【最新】金融機関の市場リスク・信用リスク管理業務|基本から実務の進め方まで

金融機関における市場リスク・信用リスク管理の基礎

市場リスクと信用リスクの違い

市場リスクとは、金利、株価、為替相場、債券価格などの市場価格が変動することにより、保有資産や取引の価値、収益が変動するリスクです。たとえば、金利が上昇すると、保有する債券の価格が下落し、売却時の損失や評価損につながる可能性があります。

一方、信用リスクとは、融資先や取引先の財務状況が悪化し、契約どおりに返済や支払いを受けられなくなるリスクです。貸出金の返済不能だけでなく、債券の発行体が利払い・償還を行えなくなる場合や、取引先との契約に伴う未回収も含まれます。

両者は発生要因が異なりますが、経済環境の変化によって同時に高まることがあります。たとえば、急激な金利上昇や景気後退は、保有債券の価格に影響するだけでなく、企業や個人の返済負担を増やし、信用リスクの上昇にもつながります。

リスク管理が金融機関の経営に必要な理由

金融機関は、預金、保険料、借入金などを原資として、融資や有価証券運用、デリバティブ取引などを行っています。そのため、市場価格の変動や取引先の信用状況の悪化が、収益だけでなく財務の安定性にも直接影響します。

適切なリスク管理は、損失の発生を完全になくすためのものではありません。許容できる範囲でリスクを取り、収益とのバランスを保ちながら、過大な損失を防ぐための経営活動です。経営陣が現在のリスクの大きさと将来の影響を把握し、資本や収益力に見合った取引方針を決定するために欠かせません。

また、金融市場の変動が大きい局面では、迅速な情報把握と意思決定が重要です。日常的にリスクを監視し、あらかじめ定めた限度額や対応手順に沿って運用することで、不測の事態への対応力を高められます。

対象となる取引・資産の主な種類

市場リスクと信用リスクの管理対象は、金融機関の業態や事業規模、取引内容によって異なります。一般的には、以下のような資産・取引が対象になります。

  • 貸出金、当座貸越、保証取引
  • 国債、地方債、社債、投資信託などの有価証券
  • 株式、外国債券、外貨預金などの市場性資産
  • 為替予約、金利スワップなどの金融派生商品
  • コール取引や銀行間取引などの短期資金取引
  • 保証債務、融資枠など、将来の資金供与につながる取引

同じ資産でも、複数のリスクを持つ場合があります。たとえば社債は、市場金利の変動による価格変動リスクに加え、発行体の信用力低下による価格下落や債務不履行のリスクも含みます。このため、商品や取引を個別に見るだけでなく、リスクの種類ごとに整理して把握することが重要です。

リスク管理に関わる部門と役割

実効性のあるリスク管理には、取引を行う部門、リスクを管理する部門、経営を監督する立場が、それぞれの役割を明確にする必要があります。

営業店、融資部門、市場運用部門などは、顧客対応や取引執行を担います。取引の入口に立つ部門として、顧客の状況確認、必要書類の取得、与信判断のための情報提供、取引後の状況把握を行います。

リスク管理部門は、各部門から独立した立場で、リスク量の計測、限度額の管理、報告資料の作成、方針やルールの整備を担います。取引部門だけでは見落としやすい全体的なリスクの偏りを把握し、必要に応じて経営陣へ報告・提言します。

経営陣や取締役会は、リスクを取る方針、限度額、重要な例外対応などを決定し、管理体制が適切に機能しているかを監督します。内部監査部門は、各部門の運用が規程や承認手続きに沿っているかを独立して点検します。

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市場リスク管理の仕組みと主な管理対象

金利・株価・為替・価格変動によるリスク

市場リスクは、主に市場価格の変動要因ごとに整理します。金利リスクは、市場金利の変動によって債券価格、貸出金利息、預金金利息などが変化するリスクです。特に債券は、一般に金利が上昇すると価格が下落し、金利が低下すると価格が上昇する関係があります。

株価リスクは、保有株式や株式投資信託などの価格が変動するリスクです。景気動向、企業業績、投資家心理などにより価格が大きく動くことがあります。

為替リスクは、外貨建て資産・負債や外国証券を保有する場合に、為替相場の変動によって円換算額が変わるリスクです。外貨建ての収益が増えても、円高が進めば円換算後の価値が低下する場合があります。

このほか、商品価格や信用スプレッドの変動も市場リスクとして管理対象になります。信用スプレッドとは、国債などの基準となる金利に対して、社債などに上乗せされる利回りの差を指します。この差が拡大すると、保有する社債などの価格が下落する可能性があります。

金利上昇や相場急変が収益・財務に与える影響

金利上昇は、保有債券の評価額を下げる要因になる一方、将来的な運用利回りの改善につながる場合もあります。影響は、保有資産の残存期間、固定金利・変動金利の構成、預金金利の見直し状況などによって異なります。

たとえば、長期の固定利付債券を多く保有している場合、短期間で金利が上昇すると価格下落の影響を受けやすくなります。また、貸出金利の見直しが遅れる一方で預金金利が上昇すると、資金を調達して運用することによる収益が圧迫される可能性があります。

相場急変時には、評価損益の悪化だけでなく、資産の売却が難しくなることにも注意が必要です。必要なときに適正な価格で換金できるかという観点も含め、収益、自己資本、資金繰りへの影響を総合的に確認します。

保有資産と取引ごとのリスクを把握する方法

市場リスクを把握するには、まず保有する資産・負債・取引を、商品別、通貨別、期間別、取引先別などに分類します。そのうえで、価格変動の要因と感応度を確認します。

債券であれば、銘柄、額面、取得価格、時価、残存期間、利回り、通貨、発行体などを整理します。外貨建て資産であれば、通貨ごとの保有額と為替変動の影響を確認します。金融派生商品については、契約内容に加え、将来の市場変動によって生じる損益の可能性も把握する必要があります。

個別取引の確認に加え、全体を合算したときのリスクも重要です。特定の金利水準や通貨、資産種類に偏っていないか、同じ方向に価格が動く資産を過度に保有していないかを確認します。

市場リスク管理で確認する主な指標

市場リスク管理では、取引残高や時価、評価損益に加え、価格変動への影響を表す複数の指標を組み合わせて確認します。一つの指標だけでは、急激な相場変動や保有資産の偏りを十分に把握できないためです。

主な確認項目には、金利や為替が一定幅変動した場合の損益変動額、保有債券の残存期間、通貨別の保有残高、資産種類別の構成比、損失限度額に対する使用状況などがあります。

また、短期間の通常の市場変動を前提とした指標だけでなく、過去にない規模の相場変動を想定した結果も確認します。平常時の管理と非常時の備えを分けずに運用することが、市場リスク管理の実効性を高めます。

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信用リスク管理の仕組みと主な管理対象

信用リスクが発生する主な場面

信用リスクは、融資取引だけに限られません。貸出先が元利金を返済できなくなる場合のほか、社債の発行体が利払い・償還を行えなくなる場合、保証先の債務を代わって履行する場合、金融派生商品取引の相手方から支払いを受けられなくなる場合にも発生します。

また、取引開始時には問題がなくても、景気悪化、原材料価格の上昇、売上減少、金利上昇、自然災害などをきっかけに、取引先の返済能力が低下することがあります。そのため、融資実行時の審査だけでなく、取引開始後の継続的な確認が重要です。

信用リスクは、特定の大口先への過度な集中や、同じ業種・地域への偏りによって大きくなる場合があります。個別の取引先が健全に見えても、共通する経済要因で複数の取引先が同時に悪化する可能性を考慮する必要があります。

取引先の返済能力を確認する評価の考え方

返済能力の確認では、財務書類の数値だけでなく、事業内容、収益の安定性、資金繰り、経営方針、業界環境、担保・保証の状況などを総合的に見ます。過去の業績が良好でも、今後の売上見通しや資金需要に不確実性があれば、慎重な判断が必要です。

多くの金融機関では、取引先の信用力を段階的に区分する内部格付制度を設けています。内部格付は、取引先の信用状態を共通の基準で整理し、審査方針、金利設定、融資上限、引当金の検討などに活用するものです。

評価は一度行えば終わりではありません。決算内容の更新、資金繰りの変化、重要な契約の失注、代表的な取引先の業況悪化など、新しい情報を把握した場合には、必要に応じて格付や取引方針を見直します。

融資先・取引先の集中リスクを管理する方法

集中リスクとは、特定の取引先、企業グループ、業種、地域、商品などに取引が偏ることで、共通の要因による損失が大きくなるリスクです。大口取引先の業況が悪化した場合、単一先への与信額が大きいほど損失の影響も大きくなります。

管理にあたっては、取引先単位だけでなく、実質的に同じ経営基盤を持つ企業グループ単位での与信額を把握します。さらに、業種別、地域別、格付別、担保の種類別などに集計し、偏りがないかを確認します。

集中が見られる場合は、新規取引の抑制、融資条件の見直し、与信限度額の設定、取引先の分散などを検討します。ただし、数値上の集中度だけで判断するのではなく、業種の将来性や地域経済との関係、担保の換金性なども踏まえて対応します。

延滞・返済不能の兆候を早期に捉える確認項目

信用リスクの早期把握では、返済遅延が発生してから対応するのではなく、悪化の兆候を継続的に確認することが重要です。営業部門と審査・リスク管理部門が情報を共有し、取引先の変化を見逃さない体制を整えます。

主な確認項目には、以下のようなものがあります。

  • 元利金の返済や利払いの遅延
  • 預金残高や入出金状況の大きな変化
  • 売上高、利益、受注残高の減少
  • 資金繰りの悪化や追加借入の増加
  • 税金・社会保険料などの支払い遅延
  • 主要取引先の変更、取引停止、訴訟などの重要情報
  • 財務書類の提出遅延や説明内容の不整合
  • 担保価値の低下や保証状況の変化

こうした兆候を確認した場合は、取引先への追加ヒアリング、財務情報の更新、返済計画の確認、格付の見直しなどを行います。早い段階で状況を把握することで、取引先の再建支援や損失拡大の防止につながる可能性があります。

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市場リスク・信用リスクを計量・監視する実務

リスク量を数値で把握するための基本的な考え方

リスク量の計測では、保有額だけでなく、どの程度の損失がどの条件で発生し得るかを数値化します。数値化により、異なる商品や取引を共通の尺度で比較し、限度額との関係や資本への影響を確認しやすくなります。

ただし、計測結果は、前提条件や使用するデータに影響されます。過去の価格変動をもとにした計測では、過去にない市場変動を十分に反映できないことがあります。信用リスクでも、財務情報の更新頻度や格付判断の正確性によって結果が変わります。

このため、数値は意思決定を支える重要な材料として活用しつつ、現場情報や市場環境、取引先との対話で得られた定性的な情報と合わせて判断することが必要です。

想定損失額を用いた市場リスクの測定

市場リスクの測定方法の一つに、一定の保有期間と信頼水準を前提として、通常想定される市場変動の範囲で発生し得る損失額を推計する方法があります。一般にVaRと呼ばれる指標です。

たとえば、保有する債券、株式、外貨建て資産などについて、過去の価格変動や価格間の関係をもとに、一定期間内にどの程度の損失が起こり得るかを試算します。これにより、資産ごとのリスクだけでなく、複数の資産を組み合わせた全体のリスクを把握できます。

一方で、VaRは、設定した信頼水準を超える極端な損失の大きさを直接示すものではありません。また、市場が急変した局面では、過去データをもとにした推計が実際の損失を十分に表さない可能性があります。したがって、感応度分析やストレステストと組み合わせて利用します。

厳しい経済環境を想定した影響確認

ストレステストとは、通常とは異なる厳しい市場環境や経済状況を想定し、損益、自己資本、資金繰りなどへの影響を確認する手法です。市場リスクでは、急激な金利上昇、株価下落、円高・円安、信用スプレッド拡大などを想定します。

信用リスクでは、景気後退、特定業種の収益悪化、失業率上昇、不動産価格下落などを想定し、延滞や返済不能の増加、担保価値の低下、信用損失の拡大を確認します。

シナリオは、金融機関の資産構成や事業地域、顧客基盤に応じて設定することが重要です。結果を算出するだけでなく、どの資産・業種・取引先への影響が大きいかを分析し、限度額、資産構成、資本計画、対応手順の見直しにつなげます。

信用損失見込みと返済不能率の確認

信用リスクの計量では、将来発生する可能性がある損失を見積もります。基本的には、返済不能となる可能性、返済不能となった場合の損失の割合、取引残高を組み合わせて、想定される損失を把握します。

返済不能となる可能性は、内部格付、過去の延滞・返済不能実績、業種や地域の状況、景気指標などを踏まえて検討します。返済不能時の損失の割合は、担保や保証による回収見込み、優先順位、回収に要する期間などに左右されます。

実績としては、格付別の延滞率、返済不能率、回収率、損失額などを継続的に確認します。想定と実績に大きな差がある場合は、格付基準、損失見積もりの前提、データの正確性を見直す必要があります。

日次・月次で行うモニタリングと報告

市場リスクは、市場価格が日々変動するため、取引内容によっては日次での把握が必要です。日次では、時価、評価損益、限度額の使用状況、価格変動に対する感応度、大きな損失の発生有無などを確認します。

信用リスクは、日々の入出金や返済状況を確認しつつ、月次や四半期ごとに与信ポートフォリオ全体を分析する運用が一般的です。大口先、業種別、地域別、格付別の残高や延滞状況を集計し、集中リスクや悪化傾向を確認します。

報告資料は、現場担当者向け、リスク管理部門向け、経営陣向けで必要な粒度を分けます。経営陣への報告では、数値の増減だけでなく、増減の要因、限度額超過の有無、今後想定される影響、必要な対応を明確にします。

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実効性のあるリスク管理体制と内部統制

経営陣・取締役会が担う監督と意思決定

経営陣・取締役会は、リスク管理における最終的な責任を担います。市場リスク・信用リスクについて、どの程度までリスクを取るかという基本方針を定め、経営計画や資本の状況と整合しているかを確認します。

また、重要な限度額、リスク管理規程、ストレステストの方針、大きな損失や限度額超過が生じた場合の対応などについて、適切な承認と監督を行います。報告を受けるだけでなく、経営上の課題として理解し、必要に応じて取引方針や資源配分を見直すことが求められます。

取締役会では、経営陣から独立した視点で、リスク管理体制が形だけのものになっていないかを確認することが重要です。特に、収益目標が優先されて審査やけん制機能が弱まっていないか、重要な情報が適時に報告されているかを点検します。

営業部門とリスク管理部門の役割分担

営業部門や市場運用部門は、収益機会を見つけて取引を実行する役割を持ちます。一方、リスク管理部門は、取引の収益性とは独立した立場で、リスクの測定、限度額の管理、方針の運用状況の確認を行います。

信用リスクでは、営業部門が取引先の情報を収集し、融資提案や期中管理を担います。審査部門やリスク管理部門は、信用判断の妥当性を確認し、特定の取引先や業種への集中、格付の整合性、損失見込みなどを管理します。

役割分担を明確にすることで、取引推進とけん制機能の両立を図れます。ただし、部門間の情報共有が不足すると、早期の対応が難しくなります。責任範囲を分けながらも、重要情報を速やかに共有する仕組みが必要です。

管理方針・限度額・承認手続きの整備

リスク管理方針では、管理対象、担当部署、報告先、計測方法、限度額、限度額超過時の対応などを明確にします。規程は、実際の取引内容や組織体制に合ったものとし、現場で運用できる具体性を持たせることが重要です。

限度額は、取引残高だけでなく、損失額、通貨別の保有額、取引先別の与信額、業種別の集中度など、リスクの性質に応じて設定します。限度額の水準は、収益計画、自己資本、流動性、リスクを管理する人員・システムの能力などを踏まえて決定します。

例外的な取引や限度額超過が発生した場合には、誰が承認し、どのように報告し、いつまでに解消するのかをあらかじめ定めます。承認記録を残し、後から判断の経緯を確認できるようにすることも重要です。

データの正確性を保つための確認体制

リスク計測や経営報告の信頼性は、もとになるデータの正確性に左右されます。取引残高、時価、契約条件、担保情報、財務情報、格付などに誤りや更新漏れがあると、リスク量や損失見込みを適切に把握できません。

データ管理では、入力担当者と確認担当者を分けること、取引システムと管理用データの照合を行うこと、更新時の承認記録を残すことなどが有効です。特に手作業での集計が多い場合は、転記ミスや集計漏れが起こりやすいため、確認手順を明確にします。

また、データの定義を統一することも重要です。たとえば、与信残高に含める範囲や格付変更日の扱いが部門ごとに異なると、全体集計の整合性が失われます。共通のデータ基準と管理責任者を定める必要があります。

内部監査による管理状況の点検

内部監査は、リスク管理部門や営業部門から独立した立場で、管理体制の有効性を点検します。規程が整備されているかだけでなく、実際に規程どおりの運用が行われているか、管理方法が取引規模や複雑さに見合っているかを確認します。

点検項目には、限度額管理、承認手続き、格付運用、担保評価、データ管理、報告の適時性、ストレステストの実施状況などがあります。問題が見つかった場合は、原因を分析し、改善策と対応期限を明確にします。

内部監査の指摘を一度の改善で終わらせず、改善後に運用が定着しているかを確認することが重要です。新たな商品やシステムを導入した場合、組織変更があった場合にも、管理上の影響を改めて点検します。

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リスク管理業務の進め方と運用上の課題

現状の取引・資産・管理体制を整理する手順

リスク管理の見直しを始める際は、まず保有資産、取引種類、取引先、管理部署、使用しているシステムや帳票を整理します。市場リスクでは、有価証券、外貨建て資産、金融派生商品などの保有状況を把握します。信用リスクでは、貸出金、保証、社債、取引先ごとの与信額などを確認します。

次に、現在の管理方法を確認します。どの指標を用いているか、誰がいつ集計しているか、限度額は設定されているか、超過時の対応が決まっているか、経営陣への報告が適時に行われているかを洗い出します。

そのうえで、取引量に対して管理が不足している領域、手作業に依存している領域、情報共有が滞りやすい領域を特定します。現状分析では、規程と実際の運用に差がないかを確認することが重要です。

管理対象・指標・報告頻度を設定する方法

管理対象は、取引規模、損失が発生した場合の影響、商品性の複雑さ、換金のしやすさなどを踏まえて決めます。すべてを同じ頻度・同じ深さで管理するのではなく、重要性に応じて管理水準を設定します。

市場リスクでは、評価損益、金利変動時の損益影響、通貨別保有額、想定損失額などを組み合わせます。信用リスクでは、与信残高、格付別構成、延滞率、返済不能率、大口先への集中度、業種別構成などを確認します。

報告頻度は、リスクの変動速度に合わせます。日々価格が変動する市場性資産は日次管理が基本となる一方、信用リスクの全体分析は月次や四半期ごとに行う場合があります。ただし、重要な取引先の信用悪化や大幅な市場変動が起きた場合には、定例の報告を待たずに報告する仕組みが必要です。

リスクの変化を受けた限度額や方針の見直し

限度額や管理方針は、一度定めたら固定するものではありません。市場金利の水準、保有資産の構成、収益計画、自己資本の状況、取引先の分布などが変化した場合には、妥当性を定期的に見直します。

たとえば、有価証券の残存期間が長期化した場合や外貨建て資産が増加した場合には、金利・為替変動への耐性を再確認する必要があります。信用リスクでは、特定業種への与信が増加した場合や、格付の低い先の構成比が上昇した場合に、集中リスクや損失見込みを見直します。

見直しでは、単に限度額を引き上げるのではなく、増加したリスクに見合う管理能力、資本、収益の裏付けがあるかを確認します。経営陣による承認と、見直し理由の記録も必要です。

データ不足や属人化を防ぐための改善策

リスク管理業務では、データが複数の部署やシステムに分散し、集計に時間がかかることがあります。また、特定の担当者しか計測方法や報告手順を理解していない状態では、異動や退職によって業務が停滞するおそれがあります。

改善策としては、必要なデータ項目と定義を整理し、可能な範囲でデータを一元化することが挙げられます。手作業による転記を減らし、取引データ、時価情報、財務情報、格付情報を適切に連携させることで、集計の効率と正確性を高められます。

また、業務手順書、計測方法、確認項目、例外時の対応手順を文書化し、複数の担当者が対応できる体制を整えます。定期的な研修や引き継ぎに加え、第三者による再計算や照合を行うことも有効です。

市場環境や取引先の変化に対応する継続的な見直し

市場リスク・信用リスクの管理は、規程やシステムを整備して終わりではありません。金利・為替・株価の動向、景気や物価の変化、顧客の資金需要、取引先の事業環境などを継続的に確認し、管理方法を見直す必要があります。

新しい商品への投資、外貨取引の拡大、融資先業種の変化、組織再編などがあった場合には、既存の管理手法で十分に対応できるかを検証します。特に、過去の実績が少ない商品や、複雑な取引を扱う場合には、導入前からリスク評価、承認体制、計測方法、緊急時の対応を整理することが重要です。

継続的な見直しを行うためには、日常のモニタリング結果、ストレステスト、内部監査、現場からの意見を経営改善につなげる仕組みが必要です。市場環境と取引先の変化を早期に捉え、方針・限度額・体制を適切に更新することが、安定した金融機関経営につながります。

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この記事を書いた人

コトラ(広報チーム)

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