知らなきゃ危険!金融機関が抱えるセキュリティ課題とその解決法

金融機関を取り巻くセキュリティリスクの現状

サイバー攻撃の増加と多様化

近年、金融機関をターゲットとするサイバー攻撃が増加しており、その手法も多様化しています。ランサムウェア攻撃や大規模なDDoS攻撃だけでなく、サプライチェーンを狙った高度な手法が用いられるケースも目立っています。特に国家間の対立やデジタルサービスの急速な普及が背景にあり、これらが攻撃の引き金となっています。

さらに、金融機関は膨大な顧客データを管理しているため、データ漏洩を狙った標的型攻撃のリスクも増えています。これにより、金融機関のセキュリティ業務において攻撃の検知から対応、復旧まで、一貫した強化が不可欠とされています。

特に狙われる金融機関の理由

金融機関が特にサイバー攻撃のターゲットになる理由として、第一にその業務の性質が挙げられます。金融機関は顧客の個人情報や財務情報、大規模な資金取引データを扱っており、これらの情報がサイバー攻撃者にとって非常に高価値だからです。また、取引停止などのリスクが金融システム全体に波及する可能性もあり、攻撃者側から見ても戦略的な標的とされています。

さらに、金融機関のデジタル化が進んだことで、オンラインバンキングやモバイルアプリ、クラウドサービスの利用と同時に、攻撃対象となる範囲が広がっている点も狙われやすい理由の一つです。

近年の重大な攻撃事例

実際に発生した重大なサイバー攻撃事例として、2023年10月に起きたアフラック生命保険の顧客情報流出事件では、約132万人分の情報が流出しました。この事件では、金融機関のセキュリティ業務の甘さを突かれ、サードパーティ経由での不正アクセスが原因とされています。

また、2015年11月には、三菱UFJ銀行で顧客の電話番号が流出する事件も発生しました。これらのケースから、金融機関には顧客情報を厳重に保護し、脆弱性を診断する仕組みを導入することがますます求められています。

これらの具体的な事例は、金融機関がサイバー攻撃に対してどれほど脆弱であり、不十分なセキュリティ体制がどのような被害を生むかを示しています。こうした背景から、金融機関のセキュリティ対策は単なる業務の一環ではなく、全社的な課題として優先的に取り組む必要があるのです。

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金融機関の主要なセキュリティ課題

サイバーセキュリティ管理体制の不備

金融機関におけるサイバーセキュリティ管理体制の不備は、大きな課題の一つとなっています。多くの金融機関がガイドラインで規定されている「リスク識別」「検知」「対応」「復旧」などのプロセスを整備していますが、それが実際の運用において十分に機能していないケースがあります。特に、統一されたガバナンス体制や明確な責任分担が不十分である場合、サイバー攻撃時の迅速な対応に支障をきたす可能性があります。

金融庁が公表した「金融分野におけるサイバーセキュリティに関するガイドライン」によれば、この体制の整備は経営戦略そのものと同等に重要であるとされています。そして、管理態勢を強化するためには、全社的なサイバーセキュリティ管理方針の策定とその意識づけが欠かせません。

サードパーティリスクの増加

金融機関のセキュリティ業務では、自社だけでなく、取引先や委託先のサイバーセキュリティリスクにも注意を払う必要があります。近年、サプライチェーンを通じた攻撃が増加しており、これに伴いサードパーティリスク管理の重要性が高まっています。例えば、委託業務で使用するITシステムがランサムウェアの攻撃対象となるケースがあり、それが金融機関全体の脅威に発展することも少なくありません。

ガイドラインでは、サードパーティリスクを特定・評価し、個々のリスクに応じた適切な対策を講じることが求められています。適切な契約管理や定期的な監査を通じて、委託先のセキュリティ体制をチェックすることが重要です。

経営層のリスク認識不足とその影響

金融機関のサイバーセキュリティは経営課題として取り組むべき重要な領域ですが、経営層によるリスク認識が不足しているという指摘があります。経営層がサイバーセキュリティの重要性を過小評価していると、必要な予算・リソースの配分が不十分になり、結果として全社的な脆弱性が生じることになります。

経営陣がサイバー攻撃のリスクを理解し、これを投資と捉える考え方を持つことが解決の鍵となります。金融庁のガイドラインでも、経営層の積極的な関与とリーダーシップの重要性が強調されています。具体的には、サイバー攻撃への対応能力を戦略計画に組み込み、経営会議で定期的に議論することが推奨されています。

人材不足とスキルギャップ

高度化するサイバー攻撃に対応するためには、専門的な知識を有した人材が必要です。しかし、金融機関を含む多くのセクターで、サイバーセキュリティ人材の不足が深刻な課題となっています。また、既存スタッフのスキルが最新のサイバー攻撃に対応できない「スキルギャップ」も大きな問題です。

この課題を解決するためには、内部教育プログラムや専門的な外部研修を強化することが求められます。さらに、金融分野特有の脅威に対応できる専門職を育成するために、大学との連携や産学協働プロジェクトの活用も検討する必要があります。人材の確保とスキルアップによって、金融機関のセキュリティ業務を一層強化することが可能です。

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セキュリティ課題への具体的な解決策

金融庁ガイドラインを活用した対策の実施

金融庁は、金融機関がサイバーセキュリティの強化に取り組むための包括的な指針として「金融分野におけるサイバーセキュリティに関するガイドライン」を公表しました。このガイドラインでは、金融機関のセキュリティ業務における重要な項目として、サイバーリスクの特定や評価、ガバナンスの確立と運用、防御・検知・対応・復旧の各フェーズにわたる具体的な対応策が示されています。

特に経営陣の積極的関与が求められており、サイバーセキュリティを全社的な経営課題として位置づける重要性が強調されています。この考え方に基づき、金融機関は自らのシステムや運用プロセスを見直し、金融庁ガイドラインの166項目におよぶ詳細な対応事項を活用することで、セキュリティ態勢を強化することが期待されます。

脆弱性診断・ペネトレーションテストの活用

金融機関のセキュリティ業務では、自社のシステムが潜在的に抱える脆弱性を発見し、改善するための脆弱性診断やペネトレーションテストの活用が欠かせません。このようなテストを定期的に実施することで、攻撃者の視点からシステムを評価し、攻撃リスクを事前に特定することが可能になります。

脆弱性診断は、既知の漏洞を早急に特定し修正するために有効であり、一方でペネトレーションテストは実際のサイバー攻撃を模擬してセキュリティ能力を評価する手法です。これらを適切に組み合わせることで、システムのセキュリティ態勢を継続的に強化し、金融庁や業界基準に沿った万全の対策を講じることができます。

AIや最新技術を活用した新しい防御手法

AIや機械学習といった最新技術の活用は、金融機関がサイバー攻撃に対抗するうえで効果的な手段の一つです。これらの技術を導入することで、リアルタイムでの異常検知や高度な脅威情報の解析、自動化された防御プロセスの構築が可能となります。

たとえば、不正アクセスの検知システムにAIを組み込むことで、通常の取引パターンと異なる動きを即座に識別し、アラートを発信するとともに自動的に対応を開始することができます。また、ブロックチェーン技術を用いることで、データ改ざんのリスクを最小限に抑える取り組みも注目されています。これらの新しい手法を導入することで、サイバーリスク対応の精度と効率を向上させることが可能です。

サイバーセキュリティ人材の育成

サイバーセキュリティ人材の不足は、金融機関のセキュリティ業務において大きな課題となっています。特に高度化・多様化するサイバー攻撃に対応するには、専門知識と実務経験を兼ね備えた人材が必要不可欠です。そのため、金融機関は人材育成に力を入れるべきでしょう。

具体的には、CISOやセキュリティ担当者を対象とした定期的なトレーニングプログラムの実施や、外部専門家との連携による実践的なスキルの習得、さらには若手社員を対象とした研修体制の整備が重要です。また、国際的な情報共有機関や業界団体とのコラボレーションを通じて、最新の知見や手法を社員に提供することで、組織全体でセキュリティスキルを向上させることが可能です。

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今後のサイバーセキュリティにおける展望

高まるクラウド利用とその安全性

金融機関では、デジタルテクノロジーを活用した業務効率化や顧客サービスの向上が進む中、クラウドサービスの利用が急速に拡大しています。金融庁の「金融分野におけるサイバーセキュリティに関するガイドライン」においても、クラウド利用におけるセキュリティは重要な取り組みとされています。しかしながら、クラウド環境はその柔軟性や効率性ゆえに、情報流出や不正アクセスのリスクを伴います。金融機関のセキュリティ業務では、クラウドベースのデータ保護や暗号化による安全性の確保が求められるとともに、適切なアクセス権管理やモニタリングが鍵となります。特にセキュリティ対策が一元化されるクラウドネイティブなソリューションの導入が、今後のスタンダードとして期待されています。

情報共有機関(ISAC等)の活用

近年、サイバー攻撃は高度化し、金融機関単体では課題に対応しきれないケースも増えています。そうした背景から、金融庁や中央機関が推進する情報共有機関(ISAC: Information Sharing and Analysis Center)の活用が注目されています。ISACは、業界全体でのサイバー脅威に関する情報共有やベストプラクティスの提供を目的としており、攻撃の早期発見や迅速な対応を可能にします。金融機関がこれらの組織と連携することで、サードパーティリスクの低減やランサムウェアなど新たな脅威への対処力が大幅に向上するでしょう。

規模に応じたリスクベースアプローチ

金融機関ごとに規模が異なる中で、全ての組織に同一のセキュリティ対策を求めることは現実的ではありません。そのため、金融庁の監督指針では、各機関が規模や特性に応じたリスクベースアプローチを採用することが推奨されています。このアプローチでは、リスクを特定し、それに見合う適切な対策を優先的に講じることが重視されます。たとえば、小規模な金融機関であれば、外部専門家を活用した脆弱性診断やサードパーティサービスの利用が効果的です。一方、大規模な金融機関では、内部での高度なサイバーセキュリティ管理態勢の構築が求められるでしょう。

未来を見据えた金融機関の変革

サイバーセキュリティは、もはやIT部門だけの課題ではなく、経営課題として捉えられるべきです。金融庁のガイドラインでも、経営層が率先して関与し、組織全体でセキュリティ対策を推進する重要性が繰り返し述べられています。また、AIを活用したセキュリティ分析や先進的な防御手法の導入が、金融機関の競争力を高めるポイントとなります。さらに、グローバル水準のリスクマネジメント人材を育成し、金融業界全体が一体となってサイバー脅威に対抗する体制作りが必要です。未来を見据えた変革には、単なる対策強化にとどまらず、全社的にセキュリティを文化として根付かせるための取り組みが不可欠です。

この記事を書いた人

コトラ(広報チーム)

金融、コンサルのハイクラス層、経営幹部・エグゼクティブ転職支援のコトラ。簡単無料登録で、各業界を熟知したキャリアコンサルタントが非公開求人など多数のハイクラス求人からあなたの最新のポジションを紹介します。