女性役員率、ニュース業界の壁を超える日はくるのか?

ニュース業界における女性役員の現状

各社の女性役員比率とその変化

新聞社やテレビ局などのニュース業界における女性役員比率は、依然として非常に低い状態が続いています。2019年の調査では、新聞業界の女性役員比率はわずか3.1%であり、回答した30社の中には女性役員が「ゼロ」という企業も多く存在していました。一方で、新聞業界全体の記者の女性比率は22.42%、管理職における女性比率は7.71%となっており、一部では改善の兆しが見られるものの、上層部への進出には依然として課題があります。

特に東京スポーツ新聞社では、女性役員比率が50%(4人中2人)と高い水準を維持しており、この点で他の新聞社と比較して際立った成果を上げています。一方で朝日新聞社では13.3%(15人中2人)と、業界全体の平均を上回る数字を記録しているものの、依然として少数派に留まっています。

テレビ業界では、さらに厳しい現実が見られます。NHKの女性役員比率は9.1%と比較的高いものの、TBSやテレビ東京ではそれぞれ4.0%、6.3%と低迷しています。特に、東京から在阪局に至るまで、いまだに女性役員が一人も存在しないテレビ局も少なくありません。

業界平均と他業種との比較

ニュース業界の女性役員比率は、他業種と比較しても非常に低い水準にとどまっています。政府が2025年までに「東京証券取引所プライム市場に上場する企業における女性役員比率を19%、2030年までに30%以上に引き上げる」という目標を掲げていますが、ニュース業界ではまだその目標に遠い現状が続いています。

日本全体での女性役員比率は、例えば製造業や金融業など他業種では一部において10%を超える企業も増えており、ジェンダーバランスを重視する動きが進んでいます。それに対し、ニュース業界では、ジェンダー平等の実現が遅れており、特に役員ポジションなどの意思決定層で女性の進出が制限されています。この点で、ニュース業界が他業種に比べて後れを取っていることは明らかです。

先進事例:女性役員の多い企業の取り組み

ニュース業界の中で女性役員が相対的に多い企業では、ジェンダー平等の推進に向けた具体的な取り組みが見られます。例えば、東京スポーツ新聞社では女性役員が全役員の半数を占めるまでに達成しています。このような企業では、しっかりとした女性向けキャリア支援制度や、リーダーシップ育成プログラムが導入されていることが背景にあると考えられます。

また、熊本日日新聞や鹿児島読売テレビなどでは、男性の育児休暇取得を推進するなど、男女問わず働きやすい環境づくりが進められています。このような取り組みは、女性だけが対象ではなく、従業員全体のライフステージに合わせた柔軟な制度を整備することにより、ジェンダーバランスを意識した企業文化を醸成している点で注目されています。

これらの先進事例を参考に、他の新聞社やテレビ局が同様の取り組みを展開することで、業界全体として女性役員比率が向上する可能性があるかもしれません。

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女性役員率が低い背景にある課題

男性中心の文化と固定観念

ニュース業界における女性役員率の低さの一因として、男性中心の文化と、それに根付く固定観念が挙げられます。新聞社やテレビ局をはじめとしたマスコミ業界では、長年にわたり男性が主導的な地位を占めてきました。そのため、女性がリーダーシップを発揮する場面が限られているだけでなく、女性が役員として活躍することに対する理解が不十分である場合もあります。

加えて、女性のリーダーシップに対する偏見や性別役割に基づくステレオタイプも依然根強く残っています。これにより、女性自身が役員を目指す意欲を削がれてしまうケースや、組織側が女性にリーダー的な役割を与えることに消極的な状況が発生しています。新聞社での女性役員比率が3.1%に留まっている現状は、この課題の一つの表れとも言えるでしょう。

管理職層への昇進プロセスのボトルネック

女性役員率が低い背景には、管理職層への昇進プロセスにおける障壁も深く関わっています。新聞社やテレビ局などのニュース業界では、管理職候補となるスタッフが従来の枠組みの中で限られた評価基準に基づいて選出される傾向があります。この基準が、長時間労働や夜間勤務など、性別に関係なく実行が難しい条件を含んでいた場合、特に子育てや家事を担うことが多いとされる女性に不利に働くことがあります。

さらに、女性が管理職に昇進するプロセスには「女性にはリーダーシップが不足している」という無意識のバイアスが影響することも珍しくありません。こうした社内評価のバイアスにより、新聞社における女性管理職比率がわずか7.71%(2019年)に留まるといった状況が生まれています。

業界特有の就業環境の問題

ニュース業界特有の就業環境も、女性役員率が低い要因の一つです。新聞社やテレビ局では、急な取材対応や深夜まで続く放送対応など、働き方が不規則になりがちです。そのため、家庭の責任をより多く担う傾向がある女性にとっては、仕事と家庭生活の両立が難しいと感じる場面が多く見られます。

また、企業によっては育児休職制度や短時間勤務制度が不十分だったり、職場全体でその利用に対する支援や理解が足りない場合もあります。熊本日日新聞や鹿児島読売テレビのように男性の育児休職取得率が100%に達している企業もありますが、これらの取り組みを業界全体に広げるにはまだ時間がかかりそうです。このような背景が、女性役員の数が伸び悩む理由の一部と考えられます。

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ニュースコンテンツにおける女性視点の重要性

多様な視点が報道品質に与える影響

ニュースコンテンツにおいて、多様な視点は欠かすことのできない重要な要素です。特にジェンダーに関する視点は、報道の公平性や信頼性を高めるだけでなく、社会全体の多様性を反映することにもつながります。新聞社における女性役員の比率は依然として低い水準にとどまっていますが、女性役員が増えることで多様な意見や経験が組織内で共有される機会が増え、報道がより多角的で深みのあるものとなることが期待されます。たとえば、女性の視点が提供されることで、従来取り上げられなかった家事分担や育児の課題、女性の健康問題などのテーマが適切に扱われる可能性があります。

女性が欠けた報道から生じるリスク

報道の現場や編集責任を担うポジションに女性が少ない場合、特定の視点が欠落するリスクがあります。新聞社でも男性役員が圧倒的多数を占める現状では、報道内容が男性中心的な視点に偏りやすい状況にあります。たとえば、女性の活躍や課題に関するニュースを軽視したり、ジェンダーバイアスを無意識に含む報道がなされる可能性があります。また、こうした偏りが長期化すれば、読者の多様なニーズに応えられず、読者離れや企業イメージの低下につながる危険性もあります。女性役員の不在がもたらす影響は、報道内容だけでなく組織運営全体にも及ぶといえるでしょう。

コンテンツ制作におけるバランス改善策

ニュースコンテンツにおけるジェンダーバランスを改善するためには、具体的な取り組みが欠かせません。まず、新聞社をはじめとするメディア企業が女性役員や管理職の育成と登用を積極的に進めることが重要です。また、編集会議の場に多様なバックグラウンドを持つ人材を揃えることで、幅広い視点に基づいたコンテンツ制作を促進できます。このほか、コンテンツチェックの際にジェンダーバイアスを排除するための指針を設けることも有効です。さらに、国内外の先進企業の事例として注目される「ジェンダーアドバイザー制度」や、女性記者が企画段階から参加するプロジェクトの導入など、幅広い施策が参考になるでしょう。これらの改善策を実施することで、ニュース業界全体がより包括的な視点を持つ報道機関へと進化することが求められています。

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女性役員比率向上に向けた取り組みと未来展望

各社が実施する具体的な施策

新聞社やテレビ局を含むニュース業界では、女性役員比率向上を目指した取り組みが少しずつ進められています。たとえば、熊本日日新聞や鹿児島読売テレビでは男性の育児休業取得率が100%となっており、職場全体のジェンダー平等を推進する取り組みが注目されています。また、一部の企業では、短時間勤務制度の拡大やパートナー証明書に基づいた配慮など、性別にかかわらず働きやすい環境づくりが進められています。さらに、性別に基づく固定観念を排除するため、売買契約や社内書類における性別記入の廃止を行う企業も見られます。

政府や業界団体の目標と進捗

政府はジェンダー平等を推進するため、東京証券取引所プライム市場に上場する企業に対し、女性役員比率を2025年までに19%、2030年までに30%以上にする目標を設定しました。しかし、2022年度の新聞業界における女性役員比率はわずか5.1%と依然として低い状況にあります。一方で、日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)などの業界団体も、ジェンダーギャップを可視化する調査や啓発活動を継続的に実施しており、業界全体での意識改革を図っています。

2030年に向けた女性役員30%達成の可能性

2030年までに女性役員比率を30%達成するという目標は、実現性が問われる状況にあります。2022年時点での女性役員比率は、新聞社で3.1%、テレビ局では平均4.8%と依然低水準です。この状況を変えるためには、女性役員を増やす具体的な採用・育成計画が各企業で求められます。同時に、女性の昇進を妨げる要因である固定観念や文化的な壁を取り除く努力も重要です。一部の先進企業では、女性役員の割合がすでに30%を超えている好事例があることから、これをモデルケースとして広く共有することが求められます。

持続可能なジェンダーバランスのために必要な変革

ニュース業界における持続可能なジェンダーバランスを実現するためには、大胆かつ総合的な変革が必要です。まず、採用段階での多様性確保を促進し、育成プログラムを通して女性リーダー候補のスキルを育むことが求められます。また、ジェンダー平等を企業文化の根幹に位置づける改革も不可欠です。これには、男性従業員を含む全社員への啓発活動や、ジェンダーバイアスを排除する制度設計が含まれます。さらに、政府や業界団体が設定する数値目標に沿った進捗報告を義務化することで、自発的な取り組みを促進し、ニュース業界全体での認識の向上を図ることが鍵となるでしょう。

この記事を書いた人

コトラ(広報チーム)

金融、コンサルのハイクラス層、経営幹部・エグゼクティブ転職支援のコトラ。簡単無料登録で、各業界を熟知したキャリアコンサルタントが非公開求人など多数のハイクラス求人からあなたの最新のポジションを紹介します。