女性管理職の割合はどこまで進んだ?産業別データで見る現状

女性管理職の現状について

平均値と推移データの概要

女性管理職の割合は徐々に増加しているものの、全体としては依然として低い水準に留まっています。2022年度の厚生労働省の雇用均等基本調査によると、企業規模10人以上の組織において係長相当職は18.7%、課長相当職は11.6%、部長相当職は8.0%となっています。これらのデータからも、職位が高くなるほど女性管理職の割合が低下する傾向が見て取れます。

過去10年間の推移を振り返ると、全体的に緩やかではありますが増加の傾向が見られます。例えば令和元年度では、課長相当職以上の割合が12.4%でしたが、直近の調査データでは13%に達したことから、着実な進展が窺えます。一方で、産業平均値で見た場合、情報通信業や運輸業・郵便業のように、特定の産業では依然として10%以下にとどまる業界も存在します。

国際比較で見る日本の女性管理職割合

日本における女性管理職比率は、国際的に見ても多くの課題を抱えています。12カ国を対象とした比較調査では、日本は女性管理職の割合が最も低いとの結果が出ています。フィリピンの53.4%に対し、日本は最下位となり、その差は40.5ポイントにも及びます。この大きな格差は、日本における長時間労働や育児支援制度の不足、職場文化などの複合的な要因によるものとされています。

一方で、女性管理職比率が平均的に高い国々では、職場の柔軟性や雇用制度が大きな役割を果たしており、日本が政策面や企業文化において取り組むべき示唆を多く与えています。

政府目標と現状のギャップ

日本政府は、2030年までにプライム市場の上場企業の女性役員比率を30%以上にする目標を掲げています。しかし現在のデータを見てみると、課長相当職以上の女性管理職比率は15%前後に留まり、この目標を達成するまでには依然として大きな課題があります。

具体的な課題としては、管理職への昇進を希望する女性の少なさや、管理職に必要なスキルを提供する教育機会の不足が挙げられます。また、育成された女性人材がキャリアを全うするためには、働きやすい環境作りも不可欠です。

過去10年で最も進展を見せた要因

この10年間で女性管理職比率がゆるやかに進展を遂げた背景には、いくつかの要因が挙げられます。まず、女性の社会進出を促進する政策の実施です。例えば、企業における男女比率の公開義務化や育児休暇の促進が、女性が働き続けやすい環境の形成につながりました。

加えて、働き方の多様化が進展した点も大きな影響を与えています。特にリモートワークの普及による柔軟な勤務形態が、家庭と仕事の両立を支援する新たな働き方として注目されました。これにより、これまで管理職の昇進を躊躇していた女性が、積極的にキャリアアップを目指す動機付けとして機能しています。

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産業別データで見る女性管理職の割合

女性管理職の割合が高い産業トップ3

女性管理職の割合が高い産業として、特に注目されるのが「医療・福祉」、「生活関連サービス業・娯楽業」、「宿泊業・飲食サービス業」です。医療・福祉分野における女性管理職比率は53.0%と最も高く、他の産業を圧倒しており、多くの女性がリーダーとして活躍しています。また、「生活関連サービス業・娯楽業」では24.6%、「宿泊業・飲食サービス業」では17.5%と続きます。これらの産業においては、女性の労働者が多いことや、柔軟な働き方が比較的可能な環境が整っていることが、女性管理職比率の向上に寄与していると考えられます。

割合が低い産業とその原因

一方で、女性管理職の割合が低い産業としては「運輸業・郵便業」や「製造業」が挙げられます。例えば、運輸業・郵便業の女性管理職比率は11.3%、製造業ではさらに低い水準にとどまっています。この背景には、これらの産業で伝統的に男性が多い職種や勤務形態が主流であることや、長時間労働が求められることが挙げられます。また、これらの分野では、女性が昇進できる機会やキャリアプランが十分に整備されていないという課題も指摘されています。

サービス業と製造業の比較分析

サービス業と製造業を比較すると、女性管理職比率には大きな差が見られます。サービス業全般では、働き方の柔軟性や対人関係スキルが評価されることが多く、女性が昇進しやすい環境が整っています。一方で製造業では、長時間労働を伴う場合や、体力を必要とする職種が多いことから、女性の進出が遅れています。また、製造業では男性管理職が多数を占める中、女性がロールモデルを見つけにくいといった側面も課題となっています。

女性が活躍しやすい環境を整える産業の特徴

女性が活躍しやすい環境を整える産業では、共通する特徴があります。一つは、柔軟な働き方のできる制度が充実していることです。リモートワークや短時間労働制度などが取り入れられていることで、育児や家事と仕事の両立がしやすくなります。また、女性のキャリアアップを支援するプログラムや研修が整備されていることも重要です。さらに、女性リーダーを増やそうとする企業文化が形成されていることが、女性管理職比率向上に寄与しています。こうした取り組みが進むことで、産業平均値を押し上げる効果が期待されます。

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企業事例から見る成功と課題

女性管理職が30%以上の企業の事例

女性管理職比率が30%を超える企業は、日本国内でもまだ少数派ですが、その中には明確な方針と取り組みで成功を収めている企業があります。例えば、金融・保険業や医療・福祉業といった女性の活躍が進んでいる産業において、一部の大手企業は積極的な女性登用施策を実施しています。これらの企業は、女性が管理職として長期的に継続できるキャリアパスの整備や、柔軟な働き方を可能にする制度の導入を徹底しており、女性従業員にとって働きやすい環境を提供している点が特徴です。

人材育成の取り組みが成功した企業

人材育成に注力した企業の事例としては、研修プログラムやメンターシステムを通じて女性社員のスキル開発を支える取り組みが挙げられます。具体的には、製造業や情報通信業の一部企業において「女性リーダープログラム」が導入され、次世代の管理職人材を継続的に育成しています。こうした取り組みにより、過去の産業平均値に比べて女性管理職比率を飛躍的に向上させている企業もあります。さらに、積極的なロールモデルの紹介や現役管理職との対話の場を設けることで、キャリア形成への意識を高める効果も得られています。

職場文化の改革で成果を上げた事例

職場文化の改革を通じて女性管理職比率を向上させた企業もあります。その代表例として、働き方改革を進めることで性別に関係なく平等に活躍できる環境を整備した企業が挙げられます。特に、宿泊業・飲食サービス業では従来、長時間労働や転勤などの課題が女性登用のハードルとなっていました。これを克服するため、リモートワークやシフト制の柔軟化を進め、生産性を維持しながら多様な働き方を可能にしました。また、管理職同士でのダイバーシティへの理解を深める取り組みも実施され、性別に関係なく活躍できる体制を構築しました。このように、職場文化の改革は女性が管理職として力を発揮する基盤作りに直結しています。

成功の裏にある課題と解決へのアプローチ

女性管理職比率の向上に成功した企業にはまだ多くの課題が残っています。その一例は、管理職登用までのキャリア支援の課題です。例えば、課長相当職以上への昇進において、依然として女性は男性に比べ少ない割合であり、産業平均値も低いままです。これを改善するためには、中間管理職や役職者手前までの段階で、より積極的に能力開発と育成施策を進める必要があります。また、育休復帰後のキャリア形成や管理職としての役割との両立を支援するための制度整備も課題です。

これらを解決するため、企業はジェンダーバランスの均衡をさらに意識した評価制度の改善や、職場全体で互いを支え合う環境を構築するなど、より包括的なアプローチが求められます。そして政府や業界団体とも連携し、企業単位では解決できない制度的な制約や社会的な価値観を変える動きが必要不可欠と言えます。

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課題と今後の展望

女性管理職比率向上のための政策提言

女性管理職比率を向上させるためには、政府による積極的な政策が不可欠です。例えば、性別に関係なく平等にキャリアを築ける環境を広げ、働き方改革をさらに進めることが求められます。また、雇用均等基本調査で示されているデータを基に、産業ごとにカスタマイズされた施策を導入することが効果的です。特に、課長や部長クラスの女性管理職の比率が他の層と比べて低い傾向にあるため、これらのポジションに進出するための教育や研修制度の強化が重要です。さらに、現在政府が掲げる「2030年までにプライム市場の上場企業の女性役員比率を30%以上とする」という目標達成に向けては、産業別平均値の低い分野に重点的な支援を行う必要があります。

企業に求められる取り組みとは?

企業には女性管理職比率の向上に向けた具体的な行動が求められます。その一つが、ダイバーシティを推進する組織文化の構築です。特に、柔軟な働き方を支援することで、ワークライフバランスを理由にキャリアを諦める女性を減らすことができます。また、長期的なキャリア形成を支援するため、女性社員のキャリア計画に応じた研修プログラムやメンターシップ制度を整備することも重要です。さらに、情報通信業や運輸業といった女性管理職の割合が産業平均値よりも低い分野では、特に戦略的な取り組みが求められます。

ジェンダー平等実現に向けた社会的インパクト

ジェンダー平等の実現は、社会全体に多面的なインパクトを与えます。まず、女性管理職を増やすことで、企業の業績や組織の活性化が期待されます。多様な視点を持つリーダーシップは、意思決定の質を向上させ、創造性を高める効果があるとされています。また、女性管理職が増えることで、若い世代にとってのロールモデルが増え、次世代リーダーの育成にもつながります。これにより、産業構造そのものの変革を促進し、日本の競争力強化にも寄与すると考えられます。

今後の目標とその達成に向けた課題

日本が女性管理職比率を高めていくためには、長期的な視点に立った持続可能な取り組みが必要です。政府が2030年に設定した女性役員比率30%という目標は、現状を見ると大きなハードルですが、達成不可能な数字ではありません。しかし、達成には以下の課題が残されています。一つ目は、産業の特性に応じた柔軟な施策の策定。二つ目は、意識改革を促し、ジェンダー平等を文化として定着させる社会的教育。三つ目は、企業内でのキャリアアップの透明性を確保する評価制度の確立です。以上の課題を明確にしつつ、一丸となった取り組みが求められています。

この記事を書いた人

コトラ(広報チーム)

金融、コンサルのハイクラス層、経営幹部・エグゼクティブ転職支援のコトラ。簡単無料登録で、各業界を熟知したキャリアコンサルタントが非公開求人など多数のハイクラス求人からあなたの最新のポジションを紹介します。