12.7%の壁 ─ なぜ日本の女性管理職は増えないのか?

現状の女性管理職比率と国際比較

日本の女性管理職比率はなぜ12.7%に留まるのか?

日本の女性管理職比率が12.7%と低い水準に留まっている背景には、複数の要因が存在します。まず、労働市場における女性の総合職採用割合が低いことが挙げられます。厚生労働省による調査では、管理職育成の途上にある総合職女性の割合が約20%に過ぎないという結果が示されています。また、結婚や出産などのライフイベントを契機に退職するケースが多く、長期的なキャリア形成が難しい現状も影響しています。さらに、企業文化の問題として、女性を管理職に育成する意識が希薄である点や、昇進を希望しない女性の存在も女性活躍推進の障壁となっています。

主要国とのギャップ:スウェーデンやアメリカとの比較

日本の女性管理職比率12.7%は、主要先進国と比較すると大きく出遅れている状況です。スウェーデンやアメリカでは、それぞれ41.7%および41%と、日本の約3倍以上の女性が管理職として活躍しています。これらの国々では、働く女性を支える政策や労働環境が整備されており、例えば、育児休暇制度の充実や、男女問わず育児を分担する文化の浸透が特徴です。対照的に、日本では長時間労働を前提とした働き方や、ジェンダーバイアスが働く環境の改善が進んでおらず、国際的なギャップの要因となっています。

女性管理職割合の推移とその背景

日本における女性管理職割合は、過去20年間でゆっくりと増加してきました。2005年の第2次男女共同参画基本計画では、2020年までに女性が指導的地位に占める割合を30%程度とする目標が掲げられましたが、2022年時点での進捗率は12.9%と目標には程遠い結果となっています。この背景には、企業文化や労働市場の改革が遅れていることに加え、長時間労働がスタンダードとなっている日本の労働環境が女性のキャリア形成を妨げていることが考えられます。また、女性自身が昇進に対して消極的である傾向も、推進のネックとなっています。

欧米諸国に学ぶ成功例とその再現可能性

スウェーデンやフランスなどの欧米諸国では、女性管理職の割合が日本を大きく上回る水準に達しています。これらの国々で成功しているポイントとして、育児休暇や柔軟な働き方の保障、さらには女性のリーダーシップ育成プログラムの充実が挙げられます。また、企業側の取り組みとして、女性管理職比率や男女間賃金格差の公表義務化が進んでおり、透明性と責任感が高まっています。一方で、これらの施策を日本の労働環境へ再現するには、企業文化や働き方を根本的に見直すことが不可欠です。このような取り組みを進めるためには、労働政策研究・研修機構などが提供する調査データを活用し、効果的な施策を選定することが求められます。

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日本企業における課題と現実

管理職世代の女性採用の不足

日本の企業環境において、女性管理職の割合が低い背景の一つとして、管理職世代の女性採用の不足があります。特に、過去数十年での女性採用比率が低かったことが、現在の女性管理職不足に深刻な影響を与えています。労働政策研究・研修機構の調査によれば、男性主導の採用文化が長期間にわたり継続され、総合職女性の採用自体が少ない時期がありました。その結果、管理職候補となる女性候補者の絶対数が極めて限定的になっています。

さらに、女性が多く活躍する産業では、そもそも管理職ポストの数が限られている場合が多く、これも女性管理職比率が向上しづらい原因となっています。早期退職や非正社員としての採用が集中することも、長いキャリア形成の障壁となっているのです。

女性が管理職を希望しない理由

女性の中には、管理職への昇進を希望しない人も少なくありません。その理由の一つとして、長時間労働が求められる管理職の職務に対する不安があります。管理職が担う多忙な業務内容は、家庭や育児との両立を困難にし、家庭と仕事のバランスを重視する女性にとっては、進んでそのような働き方を選択しづらい状況を生んでいます。

また、「管理職になることで周囲との人間関係が変化する」「リーダーシップに自信が持てない」など、自己評価や心理的な要因が大きいことも挙げられます。労働政策研究・研修機構のデータによると、女性が昇進に対して抱える課題として、スキル不足の認識や企業内でのサポート体制不足も大きく影響していることが指摘されています。

非正社員から正社員化への課題

日本では、非正社員として働く女性が多いことも、女性管理職比率が低い要因の一つです。非正社員としての採用は職務内容が限られ、昇進やスキルアップの機会が乏しいことが特徴です。そのため、非正社員から正社員へのキャリアパスが明確に設けられていないことが、女性が管理職レベルのポジションに到達する障壁となっています。

さらに、現在の雇用文化では正社員と非正社員の間で賃金格差が存在し、キャリア形成へのモチベーションが低下する要因ともなっています。労働政策研究・研修機構の資料によれば、非正社員の労働環境を改善し、正社員化への具体的な道筋を示すことが、女性活躍推進の一つの鍵であるとされています。

企業文化と女性管理職の受け入れ態勢

日本企業において、男性主導の企業文化が根深く存在していることは、女性管理職の増加を妨げる大きな要因です。昇進にあたり、男性中心の慣例やステレオタイプが影響を及ぼし、女性が活躍しやすい環境が十分に整っていない企業が多いのが実情です。この背景には、無意識のバイアスが関与しており、女性が管理職に昇進するための公平な機会が十分に提供されていないケースも散見されます。

また、女性のライフイベント(結婚・出産など)を考慮した人事制度が整備されていないことも、管理職登用の妨げになっています。企業文化そのものを改革し、男女ともに働きやすい職場環境を構築する取り組みが急務です。厚生労働省の女性管理職比率公表義務化の提案や、男女賃金格差の是正に向けた議論は、こうした課題を改善するための重要な一歩となるでしょう。

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女性管理職が直面する障壁

長時間労働と昇進への意欲低下

日本企業における労働時間の長さは、女性管理職の増加を阻む大きな要因の一つです。特に管理職に昇進すると業務量や責任が増え、長時間労働が避けられない状況が一般的です。このような働き方の中で、育児や介護を担う女性がキャリアを継続することは難しいとの声が多く聞かれます。さらに、長時間労働の文化は昇進への意欲を低下させる要因にもなっています。労働政策研究・研修機構の調査でも、働きやすい環境を整えることが女性活躍推進の鍵だと指摘されています。

家庭と仕事のバランスの課題

女性が家庭と仕事を両立する際に直面する課題は、管理職比率が低い理由の一つです。特に、子育てや家事にかかる負担が女性に偏っている現状では、時間的にも心理的にも余裕がなく、昇進を目指す意欲を持ちづらい状況が見られます。日本では2021年度の調査で男性の育児休業取得率が13.97%に上る一方で、依然として女性の負担が大きい家庭が多いとされています。このような状況が続く限り、女性が管理職として活躍するための環境を整えるのは困難です。

昇進に必要な経験・スキル獲得の機会不足

女性が昇進に必要な経験やスキルを獲得する機会が限られていることも重要な障壁です。多くの企業では意思決定に関与する重要なポジションやプロジェクトへのアサインメントが男性優位に進められることが多く、女性が経験を積む機会が少ない現状があります。また、非正社員として働く女性も多く、正社員化や昇進へのルートが閉ざされている場合も少なくありません。この課題を克服するためには、企業側が積極的にキャリア支援策を整備し、性別を問わず平等にスキルを磨く場を提供することが求められます。

企業内の無意識バイアス

企業内には無意識のうちに女性に対する固定的な役割期待が存在しており、これが女性管理職の増加を妨げる大きな要因となっています。たとえば、「女性は家庭の役割を優先するべき」「男性に比べてリーダーシップが弱い」といったステレオタイプ的な見方が、昇進の機会を奪うことにつながっています。労働政策研究・研修機構の報告書でも、無意識バイアスを排除するための教育や研修の必要性が強調されています。このような取り組みを通じて、企業文化を改革し、女性が公平に評価される環境を実現することが重要です。

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解決策と取り組みへの提言

女性管理職比率の公表義務化の効果

女性管理職比率の公表を義務化することは、企業の意識改革を促すうえで大きな一歩となります。現在、日本の女性管理職比率は12.7%に留まっており、国際比較で見ても低い水準と言えます。このような取り組みは、企業ごとの進捗を可視化することで、競争が生まれるとともに、社会全体での意識の高まりを生むことが期待されます。

実際、スウェーデンやアメリカでは女性の活躍推進を重視し、具体的な指標の公表と目標設定を導入することで約40%の高い女性管理職比率を達成しています。また、労働政策研究・研修機構が示すように、男女格差のデータを明示することは、企業だけでなく求職者にも透明性を提供し、女性が働きやすい環境づくりを加速させる効果があると考えられます。

女性のキャリア支援策の充実

女性管理職を増やすためには、キャリア支援策の充実が欠かせません。具体的には、リーダーシップ研修やメンター制度の導入、育児や介護を支援する柔軟な労働環境の整備が求められます。労働政策研究・研修機構の報告書によれば、女性はキャリア形成を志向する中で、依然として育児や介護など家庭の責任との両立に課題を感じる傾向があります。

特に、育児休業から復帰した女性がスムーズにキャリアを継続できる制度の構築は重要です。欧米諸国では、育児中の女性に特化した研修プログラムや復職支援が一般化しつつあります。このような取り組みを日本の企業も参考にし、女性がキャリアを諦めず、管理職へ挑戦できる環境づくりが必要です。

男性主導の企業文化改革の必要性

日本企業の多くは、いまだに男性主導の文化が根強く残っています。この企業文化を改革することは、女性管理職の増加に不可欠です。長時間労働が前提であったり、男性が優位に立つ職場環境が存在したりする場合、女性の活躍には大きな障壁となります。

この改善には、男性社員を含めた全社的な意識改革が求められます。例えば、男性が積極的に育児休業を取得することが当たり前の文化を育むことで、女性だけが「働きにくい性別」と捉えられる状況を解消することが可能です。また、男性管理職を対象としたジェンダー平等に関する教育プログラムの導入なども有効と考えられます。

無意識バイアスを取り除くための教育プログラム

無意識バイアスとは、「男性は管理職に向いている」「女性はサポート役が合う」といった固定観念が、本人の意識に上らないまま判断に影響を与えることを指します。このバイアスが存在する限り、女性が昇進やリーダーシップに挑戦する機会が不平等に扱われる可能性があります。

企業内で無意識バイアスを取り除くためには、定期的な教育プログラムが有効です。特に、管理職層や人事担当者への研修を義務化することで、女性社員の評価がより公平かつ客観的に行われる環境が整うでしょう。また、このような取り組みは組織全体の多様性に資するものであり、結果として業績向上にも寄与すると期待されています。

この記事を書いた人

コトラ(広報チーム)

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