サステナビリティ・リンク・ボンドとは?未来を変える金融商品の仕組みを解説!

サステナビリティ・リンク・ボンドの基礎知識

サステナビリティ・リンク・ボンドとは?その定義と特徴

サステナビリティ・リンク・ボンド(SLB)は、企業が掲げたサステナビリティやESG(環境・社会・ガバナンス)目標の達成状況に応じて、債券の条件が変動する仕組みを持つ金融商品です。この債券の特徴は、資金使途を特定しない点にあります。一般的なグリーンボンドやソーシャルボンドが環境保護や社会問題解決を目的としたプロジェクトに資金を限定するのに対し、SLBは企業全体の持続可能性目標と直接結びついているのが特徴です。この債券の目的は、企業に対して持続可能性を意識した行動を促し、同時に投資家に対して持続可能な社会への貢献機会を提供する点にあります。

従来の債券と何が違う?サステナビリティ・リンク・ボンドの特性

従来の債券との大きな違いは、サステナビリティ・リンク・ボンドが企業の持続可能性目標に強く結びついている点です。この種類の債券では、KPI(重要業績評価指標)とSPT(サステナビリティ・パフォーマンス目標)が設定され、この目標の達成状況により利率の変動などの条件が変更されます。例えば、温室効果ガスの削減率をKPIとして設定し、その達成進捗に応じて金利条件が調整される仕組みです。このように、企業のサステナビリティ目標が債券の条件に反映され、発行体が積極的に環境や社会への貢献を図ることが可能となります。

KPIとSPTとは?重要な概念の解説

サステナビリティ・リンク・ボンドにおけるKPIとSPTは、核となる重要な概念です。KPI(Key Performance Indicator)は、企業が達成を目指すサステナビリティ関連の測定可能な指標を表し、例えば温室効果ガス排出量、再生可能エネルギー利用率などがあります。一方、SPT(Sustainability Performance Targets)は、これらKPIに基づいた具体的な目標値を指します。例えば、東亜建設工業は「2028年度までに温室効果ガス排出量を20%削減する」というSPTを設定しています。これにより企業の進捗状況が明確になり、投資家もその成果を評価できる仕組みとなっています。

どんな目的で発行される?具体的な活用例

サステナビリティ・リンク・ボンドは、主に企業が持続可能な経営を推進するために発行されます。例えば、東亜建設工業や京阪神ビルディングの事例では、それぞれ温室効果ガスの削減を目標に掲げ、この目標未達成時には追加の措置を行う義務を負っています。具体的には、未達成時に環境保全活動に寄付したり、排出権を購入したりする仕組みが導入されています。このような取り組みにより、発行体は環境負荷軽減や社会貢献をアピールできる他、投資家には持続可能性への貢献を促進するという重要な役割が果たされます。

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サステナビリティ・リンク・ボンドのメリットと課題

企業にとってのメリット:ESG目標へのアプローチ

サステナビリティ・リンク・ボンドは、企業がESG(環境・社会・企業統治)目標を達成するための効果的な資金調達手段となります。この債券を通じて企業はESG目標を具体化し、それを達成することで持続可能性を意識した経営をアピールすることができます。また、発行体にとっての直接的なメリットは、資金調達時の条件がESG目標とリンクしているため、達成状況に応じてより好条件での資金調達が可能になる点です。

例えば、京阪神ビルディングではGHG(温室効果ガス)排出量の削減率を明確なSPT(サステナビリティ・パフォーマンス目標)として設定し、目標達成の進捗状況を透明性を持って開示することで投資家の信頼を獲得しています。また、サステナビリティ目標を達成することで、企業ブランドの向上にも寄与すると考えられています。

投資家としてのサステナビリティへの貢献

投資家にとって、サステナビリティ・リンク・ボンドへの投資は、持続可能な社会への貢献を実現する一つの手段と言えます。この債券は、発行体が設定するサステナビリティ目標の達成状況に応じてリターンが変動するという特性があります。そのため、投資家はリターンの確保だけでなく、持続可能性の向上にコミットしている企業を支援することができます。

さらに、明確なKPI(重要業績評価指標)やSPTに基づき投資が行われるため、投資対象企業の進捗状況を評価しやすく、投資判断をより透明化することでリスクも軽減できるメリットがあります。具体的には、東亜建設工業が2025年に発行するサステナビリティ・リンク・ボンドでは、進捗状況の開示や未達成時のペナルティが明確に示されています。このような仕組みは、投資家にとって信頼を生む構造となっています。

課題とリスク:KPI設定の妥当性と透明性

一方で、サステナビリティ・リンク・ボンドにはいくつかの課題も存在します。その中でも特に重要なのはKPIの設定基準が妥当であるかどうかです。KPIは企業が達成を目指すサステナビリティ目標を数値化した指標ですが、これが曖昧であったり、実現可能性が低すぎたりすれば、投資家の信頼を損ねる可能性があります。

また、KPIの進捗状況やSPTが達成されたかどうかの評価には、情報の透明性が求められます。不十分な開示が投資家の不安を招くことも考えられます。この点で、日本では大林組が国際基準であるSBT(Science Based Targets)の認定を受けるなど、国際的な基準を取り入れた透明性の高い評価基準の確立が進められています。

サステナビリティ評価の信用性を担保する仕組み

サステナビリティ・リンク・ボンドでは、その信頼性を確保するための仕組みも重要視されています。特に発行体の目標達成と透明性を担保するために、第三者評価機関による確認や、年次で進捗状況を開示する仕組みが導入されています。これにより、投資家は企業のサステナビリティ戦略の信頼性を正確に評価できるようになります。

例えば、東亜建設工業では温室効果ガス排出量削減に関する進捗や未達成時の対応についての詳細を開示することで、評価の公平性と透明性を確保しています。こうした取り組みは、サステナブルファイナンス全体の信用性を向上させ、市場の拡大にも寄与すると考えられています。

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他のESG債との違いと位置づけ

グリーンボンド・ソーシャルボンドとの違い

グリーンボンドやソーシャルボンドは、調達した資金を特定のプロジェクトに使用することに重点を置いた債券です。例えば、グリーンボンドは再生可能エネルギーや省エネルギーなど環境に配慮したプロジェクトに資金を提供し、ソーシャルボンドは貧困削減、医療・教育支援など社会課題の解決を目的としています。一方、サステナビリティ・リンク・ボンドは、資金の用途を特定のプロジェクトに限定せず、発行企業全体のサステナビリティ目標(例えば温室効果ガス排出量の削減など)の達成状況に応じて条件が変動する点が最大の特徴です。この点で、より柔軟かつ包括的に企業のESG戦略を反映しています。

サステナビリティ・リンク・ボンドの法的ガイドライン

サステナビリティ・リンク・ボンドは、発行・運営において「サステナビリティ・リンク・ボンド原則(SLBP)」に基づいています。この原則は、国際資本市場協会(ICMA)によって策定されており、主に以下の5つの要素で構成されています:KPI(指標)の選定、SPT(目標値)の設定、財務的特徴の変化、透明な報告、外部検証です。特にKPIとSPTの設定は、信頼性を確保するために重要な要素とされています。また、発行体は目標達成状況を定期的に開示する責務を負い、こうした透明性の高い仕組みが市場における信用性を向上させています。

市場におけるサステナビリティ・リンク・ボンドの役割

サステナビリティ・リンク・ボンドは、ESG投資を促進する上で重要な役割を果たしています。この商品は、企業全体のサステナビリティ目標の実現を目的としており、プロジェクト単位では表現しきれない企業の取り組み全体を評価します。例えば、日本で発行されたサステナビリティ・リンク・ボンドの事例では、温室効果ガス排出量の削減目標などが設定され、目標未達成時には環境保全活動への寄付や排出権購入を義務付ける仕組みが採用されています。これによって、企業と投資家双方が持続可能な経済の実現に貢献することが可能となり、同時にエシカル投資の拡大を後押しします。

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サステナビリティ・リンク・ボンドの事例と今後の展望

国内外の成功事例の紹介

サステナビリティ・リンク・ボンド(SLB)は、企業が持続可能な発展を目指し、環境や社会的な目標を達成する意義深い取り組みを金融商品として具現化したものです。国内では、例えば東亜建設工業や京阪神ビルディングがその先駆けとなっています。東亜建設工業は、温室効果ガス(Scope1+2)の排出量削減率を2028年度までに20.0%削減するという明確なSPTを設定しており、その達成によって企業としてのサステナビリティ目標を金融商品を通して実行しています。同様に、京阪神ビルディングはScope1とScope2の排出量削減率41%を目標に掲げ、透明性ある開示を通じて投資家に信頼を提供しています。

国際的には、欧州やアジア市場を中心に広がりを見せ、特に欧州ではグリーンファイナンスの進展とともにSLB市場も急速に拡大中です。企業が持続可能性目標を設定し、それに基づいて資金を調達し運用する透明性の高い枠組みが評価されています。このような事例は、ESG投資の浸透が進む中で、今後日本市場にもさらに波及していくと予測されます。

発展するサステナビリティファイナンスの動向

近年、サステナビリティファイナンスはグローバルな金融市場で重要な位置を占めるようになっています。特に、SDGs(持続可能な開発目標)の推進を背景に、資金調達の手法として急速に普及しているESG関連債券の一形態として、サステナビリティ・リンク・ボンドの発行が注目されています。

SDGs債の市場規模は2015年と比較して2020年には12倍に増加するほどの急成長を見せており、この流れは企業だけでなく政府や公共団体、さらには投資家コミュニティ全体に広がっています。日本国内においても、サステナビリティ・リンク・ボンドの発行件数が増加し、企業がESG目標達成に向けた具体的なロードマップを資金調達に組み込むケースが増えています。結果として、透明性のある仕組みと伴って、環境・社会貢献型の経済モデルへの移行が進んでいます。

企業と投資家に求められる取り組み

サステナビリティ・リンク・ボンドの成功には、企業及び投資家の双方が積極的に取り組むことが必要です。まず企業は、自社のESG目標を具体化し、適切なKPIとSPTを設定することで投資家からの信頼を得る努力が求められます。そのうえで、進捗の詳細な開示により透明性を高め、目標達成への責任とコミットメントを示すことが重要です。例えば、東亜建設工業や京阪神ビルディングが行っているような具体的な開示例は参考になります。

一方で、投資家もまた、発行企業が掲げている目標の妥当性や信頼性を公平に評価し、持続可能な社会形成へ貢献する観点を持たなくてはなりません。SLBP(サステナビリティ・リンク・ボンド原則)に基づいた債券選定や、KPIの透明性の評価を積極的に行う取り組みが投資家にとって今後ますます重要となっていくでしょう。

未来へつなぐ金融の可能性とは?

サステナビリティ・リンク・ボンドは、企業と投資家が協力し、持続可能な未来を創造するという意義を持つ画期的な金融商品です。従来型の債券とは異なり、サステナビリティ目標を明確にした形で金融市場に登場している点が特長であり、この仕組みは未来のファイナンスの一つの方向性を示しています。

グローバルなサステナビリティファイナンス市場の成長は、社会全体に大きな影響を与えています。企業が目標達成に失敗した場合のペナルティも重要な仕組みですが、長期的に見れば、企業が本質的な価値を追求し、環境や社会へポジティブなインパクトを与えていく道筋を金融という形で支援する点が注目すべきポイントです。このように、サステナビリティ・リンク・ボンドは、持続可能なビジネスモデルの実現に向けた重要なツールとして、今後も成長を続ける可能性を秘めています。

この記事を書いた人

コトラ(広報チーム)