社外取締役の“掛け持ち事情”とは?報酬と役割を徹底解析!

はじめに:社外取締役の基本を知る

社外取締役とは?その定義と背景

社外取締役とは、企業の内部から選任される取締役ではなく、企業外部から招へいされ、独立した立場で企業経営を監督・助言する取締役を指します。その主な目的は、企業経営における透明性の向上とガバナンスの強化です。この役職は、日本のコーポレートガバナンス・コードが2015年に制定されて以降ますます注目され、現在では上場企業の99%以上が社外取締役を起用しています。

近年増加する社外取締役の役割と重要性

近年、社外取締役の数は急激に増加しています。これには東芝やシャープの問題に象徴される不祥事の影響が大きく、より厳しい経営監視や外部の視点による新たなアイデアの提供が求められているためです。このような背景から、企業価値の向上を支える役割として、社外取締役には高度な責務が課されています。また、多様性を確保し外部の視点を経営に取り入れることで、市場での信頼を高めることも期待されています。

企業が社外取締役を求める理由とは

企業が社外取締役を求める最大の理由は、透明性の強化とリスク管理の向上です。また、外部から優れた専門性や経験を持つ人材を取り入れることで、企業方針や業務執行に対する新たな観点や課題解決の糸口を見つけることが可能になります。さらに、投資家や株主の信頼を獲得するためにも、独立した第三者として経営判断の妥当性を監視する役割が重要視されています。このような役割から、近年のいわゆる「社外取締役バブル」状態が生まれているのです。

社外取締役と社内取締役の違い

社外取締役と社内取締役の最大の違いは、社外取締役が組織の外部者であることです。社内取締役は、通常、企業の経営陣として日々の業務執行や業績目標の追求に直接関与します。一方で、社外取締役は独立した立場を利用して企業の経営戦略やリスク管理を監督し、時には助言を行うことに重点を置きます。この分業構造により、取締役会における役割が明確化され、ガバナンス体制が強化されるのです。

転職のご相談(無料)はこちら>

社外取締役の報酬事情を徹底解説

社外取締役の報酬の相場

社外取締役の報酬は、企業規模や業界、求められる役割によって大きく異なります。一方で、平均を見てみると、一般的な社外取締役の報酬は約663万円と報告されています。日経平均株価採用企業の225社においての平均は1,200万円とさらに高く、特に高額報酬を提供している企業として日立製作所や岩谷産業、住友不動産などが挙げられ、それぞれ年間3,000万円を超える報酬を支払っています。このような高額報酬は、企業にとって社外取締役の重要性がいかに高いかを物語っています。

報酬額の決め方の基準

社外取締役の報酬額は、通常以下のような基準で設定されています。まず、「企業の規模と収益力」が大きな要因となります。例えば、上場企業など規模の大きい企業では報酬が高く設定される傾向があります。また、社外取締役に期待される「専門的なスキル」や「知見」、そして企業の「ガバナンス強化への貢献度」なども重要な要素となります。さらに、取締役会への出席や業績貢献といった実績が報酬額に反映される仕組みとなっている場合もあります。

高額報酬の背景にある期待と課題

社外取締役に高額報酬を支払う背景には、大きな期待があります。特に東芝やシャープといった過去の企業不祥事の教訓を受けて、企業のガバナンス強化と適切な経営監視が求められるようになりました。そのため、企業は信頼感や豊富な経験を持つ人材を確保するために、報酬を高額に設定しています。しかし一方で、「高額報酬であるにも関わらず掛け持ちが増えているため、1社あたりの責任が十分に果たされていない」といった懸念も浮上しています。こうした課題は、投資家や市場からの厳しい視線につながっています。

報酬と業績評価の関係性

社外取締役の報酬が業績評価とどのように結び付いているかは、企業ごとに大きく異なります。一部の企業では、株価や利益などの経営指標に基づいて報酬を決定する動きも見られます。ただし、社外取締役の役割は「経営監督」や「助言」に重点が置かれており、必ずしも業績そのものに直接的な影響を与えるわけではないため、成果の評価が曖昧になりがちです。その結果、企業によっては一律的な報酬体系が生じ、これが「掛け持ちを助長する要因になる」と指摘されています。この点も、多くの企業が向き合うべき課題と言えるでしょう。

転職のご相談(無料)はこちら>

社外取締役の“掛け持ち”事情とは?

複数社掛け持ちの現状と実情

近年、社外取締役を複数の企業で兼任する「掛け持ち」が増加しています。背景には、コーポレートガバナンス・コードによる社外取締役の設置義務化があり、企業が経験豊富な人材を求める中で、熟練した役員が複数社で起用される事例が多く見られます。実際、2021年には役員候補の約16%が2社以上での兼任を行っています。一部では、元官僚や大企業の元経営者が8社以上を兼任するケースも確認されており、いわゆる“社外取締役バブル”を象徴する状況が広がっています。

日本取締役協会が示す掛け持ちの適正社数

社外取締役の複数社兼任に関する懸念から、日本取締役協会は3社を超えた兼任を避けるべきと提言しています。この基準は、取締役がそれぞれの企業に対して十分な時間と労力を割き、経営監視や助言といった責任を果たすための指針として示されたものです。しかしながら、企業ごとの依頼状況や役員人材の偏在により、この基準を遵守することが難しいのが現状となっています。

掛け持ちが企業や投資家に与える影響

社外取締役の掛け持ちは、企業や投資家に対してさまざまな影響を及ぼします。ポジティブな側面としては、他社での経験を活用した幅広い視点が経営に活かされる点が挙げられます。しかし一方で、多くの企業を兼任することで個々の企業への関与が薄まる懸念も指摘されています。特に投資家は「経営監視が不十分になる可能性」や、株価への悪影響を理由に慎重な対応を求める声を上げています。実際に、兼任数が多い企業で株価が市場平均を下回る傾向も報告されています。

掛け持ちと時間配分の課題

社外取締役が複数社を兼任する場合、大きな課題となるのが時間配分です。企業ごとに異なる会議日程や課題、高い期待に応えるためには、取締役が効率的に時間を管理する能力が不可欠です。それにもかかわらず、掛け持ちが増えることで結果的に企業ごとの経営関与が浅くなる場合もあります。「会社に行かずとも高収入の楽な仕事」という誤解が広がる背景には、こうした課題が反映されていると言えるでしょう。十分な業務遂行が可能な人員数の限界を見極めつつ、掛け持ちの負担を適切に調整する工夫が求められています。

転職のご相談(無料)はこちら>

より良い社外取締役のあり方を考える

掛け持ちを解消するための対策案

社外取締役の“掛け持ち”が増加する中で、経営監視体制の質が低下する懸念が指摘されています。この問題を解消するためには、いくつかの対策が考えられます。例えば、1人の社外取締役が担当する企業数を制限する規制の強化が有効です。日本取締役協会は既に「3社を超えて兼任すべきではない」と提言していますが、これを遵守させる仕組みが必要です。

また、企業ごとに明確な期待役割や時間配分に関するガイドラインを設定することも重要です。これにより、社外取締役としての責任が曖昧になることを防ぎ、より集中した業務遂行が可能となります。さらに、社会全体で社外取締役の需要が高まる中、より広範囲な候補者リストの作成や選考プロセスの透明性向上に努めることも有効です。

社外取締役に求められるスキルセット

多忙な“掛け持ち”問題を解決しつつ、質の高い経営監視を行うためには、必要なスキルセットを備えた社外取締役の選任が欠かせません。具体的には、企業経営や財務管理の高度な知識だけでなく、リーダーシップ、問題解決力、そして多様性に応じた視点を持つことが期待されます。

社外取締役には特に各業界での豊富な経験や危機管理能力が求められます。また、独立した視点から企業の意思決定をサポートし、企業価値を向上させる力が必要です。このようなスキルを持つ人材を育成するために、企業や専門機関は研修プログラムやマネージメント講座の提供を拡充するべきです。

企業と社外取締役の“ウィンウィン”な関係構築とは

社外取締役と企業との間に信頼関係を構築し、双方に利益をもたらす“ウィンウィン”な関係が理想です。企業は長期的な成長に向けて社外取締役に透明性の高い情報を共有し、具体的な期待役割を明確に伝える必要があります。その一方で、社外取締役はこれを受け止め、独立した外部の視点を活かして企業の経営戦略やガバナンスを改善する提言を行うべきです。

このような関係を築くには、定期的な対話を通じてコミュニケーションを深めることや、業績評価の仕組みを透明化することが重要です。特に、報酬と貢献度のバランスを適切に設計することで、社外取締役としてのモチベーションを高めることができます。

持続可能な掛け持ち文化を目指すためには

社外取締役の掛け持ちが一般化している現状を踏まえると、持続可能な掛け持ち文化を目指した取り組みが必要です。これは単なる数量の調整だけではなく、掛け持ち環境全体の改善を指します。例えば、1社あたりの社外取締役の負担を軽減するために、チームで経営監視を行う仕組みを取り入れることが考えられます。

さらに、企業は社外取締役の役割を合理化し、効率的なミーティング運営やデジタルツールの活用によって、時間配分の効率化を図るべきです。また、投資家や社会が掛け持ちそのものを悪とみなすのではなく、掛け持ちがガバナンスの質にどう影響を与えているのかを評価する新しい基準作りも大切です。このような取り組みによって、“掛け持ち”という文化を経営戦略に適した形にブラッシュアップし、持続可能な制度に昇華させることが期待されます。

この記事を書いた人

コトラ(広報チーム)

金融、コンサルのハイクラス層、経営幹部・エグゼクティブ転職支援のコトラ。簡単無料登録で、各業界を熟知したキャリアコンサルタントが非公開求人など多数のハイクラス求人からあなたの最新のポジションを紹介します。