世界と比べて分かる!日本の女性役員比率の実態とは?

日本における女性役員比率の現状

上場企業における女性役員の割合

日本の上場企業における女性役員比率は未だに低い水準にとどまっています。2021年時点で東証一部上場企業の33.4%(732社)において女性役員が1人もいないという状況でした。この数字は2017年の62.0%(1,253社)からは改善傾向が見えるものの、依然として大きな課題です。2025年までに女性役員比率19%、2030年までに30%という日本政府の長期目標に対しては、大幅な取り組みの強化が求められています。

業界ごとに異なる女性役員比率

日本では業界ごとに女性役員比率に大きな差が見られます。例えば、小売業やサービス業などの分野では比較的女性の登用が進む一方で、製造業や建設業などの伝統的な男性優位の業界では大幅に遅れています。これには、各業界における働き方の文化や歴史的な構造が関係していると考えられます。具体的な数値を取りまとめると、産業別に個別施策を講じる必要性が伺えます。

社内役員と社外役員の女性比率の違い

日本では社外役員に占める女性の比率の方が、社内役員よりも高い傾向があります。これは、ガバナンスの強化やESG投資の拡大に伴い、企業が外部から女性の専門家を招く流れが進んでいるためです。一方、社内役員においては女性の昇進や登用が進まない現状があり、企業内部でのキャリアアップルートに根深いジェンダーギャップがあることが浮き彫りになっています。

過去から現在までの女性役員比率の推移

過去20年を振り返ると、日本の女性役員比率は徐々にですが着実に増加してきています。しかし、世界の上場企業と比較してそのペースは非常に緩やかです。例えば、先進諸国では早くからジェンダーダイバーシティに取り組み、クオータ制などの制度導入により急速に女性役員比率を引き上げてきました。一方、日本では2003年に「2020年までに指導的地位に占める女性比率を30%に引き上げる」という目標が掲げられましたが、達成されることはありませんでした。この背景には、文化的・制度的問題が複雑に関係しています。

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諸外国と比較した日本の女性役員比率

欧米諸国と日本の違い

日本の女性役員比率は、欧米諸国と比較して非常に低い水準にあります。例えば、アメリカの女性役員比率は約21.7%、イギリスでは27.2%と高い傾向が見られます。一方で日本は約14.7%にとどまり、先進国の中でも最低水準です。この違いの背景には、ジェンダー平等への社会意識の差や、女性活躍を後押しする政策的枠組みの有無が影響していると考えられます。欧米諸国では、法規制や企業文化として女性のキャリアアップを支える仕組みが整っている一方で、日本は依然として旧来型の構造の中で女性がキャリアアップしにくい環境が残っています。

アジア太平洋地域における日本の立ち位置

アジア太平洋地域においても、日本の女性役員比率は他国と比べて低調です。例えば、フィリピンでは女性管理職の割合が53.6%と非常に高く、企業文化におけるジェンダーダイバーシティが進んでいます。同地域には女性役員比率が30%を超える国々が複数存在しており、日本の立ち位置を見ると相対的に遅れているのが明らかです。この差は、地域ごとの文化的背景や政策の違いだけでなく、女性が働きやすい環境を積極的に作り出しているかどうかに起因すると言えるでしょう。

クオータ制の有無による差異

諸外国における女性役員比率を押し上げている大きな要因の一つが「クオータ制」の導入です。例えば、フランスやノルウェーでは企業の役員や議会における女性比率の最低基準を設定しています。こうした法制度の影響により、女性が取締役会や経営幹部に進出するケースが増加し、全体的な女性役員比率が向上しています。一方で、日本はクオータ制の導入に慎重な立場をとり続けています。そのため、女性の登用が各企業の自主性に委ねられており、結果的にグローバル基準から大きく後れを取る状況が続いています。

トップ3に見る女性役員比率が高い国の特徴

世界で女性役員比率が高い国として、トーゴ(65.7%)、セントルシア(58.5%)、コートジボワール(57.6%)が挙げられます。これらの国々に共通する特徴として、女性が積極的に経済活動や意思決定の場に参画できる仕組みが確立されている点が挙げられます。さらに、社会全体で女性のリーダーシップを肯定する文化が存在することや、ジェンダー平等を後押しする法的な支援が整っていることもポイントです。このような取り組みは、企業や国全体の成長を促進する要素と認識されており、日本が追いかけるべきロールモデルとして注目されています。

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日本における女性役員比率が低い理由

文化的・社会的要因とその根本

日本における女性役員比率が低い理由の1つに、文化的・社会的要因が挙げられます。日本では長い間「働き手は男性、家庭は女性が守る」という性別役割分担の意識が根強く存在してきました。この考え方は年月とともに薄れつつあるものの、依然として多くの場面で影響を及ぼしています。また、家庭内における育児や介護の負担が女性に集中しやすい状況が続いており、女性が役員などのキャリアを築くための環境整備が不十分であることも一因です。この文化的な背景が、女性が職業上の上位ポジションに就く障壁となっています。

企業の内部構造とジェンダーギャップの関係

企業の内部構造におけるジェンダーギャップも、女性役員比率が低い要因の1つです。日本企業では、従来から男性を中心に構築された管理職層が多く、意思決定や権限の移譲において女性が選ばれにくい仕組みが存在しています。また、昇進や昇格の指標が男性優位のキャリアモデルを基準にしているケースも見受けられます。このような企業の内部構造は、女性が管理職や役員として活躍する機会を奪い、ジェンダーギャップを拡大させています。

政策や制度の未整備による影響

政策や制度の未整備も、女性役員比率が低い理由の1つです。確かに日本政府は「2020年社会のあらゆる分野で女性の割合を30%にする」という目標を掲げましたが、その達成には至りませんでした。さらに、クオータ制のような制度が導入されていないため、女性役員の増加を強制的に推進する動きが弱い状況です。これに対し、多くの欧米諸国では、クオータ制や具体的な法規制が設定され、女性の役員登用が制度的にサポートされています。制度上の遅れが、世界との埋めがたい差を生み出しているといえます。

女性のキャリアアップを阻む壁

日本において女性がキャリアアップを目指す際、数多くの壁に直面します。その1つが長時間労働や転勤といった、個人のライフスタイルに大きく影響する就業形態です。これらの働き方は特に家庭を持つ女性にとって負担が大きく、キャリア継続を断念する要因となり得ます。また、女性管理職のロールモデルが少ないことも大きな課題です。役員や管理職が男性中心の構成であれば、女性がそのキャリアパスを具体的に描きにくくなるだけでなく、必要なネットワークや支援を得にくい状況に陥ります。これらの要因が、結果として日本の女性役員比率の低さに直結しています。

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女性役員比率向上に向けた施策と課題

政府が掲げる目標とその進捗

日本政府は、「女性活躍推進」を掲げ、女性役員比率の向上に取り組んできました。特に2003年に、「2020年までに指導的地位に占める女性の割合を30%にする」という数値目標が設定されました。しかし、この目標は未達成に終わり、2021年時点で女性管理職比率は13.3%と低い水準にとどまっています。

これを受け、2023年には新たな長期目標として「2025年までに女性役員比率を19%に、2030年には30%に引き上げる」ことが目指されています。一部の上場企業では、2030年までに女性役員比率を30%以上にするとした取り組みも進められており、政府と企業の協力がより求められる状況です。

女性役員の増加が企業にもたらすメリット

女性役員の増加は、企業にとって大きなメリットをもたらします。まず、ジェンダーダイバーシティによる多様な視点の導入は、経営判断の質を向上させることにつながります。具体的には、女性役員の存在が顧客層やステークホルダーの多様性を反映し、企業ブランドの向上や新たな市場開拓に寄与する可能性があります。

また、経済的な観点からも、女性役員が多い企業は株価のパフォーマンスが良いとする調査結果もあります。例えば、MSCIの調査によると、企業における女性取締役の比率が増加すると、ガバナンスが改善され、投資家からの評価が高まる傾向が見られています。このような背景から、女性役員比率の向上は単なる社会的な責務以上に、企業の競争力を高める重要な戦略と位置づけられています。

ジェンダーダイバーシティを推進する企業事例

日本国内では、ジェンダーダイバーシティを推進する企業も増えています。例えば、大手製造業では女性役員の割合を20%以上にする目標を掲げるだけでなく、女性従業員のキャリアアップを支援する研修や育成プログラムを展開しています。また、IT業界では、働きやすい職場環境を整えるために、柔軟な勤務形態や産休・育休制度の拡充などの取り組みが進められています。

さらに、ESG(環境・社会・ガバナンス)投資が注目される中、積極的に女性の登用を行う企業が国際的な評価を得ています。このような企業事例は、女性役員比率向上の取り組みが単なる「社会的貢献」ではなく、経営の競争優位性につながることを示しています。

クオータ制導入の是非に関する議論

女性役員比率向上に向けた施策として、クオータ制の導入が議論されています。クオータ制とは、女性の役員や管理職の割合に一定の数値目標を設ける制度のことで、フランスやドイツなどではすでに実施されています。この制度により、欧米諸国では女性役員比率が顕著に向上しました。

一方で、日本においてはクオータ制導入に対する賛否が分かれています。賛成派は、「一定の強制力がなければ社会構造は変わらない」という意見を主張しています。一方、反対派は「能力主義に反する」や「女性の登用が形式的なものになる可能性がある」といった懸念を示しています。

このように、クオータ制導入を巡る議論は続いていますが、世界の女性役員比率のトップ国がクオータ制を積極的に活用していることも事実です。日本でもこの制度の可能性について慎重ながらも前向きな検討が求められています。

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女性役員比率向上に向けた未来展望

目指すべき日本の理想像とは?

日本における女性役員比率の向上は国際的な視点で見ると重要な課題となっています。政府が掲げる「2030年までに女性役員比率を30%にする」という目標は、日本の企業文化や社会の在り方に大きな変革をもたらす一歩です。この理想像の実現には、企業が男女問わず能力に基づいた評価を行う仕組みを整え、多様性を持つ組織を構築することが求められます。また、女性が意思決定層として積極的に活躍できる環境づくりを進めることで、日本全体が持つ潜在的な成長力を引き出すことが急務です。

企業文化の変革に必要な取り組み

企業文化を変革するためには、まずジェンダーダイバーシティが企業の競争力を高めるという意識を経営層に浸透させる必要があります。例えば、採用段階から性別にとらわれず平等なキャリアパスを提供する仕組みを整えたり、育児や介護など仕事と家庭の両立を支援する制度を拡充したりすることが重要です。また、女性役員比率を目標値に設定し進捗を定期的にチェックすることで、その取り組みの実効性を高めることが可能です。このような努力を通じて企業文化を進化させ、多様な人材が活躍できる職場環境を整えることが求められています。

次世代リーダー育成の重要性

日本が女性役員比率を高めるためには、次世代の女性リーダーを育成する仕組みを確立することが不可欠です。特に教育の場におけるジェンダーバイアスを解消し、若い世代が性別に関係なくリーダーシップのスキルを学び、実践機会を得られるようにする必要があります。また、企業内でのメンター制度やスキル向上のためのプログラムを設け、女性が管理職や役員へのステップアップを目指しやすい環境を構築することも重要です。こうした取り組みを通じて、長期的な視点で女性リーダーを増やしていくことが必要です。

世界とつながる日本の未来の可能性

女性役員比率の向上は日本だけでなく、世界各国との連携や競争においても大きな役割を果たします。国際的には女性リーダーが活躍する企業が高いパフォーマンスを発揮しているデータも多く、こうした成功事例を参考にしながら日本も取り組みを進めるべきです。また、ESG(環境・社会・ガバナンス)投資が進む中、女性役員の割合は企業価値を測る重要な指標となっています。日本が多様性を重視した経営を推進することで、国際的な評価を高め、世界の主要な経済プレイヤーとしてさらなる成長を遂げる未来が期待されています。

この記事を書いた人

コトラ(広報チーム)

金融、コンサルのハイクラス層、経営幹部・エグゼクティブ転職支援のコトラ。簡単無料登録で、各業界を熟知したキャリアコンサルタントが非公開求人など多数のハイクラス求人からあなたの最新のポジションを紹介します。