コトラ（広報チーム） 
はじめに
MBAという言葉の意味と本記事の目的
MBAという言葉を耳にする機会は増えましたが、その正確な意味や、取得することによって得られる具体的なメリット、さらには「意味がない」という批判まで、様々な情報が飛び交っています。本記事は、MBAの略語の意味から、その歴史、資格と学位の違いといった基礎知識に加え、プログラムの種類、国内外のMBA事情、取得のメリット・デメリット、そしてMBAが必要とされる背景と時代的意義、どのような人に向いているかまで、MBAに関する情報を網羅的に解説します。
本記事は、キャリアアップを目指す社会人や学生、ビジネス関係者、あるいは単にMBAという言葉に興味を持つすべての方々に向けて、MBAの本質と実用性を深く理解していただくことを目的としています。個社名に限定せず、中立的な視点から情報を提供し、読者の皆様が自身のキャリア形成においてMBAをどのように活用できるか、具体的なイメージを持てるような記事を目指します。
MBAとは何か
MBAの正式名称と日本語訳
MBAは「Master of Business Administration」の略称であり、日本語では「経営学修士」または「経営管理修士」と訳されます。これは、大学院の修士課程を修了した者に授与される「学位」であり、弁護士や公認会計士のような特定の業務を行うための「資格」とは異なります。
歴史と背景
MBAプログラムは、19世紀末にアメリカで誕生しました。1881年にペンシルベニア大学ウォートン・スクールが世界初のビジネススクールとして設立され、1908年にはハーバード・ビジネス・スクールが、事例に基づいて経営判断能力を養う「ケースメソッド」を開発し、現在のMBA教育の基礎を築きました。
当初、MBAは企業経営の実務家を育成することを目的としており、研究者ではなく、現場で活躍できるビジネスリーダーの養成に重きが置かれていました。時代とともに、プログラムは多様化し、現在ではフルタイム、パートタイム、オンラインなど、様々な形式で提供されています。
資格と学位の違い
MBAは「資格」ではなく「学位」であるという点が重要です。資格は特定のスキルや知識を証明し、特定の業務を行うための許諾を与えるもの（例：医師免許、税理士資格）ですが、MBAは経営学という学問分野を体系的に修了したことを示す学術的な称号です。
履歴書には「資格」欄ではなく「学歴」欄に記載され、その取得は、国際的なビジネス社会において、高度な経営知識と実践的スキルを有することの証明として評価されます。
MBAプログラムの基礎知識
学べる内容とカリキュラムの概略
MBAプログラムでは、企業経営に必要な幅広い知識とスキルを体系的に学びます。主要なカリキュラムは、経営資源の「ヒト・モノ・カネ・情報」の4つの要素を中心に構成されています。
- 経営戦略: 長期的なビジネス計画の立案と実行、競争優位の構築方法
- マーケティング: 消費者行動の理解、市場調査、ブランド戦略、製品開発
- 財務会計・ファイナンス: 企業の財務状況分析、投資判断、資金調達、リスク管理
- 組織論・リーダーシップ: 組織構造の設計、人材マネジメント、チームビルディング、意思決定
- オペレーション管理: 生産プロセスやサプライチェーンの最適化
- 経済学・統計学: マクロ経済・ミクロ経済の理解、データ分析に基づく意思決定
- 法律学: 企業法務、知的財産権法、コンプライアンス
これらの科目は、単なる理論の習得に留まらず、実際の企業事例を用いた「ケーススタディ」やグループディスカッションを通じて、実践的な問題解決能力や論理的思考力、コミュニケーション能力を養うことを重視しています。また、近年ではデジタル変革（DX）やイノベーション、サステナビリティ経営といった現代ビジネスの潮流に対応したカリキュラムも導入されています。
主要なMBAの種類
MBAプログラムは、学習形式や対象者によって多岐にわたります。
海外/国内MBA
- 海外MBA: 国際的な環境で高度なビジネススキルを英語で学び、多様なバックグラウンドを持つ学生や教授との交流を通じてグローバルな視点を養うことを特徴とします。欧米のトップスクールはブランド力が高く、世界的なキャリア機会に直結しやすいとされます。
- 国内MBA: 日本のビジネス環境に特化した内容を日本語で学べる点が特徴です。仕事を続けながら学べるパートタイム形式やオンライン形式が多く、国内企業でのキャリアアップやネットワーク構築を目指す人に適しています。
フルタイム/パートタイム/オンライン
- フルタイムMBA: 学業に専念するため、キャリアを一時的に中断して参加する形式です。キャンパスでのネットワーキングが充実しており、集中的に学ぶことができます。期間は欧州で1年、アメリカで2年が一般的です。
- パートタイムMBA: 夜間や週末に授業を受ける形式で、仕事を続けながら学位取得を目指せます。キャリアを中断する必要がないため、経済的負担を抑えやすいですが、学習期間が長くなる傾向があります。
- オンラインMBA: インターネットを通じてどこからでも学習できる形式です。地理的な制約がなく、自分のペースで学習を進められるため、キャリアを中断せずに海外MBAを取得したい場合にも有力な選択肢となります。費用も通学型より抑えられることが多いです。
Executive MBA, Specialized MBA, PreMBA
- Executive MBA (EMBA): 主に10年以上の実務経験を持つ中堅～管理職を対象としたプログラムです。短期集中型やモジュール型が多く、企業の中核を担う管理職候補の育成に焦点を当てています。
- Specialized MBA: 特定の産業（例：病院経営、ホテル経営）や専門分野（例：金融、マーケティング、ビジネスアナリティクス）に特化したMBAです。より専門性の高い知識を深めたい場合に適しています。
- PreMBA: MBAプログラムに入学する前の準備として提供されるコースです。基礎的な経営知識や英語力を養うことを目的とし、一定時間の履修で証明書が発行されることもあります。
ビジネススクール選びのポイント
MBAプログラムを提供するビジネススクールは世界中に数多く存在するため、自身に合った学校を選ぶことが重要です。以下の点を考慮して比較検討しましょう。
- 自身のキャリア目標と目的: MBA取得を通じて何を達成したいのか（例：キャリアアップ、転職、起業、専門知識の習得、人脈形成）を明確にし、その目的に合致するカリキュラムや学校の特色を持つプログラムを選びます。
- 学べる内容とカリキュラム: 経営学全般を幅広く学ぶゼネラリスト型か、特定の分野に特化したスペシャライズド型か、自身の関心や将来のキャリアパスに合わせて選択します。ケーススタディの有無やディスカッションの活発さも確認しましょう。
- 学習形式と期間: フルタイム、パートタイム、オンラインなど、自身のライフスタイルや仕事との両立が可能かどうかを考慮します。期間（1年制、2年制など）も費用やキャリア中断期間に影響するため、重要な選択肢です。
- 費用と資金調達: 学費だけでなく、生活費や渡航費（海外の場合）、キャリア中断による機会損失など、総費用を把握します。奨学金制度や教育ローン、勤務先からの支援制度なども確認し、資金計画を立てましょう。
- 国際認証の有無: AACSB、AMBA、EQUISなどの国際認証を取得しているビジネススクールは、教育の質が国際的に保証されているため、学校選びの参考になります。特に国際的なキャリアを志向する場合に重視されます。
- 教員と学生の質、人脈形成の機会: 質の高い教員陣（実務経験の有無、ファシリテーション能力など）や、多様なバックグラウンドを持つ学生との交流機会は、学びの深さや人脈形成に大きく影響します。卒業生の活躍状況も参考にしましょう。
- 立地と通いやすさ: 特に通学型のプログラムを選ぶ場合、自宅や職場からの通いやすさも考慮に入れると良いでしょう。オンラインプログラムであれば、場所に縛られずに学習を継続できます。
これらのポイントを多角的に検討し、自分にとって最適なMBAプログラムを見つけることが、MBA取得を成功させる鍵となります。
国内外のMBA事情
アメリカ・ヨーロッパ・日本の主要MBAスクール
世界には数多くのMBAスクールが存在し、それぞれ異なる特色を持っています。
- アメリカ: MBAの発祥地であり、ハーバード・ビジネス・スクール、スタンフォード大学経営大学院、ペンシルベニア大学ウォートン校、MITスローン経営大学院などが有名です。2年制プログラムが主流で、豊富なカリキュラムとインターンシップの機会が特徴です。グローバル企業のCEOや起業家を多数輩出しており、高いブランド力と充実したネットワークが魅力です。
- ヨーロッパ: INSEAD（フランス/シンガポール）、ロンドンビジネススクール（イギリス）、HECパリ（フランス）、IESEビジネススクール（スペイン）などが代表的です。1年制プログラムが主流で、短期間で学位を取得し、キャリアに復帰したい人に適しています。多様な国籍の学生が集まり、国際色豊かな学習環境が特徴です。
- 日本: 一橋大学大学院、慶應義塾大学大学院、早稲田大学大学院、名古屋商科大学大学院、グロービス経営大学院などが国内の主要MBAスクールです。多くは働きながら学べるパートタイムや夜間・週末プログラムを提供しており、日本のビジネス環境に特化した内容を学べます。近年では国際認証を取得する学校も増え、プログラムの質の向上が図られています。
海外MBAと国内MBAの比較
海外MBAと国内MBAには、学習環境、費用、期間、評価、入学・取得方法において明確な違いがあります。
費用・期間・評価の違い
- 費用:
- 海外MBA: トップスクールの場合、学費だけで年間数百万～1,000万円以上、これに加えて渡航費や滞在費を含めると総額2,000万円以上かかることも珍しくありません。投資対効果が高いとされますが、高額な費用負担が最大のデメリットです。
- 国内MBA: 学費は年間100万～200万円程度で、総額200万～500万円程度が目安です。比較的経済的な負担が少なく、通学による生活コストも抑えられます。
- 期間:
- 海外MBA: アメリカのトップスクールは2年制が主流ですが、ヨーロッパやアジアの一部校では1年制プログラムも多いです。
- 国内MBA: 2年のパートタイム（夜間・週末）が一般的で、キャリアを継続しながら学ぶことができます。
- 評価:
- 海外MBA: 国際的なブランド力が高く、グローバル企業や外資系企業への転職、海外でのキャリア構築に直結しやすいです。卒業後の平均年収も高めとなる傾向があります。
- 国内MBA: 国内企業での昇進やキャリアチェンジが中心となります。国際的な知名度は海外トップスクールに劣る場合がありますが、国内でのネットワーク構築や日本のビジネスに特化した知識習得に強みがあります。
入学および取得方法
- 海外MBA:
- 入学要件: 4年制大学の学士号、3年以上の実務経験（平均6～7年）、高い英語力（TOEFL iBT 100～109点以上、IELTS 7.0～7.5以上）、GMAT/GREのスコア（トップ校ではGMAT 700点以上が推奨）、エッセイ、推薦状、インタビューなど、多岐にわたる書類と選考が求められます。
- 取得方法: ビジネススクールのフルタイムまたはパートタイムプログラムを履修し、規定の単位を修了して卒業します。
- 国内MBA:
- 入学要件: 4年制大学の学士号、実務経験（必須でない場合もある）、小論文、面接、TOEICなどの英語試験（一部）、志望動機など。語学力や学力よりも、社会人経験や志望動機が重視される傾向があります。
- 取得方法: 大学院の修士課程または専門職学位課程のプログラムを履修し、規定の単位を修了することで学位が授与されます。修了要件として修士論文の提出を課さないプログラムもあります。
オンラインMBAは、海外・国内ともに提供されており、キャリアを中断せずに、費用を抑えて学位取得を目指したい人にとって魅力的な選択肢です。取得学位は通学型と変わらず、場所や時間の制約を受けずに学習できるメリットがあります。
MBA取得のメリットとデメリット
MBA取得で得られるスキル・人脈・キャリア
MBA取得は、個人のキャリアに多方面で大きな影響を与えます。
- 得られるスキル:
- 経営の体系的知識: 経営戦略、マーケティング、財務会計、組織論など、ビジネスに必要な幅広い知識を体系的に学ぶことで、企業経営全体を俯瞰し、論理的に意思決定する能力が養われます。
- 実践的な問題解決能力: ケーススタディやグループワークを通じて、実社会で直面する複雑な課題に対し、多角的な視点から最適解を導き出す力が向上します。
- リーダーシップと人間力: チームを牽引し、多様なメンバーと協働するためのリーダーシップ、コミュニケーション能力、決断力が磨かれます。
- グローバルな視点と英語力: 特に海外MBAでは、英語での講義やディスカッションを通じて実践的な英語力が飛躍的に向上し、国際的なビジネス環境で活躍するための視野が広がります。
- 得られる人脈:
- MBAプログラムには、多様な業界、職種、国籍を持つ意欲の高いビジネスパーソンが集まります。彼らとの出会いは、単なる学習仲間にとどまらず、生涯にわたる貴重なビジネスネットワークとなることが多く、起業や転職、プロジェクト推進において大きな力となります。
- 得られるキャリア:
- キャリアアップ・転職: MBA取得は、企業から高度な専門知識と実践力を兼ね備えた人材として評価され、昇進やより高い役職への転職、特に外資系企業やコンサルティング業界、グローバル企業への道が開ける可能性が高まります。
- 起業・独立: アントレプレナーシップを重視するプログラムでは、事業計画の立案や実行に関する知識・スキルを習得でき、起業家としての道を後押しします。
収入やキャリアアップへの影響
MBA取得は、年収の大幅な増加やキャリアアップに直結するケースが多いです。国際的なMBAランキングでも、卒業生の給与上昇率が重要な評価基準の一つとされています。
- 年収アップ: 調査によると、MBA取得者の多くは卒業後に年収が大きく上昇する傾向にあります。特に海外トップスクールの場合、卒業後数年で年収が数百万円～1,000万円以上増加するケースも報告されています。国内MBAでも、年収アップを実感する卒業生は少なくありません。
- キャリアアップ: MBAは、プロジェクトマネージャー、CFO（最高財務責任者）、CEO（最高経営責任者）といった経営幹部層への昇進や、コンサルティング、投資銀行、IT企業など、高収益かつ裁量の大きい分野へのキャリアチェンジのきっかけとなります。
よくあるデメリット・「意味ない」と言われる理由
MBA取得には多くのメリットがある一方で、「意味がない」という批判や、いくつかのデメリットも存在します。
- 高額な費用負担: MBAは学費が高額であり、特に海外MBAの場合は生活費や渡航費を含めると総額で2,000万円を超えることもあります。キャリアを一時中断する場合、その間の収入減も考慮する必要があり、経済的負担は大きなデメリットです。
- キャリアの一時中断: フルタイムのMBAプログラムでは、現在の職を辞めて学業に専念するため、キャリアの流れが中断されます。復職時に希望通りのポジションに戻れる保証がない点や、数年間のブランクに対する不安を感じる人もいます。
- 独占業務がない: 弁護士や医師のような国家資格とは異なり、MBAには特定の独占業務がありません。そのため、「取得しても直接的な仕事に結びつかない」「具体的なメリットが見えにくい」と感じる人もいます。
- 思考の固定化の懸念: 一部の批判では、MBAで学ぶ経営学が現代社会の変化に対応しきれていない、あるいは画一的な思考に陥る可能性があると指摘されることもあります。しかし、多くのMBAプログラムでは、理論と実践の融合を重視し、常に最新のビジネス環境に応じたカリキュラムを提供しています。
- 「意味ない」と言われる背景: 日本企業においては、従来の終身雇用・年功序列制度の中で、MBAの価値が十分に評価されないケースや、個人の学びが組織の変革に結びつきにくい企業風土があることも、「意味ない」という声の一因となっています。
実際の卒業生・取得者の活躍例
MBA取得者は、多岐にわたる分野で活躍しています。
- 外資系・グローバル企業: 投資銀行、コンサルティングファーム、IT企業の幹部や管理職として、国際的なプロジェクトを推進しています。
- 国内大手企業: 経営企画、新規事業開発、海外事業部門などで、企業の変革や成長を牽引しています。
- 起業家: MBAで培った知識と人脈を活かし、自ら事業を立ち上げ、成功を収めるケースも少なくありません。
- 専門職: 中小企業診断士、税理士、マーケターなど、専門知識を深めてキャリアを確立する人もいます。
多くの卒業生が、MBAで得た知識、スキル、人脈を活かし、所属組織や社会に大きな貢献をしています。
MBAが必要とされる背景と時代的意義
ビジネス環境の変化（グローバル/終身雇用崩壊/多様性）
現代は「VUCA（変動性、不確実性、複雑性、曖昧性）」の時代と呼ばれ、ビジネス環境はかつてないスピードで変化しています。このような時代において、MBAは企業やビジネスパーソンにとって、その変化に対応し、新たな価値を創造するための重要なツールとなっています。
- ビジネスのグローバル化: 国境を越えたビジネス展開が当たり前になり、企業は多様な文化や法規制、市場に対応する必要があります。MBAは、グローバルな視点と実践的な経営知識を提供し、国際的な競争力を高める人材を育成します。
- 終身雇用・年功序列の崩壊: 日本企業に長く根付いていた終身雇用や年功序列といった雇用慣行が変化し、個人のスキルや専門性が重視される「ジョブ型雇用」への移行が進んでいます。このような環境下で、MBAは個人の市場価値を高め、キャリアアップや転職、独立を後押しする強力な武器となります。
- 組織内の多様性の高まり: 企業組織内では、国籍、性別、価値観、働き方など、多様なバックグラウンドを持つ人材が増加しています。MBAでは、多様な人材をまとめ、成果を最大化するためのマネジメント論やリーダーシップを体系的に学ぶことができ、変化する組織を牽引する能力が養われます。
これらの変化は、MBAが単なる知識の習得だけでなく、未知の課題を解決し、新しい価値を生み出すための「思考力」や「実践力」を養う場として、その重要性を高めていることを示しています。
他の修士号との違い
MBAは「経営学修士」という特定の分野に特化した修士号ですが、ビジネススクールではMBA以外にも、より専門性の高い様々な修士号が提供されています。
- Master of Finance (MFin): 金融市場、企業財務管理、投資戦略など、ファイナンス分野に特化した専門的な知識とスキルを学ぶプログラムです。
- Master of Accounting (MAcc): 財務会計、管理会計、監査、税務などに焦点を当てた、会計専門職向けのプログラムです。
- Master of Marketing (MMark): 消費者行動、市場戦略、ブランドマネジメント、デジタルマーケティングなど、マーケティングに特化したプログラムです。
- Master of Business Analytics (MBAn): データ分析、統計モデリング、機械学習などを活用し、ビジネス上の意思決定を支援するスキルを学ぶプログラムです。
- Master in Management (MiM): 実務経験が少ない、あるいは新卒の学生を対象とした経営学の修士号です。MBAよりも基礎的な内容から学び、若手ビジネスパーソンのキャリアスタートを支援します。
MBAが経営管理全般の「ジェネラリスト」としての能力を強化するのに対し、上記の修士号は特定の専門分野における「スペシャリスト」としての能力を深めることを目的としています。自身のキャリアプランや専門性を考慮し、最適な学位プログラムを選択することが重要です。
MBA取得を検討すべき人とは
どんな人に向いているか
MBAは、多様な背景を持つビジネスパーソンにとって価値のある学位ですが、特に以下のような人に向いています。
- キャリアアップを図りたいビジネスパーソン: 現在の会社での昇進や、より高い役職を目指したい人。MBAで得られる体系的な経営知識とリーダーシップスキルは、マネジメント層への道を開きます。
- 転職を考えている人: 特に外資系企業、コンサルティングファーム、グローバル企業などへの転職を目指す人。MBAの学位は、これらの業界で高い評価を得るための強力な武器となります。
- 起業・独立志望の人: 新規事業の立ち上げや、将来的に自身の会社を経営したいと考えている人。MBAプログラムでは、事業計画の策定やアントレプレナーシップを実践的に学ぶことができます。
- グローバルビジネスに携わりたい人: 国際的なビジネス環境で活躍したい人、または海外でのキャリア構築を目指す人。海外MBAは、異文化理解、英語力、グローバルネットワークの構築に非常に有効です。
- 経営専門職の人: 財務、税務、法務、人事、マーケティングなど、特定の経営分野でより専門性を高めたい人。MBAは、専門知識を深めながら、経営全体を俯瞰する視点も養うことができます。
- 現状に停滞感を感じている人: 一定の実務経験を積み、自己成長に停滞を感じているビジネスパーソン。MBAでの学びや多様な仲間との交流を通じて、新たな視点や解決策を見つけ、次のステップに進むことができます。
- 人生の軸を見つけたい人: キャリアや働き方、生き方について深く考えたい人。MBAは、多様な価値観に触れ、自己と向き合う機会を提供し、「人生の軸」を見つける助けとなります。
キャリア・職種別の適性例
MBAは、様々なキャリアや職種でその価値を発揮します。
- 経営者・マネージャー: 企業経営に必要な意思決定能力、組織管理能力、リーダーシップを強化し、より戦略的な視点で事業を推進できるようになります。
- コンサルタント: クライアント企業の課題を多角的に分析し、実践的な解決策を提案するための論理的思考力、問題解決能力、業界知識が深まります。
- マーケター: 消費者行動の理解、市場分析、ブランド戦略の立案など、高度なマーケティングスキルを習得し、効果的な戦略を打ち出せるようになります。
- 財務・会計専門職: ファイナンスや会計に関する深い知識を習得し、企業の財務戦略立案やリスク管理に貢献できます。
- IT・テクノロジー分野: テクノロジーとビジネスを融合させた視点を養い、デジタル変革を推進するリーダーとして活躍できます。
- 中小企業診断士・税理士: 経営コンサルティングや税務アドバイスにおいて、より実践的かつ戦略的な視点を提供できるようになります。
取得検討時のポイント・注意点
MBA取得を検討する際には、以下のポイントに注意し、慎重に計画を立てることが重要です。
- 明確な目的意識を持つ: 「なぜMBAを取得したいのか」「MBAで何を達成したいのか」という目的を明確にすることが、モチベーション維持と後悔しない選択のために不可欠です。
- 費用対効果を検討する: 高額な費用と時間を投資するため、将来的なキャリアアップや年収増といったリターンに見合うかを具体的に分析しましょう。奨学金や企業派遣制度の活用も検討します。
- 自身のライフスタイルに合ったプログラムを選ぶ: フルタイム、パートタイム、オンラインなど、仕事や家庭との両立が可能かどうかを考慮し、無理なく継続できる学習形式を選びます。
- 学校の質とカリキュラムを吟味する: 国際認証の有無、教員の実務経験、ケーススタディの豊富さ、卒業生の活躍状況などを確認し、自身の学びたい内容や成長目標に合致する学校を選びましょう。
- 英語力の準備: 特に海外MBAの場合、高い英語力は必須です。TOEFLやIELTS、GMAT/GREのスコア取得には計画的な準備期間が必要となります。国内MBAでも、英語力を磨くことはグローバル化するビジネス環境で有利に働きます。
- 人脈形成の意識: MBAの大きなメリットの一つである人脈形成を意識し、多様な学生や教員、卒業生との積極的な交流を心がけましょう。
まとめ
MBAの本質と本記事のまとめ
MBAは「Master of Business Administration（経営学修士）」の略であり、経営学の大学院修士課程を修了することで授与される「学位」です。これは特定の業務を独占する「資格」とは異なり、経営に関する体系的な知識と実践的なスキル、そしてリーダーシップを身につけたことを証明するものです。
MBAが必要とされる背景には、グローバル化、終身雇用制度の崩壊、組織の多様化といった現代ビジネス環境の大きな変化があります。これからの時代に求められる「自ら考え抜き、意思決定する力」「新しいことに挑戦する能力」「多様な人々と協働する力」を養う上で、MBAは非常に有効な手段となり得ます。
MBA取得のメリットとしては、
- 経営戦略、マーケティング、ファイナンスなどの汎用的な経営スキルを体系的に習得できること。
- 意欲の高い多様なビジネスパーソンと出会い、質の高い人脈を築けること。
- キャリアアップ、年収増加、転職、起業といったキャリアの可能性を広げられること。
- グローバルな視点と実践的な英語力を身につけられること（特に海外MBA）。
- 人間性や決断力を磨き、人生の軸を見つける機会を得られること。
一方で、高額な費用負担、キャリアの一時中断、独占業務がないことなどがデメリットとして挙げられることもあります。しかし、これらのデメリットを上回るメリットを享受するためには、自身のキャリア目標を明確にし、最適なプログラムと学習スタイルを選ぶことが重要です。
取得に向けた最初のステップ
MBA取得は人生における大きな投資であり、その道のりは決して容易ではありません。しかし、その先に広がる可能性は計り知れません。もしMBA取得を検討しているのであれば、まずは以下のステップから始めてみましょう。
- 自己分析とキャリアプランの明確化: 「なぜMBAが必要なのか」「MBAを取得して何をしたいのか」を具体的に言語化します。
- 情報収集: 興味のあるビジネススクールのウェブサイトを確認し、説明会や体験授業に参加してみましょう。国内外のランキングや国際認証の有無も参考にします。
- 費用と時間の計画: 取得にかかる総費用を把握し、自身の経済状況や仕事・家庭の状況を考慮して、無理のない学習計画を立てます。奨学金や企業派遣制度などの利用も検討しましょう。
- 英語力チェックと準備: 特に海外MBAを目指す場合は、自身の英語力を確認し、TOEFL、IELTS、GMAT/GREなどの試験対策を早期に開始します。
小さな一歩が、数年後の大きな成功へと繋がります。この記事が、あなたのMBA取得に向けた挑戦の道しるべとなれば幸いです。
