コトラ（広報チーム） 
第5次男女共同参画基本計画の背景と目的
男女共同参画基本法の成立と進化
男女共同参画基本法は、1999年に制定された法律で、日本社会におけるジェンダーの平等を実現するための法的枠組みを提供しています。この法律は、男女平等について「基本的理念」を定めるとともに、国家や自治体、さらには企業や個人に具体的な取り組みを求めています。時代に応じた見直しが行われており、第5次男女共同参画基本計画（以下、5次計画）はこの法律を基盤に、現代の課題に応える形で策定されています。
第5次計画策定に至る社会的背景
5次計画が策定された背景には、日本社会が抱えるジェンダー格差の課題があります。グローバル・ジェンダー・ギャップ指数では、2019年時点で日本は154カ国中121位と非常に低い順位にあるため、これを改善する必要が叫ばれてきました。また、新型コロナウイルス感染症の影響により、家庭内の暴力（DV）の増加や女性が労働市場で不利な立場に置かれる状況が顕在化しました。このような背景を受け、政府はジェンダー平等を実現するために明確な目標と計画を策定する必要性に迫られたのです。
計画に込められた未来社会のビジョン
5次計画では、男女が対等に参画し、家庭も職場も地域社会もジェンダーにとらわれることなく全ての人が活躍できる未来の社会を目指しています。この計画が掲げるビジョンは、誰もが自分らしい生き方を選択できる社会の実現です。そのためには、女性の社会進出を促進するとともに、固定的な性別役割意識を解消することが必須とされています。
具体的な目標とその達成期限
5次計画では、2020年から2025年までの5年間を計画期間とし、達成すべき具体的な目標が設定されています。例えば、初等中等教育機関における女性管理職の割合について、校長は2025年までに20％、副校長・教頭は25％に引き上げる目標が掲げられています。また、国会議員候補に占める女性の割合についても、衆議院・参議院ともに2025年までに35％を目指すとしています。こうした目標設定は、社会全体で女性のリーダーシップを強化するための重要なステップとなります。
具体的な取り組みと重点施策
政策・方針決定過程への女性の参画強化
第5次男女共同参画基本計画（以下、5次計画）では、政策・方針決定過程における女性の参画を強化することが重要な柱とされています。特に、政治分野での女性議員の割合を拡大するための目標を設定しています。具体例として、衆議院議員および参議院議員候補者に占める女性の割合を2025年までに35％に引き上げる目標を掲げています。また、地方自治体の議会においても女性の比率を高める努力が進められています。これにより、多様な視点を政策に反映し、より包括的で公平な社会が構築されることを目指しています。
職場における男女平等の推進と課題
職場における男女平等の推進も5次計画の重点事項です。具体的には、女性管理職の割合の向上が大きな目標として掲げられています。例えば、校長の女性割合を2025年までに20％、副校長・教頭の女性割合を25％にするという目標が設定されています。一方で、依然として固定的な性別役割分担や、女性がフルタイムで働き続けるための環境不足などの課題が存在します。これらの解消に向け、企業には柔軟な働き方制度の導入や、意識改革に向けた研修の実施が求められています。
家事や育児における男女間の責任共有
家庭内の家事や育児における男女間の負担の不平等は依然として大きな課題となっています。5次計画では、男性の積極的な家庭参加を促進し、男女が共に家事や育児を担う社会の実現を目指しています。そのため、育児休業の男女両方の取得や、家庭内での意識改革が重要とされています。これにより、女性が社会で活躍する機会を広げるとともに、男性にとっても仕事と生活の調和を図りやすくなる環境を整備する狙いがあります。
教育における性別役割意識の見直し
教育分野では、性別役割意識の見直しが急務となっています。従来のジェンダーステレオタイプをなくすため、学校教育での取り組みが強化されています。たとえば、教科書や教育カリキュラムにおいて男女平等の観点が重視されるだけでなく、教育者自身の意識向上も求められています。また、初等中等教育機関の女性管理職割合を引き上げることも、教育現場における男女平等の実現に貢献する重要な施策です。これにより、子どもたちが性別に関係なく自身の可能性を最大限に発揮できる未来を作り出すことが期待されています。
成果目標と期待される社会変化
女性管理職の割合目標の設定
第5次男女共同参画基本計画（以下、5次計画）では、女性管理職の割合を増やすことが重要な目標として掲げられています。例えば、初等中等教育機関における女性管理職割合について、2025年までに校長が20%、副校長および教頭が25%に到達することを目指しています。また、政治の分野では、衆議院および参議院議員の候補者に占める女性の割合を2025年までに35%に引き上げる目標が設定されています。このような具体的な数値目標を設けることで、女性がより多く意思決定の場に参画できる社会の実現を目指しています。
地域社会における女性の役割と活躍
地域社会の活性化においても、女性の役割は大きく注目されています。5次計画では、地域の運営組織や自治体における意思決定の場に女性が積極的に参加できる環境を整備する施策が提案されています。たとえば、地方自治体の審議会や委員会での女性委員の割合を増加させる取り組みが挙げられます。女性が地域社会の課題解決に関与することで、これまでの固定的な性別役割分担の意識を解消し、多様な視点を取り入れた地域運営が可能になります。
女性の就業率向上による経済効果
女性の就業率を向上させることは、経済全体にも大きな影響を与えると言われています。5次計画では、女性が仕事と家庭を両立できる環境を整備することで、就業意欲を高める施策が柱として掲げられています。特に、育児や介護の負担を軽減するための制度的な支援が女性の労働市場への参加を後押しします。これにより、女性労働力の増加が経済成長を促すほか、人材不足の解消にも寄与すると期待されています。
長期的視点で見たジェンダー平等の進展
5次計画が目指すのは、単なる数値目標の達成にとどまらず、長期的な視点でジェンダー平等を推進することです。これには、人々の意識改革や価値観の見直しが重要な点として挙げられます。特に、固定的な性別役割分担意識を解消し、多様な生き方が受け入れられる社会の実現が目標とされています。さらに、女性が意思決定の場に積極的に参画できる基盤を確立することは、日本社会そのものの構造的な変革にもつながります。このような取り組みを進めることで、性別に関係なく誰もが活躍できる未来へとつながるとされています。
課題とその克服に向けたアプローチ
固定的な性別役割分担意識の解消方法
固定的な性別役割分担意識の解消は、男女共同参画社会を実現するために不可欠な課題です。日常生活や職場では、「男性は仕事、女性は家庭」といった古い価値観が依然として根強く残っています。この意識を変えるためには、まず教育の場や職場での意識改革が必要です。特に初等中等教育においては、性別による役割の制約を感じさせないカリキュラムや、女性管理職比率の向上を目指す施策が効果的です。また、社会全体で自身の行動や発言を振り返り、多様性を尊重する文化を構築することも重要です。
新型コロナウイルスが浮き彫りにした問題
新型コロナウイルス感染症の流行は、男女共同参画の実現に新たな課題をもたらしました。特に女性は、不安定な雇用形態に置かれることが多く、勤務時間の短縮や解雇の対象となることが増加しました。また、家庭内での負担が女性に集中する傾向があり、家事や育児に加え、家庭内暴力（DV）の増加という深刻な問題も明らかになりました。5次計画では、このような状況を踏まえ、女性や女児を中心とした支援策を拡充し、安全で公平な社会を築くことを目指しています。
地方と都市部の格差是正に向けて
日本では、都市部と地方の間で男女共同参画に関する取り組みに格差が存在することが指摘されています。地方では、管理職に就ける女性の割合が都市部に比べて著しく低い状況が見られます。その要因の一つには、地方における伝統的な性別役割分担意識が根付いていることが挙げられるでしょう。これを改善するためには、地方自治体と連携し、地域特性を考慮した女性活躍推進施策を進めることが必要です。また、女性管理職の比率向上を目指す施策を地方にも浸透させることで、格差是正に向けた具体的な成果が期待できます。
施策のフォローアップとさらなる改善
5次計画に掲げられた施策が着実に成果を上げるには、定期的なフォローアップが欠かせません。内閣府男女共同参画局は、令和4年度中にフォローアップを行う予定です。この際、具体的な成果指標を基に進捗状況を確認し、必要に応じて施策の見直し・改善を行うことが求められます。また、実際の現場での声を反映し、現行施策の課題を迅速に修正する柔軟性も重要です。このような継続的な取り組みによって、社会全体で男女共同参画基本計画の目標を達成し、未来の社会をより平等で持続可能なものに近づけることができます。