか、その学びが自身のキャリアや社会にどう貢献するのかを論理的に、かつ情熱をもって記述します。自身のこれまでの経験と学びをどう結びつけ、将来にどう活かしていくのか、一貫したストーリーを示すことが重要です。
これらの書類は、あなたの「大学卒業証明書」の代わりとなるため、時間をかけて丁寧に作成する必要があります。
通信制大学や科目等履修生制度の活用による大卒資格取得ルート
個別審査のハードルが高いと感じる場合や、より確実に大卒資格を取得したい場合は、以下のルートも検討できます。
- 通信制大学: 働きながら自身のペースで学習を進め、大卒資格を取得できます。短大や専門学校を卒業している場合は、単位を編入することで最短2年での卒業も可能です。
- 科目等履修生制度: 放送大学などで興味のある科目を1科目から履修し、単位を取得する制度です。勉強の習慣を取り戻す「助走期間」として活用でき、取得した単位は後に正式に入学した際に卒業単位として認められる場合があります。
英語力や資格取得（TOEIC、中小企業診断士など）の支援効果
MBA取得を目指す上で、英語力は重要な要素です。多くの国内MBAプログラムでもTOEICスコアの提出が求められるため、700点以上、できれば800点以上を目指して学習を開始しましょう。
また、中小企業診断士や高度情報処理技術者などの難易度の高い国家資格は、専門性を客観的に証明する強力な武器となり、入学資格審査や入試において有利に働く可能性があります。
高卒でも受験可能な国内・海外MBAプログラム紹介
高卒者でも挑戦できるMBAプログラムは存在します。ここでは、国内およびオンラインのプログラムについて紹介します。
国内ビジネススクールの受験可否例（大学名は記載せず）
国内の多くのビジネススクールでは、「個別の出願資格審査」を設けており、高卒者でも一定の条件を満たせば受験が可能です。主な条件は以下の通りです。
- 入学時に22歳以上であること
- 原則2年以上の社会人経験（フルタイム勤務相当）があること
具体的なスクールとしては、個別の出願資格審査を設けている大学院や、実務経験が5年以上あれば入学資格審査なしでPreMBAを受験できる大学院などが挙げられます。これらのプログラムは、働きながら学びたい社会人にとって魅力的な選択肢となります。
オンラインMBA・通信制プログラム
オンラインMBAプログラムは、時間や場所の制約が少ないため、多忙な社会人にとって非常に有効な選択肢です。高卒者でも、個別の出願資格審査を通過し、22歳以上かつ社会人経験があれば出願可能なオンラインMBAプログラムがあります。
また、通信制の大学院でも同様に、入学資格審査を経てMBA取得を目指せる場合があります。オンラインでの学習は自己管理能力が求められますが、自宅や好きな場所で学習できるため、地理的なハンディキャップを克服し、国内外の質の高い教育を受けることが可能です。
高卒者が出願しやすい特徴やプログラムの選び方
高卒者が出願しやすいプログラムの特徴としては、実務経験を重視する傾向があること、そして個別の入学資格審査が明確に設けられている点が挙げられます。プログラムを選ぶ際は、以下のポイントを考慮しましょう。
- 自身のキャリア目標と合致するカリキュラム内容か
- 働きながら無理なく続けられる学習スタイル（夜間・週末、オンラインなど）か
- 入学資格審査の条件やプロセスが自身に合っているか
- 奨学金や教育訓練給付金などの費用支援制度が充実しているか
これらの要素を総合的に検討し、自身のライフスタイルや目標に最適なプログラムを選ぶことが成功への鍵となります。
高卒からMBA取得までの学修・生活スケジュール
高卒からMBA取得を目指す社会人にとって、学業と仕事、プライベートの両立は大きな課題です。ここでは、働きながら学ぶ場合のスケジュール例や両立のノウハウ、オンラインと通学制のメリット・デメリットを比較します。
働きながら学ぶ場合のスケジュール例
働きながらMBAを取得する場合、一般的には週15〜20時間程度の学習時間を確保する必要があります。 ある国内ビジネススクール（2科目履修）のオンラインMBAのモデルケースでは、平日は仕事後に1〜2時間、週末にまとまった時間を確保して学習を進めるのが一般的です。通勤時間や昼休みなどのスキマ時間を有効活用することが鍵となります。
必要な学習時間と両立ノウハウ
MBAの学習は、講義動画の視聴、オンライン掲示板への投稿、グループワーク、レポート作成など多岐にわたります。平均して週20時間程度の学習時間を確保することが、2年間での修了には必要とされます。
両立のノウハウとしては、以下の点が挙げられます。
- 学習スケジュールの可視化：卒業までの全体スケジュールと、各科目の学習時間を詳細に見積もり、計画的に進めることが重要です。
- 習慣化：毎日決まった時間に学習する習慣を身につけることで、モチベーションに左右されずに継続できます。
- 家族や職場の理解：事前に家族や職場にMBA取得の目的と学習計画を伝え、協力を得ることで、精神的な負担を軽減できます。
- 完璧主義からの脱却：すべての課題を完璧にこなそうとせず、優先順位をつけて効率的に学習を進めることも大切です。
オンラインと通学制のメリット・デメリット比較
働きながらMBAを目指す場合、オンラインと通学制にはそれぞれメリットとデメリットがあります。
- オンラインMBAのメリット:
- 時間と場所の制約がないため、地方在住者や転勤の多い方でも学びやすい
- 通学費用や生活費が抑えられ、学費も比較的安い傾向がある
- 自分のペースで学習できる柔軟性がある
- オンラインMBAのデメリット:
- 自己管理能力と強い意志が必須
- モチベーションの維持が難しい場合がある
- 偶発的な出会いや深い人脈形成の機会が通学制に比べて少ない
- 通学制MBAのメリット:
- 決まった時間にキャンパスに通うことで学習ペースを維持しやすい
- 教授や学友との対面での議論を通じて、深い学びと人脈形成が可能
- キャンパス内の施設（図書館、自習室など）を最大限活用できる
- 通学制MBAのデメリット:
- 通学時間や場所の制制約がある
- 学費がオンラインに比べて高額になる傾向がある
- 仕事との両立がより困難になる場合がある
自身のライフスタイル、性格、MBAに求めるものを総合的に考慮し、最適な学習スタイルを選択しましょう。
高卒からMBA取得後のキャリアパスと期待できる効果
高卒からMBAを取得することは、自身のキャリアに大きな変化と成長をもたらします。ここでは、取得後に広がるキャリアの選択肢、期待できる効果について解説します。
取得後に広がるキャリアの選択肢
MBA取得者は、経営学全般の知識と思考力を身につけているため、幅広いキャリアパスが開けます。
- 管理職への昇進: 現場のスペシャリストから、部署や組織全体を統括する管理職・リーダーへの昇進が期待できます。
- 異業種・異職種への転職: 経営全般の知識は様々な業界や職種で活かせるため、キャリアチェンジの選択肢が広がります。特に経営企画やコンサルタント、プロダクトマネージャーなど、戦略的な思考が求められる職種への転職が可能です。
- 起業: 経営戦略、マーケティング、ファイナンスなどの知識は、自身のビジネスを立ち上げる際にも強力な武器となります。
- 国際的な活躍: 海外MBAや国際認証を持つ国内MBAを修了することで、グローバル企業での活躍や海外事業への参画の道も開けます。
年収アップや役職・人脈面のメリット・デメリット
MBA取得は、年収アップに直結するケースが多く見られます。ある調査では、MBA取得後3年間の年収アップ率は平均で28%前後、5年間で見ると48.3%もの上昇が報告されています。特に高卒者にとっては、学歴の壁を越え、年収増加に繋がる大きな機会となります。
また、役職面では管理職への昇進だけでなく、より経営に近い立場での意思決定に関わる機会が増えるでしょう。人脈面では、多様なバックグラウンドを持つ学友や卒業生とのネットワークが、新たなビジネスチャンスやキャリア相談の場となる一生涯の財産となります。
一方で、MBA取得には時間や費用、学習の厳しさといったデメリットも伴います。しかし、これらを乗り越えることで得られるリターンは、それらのデメリットを上回る価値があると言えるでしょう。
高卒からMBA取得者の体験談・よくある不安と克服例
高卒からMBAを取得した人々は、学歴へのコンプレックスを乗り越え、自己成長を追求する強い意志を持っています。彼らは、自身の豊富な実務経験を強みとし、理論と実践を結びつけることで、より深い学びを得ています。
よくある不安としては「勉強についていけるか」「仕事や家庭との両立ができるか」といったものがありますが、多くの大学院では基礎科目やプレスクールを用意しており、学友との助け合いの文化も根付いています。また、徹底したタイムマネジメントと家族や職場の理解・協力体制を築くことで、両立は十分に可能です。高卒という経歴は、むしろ「現場のリアリティを知る」という点で、学術的な学びをより実践的なスキルへと昇華させるための強力なアドバンテージとなり得るのです。
費用対効果とリスクも押さえておこう
MBA取得はキャリアを大きく変える可能性を秘めた投資ですが、その費用対効果と潜在的なリスクも理解しておくことが重要です。
学費・奨学金・教育給付金制度の活用法
国内MBAの学費は、2年間で約150万円〜400万円が相場です。これに加えて、教科書代やPC購入費、交流会費などで20万円〜30万円程度を別途見積もっておく必要があります。
この高額な学費負担を軽減するための制度として、以下のものが挙げられます。
- 専門実践教育訓練給付金: 厚生労働省が実施するこの制度は、一定の条件を満たす社会人が指定講座を受講した場合、ハローワークから学費の一部が支給されます。2年間で最大128万円（2025年4月1日以降の入学者が対象、2024年以前は最大112万円）の補助が受けられる可能性があります。学費が300万円の場合、実質負担額を約172万円まで抑えることが可能です。
- 奨学金: 各ビジネススクルが独自に提供する奨学金（免除型、給付型、返還型）、日本学生支援機構（JASSO）の奨学金、民間財団や地方公共団体の奨学金など、様々な種類があります。返済不要の給付型奨学金は特に魅力的です。
- 教育ローン: 銀行や日本政策金融公庫が提供する教育ローンも利用可能です。奨学金とは異なり、比較的早い段階から返済が始まるものの、奨学金の条件を満たせない場合でも利用できる可能性があります。
これらの制度を積極的に活用し、自身の経済状況に合わせて最適な資金計画を立てることが重要です。
投資回収期間の目安と、挑戦のリスクヘッジ
MBA取得後の年収上昇やキャリアアップを考慮すると、投資した学費は十分に回収可能であると考えられます。例えば、実質的な投資額188万円に対し、卒業後に年収が100万円アップ（手取り75万円増）した場合、約2年半で投資を回収できる計算になります。その後は、年収上昇分が純粋な利益として積み上がっていくため、長期的に見れば非常に高いリターンが期待できます。
しかし、挑戦にはリスクも伴います。
- 学習の厳しさ: 仕事やプライベートとの両立が困難になり、途中で挫折してしまうリスクがあります。
- 費用負担: 計画通りに給付金や奨学金が受けられない場合、想定以上の費用がかかる可能性があります。
- キャリアの変化: MBA取得が必ずしも希望するキャリアパスに直結しない可能性もあります。
これらのリスクをヘッジするためには、以下の対策が有効です。
- 事前の情報収集と計画: 入念な情報収集と現実的な学習・資金計画を立てることが重要です。
- 家族や職場の理解: 周囲の協力を得ることで、精神的な負担を軽減できます。
- 予備校や対策サービスの活用: 研究計画書の作成や面接対策など、専門家のアドバイスを受けることで合格の可能性を高められます。
- 複数校の検討: 特定の学校に絞り込まず、複数の選択肢を検討することで、リスクを分散できます。
MBA取得は大きな決断ですが、周到な準備と強い意志があれば、その投資はあなたの人生を豊かにする最高の選択となるでしょう。
まとめと「第一歩」の踏み出し方
学歴に関係なく未来を切り開くマインドセット
「どうせ自分は高卒だから…」という思い込みは、あなたの可能性を限定する最大の壁です。終身雇用が崩壊し、人的資本経営やリスキリングが重視される現代において、あなたの市場価値は過去の学歴ではなく、これからの「学習歴」で決まります。高卒という経験は、現場のリアリティを知る強みとして、MBAでの学びをより実践的なものに変えることができるのです。学歴に関係なく未来を切り開くという強いマインドセットを持つことが、成功への第一歩となります。
情報収集・スクール選びから始めよう
漠然とした憧れを具体的な行動に移すために、まずは情報収集から始めましょう。
- 合同説明会や個別説明会に参加し、各ビジネススクールの雰囲気やカリキュラム、入試情報を肌で感じてみましょう。
- 資料請求を行い、募集要項やカリキュラムの詳細を手元でじっくり確認しましょう。
- 在校生や卒業生のブログ、SNSを参考に、リアルな学生生活や学習の厳しさを知ることも大切です。
自身のキャリア目標、学習スタイル（オンラインか通学か）、経済的制約などを考慮し、あなたに最適なビジネススクールを見つけることが重要です。
本記事を読んだ後にできるアクション
この記事を読んだ後、すぐに行動できる具体的なアクションは以下の通りです。
- 気になったビジネススクールの公式サイトをチェックし、資料請求をしてみる。
- 専門実践教育訓練給付金の対象講座があるか、自身の居住地を管轄するハローワークに問い合わせてみる。
- TOEICなどの英語力テストを一度受験し、現在の実力を把握する。
- 家族や職場の理解を得るための話し合いを始める。
- MBA受験に関する予備校や対策サービスの情報収集をする。
これらの小さな一歩が、あなたの人生を大きく変えるきっかけとなるでしょう。あなたの未来は、18歳の時の学歴で決まるのではありません。今日、あなたが起こす、その小さな行動によって決まるのです。
