コトラ（広報チーム） 
トランジション・ファイナンスとは何か
トランジション・ファイナンスの定義と背景
トランジション・ファイナンスとは、企業がカーボンニュートラルや持続可能な社会の実現を目指すため、CO2削減や環境負荷の低減を進める移行プロセスを支援するための資金提供を指します。近年、気候変動や環境問題に対する世界的な取り組みの中で、排出量の多い産業が持続可能な成長へと移行するためのサポートが重要視されています。この背景には、日本だけでなく国際的にも、持続可能な社会を構築するための資本の流れを確保する必要性が高まっていることがあります。
三菱UFJフィナンシャル・グループ（MUFG）も、こうした動きを受けて、カーボンニュートラル実現のための金融枠組みを通じた支援を積極的に行っています。
トランジションとサステナブルファイナンスの違い
トランジション・ファイナンスは、サステナブルファイナンスの中でも特に移行段階に焦点を当てた枠組みです。サステナブルファイナンスは、環境や社会問題の解決を目的として、再生可能エネルギー事業や社会貢献活動への資金提供を含む広範な概念を指します。一方で、トランジション・ファイナンスは、従来の化石燃料や高エネルギー消費型ビジネスを展開している企業が、より低炭素な活動へ移行するための資源を提供する点に独特の意義があります。
MUFJでは、例えば、省燃費航空機導入やプラスチック廃棄削減といった具体的な取り組みを通じて、トランジション・ファイナンスを活用して企業の環境課題解決を加速させています。
グローバルな動向と規制環境
トランジション・ファイナンスの需要拡大に伴い、世界では規制と基準の策定が進んでいます。たとえば、EUではグリーンボンド基準や持続可能な金融に関するタクソノミーが策定され、トランジション資金供給の透明性が重視されています。また、国際的な気候関連財務情報開示タスクフォース（TCFD）や自然関連財務情報開示タスクフォース（TNFD）による枠組みも、重要な指針となっています。
三菱UFJフィナンシャル・グループは、このようなグローバル動向と規制に対応し、国際的な信用力を活用して、カーボンニュートラルやサステナビリティ目標に向けた資金調達や融資を拡大しています。また、日本企業としての強みを生かし、赤道原則やESGファイナンスの実績をもとに、国内外でリーダーシップを発揮しています。
三菱UFJフィナンシャル・グループにおけるサステナビリティ戦略
環境・社会課題への優先的取り組み
三菱UFJフィナンシャル・グループ（MUFG）は、持続可能な社会の実現を目指し、環境や社会課題への取り組みに注力しています。特に、カーボンニュートラル推進に向けた取り組みとして、TCFD提言に基づく開示を積極的に進めています。また、TNFDフレームワークに基づき、自然資本や生物多様性にも配慮することを重要な方針としています。
さらに、MUFGは赤道原則に基づき、環境に配慮した融資条件を設定し、持続可能な社会インフラの形成を支援しています。例えば、プラスチック廃棄物削減やリサイクルを支援するほか、新築マンションの緑化推進や持続可能な木材の活用にも取り組んでいます。こうした活動により、MUFGは環境課題だけでなく、社会的価値の創出にも貢献しています。
サステナブルファイナンス目標達成の進捗
MUFGは、2019年度から2030年度までの累計サステナブルファイナンス実行額として、当初の35兆円から100兆円へと目標を引き上げました。この目標達成を通じて、環境や社会の持続可能性に向けた課題解決に取り組み、同時に経済成長との両立を図っています。
これまでの実績として、MUFGは航空業界における省燃費航空機の導入を推進し、二酸化炭素排出量の削減に寄与しています。また、畜糞や食品ロスを有効利用した有機肥料の作成支援など、循環型社会の構築にも貢献しています。これらの取り組みにより、MUFGはサステナビリティ目標の実現に向け着実な進捗を見せています。
社内ガバナンスと推進体制
MUFGは、サステナビリティ推進のためのガバナンス体制を強化しています。経営方針において「社会的責任」「人的資本経営」「リスク管理」を重視し、組織全体での取り組みを体系的に進めています。これに伴い、カーボンニュートラル宣言の一環として、事業全般において環境負荷低減を目指した行動指針を策定しています。
また、専属チームの設置や内部リソースの拡大を通じて、サステナビリティ戦略を全社的に浸透させています。さらに、MUFGサステナブルエナジーの設立など、新たな枠組みや専門機関を活用した施策も進めることで、環境・社会課題への対応力を高めています。
こうしたガバナンスの取り組みは、MUFGがサステナビリティリーダーシップを発揮し、国内外における持続可能な未来を牽引する基盤となっています。
トランジション・ファイナンスの事例
カーボンクレジット関連の取組み
三菱UFJフィナンシャル・グループ（MUFG）は、カーボンクレジットの活用を通じてカーボンニュートラルの実現に取り組んでいます。具体的には、TCFDの提言に基づく開示を積極的に行い、カーボンオフセットの仕組み導入を後押しすることで、企業の温室効果ガス削減目標達成を支援しています。また、生物多様性保全などの自然資本にも焦点を当て、TNFDフレームワークへの対応を進めるなど、サステナビリティの幅広い分野で貢献しています。このような取り組みにより、MUFGは低炭素社会の実現へ向けたリーダーシップを発揮しています。
グリーンプロジェクトとサステナビリティ・リンク融資
MUFGは、グリーンプロジェクトの推進やサステナビリティ・リンク融資を通じて、持続可能な社会の実現を目指しています。具体的な事例として、再生可能エネルギー関連プロジェクトや、省エネルギー技術を活用した事業への資金提供が挙げられます。特に、企業の環境・社会目標達成に応じて融資条件が変動する「サステナビリティ・リンク融資」を積極的に提供し、企業の環境改善意識を高める役割を担っています。この仕組みは、持続可能な経済活動を促進する効果があり、資本市場においても注目を集めています。
MUFGサステナブルエナジーの事業概要
2023年10月に設立された株式会社MUFGサステナブルエナジーは、MUFGのサステナビリティ戦略の一環として、再生可能エネルギー発電事業や資産運用に特化しています。同社は、三菱UFJフィナンシャル・グループが掲げるカーボンニュートラル宣言を具体化するための重要な役割を果たしています。特に、風力や太陽光などの再生可能エネルギー事業への出資・運営を行うだけでなく、これらを活用した長期的な資産運用の提供も視野に入れています。このようにして、同社は環境負荷の低減を目指しながら、社会全体の持続可能な発展に寄与しています。
その他の成功事例・実績
MUFGはこれまでにも多くの成功事例を積み重ねてきました。例えば、航空機業界向けに、省燃費性能の高い最新鋭航空機の導入支援を実施し、二酸化炭素排出量の削減に寄与しています。また、廃棄物処理のエコシステム構築に注力し、微生物による食品ロスや畜糞の発酵による有機肥料生成をサポートするプロジェクトにも関与しています。これらの事例は、MUFGが持続可能な社会づくりに積極的に取り組んでいる実績として評価されています。さらに、環境省主催のESGファイナンス・アワード・ジャパンでは金賞を受賞するなど、その取り組みは国際的にも高く評価されています。
未来を見据えた成長戦略
長期目標: 2030年とそれ以降
MUFG（三菱UFJフィナンシャル・グループ）は、2030年までにサステナブルファイナンスの累計実行額を100兆円に引き上げるという野心的な目標を掲げています。この目標は、カーボンニュートラルや持続可能な社会の実現に向けた具体的な取り組みを強化することを示しています。2030年以降も更なる長期展望を持ちながら、金融業界のリーダーとして環境・社会課題への対応を中心に据えていく方針です。これにより、再生可能エネルギーやカーボンクレジット取引を含むトランジション・ファイナンス領域において、MUFGは継続的な成長を目指します。
トランジション・ファイナンスがもたらす市場へのインパクト
トランジション・ファイナンスは、企業が持続可能な経済社会への移行を進める際の強力な資金調達手段となります。これにより、エネルギー効率化や再生可能エネルギーへの転換が成され、全体として経済の脱炭素化が促進されます。MUFGは、サステナブルで包括的な金融ソリューションを提供することで、新たな市場を創出するだけでなく、企業や投資家にとって透明性の高い価値ある仕組みを構築しています。このような取り組みは、世界的な規制動向や持続可能性要求の高まりを背景とし、市場全体にポジティブな影響を与えています。
MUFGの役割: 日本企業としてのリーダーシップ
MUFGは、日本を代表する金融グループとして、国内外でトランジション・ファイナンスの普及と発展をリードしています。同社は、カーボンニュートラルの取り組みや赤道原則の遵守を通じて、環境・社会的な課題解決に積極的に貢献しています。また、社内外のパートナーシップを活用し、再生可能エネルギー事業や航空機の省燃費性能向上支援など、具体的なプロジェクトを推進しています。これにより、MUFGは金融業界における環境リーダーシップを示し、日本企業全体のサステナビリティ実現に向けた模範的な存在となっています。
今後の課題と展望：規制対応と技術革新
MUFGがトランジション・ファイナンスをさらに拡大するためには、規制対応と技術革新が大きな鍵を握ります。国際的な規制環境は、TCFDやTNFDといった枠組みに基づきますが、これらの動向に迅速かつ柔軟に対応することが求められます。また、再生可能エネルギーや廃棄物処理のエコシステムといった分野では、技術革新が不可欠です。MUFGは、独自の研究開発および戦略的パートナーシップを通じて、これらの課題を乗り越えるために努めています。これらの努力は、より持続可能な未来の創出を目指すMUFGの成長戦略そのものを支えています。